岸和田で行われた高松宮記念杯競輪(GI)で見事GI初制覇を果たした北井佑季選手(神奈川119期)。GI初出場から僅か1年4か月でのタイトル獲得となりました。
決勝戦で走りながら感じた意外な気持ちとは。沢山のお話を伺いました。
ナッツ:まずは高松宮記念杯競輪でのGI初制覇、おめでとうございます。
北井:ありがとうございます。
ナッツ:少しお時間経ちましたが、改めてお気持ちはいかがでしょうか。
北井:まず優勝できてよかったなと思いますし、そこを目標としてやっていたので嬉しいです。あとは自分の力だけで取れたわけではないんですけど、本当に色んな人から祝福の声を頂けてありがたかったです。
ナッツ:やはり祝福の声は過去1番多かったですか。
北井:そうですね。その中でも本当に応援してくれてたのは師匠(高木隆弘選手・神奈川64期)だと思いますし、やっぱり1番僕に優勝してほしかったはずです。
それ以外にも同県の選手なども沢山応援してくれたので嬉しかったです。
ナッツ:終わって師匠からはどういう声をかけられましたか。
北井:「本当に良かったね~」っていう風に言ってくれましたね。
ナッツ:優勝した直後と少し時間が経ってからの気持ちの変化はありますか。
北井:特にあるわけではないのですが、まずGI制覇を目標としてやっていたので1個取れたということは嬉しかったです。GIタイトルを1個取ったという責任というのもありますし、来年はSS班になるというか、なってしまうので、そういう意味でも、残りの半年はより注目される立場だなと、もう本当に終わった直後から思っています。
ナッツ:去年の2月に初めてGIの全日本選抜に出場されてから、本当に僅か1年ちょっとでのGI制覇でした。最初にGIに出た時には、こうして約1年後に優勝するビジョンはご自身の中ではあったのでしょうか。
北井:今年の全日本選抜(GI)での決勝で3着を取った時に、「取れそうで取れないな。その3着からなかなか2着、1着っていうのは遠いな」っていう風に思ってはいたんですけど、本当にチャンスがあるタイミングで今年中にGIは取りたいなと思っていたので、その辺りで今年は取れるかもしれないなと思いました。
ナッツ:その全日本選抜(GI)もそうなのですが、特に今年に入って一気に勢いが加速したように感じるのですが、北井選手自身は今年になって変えられたことはありましたか。
北井:特に大きく変えたっていうのは本当に全然ないんです。デビューしてからずっと練習のメニューややり方も同じで、本当に日々の積み重ねで少しずつって風になっていったのかなと思います。あとは周りの方から言っていただけることも多いんですけど、グレードレースも走れるようになってきて、そこでもずっと基本的には先行1本でやっていて、そういう走りで結果を残せるっていうのを見てもらえるようになってきて、より注目してもらえたと思います。なので僕個人としては、なにかをきっかけに急に良くなったとかいう感覚ではなく、徐々に徐々に...という感じですね。
ナッツ:ではそのGIについてお話を伺いたいのですが、GIを迎えるにあたっての状態面はいかがでしたか。
北井:状態面は自分自身の中では万全な状態で臨めました。今までになくというか...なんて言うんですかね、それも特別なことは何もやってないんですけど、感覚的にやっぱり大きいレースを経験として積んでいく中で、GIは6日制ですしやっぱり長いので、気持ちの持って行き方であったり体調面も多少なりとも違ってくるので、大きなレースを経験するにつれて少しずつそのあたりを学んでいって、今回はいけるかなっていう風な感覚で臨みました。
ナッツ:ではもう今回はあとは取るだけだ、っていうくらいの状態ではあったと。
北井:そうですね。前回の2月のGIの時は、その時なりの万全ではあったんです。
でもそれで結果3着ってことは、2着になるのに、そして優勝するのには、まだ1つ、2つ何かが足りないので、そこはなんだろうっていう風に突き詰めて考えていったので、高松宮記念杯(GI)には自分自身の中で納得いく状態で臨めた感じです。
ナッツ:そのGIでは2走して1着こそなかったのですが、しっかりとバックを奪っての2着2本でした。実際走った感触としてはいかがでしたか。
北井:悪くはなかったですね。確かに1着はなかったんですけど、GIで勝ち上がりも結構厳しい中でも自分のレースというか、思い切ったレースをした結果勝ち上がれていったのが良かったです。それがしっかり決勝に繋がったのかなっていう風に思います。
ナッツ:その後青龍賞では南関4車の先頭となりました。すごいメンバーの中でもしっかりと主導権を奪っていきました。並びも注目された中でしたが、北井選手としてはいかがでしたか。
北井:もう僕自身は先頭に行きたいっていう気持ちを伝えてあとは後ろの皆さんが決めた感じなので、自分のやるべきことをやりました。
ナッツ:そこから繋がったのかなと感じたのは準決勝戦でした。並びとしては松井宏佑選手(神奈川113期)の番手でした。ここに関してはどういった経緯がありましたか。
北井:松井さんとは以前に後ろに付かせてもらったことも1回ありますし、去年の高松宮記念杯(GI)では、僕が先頭で後ろが松井さんというのもありました。
松井さんは力がある選手ですし、僕自身としては、自分が前でも松井さんの後ろについてもどちらが前でも納得いくレースができるっていう風に思っていたので、並びを話す段階でお互いどういう風な気持ちを持ってるかっていうのをお話ししたんです。そうしたら松井さんが僕の前で頑張りたいっていう風なことを言ってくれました。
「去年は僕が前だったんで、今年は僕が前行かせてもらっていいですか」っていう風に松井さんの強い気持ちを感じたので、そこでこういう並びになったんです。
ナッツ:それもやはり今までの北井選手の走りがあるからこその並びですよね。
北井:深くは話してないんですけど、そういう風に思ってくれてるのかなと感じる、気持ちのこもった走りだったと思います。
ナッツ:そして決勝戦なんですが、ここも並びが注目される中で、郡司浩平選手(神奈川99期)の番手の戦いになりました。
北井:はい、ここも松井さんの時と同じような感じでした。今まで郡司さんの後ろはなかったんですが、2月の全日本選抜(GI)で郡司さんが優勝して僕が3着だった後、どこかで一緒に練習した時に、「次、機会があれば前任せてもらっていいですか」っていう風に言ってもらいました。その時は本当に機会があればっていう風な話で終わったんですけど、決勝の番組が出て、神奈川3車だったんで話しました。和田さん(和田真久留選手・神奈川99期)は自分は3番手っていう風に先に言ってたので、僕と郡司さんの話だったんです。
僕が前でも全然良かったというか、その気持ちはあったのですが、郡司さんがもう松井さんと同じような感じで、今回は自分が前で走りたいって言ってくださって、本当に郡司さんは力のある選手ですし、任せても自分自身で納得いくレースできるなっていう風に思ったので番手を回ることにしました。
ナッツ:神奈川勢の決勝の車番は悪かったんですが前受けからのスタートということになりました。レース前のイメージとしてはいかがだったんでしょうか。
北井:作戦としては初手の位置を選べる車番ではなかったので、取れた位置からしっかり仕掛けどころ逃さずに仕掛けに行くっていう話ではありました。もう僕自身としては、郡司さんの後ろを回ると決めた以上はどういう風なレースになっても納得できると思っていたのでお任せしていました。実際郡司さんはもう脇本さん(脇本雄太選手・福井94期)がカマシに来た段階では出られないくらいのスピードで踏み上げていってくれました。
ナッツ:もう本当に郡司選手の気持ちが伝わる走りでしたが、その気持ちに応えて1コーナー付近からタテに踏みましたね。
