今年デビューした126期の養成所順位を1位で卒業し、ルーキーシリーズでも9走中8回の1着。2場所連続で完全優勝をした仲澤春香選手(福井126期)。ボート競技からの転身で早くも結果を出しています。ガールズケイリン選手を目指したきっかけやルーキーシリーズの振り返り、そしてまもなく本格デビューを迎えますが、今後の目標を伺いました。
山口みのり:仲澤選手はボート競技からの転身とのことですが、どんなきっかけだったんですか?
仲澤春香選手:私はボート競技を実業団のチームでしていたのですが、イップス(自分の思うようにプレーができなくなること)になってしまい会社とボート競技をやめることになりました。それを高校時代の顧問の先生に言ったら、その方がガールズケイリンをすすめてくれました。
山口:すぐに「ガールズケイリンを頑張ってみよう」と決断できましたか?
仲澤:私の地元は競輪が縁遠いところだったのでレースを見たこともなかったし、福井に競輪場があるのも知らなかったんです。先生から「福井市に自転車部がある学校があるから、まずはそこで話を聞いてみたらどう?」とすすめてもらい、まずは話だけでも聞きに行こうと思っていきました。
山口:それが競輪との出会いだったんですね。どのあたりから本気で目指そうと思ったんですか?
仲澤:お世話になっていたトレーナーの方がいるのですが、その方が私が競輪の話を聞きに行った時に「この子はやるよ」や「寮もあるから大丈夫だよ」とかなり押してくれたんです(笑)
山口:サポート体制はばっちりだったんですね(笑)
仲澤:はい。まだボート競技に対しての未練もあったので、自転車に進むか悩みました。でもボートの同級生が実業団や大学で頑張っているのを見ていて、「私はまだ彼女たちを応援する側、サポートする側には回れないな」と思ったんです。だったら「自転車をやってみよう」と思って始めました。
山口:そうでしたか。試験は適性ではなく技能で受けたと伺いました。試験の合格タイムはすぐ出たんですか?
仲澤:いえ、最初は全くタイムが出なかったので私も焦りました。養成所の願書の提出が8月締切だったのですが、それまでにタイムが出なかったら適性で受けようと話していたんですが、3か月ほどして何とか技能試験でも合格できそうだとそちらを受けました。
山口:凄いですね!ボートでの経験のどの部分がガールズケイリンに活きていると思いますか?
仲澤:活きる部分しかないです。フィジカル面はもちろんですが、我慢強さは通じているなと思いました。ボート競技は淡々とやる競技なんですが、それが今の自分の土台になっていると感じます。
山口:我慢強さ、メンタルも鍛えられたんですね。
仲澤:はい。ボート競技では挫折というか苦い経験をし、一度どん底まで落ちました。だから今、競輪の世界に自分が出会えたことにとても感謝していますし「好きなこと、得意なことを職業にする」のは夢でもあったので、それを叶えることができて毎日感謝しています。
山口:素敵ですね。逆に養成所で苦労したのはどういうところですか?
仲澤:自転車と向き合う時間がたくさんあるので、アマチュア時代より考える時間が長かったです。でも悩んでもしっくりした答えが見つからずに苦労しましたね。
山口:しっくりくるというのは、乗り方とかですか?
仲澤:それもありますが、タイムがなかなか伸びなかったことが一番です。モヤモヤしていたし「自分ってこの程度なのかな」と落ち込んでいた時期もありました。
山口:規定以上のタイムを出した候補生にしか取れない「ゴールデンキャップ」の獲得もありましたが、それでも悩んでいたんですね。
仲澤:そうですね。ゴールデンキャップを獲得できたのは嬉しかったんですが、自分が求めていた成績や結果には繋がらなかったです。
山口:早期卒業も視野に入れていたんでしょうか?
仲澤:いえ、それは狙える立場ではないなと思っていたので意識はしていなかったです。言い表すのは難しいんですがタイムと乗り方の感覚が「ハマっていない」という感じでした。
山口:成長した部分はどこだと思いますか?
仲澤:考えることが多かったので、卒業後の練習をしたときに、以前より引き出しは増えたなと感じました。
山口:卒業記念レースでは完全優勝、そして在所成績1位での卒業というのは振り返っていかがですか?
仲澤:結果だけを見たらとても良いです。卒業記念レースは人生の中で一度しかないので重要だと思うし、周囲の注目度は高いと思うのですが、卒業記念レースの結果がデビュー後にその通りの成績になるかは当てはまらないです。まずは無事に終えられて良かったなと思います。
山口:もうプロを見据えていたんですね。
仲澤:はい、大切なのはデビューしてからだと思いました。
山口:5月3日、富山でデビューでした。緊張はしましたか?
仲澤:緊張もあったのですが、フワフワして気持ちをコントロールできていなかったです。卒業記念レースから約1か月半経ち久しぶりのレースでした。更に33バンクなのに私の仕掛けが遅くなり、決勝は5着になってしまい不甲斐ない走りでした。
山口:久しぶりに同期と走って「強くなっているな」と思う選手はいましたか?
