6月に岸和田競輪場で行われる『第2回パールカップ(GI)』に出場する日野未来選手(奈良114期)に、一つ目のGI『オールガールズクラシック(GI)』の振り返りや近況のレース内容を中心にお話を伺いました。
山口みのり:今年のレースをご自身でここまで振り返っていかがですか?
日野未来選手:やりたいことはできていると思います。でもビッグレースだと、先行をしたくてしても3着以内に残れないのが現実です。だから勝ち上がっていくにはもっとビッグレースを想定して、普段の開催からレースの展開を作らないといけないなと思いました。
山口:オールガールズクラシック(GI)の時は積極的なレースが多くあったと思ったのですが、先行をしようと考えていたんですか?
日野:「絶対に先行」という訳ではないのですが、自在には構えず自分の力を出し切って勝ち上がりたかったんです。レースが終わった時に、力を余らせてゴールをしたくなかった。そのためには距離を踏むレースだなと思い、自分の行こうと思ったタイミングでカマシ先行や仕掛けたりしないと持ち味を出せないので、あの戦法になりました。
山口:初日は先に仕掛けて、カマシてきた山原さくら選手(高知104期)を合わせきりましたね。
日野:そうでしたね、最後は差されて2着でしたが、あのレースのように勝ち上がれたら良いなと思っています。それが理想ですね。
山口:その後の小倉や四日市でも最終HSでは仕掛けているのも、そういう意識ですか?
日野:はい。普通の開催でも心掛けてやっています。最近では自分で仕掛けるレースが多いと思います。
山口:自分での手ごたえはいかがですか?
日野:デビューした時よりは良いと思います。ペースや先行の仕方など、どんどん良い方向へいっていますね。
山口:ビッグレースでも長い距離を踏んで勝てるような意識を持っているんですか?
日野:いや、それはないです。そのレースをして勝ちたいですけど、勝てないのが現実なので。
今は、自分の持ち味をどうやって発揮するかを考えています。例えば前と車間をきって捲りにいくタイミングを変えたりなど、力を出し切るにしても長い距離を踏んだらもたないと思うので、先行以外の「力を出し切るレース」をどうやったらできるのか考えて練習しています。
山口:なるほど。
日野:それが捲りになったとしても、勝ち上がるのが重要だと思っています。
山口:四日市の決勝は「差し」の決まり手の優勝でしたね。最近では珍しいのかなという印象でした。
日野:他の選手との位置関係で仕掛けるタイミングを変えています。決勝は印が、私が本命◎で、対抗〇が初手で私の後ろにいた野口諭実可選手(大分102期)でした。その位置関係で最終HSからカマシ先行をしたら野口選手には絶対に差されると思ったので、差されない距離から自分の力を出し切るというイメージでレースをしました。レース中は「落ち着いて、落ち着いて」と自分に言い聞かせながら、早く仕掛けないように気を付けていたので、差しになりました。
山口:そうだったんですね。前の方で仕掛けている選手もいましたが、後ろの選手へ意識を向けていたんですね。
日野:前も見えていて全員を意識していますが、前にいる他の自力タイプの選手が仕掛けなかったら自分でいこうとは思っていました。ただ前で仕掛けていったので、私は落ち着いて優勝できるタイミングで仕掛けていきました。
山口:冷静に走っての優勝は素晴らしいですね。
では続いて、パールカップ(GI)の出場も決まりました。昨年も出場されましたが、勝ち上がりが東西にわかれてになります。それはいかがですか?
日野:特に気にならないです。普段から意識していないし、誰とあたっても強いですからね。それよりも自力タイプなのか自在タイプなのかが私は気になります。
山口:西の方が自力タイプが多いかもしれませんね。
日野:そうですね。自在タイプは東の選手に多い気がしますし。
山口:相手がどちらの方がやりやすい、やりにくいですか?
日野:うーん、難しいですが、自力タイプが多い方がしんどい気がします。まずは初日勝ち上がれるように頑張りたいです。
山口:今年の意気込みはいかがですか?
日野:去年の初日は全く動けていないんです。どうやっても動けない位置にいてしまって仕掛けもできなくて終わったので、今回は前回のオールガールズクラシック(GI)同様に、自分の好きなレースをしたいです。好きに動いて、自分の力を発揮できるようにしたいです。
山口:思い切りの良いレース?