北井:準決勝の松井さんもそうだったのですが、後ろに付いていて、背中から熱いものを感じましたし、やっぱり先頭は先頭の選手の仕事があって、3番手は3番手の仕事、それぞれ任された場所の仕事っていうのがあると思うのですが、本当に郡司さんは主導権をとって、仕掛けられるべきところで、相手に来させちゃいけないっていうところで踏んでいてさすがでした。気持ちの入っている走りだったなっていう風に思います。ただ、僕が飲み込まれては意味がないですし、他の選手も見えていて、和田さんも3番手にいたのでちょっと張り気味に、そこからはしっかり自分の悔いのないようにと思って踏んでいきました。
ナッツ:先頭に立ってからゴールまでの間は気持ちとしては長いなあ、と感じなかったですか。
北井:なんていうんですかね...GIの決勝の舞台でああいう風に半周ちょっとでしたが、風を切っていけるタイミングってなかなか多くはないと思うので、緊張感もありましたけど、「この時間がもっと長く続いてくれればいいのにな」っていう風に思いながら走っていましたね。笑
ナッツ:え!あの中でそんなことを。笑 何も考えられずがむしゃらにっていうよりは、割とこう気持ち的に余裕もあったっていう感じなんですね。
北井:そうですね。この経験をあと何回できるんだろうって考えた時に、このタイミングでこういう経験はなかなかできないので、悔いのないようにもう踏み切ろうっていう風に必死ではあったんですけど、終わらないでくれ、という風な思いでも走ってましたね。
ナッツ:その中でゴール線のところで落車をしてしまったのですが、タイミング的にはご自身で、「勝った!」って思った時だったのでしょうか。
北井:ゴールのところで横に和田さんも見えていましたし、内側から選手が来ているのも見えていたので、正直自分の着はわかんなかったんです。わからないまま、でもガシャンってなった感じだったんです。
ナッツ:となると、優勝したのがわかったのはどのタイミングだったんでしょうか。
北井:最初審議が出て自分も転んでたので、自分が審議対象なのかがわからなかったんです。
そして決定の放送があって、古性さん(古性優作選手・大阪100期)が審議になってたので、3着は最初出なかったんですよね。でも1着2着は最初に出たので、この段階で自分が1着なんだなっていうのはわかりました。
ナッツ:担架で運ばれている時にお客さんの声は聞こえていましたか。
北井:はい、何度も僕のコールをしていただいたんです。それが嬉しかったですね。
怪我も擦過傷のみで大したことなかったので良かったです。表彰式でも、皆さんの応援の声や喜んでいただいた声も聞けましたし、もう本当にそういう風に応援してもらえてありがたいなっていう風に思いました。
ナッツ:先ほどもお話ありましたが、やはり北井選手は師匠である高木選手と二人三脚で戦ってきた印象が強いです。改めてどんな存在なんでしょうか。
北井:もう本当に自転車に全然乗れない一番最初の時から、0から教えてくれた人なので、師匠がいなければこうしてタイトルももちろん取れなかったですし、そもそも競輪選手になれていなかったと思うので、なかなか簡単には言えないのですが、師匠のおかげでしかないなって感じます。
ナッツ:やっぱり北井選手は練習量がものすごいっていうのは多く聞くのですが、その辺りもやはり師匠から教えてもらって、なんでしょうか。
北井:そうですね。やっぱり若い頃から競輪選手をやっている人も多い中で経験の少ない自分が勝って行く為には、やっぱりまずは練習量が大事というのも思ってましたし、師匠にも教わりました。自分としては当たり前の感覚なんです。サッカー選手の時も練習量は多かったと思います。
ナッツ:そんな中だとなかなか休む時間もないんじゃないですか。
北井:オフはないんです。こういうインタビューをしていただいた時にオフの過ごし方は、とか言われるんですけど本当にオフがないので答えられないんです。笑
もう自分自身の中でしっかり、今はやっぱりそこに打ち込んでやりたいっていう風な気持ちを家族にも伝えていますし今は頑張っていきたいですね。
ナッツ:今回GIを1つ取って、北井選手のこれからのモチベーションは何でしょうか。
北井:僕自身の中ではまだ1個というか、これからもGIを走れるチャンスがあるので、1個から2個、2個から3個って増やしていきたいですし、最終的には競輪選手になった時の1番の自分の中での目標はグランプリで逃げ切りたいっていうところなんです。
なので、やっとこう、グランプリで逃げ切れるチャンスを得られた段階で、まだこれからだと思っています。やっぱりグランプリで逃げ切るってのはなかなか簡単には出来ないと思うのでそこを目指していきたいです。
ナッツ:そして8月には地元で迎えるオールスター(GI)もあります。
GI制覇の前に行われたファン投票でも9位という結果でしたが、それに関してはいかがですか。
北井:もう本当にそれはファンが走りを見てきてくれての評価なので率直に嬉しいですね。
ナッツ:あとはご自身の中で、今後強化していきたい部分はありますか。
北井:やっぱりこういう風にタイトルが取れたことで、僕自身が今まで他の選手に対して何がなんでもと思って立ち向かっていったのと同じように、今後は自分自身も少なからずそういう風に思われることも出てくると思うので、そういう相手にも常に自分が挑戦者っていう気持ちを忘れずにいきたいですし、自分の先行での走りにより磨きをかけて勝っていくっていうのが大事なのかなと思っています。
ナッツ:すごく冷静に分析されている感じがしますね。
北井選手は普段の印象だったり、受け答えなどを見ていても冷静沈着なイメージがあるのですが、ご自身の中ではメンタル面に関してはいかがですか。
北井:確かに喜怒哀楽は激しくはないですね。でもそれはトレーニングをしているわけではなくて、性格によるものだと思います。あとはインタビューなどは多くの人がご覧になりますし、僕自身自分がすごく言葉足らずだと思うんです。笑
だから誤解されないようにというか、少ないボキャブラリーの中で思っていることが少しでも伝わるように、考えて考えて話してるのでそういう感じになっちゃいますね。
ナッツ:その北井選手の真面目さがしっかりと皆様には伝わっていると思います。
では最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
北井:本当にいつも応援ありがとうございます。
本当にファンの皆さんの期待や応援あっての高松宮記念杯(GI)の優勝だと思います。
僕自身の中でも取りたいと思ってましたが、僕に取って欲しいと思ってる人が多くいるというのも感じていました。そういう日頃からの応援がありがたいなって思って走っているので、今後注目されるとは思うのですが、変わらずにというか、責任感を持って走っていくので今後も応援よろしくお願いいたします。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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6月岸和田で行われた『第2回パールカップ(GI)』を優勝した石井貴子選手(千葉106期)。オッズパーク杯ガールズグランプリでも2着に入るなどビッグレースで活躍していましたが、大怪我があり今回がGI初出場となりました。そこで見事優勝した振り返りと今年の今後の走りへ向けて、そしてここまでの思いを伺いました。
山口みのり:『第2回パールカップ(GI)』優勝おめでとうございます。
石井貴子選手:ありがとうございます。
山口:初めてのGIでしたが、どんな思いで参加しましたか?
石井:怪我で戦線離脱していたので第1回パールカップ(GI)には参加できませんでしたし、去年からGIができましたがどれも走れない状態でした。なので今回も「いざGI!」という気持ちは全くなく、通常の開催と同じ気持ちでいきました。
山口:準備なども特になかったですか?