仲澤:そこまで大きく変化している選手はいなかったんですが、レース内容や展開を作る部分で養成所の競走訓練と同じじゃないなと思いました。ギヤも上がっているし、車間を空けてのけん制などは、養成所時代にはなかった部分でしたから。決勝はまさに、中団にいた選手がずっと後方の自分をけん制していたのがわかったんですが、そこで何もできず自ら動きにくいレースにしてしまいました。
山口:そのレースを受けて、2走目の平塚、3走目の函館への気持ちの変化はありましたか?
仲澤:はい、ありました。決勝で5着だったので、レース後に初めてヤジがたくさんありかなり落ち込みました。でもそれだけお金を賭けて私に期待してくれている表れなので、責任を持って走らないといけないなと感じました。次の平塚は早めに仕掛けようと思っていましたね。自分がどういう状況になったら負けるというのは富山で学んだので、同じ失敗を二度しないのが大切だと意識して走りました。
山口:それを初戦で経験できたのは、今後の長い競輪人生にとっては良かったかもしれませんね。
仲澤:はい。苦い経験ではありますが、しっかり糧にしていきます。
山口:お金を賭けるというのが、公営競技と他のスポーツとの大きな違いです。オッズは見ましたか?
仲澤:実は、私は目が悪く画面が離れていたり字が小さいと見えにくいんです。デビュー戦の富山は「緊張するから絶対見ないでおこう」と行く前は思っていたんですが、緊張する自分をそのまま動じずに受け入れるのは大切だと思うので、オッズは見えていなかったんですが自分への期待というのは確認していました。以前よりは展開のことを考えながら、控室では落ち着いて過ごせました。
山口:それがずっと続くんですもんね。
仲澤:そうですね。少しずつ慣れていっていると思っています。
山口:賞金というのもプロの魅力の一つですが、賞金を手にしていかがでしょう?
仲澤:ありがたいです!でも一人暮らしを始めたばかりで出ていくお金も多いので、実はプラマイゼロくらいなんですよ(笑)思ったよりはまだ稼げていないのでこれから頑張りたいです(笑)
山口:ルーキーシリーズを終えていかがですか?
仲澤:同期だけだったので結果も良かったですが、7月から先輩たちと実際に走った時にはどんな風になるんだろうと想像しました。自分が仕掛けた時、真後ろに追い込みの鋭い選手がいたり、後ろに捲りの強い選手がいる場合もあると思うんです。それでルーキーシリーズのようなペースで走った時、1着を取れるんだろうかと考えました。やってみないとわからないですが、でもきっと厳しいと思うんです。ルーキーシリーズのような走りや展開にはならないと思うので、先輩たちのレースをしっかり見て「誰がどんな動きをするのか」などを研究して自分の持ち味を出せたら良いなと思います。
山口:仲澤選手の持ち味はどんなところですか?
仲澤:流れに応じて自力を出して勝つというのが理想なんですが、思い切りの良さは見てもらえたらなと思います。
山口:どんな選手になりたいですか?
仲澤:臨機応変に走れる選手になりたいです。プロスポーツの魅力は、たくさんのファンの方が応援してくれることだと思うので、見てもらっている方に走りでも、人間的にも「この子魅力があるな、応援したくなるな」と思ってもらえる選手を目指したいです。
山口:目標にする選手はいますか?
仲澤:福井の先輩の柳原真緒選手(福井114期)は、近くにいらっしゃるし目標です。私も頑張って一緒に福井のガールズを盛り上げたいなと思います。
山口:今の練習環境は伊豆なんですよね?
仲澤:はい、伊豆で練習しています。ナショナルチームの練習生という立場で、まだ強化指定選手ではないんです。私としては自転車競技もやりたいのですが、競技で成績を残せていないので今後の成績次第ではナショナルチームに入れるかもしれないという立場です。
山口:しばらくはその生活になるんですか?
仲澤:そうですね。まずはチームに入れるかわからないんですが、競技もやりたいので頑張りたいです。
山口:練習環境は抜群ですね。
仲澤:はい!めちゃくちゃ良いです。オリンピック前なので代表の選手たちは緊張感が伝わってきます。メニューは違いますが、私も代表選手と同じ空間で練習ができることはありがたいですし、見ていてカッコいいです。「世界を目指すのはこういうことなんだな」と思いました。
山口:素晴らしい環境なんですね。では仲澤選手は、本格デビューが7月1日からの豊橋に決まりましたが、メンバーは見ましたか?
仲澤:はい。初戦からすごい選手たちと走らせてもらえるんだなと思いました。養成所の時にも先生方から言われていましたが、ガールズは班分けがないのでいきなりトップ選手と対戦があります。それは覚悟していたし、そこで自分より強い先輩たちを相手に、胸を借りるつもりで思い切り走れたらなと思います。
山口:デビュー戦までどのように過ごしますか?
仲澤:5月はルーキーシリーズが詰まっていたので、レースの経験を積めましたが練習はあまりできませんでした。ベースの脚力が上がっていないし、逆に落ちていると感じました。でも逆に6月はレースがない分、脚力やフィジカル面をしっかりトレーニングをしたいです。
山口:ありがとうございます。それでは最後にオッズパーク会員の皆様にデビュー戦へ向けての意気込みをお願いします。
仲澤:デビュー戦は、ルーキーなので不安や緊張もありますが、自分の走りをしっかりできるように頑張りたいと思います。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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