石井:はい。怪我をする前の私は、コレクションなどのビッグレースに参加するときは2~3か月前から準備をしていたのですが、今はそのやり方はしていません。毎回「自分の精いっぱいをやろう」と思って入っているので、「GIだから」「普通開催だから」の区別はないです。
山口:気負いなどもなかったということでしょうか。
石井:はい。3日間を精いっぱい頑張ろうということ、ただ勝ち上がりが普段のポイント制と違い、初日は3着以内なんだなというのは確認していました。でもポイント制よりもわかりやすくてありがたいですね。前検日に記者さんに詳しい勝ち上がりを聞き、準決勝は4着が一人だけ決勝へ上がりますが、初日の着順とパールカップ(GI)の選考順位が関わってくるのを確認しました。
山口:その該当選手になりましたもんね。
石井:はい。自分が先に4着になった時点で、後はドキドキしながら見ていました。
山口:初めてのGIはどこを目標にしていましたか?
石井:もちろん毎レース1着を目指していますが、それは結果で後からついてくるものと考えています。これは普通の開催も同じで、走る前にはいろいろなことを考えます。例えば車番、メンバー構成、そのバンクの特徴、その日のコンディション、自分の体調、その他たくさんのデータを集め「その日に自分ができることはなんだろう」と考えます。レース後は「それを精いっぱいやりきれたか?その結果、何着だったか」ということを日々やっているので、普通開催の予選も決勝もGIも同じです。でもメンバー構成という部分では決勝やGIは強い選手ばかりなので、より応用が必要です。今はそういう取り組み方になりました。
山口:それは怪我から復帰してからですか?
石井:復帰をしてからですね。デビューしてから10年も走っているので、体も状況もどんどん変化しています。いつまでも20代の戦い方をする訳にはいかないし、逆に経験はプラスにしていけます。その結果、今はそんな感じでレースに取り組んでいます。転機になったのはやっぱり怪我ですね。自分にとってかなり大きなことでしたから。
山口:昨年GIが新設されてガールズケイリン全体の雰囲気の変化は感じますか?
石井:強い選手がたくさんいるので、GIじゃなく普通の開催でも勝つのは厳しくなってきていますね。人数が増えているし開催も増えているので、レベルが上がったと言えばそれまでですが、ますます大変だと思っています。
山口:GIへの意識はどのあたりからありましたか?
石井:特になかったです。自分がレースを走っていてもいなくても、ガールズケイリンのレースは全て見ています。自分がレースを走っている時は通信環境がないのでリアルタイムで見ることはできませんが、開催が終わって外に出たら必ず見ます。どの選手がどんな走りをするのか、誰がどんな展開で勝ったのかなど、GIや普通開催に関わらず全部見るので、特にGIを意識するなどは全くなかったです。
山口:一つ一つの積み重ねが優勝に繋がったんですね。
石井:勝つためにどうしたら良いかは常に考えているし、私自身も勝ちたい気持ちはあります。それが一つ一つちゃんとできたんだなと思います。そうやって工夫して考えていても、自分以外に6人いるので何が起こるかわかりません。いかに自分がシミュレーションしてもその通りになることは少ないので、結果が出てやっと「ちゃんとできたんだな」と思うんです。
山口:ではレースを振り返っていきます。初日は奥井迪選手(東京106期)を差して1着でしたね。
石井:車番に恵まれました。奥井選手が強いので、位置を取れたら余計なことを考えずシンプルに走ろうと思っていました。それがちゃんとできたと思います。
山口:2日目はいかがですか?
石井:私は1番車だったのでまずはスタートだなと考えていました。初日に奥井選手の強さを実感したので、まずは奥井選手よりも前、3番手くらいから自分が1着になる組み立てを考えていたんですが、実際は初手がその通りにはいかず奥井選手は前にいて自分は4番手になりました。その時点で組み立てを変えなければいけなかったのにその判断が遅くなってしまい、仕掛けた久米詩選手(静岡116期)の動きにも反応できず、良くなかったですね。
山口:決勝は7番車でしたが、いかがでしたか?
石井:真ん中の位置は取れないと思っていたので、スタートを思いきって取りにいくか後ろかの2択だなと想定し、まずは7番手からの組み立てを何パターンか考えていました。2日目は1番車だからこその迷いがありましたが、7番車だからと割り切っていました。でも奥井選手が6番手からは想定外だったし柳原真緒選手(福井114期)の並走も想定外でした。そこは自分にとってはありがたかったです。
山口:初手が決まった後は、初日のようなイメージでしたか?
石井:そんなに簡単じゃないと思っていました。奥井選手が仕掛けた後の最終1コーナーで3人の並走になり自分は一番外でした。奥井選手も前に出て内外線間に入ろうと下っていたので、並走に気を取られていると奥井選手のスピードに踏み遅れてしまうと思って注意しました。なんとかしのげて良かったです。
山口:その後は尾崎睦選手(神奈川108期)の仕掛けもありましたが、見えていましたか?
石井:ひょっとしたら後ろにいるのかもしれない、くらいの意識でした。自分も余裕がなかったし、逃げている奥井選手が強いので必死に追い込みました。
山口:最後は奥井選手を追い込んだのはわかりましたか?
石井:いえ、わからなかったです。これは不思議なんですが、1着と2着で8分の1車輪の差があるとして、わかるときとわからないときがあるんですよね。「なんとなく自分が1着かな?でも確信はないからどうだろう......」という感じです。ずっとゴール後はビジョンを見ていました。
山口:優勝がわかったときは涙が溢れてきたと伺いました。
石井:そうですね。最近自分のゴール後の様子をスピードチャンネルの番組で見て「私はゴール後、こんな感じだったのか」と思いました(笑)ビジョンを見て「!!!」となっている様子も映っていたんですが、その後は号泣してしまいました。怪我をしてからのことなどを思い出して、溢れてきてしまいましたね。私は感情の起伏を人に見せるのが好きじゃないので、あんまり人前で泣いたりはしないんですが、思わずでしたね。
山口:感動しました。私も石井選手は常に冷静なイメージだったので、それだけ大変な思いがあったんだなと感じていました。
石井:そうですね。公営競技の選手としてお金が掛かっているので、常にフラットでいることを心掛けています。浮足立つこともないし、落ち込みすぎることもないように振る舞うことは気を付けているんですが、あの時は無理でしたね。
山口:記事になっているだけでも大変な怪我ですがそれ以上の大変さがあったと想像します。でもファンの皆さんは、あの涙でその苦労を少し感じられたと思います。
石井:普段は何にもなさそうな顔をしていますが、意外に思い詰めている時もあるんですよ(笑)
山口:そうですよね。これは私のことで申し訳ないのですが、怪我から復帰されてしばらくして「実は引退も考えた」という記事を見たときに「そんなに大変な状況だったんだ......」と愕然としたんです。
石井:ああ、そうですね。去年のアルテミス賞レースに選んでもらった時期に、ようやく練習中の怪我について自分でも話せるようになったんです。復帰直後はなかなか言葉にはできなかったですし、言うべきではないとも思っていたので。
山口:そうでしたか。この優勝は、うまく言葉にはできないですが、良かったですね。
石井:でもこの優勝は自分だけの力ではないです。運やレースの状況など本当に恵まれたところも大きいですから。でも以前までの私は違いました。大きいレースに対しては何か月も前から準備して照準を合わせていたので、勝てたときはそこまでの過程や自分の力を評価していました。でも今回はそれは全くなかったですね。「あの時に引退しなくて良かったな」とは思ったんですが、自分だけの力でやってきたことではないと身に染みて感じます。もちろん走ったのは自分で、勝ったことは嬉しいしありがたいことなんですが、たくさんの方に助けてもらい、運も味方をしてくれて、やっとスタートしてゴールまで走り切れているので、「自分が勝ったんだぞ」と誇る気持ちはなかったです。
山口:そうですか。
石井:はい。勝負の神様がいるかはわからないですが、私に「勝って良いよ」って言ってもらえたんだなと感じました。
山口:良いお話をありがとうございます。それでは今後へ向けても伺っていきます。まずは今年の目標は立てましたか?
石井:中長期的な目標は立てていないですね。現状の私は、去年の自分では想像がつかない年になっています。GIも初めて出場し、勝てて、無理だと思っていたグランプリも出場権利をいただきました。ガールズケイリンフェスティバルも昨年は出られなかったんですが、今年は地元の松戸だからなんとか出たいと思って、そちらも出場できます。オールスター競輪も今年は3日制、来年からGIになる移行期のレアな開催ですが、選んでいただきました。去年の私では予想もできなかったし、その全てを目標にはしていませんでした。でも取り組み方としては「少し前の私よりはちょっとでも良くなるように」「半年前の脚力よりもちょっと上げよう」「数か月前の私よりはできるようになろう」と、小さいところを少しずつやっているんです。でも今後もそれしかできないのかなと思います。
山口:ガールズグランプリの権利を持っているから、いろんなことを試したいなどはないんですね。
石井:はい、全くないですね。GIにも「優勝するぞ」と思って参加した訳ではないのと同じで、目の前のレースを勝つために精いっぱい準備をし、自分に対して「そのレースをやりきれたかどうか」を課題にしている。今後もそういうスタンスだと思います。でも今回のパールカップ(GI)の3日制の勝ち上がりは、過去の経験もいきたかなと思いました。以前から行われていたガールズケイリンフェスティバルが3日制で、着順(パールカップ)とポイント制(フェスティバル)という勝ち上がり方は違うものの、同期たちとは「単発レースよりガールズケイリンフェスティバルを優勝するのが一番大変だ」と話したことがあるんです。私もそれを感じていました。まず決勝にいくのが大変だし、ポイント制なので2日目のポイントが重要になってきます。でも私は別府でなんとか優勝をすることができました。その経験が今回のパールカップ(GI)に参加するにあたりベースになっていますね。フェスティバルも何度も挑戦して負けて負けて、一度は優勝をできたという成功体験があります。「あの時どうだったかな」と振り返ることもできる。実際に別府の時も2日目はミスをしているんです。結果は2着で決勝へいけたのですが、あやうく大敗するところでした。ミスをして勝ち上がり、決勝ではそうならないようにと気を付けて走って勝てた経験は参考になりました。前述のように、シンプルに自分ができることをやろうと思っているんですが、自分がこれまで経験したものは栄養にしながら一走一走取り組みたいです。
山口:今年のガールズケイリンフェスティバルは地元松戸での開催です。松戸を走るうえで注意するポイントは言える範囲で、どのような部分ですか?
石井:オールガールズクラシック(GI)を見てても思ったのですが、全体のレベルが上がっているので、勝負所を逃さないことだと思います。後は車番も大切かなと感じました。もらった車番でどう組み立てていくかですね。
山口:お客様にはどんなところを見て欲しいですか?
石井:松戸は小回りなので、レースの面白いところがギュッと詰まっていると思います。選手との距離も近いし、ガールズもですがもちろん男子のレースも、駆け引きがたくさんあるしスピード感も感じられると思います。ナイターですし照明も綺麗で、サマーナイトフェスティバルの名前の通り夏のひとときを楽しんでほしいです。
山口:そして8月のオールスター競輪もファン投票14位で選出されました。
石井:どんなレースでもその日の精いっぱいすると言っていますが、オールスターだけはお客様が自分を選んでもらわないと出場が叶いません。それに乗せてもらえることだけでも本当にありがたいと思うし選んでいただいて感謝しています。
山口:今年は中間発表がありその時は19位。そこから14位という結果でした。
石井:そうでしたよね。中間順位を見て「これは出られないかな」と思っていたのですが、本当にありがたいです。
山口:締切はパールカップ(GI)が始まる前の5月12日でしたよ。
石井:そうだったんですか。てっきりパールカップ(GI)を勝てたから入れてくださった方がいたのかと思いました。でも入れてもらえることが本当に嬉しいです。オールスターはいくら強くても、走りたいと思っても、走れるレースではないですから。本人の自覚がないんですが「走って良いよ」と言ってもらえたからには名誉なことなので、感謝して頑張ります。
山口:たくさんのお話ありがとうございます。最後にオッズパーク会員の皆様に今後の意気込みをお願いします。
石井:いつも応援していただいてありがとうございます。目の前のレースを一本一本精いっぱい走っていきます。これからも応援してください。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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奈良競輪場で行われた大阪・関西万博協賛競輪GIIIで優勝をした大矢崇弘選手(東京107期)にお話を伺いました。
大津:奈良GIII優勝おめでとうございます。
大矢:ありがとうございます。
大津:少しお日にちが経ちましたがお気持ちはいかがですか。
大矢:直後は実感が湧かなかったのですが、地元に帰った時やレースに行った時に周りの方々から「おめでとう」って声をけっこうかけてもらって嬉しかったです。
大津:やはり反響は凄かったですか。
大矢:そうですね、色々と連絡がきたし、他の人たちから褒められすぎたので居心地が悪かったです。
大津:先日まで取手記念(GIII)を走っていましたが、そこでの周りの反応はどうだったんですか。
大矢:記者さんから話も聞かれるしけっこうプレッシャーにもなりました。
大津:ご自身も走る中で変化はありましたか。
大矢:レースもそうですし、練習の中でも普段とは違う緊張感が出るようになりましたね。競輪選手ってオフシーズンもなくずっと走っているので、どうしてもマンネリの部分が出てきてしまうのですが、その中でピリッとした部分が出てきたので良かったと思います。
大津:奈良GIIIは追加でしたが連絡はいつ来たのでしょうか。
大矢:伊東を走ってた最終日です。その辺りで追加は入るかなぁって思っていたので、そんなに急だなって感じはなかったです。
大津:奈良は過去優勝もしていましたが印象はありましたか。
大矢:奈良っていうよりも333が嫌いではないので苦手意識とかはなかったです。333のほうがなんとなく成績が良い感じがするんですよね。
大津:それは大矢さんの戦法が、ハマるということなんですか。
大矢:うーん、単純に333は自力型が有利なんだと思います。昔はあまり考えていませんでしたが、最近は後手に回らないレースを心掛けています。
大津:7車と9車で違いを感じる部分はありますか。
大矢:9車のほうが走りやすいですね。凄く縦足のある選手は7車のほうが良いのでしょうが僕はそういうタイプではないので9車で色々と動きがあるレースのほうが僕は得意です。
大津:7車立ての二分戦とかですと、どっちかが逃げてどっちかが捲って、のレースになってしまいますもんね。
大矢:そうですね、ちょっとどうしようもないなって時もありますね。
大津:初日から細切れ戦で大矢さんの前々の意識を感じたレースでした。
大矢:とにかく勝ち上がらないといけませんからね。5着権利というのもあって、前に前にという思いでいました。
大津:(大矢さんは初日5着)5着と6着じゃ全然違いますもんね。
大矢:はい、危なかったです。それは周りにもけっこう言われました。「良かったなぁ、5で」って。
大津:振り返ると初日が一番ギリギリでしたもんね。
大矢:そうですね、あそこで負けてたら何もなかったですからね。
大津:走ってみて感触はどうだったんですか。
大矢:最近はずっと調子は悪くないなって思ってました。そのままの調子だったんで悪くなく踏めたかなって感じました。
大津:調子が悪くないっていうのは思い当たる節はあったのですか。
大矢:練習の感覚も良かったですし、レースでも調子が悪い時は勝負所じゃないのにしんどくなってきたりしてたんですが、すごい楽に走れていたので調子いいなって思いました。
大津:2走目もそうでしたが、準決勝戦の走りが特に印象的でした。
大矢:あれは佐藤一伸さん(佐藤一伸選手・福島94期)が仕掛けてくれたからっていうのもあるんですけどね。それに釣られて自分も仕掛けることが出来ました。佐藤さんが良い目標になって、それを追いかけることが出来たので展開的にも良かったです。本当は自分が仕掛けた時に、どこか前々の位置に入れたらって思ったのですが、どこも入れるところがなかったので、もういいや行ってやれって感じで行ったら結果的に良かったって感じです。
大津:道中、中井俊亮さん(中井俊亮選手・奈良103期)と絡まなければ頭まで突き抜けていたんでしょうか。
大矢:あの一発も痛かったですし、今期一回失格してるんです。最後佐藤さんを捲るときに本来だったらもうちょっとグッと内側に押し込みたかったんですが、もう一回失格してしまったらヤバいなって頭によぎって、あまり厳しくいけずに2着になったってのもありますね。失格しちゃうとA級になってしまうので、ほんとは内側に佐藤さんを下す感じで捲って行きたかったんですが、それが出来なかったですね。
大津:準決勝戦、決勝戦と単騎でしたが一人でやることは特に苦にはされてないのでしょうか。
大矢:嫌いではないです。でも、単騎の成績が良いかって言われたらそんなことはないです。
大津:決勝進出が決まった瞬間はどんな思いでしたか。
大矢:すごい嬉しかったです。FI含めて決勝戦は数年乗ってなかったので。
大津:メンバー出揃った時はどのような印象を受けましたか。
大矢:まぁ、チャンスは無くはないかなって感じでした。単騎というのはすぐに決めました。
大津:僕らは「誰が逃げるんだろう」と悩んでいたのですが、大矢さんはどのように考えていたんですか。
大矢:僕もあんまりイメージが出来なかったので作戦とかもそんな考えてなかったんです。レースが始まった時は、松岡君(松岡辰泰選手・熊本117期)が行くのかなぁとは思ったんですが、すかさず先行するって感じではなかったので内をしゃくって中団まで行きました。
大津:では、初手の位置などは特にこだわってはいなかったんですね。
大矢:考えてなかったです。その時々の展開で後ろにならないようにって考えていました。
大津:まさに流れの中で中井選手(中井太祐選手・奈良97期)の後ろを上手く追走する場面がありました。
大矢:あれも結果的に中井さんが行ってくれたから自分も付いていけたっていう感じです。流れは見えていましたし、身体も勝手に動いてくれました。
大津:それは先ほど仰った調子が良かったっていうお話に繋がってくるんでしょうか。
大矢:それは間違いないですね。身体が勝手に反応出来るっていうのは調子が良いってことだと思います。
大津:最後の2コーナー辺りから捲っていった感触はいかがでしたか。
大矢:これは捲り切れるなってなって、頭の中で「あれ?優勝?いやいや、でも2着3着はあるかな」って意外と冷静に考えてました。
大津:松岡選手も粘っていましたし、最後は真後ろに元砂選手(元砂勇雪選手・奈良103期)もいましたが全部見えていましたか。
大矢:元砂が内にいるのは分かってなかったです。
大津:ゴール前はいかがでしたか。
大矢:「あっ、いける、これ優勝だ」って思いました。
大津:S級初優勝のゴールでしたが、ゴールの瞬間は覚えていらっしゃいますか。
大矢:よっしゃあ!っていうよりも、うわぁ優勝しちゃったわぁみたいな感じで信じられないというか、良いのかなぁみたいな感じでした。
大津:喜びが大爆発とかじゃないんですね。
大矢:競輪祭(GI)も出られるなとか色々考えて、むしろ焦るというかそんな感じでした。
大津:優勝インタビューでも落ち着いていたように感じます。
大矢:意外と冷静でした。競輪祭にも出られることになったのに、今のままじゃまずいよなぁとか。喜びよりも先にこの後に待ち受けることに対しての現実的なことを考えてました。次の開催行っても色んな人に色々言われるの嫌だなぁとか、帰りのタクシー呼んじゃってるけど間に合わなくて迷惑かけちゃうけどどうしようとか変な心配事ばかりしていました。
大津:帰りの車内とかで一人になった時に喜びに浸ったりとかもなかったですか。
大矢:それはありましたね。スマホに沢山連絡が来てて、「優勝って良いな」ってなりました。これを機にまた色々と頑張れるなって思いました。
大津:優勝したご褒美や打ち上げなどはされましたか。
大矢:打ち上げはこのあとする予定です。周りの人にも言われるんですが、ご褒美とかも買ってなくて、これから考えようかなって思ってます。
大津:大矢さんはご家族はいらっしゃいますか。
大矢:はい、結婚してて子供もいます。実は優勝した一週間後に2人目の子供が生まれたんです。なので終わったあともかなりバタバタしていて忙しかったです。
大津:大矢家としては嬉しさが重なり合った6月ですね。
大矢:そうですね、色々と良いことが起き過ぎていて逆に心配です。
大津:GIも決まりましたし、パパとしてもこれからもっともっと頑張っていかないとという思いもあるんじゃないでしょうか。
大矢:先ほども言いましたが競輪選手ってモチベーションを維持し続けるのってなかなか難しいものがあるんです。それが今回のことで一層高いモチベーションでやれるような気がします。
大津:今後の目標を教えてください。
大矢:S級1班を取ることです。
大津:話は変わるのですが、大矢さんピアノもお得意なんですか。
大矢:そうですね、今もたまに弾きます。
大津:どういう経緯でピアノを始めたんですか。
大矢:兄と姉がいるんですが、その二人がやってて小学校一年生の時に僕もやりたいって言ったみたいです。小学校までしかやっていなかったんですが中学校の時は合唱コンクールとか卒業式とかで弾いたりしていました。
大津:それでいて野球では甲子園に出場されていて凄い方ですね。
大矢:まぁ、そこそこは出来るほうだと思います(笑)
大津:ピアノと競輪が結びつく部分などはありますか。
大矢:リズム感ですかね。スポーツ全般に言えることだと思いますが色んな場面で役には立っています。
大津:では最後にオッズパークの会員の皆様にメッセージをお願いいたします。
大矢:今後も車券にどんどん貢献できるよう一生懸命頑張るので応援してください。インパクトを残せるように頑張ります。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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今年デビューした126期の養成所順位を1位で卒業し、ルーキーシリーズでも9走中8回の1着。2場所連続で完全優勝をした仲澤春香選手(福井126期)。ボート競技からの転身で早くも結果を出しています。ガールズケイリン選手を目指したきっかけやルーキーシリーズの振り返り、そしてまもなく本格デビューを迎えますが、今後の目標を伺いました。
山口みのり:仲澤選手はボート競技からの転身とのことですが、どんなきっかけだったんですか?
仲澤春香選手:私はボート競技を実業団のチームでしていたのですが、イップス(自分の思うようにプレーができなくなること)になってしまい会社とボート競技をやめることになりました。それを高校時代の顧問の先生に言ったら、その方がガールズケイリンをすすめてくれました。
山口:すぐに「ガールズケイリンを頑張ってみよう」と決断できましたか?
仲澤:私の地元は競輪が縁遠いところだったのでレースを見たこともなかったし、福井に競輪場があるのも知らなかったんです。先生から「福井市に自転車部がある学校があるから、まずはそこで話を聞いてみたらどう?」とすすめてもらい、まずは話だけでも聞きに行こうと思っていきました。
山口:それが競輪との出会いだったんですね。どのあたりから本気で目指そうと思ったんですか?
仲澤:お世話になっていたトレーナーの方がいるのですが、その方が私が競輪の話を聞きに行った時に「この子はやるよ」や「寮もあるから大丈夫だよ」とかなり押してくれたんです(笑)
山口:サポート体制はばっちりだったんですね(笑)
仲澤:はい。まだボート競技に対しての未練もあったので、自転車に進むか悩みました。でもボートの同級生が実業団や大学で頑張っているのを見ていて、「私はまだ彼女たちを応援する側、サポートする側には回れないな」と思ったんです。だったら「自転車をやってみよう」と思って始めました。
山口:そうでしたか。試験は適性ではなく技能で受けたと伺いました。試験の合格タイムはすぐ出たんですか?
仲澤:いえ、最初は全くタイムが出なかったので私も焦りました。養成所の願書の提出が8月締切だったのですが、それまでにタイムが出なかったら適性で受けようと話していたんですが、3か月ほどして何とか技能試験でも合格できそうだとそちらを受けました。
山口:凄いですね!ボートでの経験のどの部分がガールズケイリンに活きていると思いますか?
仲澤:活きる部分しかないです。フィジカル面はもちろんですが、我慢強さは通じているなと思いました。ボート競技は淡々とやる競技なんですが、それが今の自分の土台になっていると感じます。
山口:我慢強さ、メンタルも鍛えられたんですね。
仲澤:はい。ボート競技では挫折というか苦い経験をし、一度どん底まで落ちました。だから今、競輪の世界に自分が出会えたことにとても感謝していますし「好きなこと、得意なことを職業にする」のは夢でもあったので、それを叶えることができて毎日感謝しています。
山口:素敵ですね。逆に養成所で苦労したのはどういうところですか?
仲澤:自転車と向き合う時間がたくさんあるので、アマチュア時代より考える時間が長かったです。でも悩んでもしっくりした答えが見つからずに苦労しましたね。
山口:しっくりくるというのは、乗り方とかですか?
仲澤:それもありますが、タイムがなかなか伸びなかったことが一番です。モヤモヤしていたし「自分ってこの程度なのかな」と落ち込んでいた時期もありました。
山口:規定以上のタイムを出した候補生にしか取れない「ゴールデンキャップ」の獲得もありましたが、それでも悩んでいたんですね。
仲澤:そうですね。ゴールデンキャップを獲得できたのは嬉しかったんですが、自分が求めていた成績や結果には繋がらなかったです。
山口:早期卒業も視野に入れていたんでしょうか?
仲澤:いえ、それは狙える立場ではないなと思っていたので意識はしていなかったです。言い表すのは難しいんですがタイムと乗り方の感覚が「ハマっていない」という感じでした。
山口:成長した部分はどこだと思いますか?
仲澤:考えることが多かったので、卒業後の練習をしたときに、以前より引き出しは増えたなと感じました。
山口:卒業記念レースでは完全優勝、そして在所成績1位での卒業というのは振り返っていかがですか?
仲澤:結果だけを見たらとても良いです。卒業記念レースは人生の中で一度しかないので重要だと思うし、周囲の注目度は高いと思うのですが、卒業記念レースの結果がデビュー後にその通りの成績になるかは当てはまらないです。まずは無事に終えられて良かったなと思います。
山口:もうプロを見据えていたんですね。
仲澤:はい、大切なのはデビューしてからだと思いました。
山口:5月3日、富山でデビューでした。緊張はしましたか?
仲澤:緊張もあったのですが、フワフワして気持ちをコントロールできていなかったです。卒業記念レースから約1か月半経ち久しぶりのレースでした。更に33バンクなのに私の仕掛けが遅くなり、決勝は5着になってしまい不甲斐ない走りでした。
山口:久しぶりに同期と走って「強くなっているな」と思う選手はいましたか?
仲澤:そこまで大きく変化している選手はいなかったんですが、レース内容や展開を作る部分で養成所の競走訓練と同じじゃないなと思いました。ギヤも上がっているし、車間を空けてのけん制などは、養成所時代にはなかった部分でしたから。決勝はまさに、中団にいた選手がずっと後方の自分をけん制していたのがわかったんですが、そこで何もできず自ら動きにくいレースにしてしまいました。
山口:そのレースを受けて、2走目の平塚、3走目の函館への気持ちの変化はありましたか?
仲澤:はい、ありました。決勝で5着だったので、レース後に初めてヤジがたくさんありかなり落ち込みました。でもそれだけお金を賭けて私に期待してくれている表れなので、責任を持って走らないといけないなと感じました。次の平塚は早めに仕掛けようと思っていましたね。自分がどういう状況になったら負けるというのは富山で学んだので、同じ失敗を二度しないのが大切だと意識して走りました。
山口:それを初戦で経験できたのは、今後の長い競輪人生にとっては良かったかもしれませんね。
仲澤:はい。苦い経験ではありますが、しっかり糧にしていきます。
山口:お金を賭けるというのが、公営競技と他のスポーツとの大きな違いです。オッズは見ましたか?
仲澤:実は、私は目が悪く画面が離れていたり字が小さいと見えにくいんです。デビュー戦の富山は「緊張するから絶対見ないでおこう」と行く前は思っていたんですが、緊張する自分をそのまま動じずに受け入れるのは大切だと思うので、オッズは見えていなかったんですが自分への期待というのは確認していました。以前よりは展開のことを考えながら、控室では落ち着いて過ごせました。
山口:それがずっと続くんですもんね。
仲澤:そうですね。少しずつ慣れていっていると思っています。
山口:賞金というのもプロの魅力の一つですが、賞金を手にしていかがでしょう?
仲澤:ありがたいです!でも一人暮らしを始めたばかりで出ていくお金も多いので、実はプラマイゼロくらいなんですよ(笑)思ったよりはまだ稼げていないのでこれから頑張りたいです(笑)
山口:ルーキーシリーズを終えていかがですか?
仲澤:同期だけだったので結果も良かったですが、7月から先輩たちと実際に走った時にはどんな風になるんだろうと想像しました。自分が仕掛けた時、真後ろに追い込みの鋭い選手がいたり、後ろに捲りの強い選手がいる場合もあると思うんです。それでルーキーシリーズのようなペースで走った時、1着を取れるんだろうかと考えました。やってみないとわからないですが、でもきっと厳しいと思うんです。ルーキーシリーズのような走りや展開にはならないと思うので、先輩たちのレースをしっかり見て「誰がどんな動きをするのか」などを研究して自分の持ち味を出せたら良いなと思います。
山口:仲澤選手の持ち味はどんなところですか?
仲澤:流れに応じて自力を出して勝つというのが理想なんですが、思い切りの良さは見てもらえたらなと思います。
山口:どんな選手になりたいですか?
仲澤:臨機応変に走れる選手になりたいです。プロスポーツの魅力は、たくさんのファンの方が応援してくれることだと思うので、見てもらっている方に走りでも、人間的にも「この子魅力があるな、応援したくなるな」と思ってもらえる選手を目指したいです。
山口:目標にする選手はいますか?
仲澤:福井の先輩の柳原真緒選手(福井114期)は、近くにいらっしゃるし目標です。私も頑張って一緒に福井のガールズを盛り上げたいなと思います。
山口:今の練習環境は伊豆なんですよね?
仲澤:はい、伊豆で練習しています。ナショナルチームの練習生という立場で、まだ強化指定選手ではないんです。私としては自転車競技もやりたいのですが、競技で成績を残せていないので今後の成績次第ではナショナルチームに入れるかもしれないという立場です。
山口:しばらくはその生活になるんですか?
仲澤:そうですね。まずはチームに入れるかわからないんですが、競技もやりたいので頑張りたいです。
山口:練習環境は抜群ですね。
仲澤:はい!めちゃくちゃ良いです。オリンピック前なので代表の選手たちは緊張感が伝わってきます。メニューは違いますが、私も代表選手と同じ空間で練習ができることはありがたいですし、見ていてカッコいいです。「世界を目指すのはこういうことなんだな」と思いました。
山口:素晴らしい環境なんですね。では仲澤選手は、本格デビューが7月1日からの豊橋に決まりましたが、メンバーは見ましたか?
仲澤:はい。初戦からすごい選手たちと走らせてもらえるんだなと思いました。養成所の時にも先生方から言われていましたが、ガールズは班分けがないのでいきなりトップ選手と対戦があります。それは覚悟していたし、そこで自分より強い先輩たちを相手に、胸を借りるつもりで思い切り走れたらなと思います。
山口:デビュー戦までどのように過ごしますか?
仲澤:5月はルーキーシリーズが詰まっていたので、レースの経験を積めましたが練習はあまりできませんでした。ベースの脚力が上がっていないし、逆に落ちていると感じました。でも逆に6月はレースがない分、脚力やフィジカル面をしっかりトレーニングをしたいです。
山口:ありがとうございます。それでは最後にオッズパーク会員の皆様にデビュー戦へ向けての意気込みをお願いします。
仲澤:デビュー戦は、ルーキーなので不安や緊張もありますが、自分の走りをしっかりできるように頑張りたいと思います。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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新人選手にとって一発目の戦いであるルーキーシリーズ2024in富山で見事完全優勝を果たした栗山和樹選手(岐阜125期)。
一度社会人を経験してからの競輪選手への挑戦となった26歳の栗山選手に、今後の目標なども含めて様々なお話を伺いました。
ナッツ:まずはルーキーシリーズ2024in富山での優勝おめでとうございます。
栗山:ありがとうございます。
ナッツ:ご自身の中で振り返っていかがですか。
栗山:デビュー戦で完全優勝という形で終えることができたので、出来すぎな感じはしますね。
ナッツ:ルーキーシリーズに臨むにあたって、優勝まではイメージできていなかったということですか。
栗山:優勝できればいいなとは思っていたのですが、まさか完全優勝できるとは思っていませんでしたね。
ナッツ:お客様の前での初めてのレースでしたが、入場の際など緊張はしませんでしたか。
栗山:やっぱり脚見せの時には緊張しましたし、オッズを見た時に自分が人気になっていたこともわかったのでその辺りはドキドキしましたね。
ナッツ:もうその時点でオッズのことまで考えて臨まれていたわけですね。
そして初めてのレースで1着を取りましたがその時のお気持ちはいかがでしたか。
栗山:1着を取れたことが素直に嬉しかったですね。
ナッツ:その後はバンク内でマイクパフォーマンスもありました。実際にお客様を目の前にお話してはいかがでしたか。
栗山:「良かったぞ」って言う有難い言葉をいただけたのでそれに安心しましたし、 「次の日も頑張れ」っていう声もいただけたので、次の日もしっかり頑張らないとなっていうのは思いましたね。
ナッツ:やはりその辺りは卒業記念レースとは気持ちも違う面がありましたか。
栗山:そうですね。やっぱり卒業記念レースはお客様のお金はかかってないですし、自分たちの親に対して今までの成果を見せるレースのような感じだったので、自分のやりたいレースをやるという感じだったんです。やっぱりお金がかかってくると緊張の仕方も違いますし、他の選手の動きとかもしっかり見てないといけなくなってくるので、そういった意味では全然違うレースでしたね。
ナッツ:その辺りもしっかりと考えられていたあたりすごいですね。
栗山選手は養成所では3位の好成績だったわけですが、養成所ではどういった戦い方をされてたんですか。
栗山:師匠からも特にスタイルなどは何も言われていなかったので、できる時は先行しましたし、どちらかというと確定板を外さないように心掛けていましたね。
ナッツ:単騎戦ですし先行も一人しかできないですもんね。
栗山:そうですね。先行をしようと思えば出来るんですけど、それじゃやっぱり着は大きくなってしまいますしその辺りは無理して先行というスタイルではなかったですね。
ナッツ:ご自身の中ではどういう部分を意識して養成所を過ごされていたんでしょうか。
栗山:養成所では日本代表のメニューを色々変えてやってくださってるのでそこに必死に取り組みましたね。周りの子も強かったので、置いていかれないように日々練習を励んでましたし。競争訓練では先行はしないにしてもバックはなるべく多く取れるように走っていて、長い距離の捲りを打てれば、という意識でした。
ナッツ:そして先ほどお話もありましたが、卒業記念レースでは1着こそなかったものの、着をまとめて決勝にもしっかり勝ち進んでの準優勝でした。実際走られてみてのご自身の手応えはいかがでしたか。
栗山:身体の調子がいつも通りにはなっていなかったんです。でも先生が、卒業記念レースに関しては無理に1着を取らなくても3着で上がれるんだったらそれでもいいっていう風に言って下さって、それがすごく自分の中ではありがたい言葉でしたね。もちろん1着を狙っていましたが、力としてもちょっと落ちていた頃だったので、1着を狙いつつ決勝まで上がれるような競争をしました。
ナッツ:まさにその言葉通りしっかりと勝ち上がりを決めたわけですが、ちょっと調子が落ちていたというのは何か原因があったんですか。
栗山:大学生の頃から冬は身体も動かなくて、あまり得意じゃないのもあって...。
そこで周りの子に置いていかれていましたし、調子を合わせられなくて最後の方は1着を取れずじまいでしたね。
ナッツ:栗山選手にとっては暖かい時期の方が良いのですね。
栗山:そうですね。暑い時期の方がタイムも出るし身体も動くので、どちらかというと夏の方が良いですね。ただ、これからは冬でもしっかり戦えるように頑張っていきたいですね。
ナッツ:そして先日、養成所の滝澤所長がトークショーで、森田一郎選手(埼玉125期)とともに栗山選手の名前を挙げられて、今後に期待をしているというお話がありました。
栗山:いや~それは嬉しいんですけど、森田は大学(朝日大学)の後輩になるんですよね。
自分が4年生の時に1年生で一緒にやっていた子で。だからやっぱり後輩に負けるのは悔しいですし意識はしますね。やっぱりどんな練習しているかも知っているし、その分負けたくない気持ちが強いですね。
ナッツ:栗山選手ももちろん若い方ではありますけど26歳ということで、養成所の中では10代の子や20代前半の子も多い中で、体力面などの差を感じることもありましたか。
栗山:やっぱりそこは若いな~っていう風に感じますね。笑
大学卒業してからはしばらく自転車に関わっていなかったので、今はその時にはなかった新しい練習方法もありますし、考え方が当時とは全然違うので、僕らのやってた頃とは違うという部分で、若い子と話すと発見がたくさんあって刺激になっていましたね。
ナッツ:ちなみに同期の中で他に意識する選手はいますか。
栗山:何人かいるんですが、特に阿部英斗君(福岡125期)はずっと敵対視してくれてるので意識しますね。笑 養成所の時にいつも一緒に走ることが多くて、勝ったり負けたりを繰り返してたんです。
ナッツ:阿部選手もその経歴から注目されている選手ですもんね。今後の対戦に期待しておきます。そして栗山選手は松岡篤哉選手(岐阜97期)が師匠ですが、師匠との出会いはどういったきっかけだったんでしょうか。
栗山:まだアマチュアをやる前に練習をしていた場所が一緒で、その時に声をかけさせていただいたんです。その後大学時代に元選手の加藤渉さん(岐阜67期・引退)という方がいて、その人を通じて松岡さんにお願いしてもらった形ですね。
ナッツ:師匠と一緒に練習をすることはあるのでしょうか。
栗山:練習は一緒にはしてないですね。師匠は街道でされていて、自分はまずはバンクをメインでやっているので。そのバンクでは山口拳矢さん(岐阜117期)や志田君(志田龍星選手・岐阜119期)と一緒にやるのが多いですね。
ナッツ:おお、トップ選手と最初から練習ができる環境があるんですね。
栗山:そうですね。岐阜は結構その辺り分け隔てなく一緒に皆さんやってくれますね。
ナッツ:ちなみにルーキーシリーズを迎えるにあたって、師匠からは何かアドバイスはありましたか。
栗山:特に何かアドバイスはなかったのですが、終わった後に「おめでとう」とLINEが来たので見てはくれていたんだなと思いましたね。
ナッツ:イメージ的にも口数は多い方じゃないのかなとも思いますが、栗山選手がご自身で質問すると教えてくれる感じですかね。
栗山:そうですね。聞けば色々と教えてくださるタイプです。普段は陰からそっと見守ってくれている感じです。笑
ナッツ:そしてルーキーシリーズを見ていて1番感じたのが、良い意味で新人離れしているというか、内に包まれても全然慌てないし、展開に応じたレースができるなって印象だったのですが、ご自身の中でそういったところは強みでしょうか。
栗山:そうですね。大学まで自転車競技をやっていた分、そういったところで慌てないっていうのはありますし、周りをしっかり見てどの展開でも自在に走れてるのかなとは思います。
ナッツ:自在性もあるということですが、本デビューしてからはどのような戦い方をしていきたいですか。
栗山:やっぱりそこは先行ですね。師匠も今でも先行で頑張っているので私もしっかりと先行で戦っていきたいです。
ナッツ:ちなみに栗山選手の持ち味は?
栗山:そこはもう地脚ですね。しっかりと先行して力をつけていきたいと思っています。
ナッツ:ルーキーシリーズを見ていても長い距離をしっかりと踏んでいましたもんね。
その中で将来的には人の後ろという選択肢もありますか。
栗山:下の子たちも結構強い子がいるので、そこはメンバーなどにも応じて変えていきたいですね。絶対番手は回らない、という考えでもないですし、やっぱりオールドルーキーで年齢のこともあるので。でももちろんまずはやっぱり自力で戦っていきます。
ナッツ:そして栗山選手といえば、大学を卒業して一度就職をされたというお話を目にしたのですが、もしよろしければ具体的に教えていただいてもよろしいでしょうか。
栗山:もちろんです。家から30分ぐらいの段ボールの会社の営業職ですね。笑
ナッツ:えー!営業職だったのですね。
栗山: はい、そうなんです。自分の会社で作っているダンボールを買ってもらうという営業でした。
ナッツ:栗山選手とお話していての言葉遣いやメールでの文面を見ていても、すごくしっかりとされているなと思っていたんですが謎が解けました。笑 そのあたりは社会人としての経験があるからなのですね。ただ、大学で1度自転車を辞めて就職して、そこから仕事をしている環境でまた競輪選手を目指すきっかけは何だったのでしょうか。
栗山:それは職場の人で自転車を好きな人がいたんですよね。その人と久しぶりに自転車に乗る機会があったんです。ちょうどその時期コロナが流行していて、仕事自体にやりがいが少なくなっていた時期だったんです。好きなことを仕事にできるっていうのも良いなと感じて、それならもう一度挑戦してみようかなと思ったのがきっかけですね。
ナッツ:へぇ~!じゃあその一緒に働いてた方が自転車好きだったってのが本当に大きいですね。
栗山:そうなんですよ。今でも練習をすることもあってお世話になってる方なんです。
ナッツ:その方にとっては栗山選手が実際に選手になって相当嬉しいんじゃないですか。
栗山:そうですね!富山のルーキーシリーズも見にきてくれたんです。笑
ナッツ:おお、嬉しいですね!今の話を聞いて気になったのが、大学卒業の時に就職じゃなくて競輪選手になるという選択肢はなかったのでしょうか。
栗山:そこはなかったんです。やっぱり大学まで自転車をやり続けていて、ちょっと1回離れたいっていう気持ちが強かったんです。あんまりそこから続けるっていう気持ちがなかったんですよね。
ただ自転車を辞めていた時期も競輪自体は見ていたので、大学の時の同期が良い生活してるなってのを見ていいなとは思っていました。笑
ナッツ:大学の時の同期というと例えばどの選手ですか?
栗山:それは志田君だったり上杉君(上杉嘉槻選手・福井119期)ですね。大学は違いますが山根君(山根将太選手・岡山119期)も同級生ですね。今の119期の大学卒業組が年齢も一緒なんですよ。
ナッツ:確かにもう皆さんS級で戦ってる選手ですもんね。
栗山:そうなんです。だから自分も彼らのように頑張っていかないといけないなと感じていますね。
ナッツ:ちなみに選手を目指すにあたって親御さんはどんな反応だったんでしょうか。
栗山:「大学卒業した時に目指せばよかったやん」って感じでしたね。笑
でもやりたいことを反対する親ではなかったです。ただ、一度だけと決めて挑戦することにして合格できたのでよかったです。
ナッツ:しっかりとそこで一発合格できるあたりが素晴らしいですね。ちなみに家族への恩返しはなにかされましたか。
栗山:ルーキーシリーズの追加斡旋もあって、なかなか日にちが空かないのでまだご飯に連れていけていないし賞金には手をつけていないのですが、少し落ち着いたらご飯に行こうかなと思っています。
ナッツ:素敵ですね。そして今後栗山選手は選手としてどういったところに目標を置いていきますか。
栗山:近い目標としては師匠も制したヤンググランプリを獲ることですね。
そして長期的にはやっぱりGIに出て勝てる選手になりたいですね。
ナッツ:その為の今のご自身の強化ポイントはありますか。
栗山:やっぱり長い距離を踏めないといけないので、自分の持ち味の持久力を強化していかないといけないなと感じています。
ナッツ:では最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
栗山:中部を代表する選手になりますので、今後も応援よろしくお願いします。
ナッツ:ありがとうございました。今後の活躍に期待しています!
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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