日野:そうですね。この1年間やってきたことはそれなので、そういう風に組み立てたいです。
山口:岸和田のバンクのイメージはどうですか?
日野:めちゃくちゃ走りやすいです!
山口:軽いということですか?
日野:そこまで軽い訳ではないんですが、バンクも綺麗だし、悪いところが見つからないというか。とにかく走りやすいです。
山口:では良いイメージで走れそうですね。
日野:はい。
山口:GIを去年2回出場されましたが、走るにあたって1年間通しての気持ちの変化はありましたか?
日野:特にないです。強い選手がたくさんいるので「GIだから特別にどうこう」ではなく、私は普段のレースで1着を多くとれるようにしたいなと思っています。そうすると結果的にGIに繋がるし、走りも通用する選手になれるかなと思ってやってきました。一戦一戦を大切にしたいというのはずっと変わらないまま、先日のオールガールズクラシック(GI)は挑みました。
山口:予選も決勝も含めて1着を大切になんですね。
日野:はい。ファンの方が「日野、何やってるんだよ」と思わないようなレースをしようと心掛けています。
山口:今の課題はどういうところですか?
日野:今はガールズでもトップスピードが本当に上がっています。私も持ち味はダッシュなので、トップスピードの強化ですね。それに限ります。「うまいことしよう」とかは全くなく、ただ単純に脚力の強化です!
山口:おお!
日野:児玉碧衣選手(福岡108期)とかは特にスピードがすごすぎるので、脚力のみを伸ばしています。
山口:小倉の決勝で対戦がありましたが、日野選手の先行ですぐさま児玉選手が捲りにきました。あの勢いで来られると苦しいですか?
日野:すんなり私が先行できる展開なら良いんですが、前でスピードが上がっている中でのカマシや、他の強い選手をたたいて無理やり先行しにいく展開だと、私も合わせられる脚が残っていないのでキツイですね。
一度脚を使った後に再度捲りに行くとかそういう戦法は苦手なので課題だと思います。
山口:トップスピードもですが、何度も脚を使える持続力なども必要なんですね。
日野:はい。
山口:その強化のための練習方法は掴めてきていますか?
日野:はい。強化もしているし、マックスのトップスピードも上がってきているので良いと思います。
山口:ずばり、今の調子はいかがですか?
日野:めちゃくちゃ元気です!足も良いし、メンタルも良いと思います。
山口:たくさんの公営競技のイベントも引っ張りだこですし、それも楽しまれていますね。
日野:はい。その日はオフを取ると決めているので、そのために練習も頑張っています(笑)
山口:今年の目標はなんですか?
日野:大きいのは特に決めていないです。選手として最大の目標はもちろんガールズグランプリに出て優勝することですが、今年の目標だと、先ほど言った一戦一戦、その日のそのレースで1着を取ることだけを考えて走っています。目の前の1着だけを大事に走っています。
山口:その1着もガールズグランプリに繋がりますね。
日野:そう思います。
山口:今年は坂口楓華選手(愛知112期)が初タイトルとしてガールズケイリンコレクションを優勝されましたが、他の選手の活躍というのはどう見ていますか?
日野:凄いなと思いました。タイトルを取るって本当に難しいことだと思います。坂口選手はもともと京都の選手で近畿同士で話す機会も多くありました。とても真剣にレースや練習に取り組んでいたのを知っていたので、やっぱり頑張りは裏切らないんだなと、格好良いなと思います。
山口:ありがとうございます。ではパールカップ(GI)へ向けて取り組みたいものは何か特別にありますか?
日野:GIへの緊張感もありますが、それは普段の開催も同じです。特にいつもと同じレースと思ってやっていこうと思います。
山口:オールガールズクラシック(GI)は参加選手は全員女子です。何か他の開催と違う部分はありましたか?
日野:私が負けた時などに同期のみんなが「どうしたら良かったのか、ここはこうしたら良かったんじゃないか」と話し合いをしてくれていました。同期がたくさんいたので、レースではライバルだけど、それ以外でいっぱい話しましたね。レースに繋がる話や、ケアをしあったり、本当に114期は仲良しだな、愛だなと思いました(笑)
山口:良い話!(笑)
日野:「みんなが何で自分のレースじゃなく私のレースのことを、こんなに真剣に考えてくれるんだろう」と優しいなと思いました。
山口:他の同期の選手の時もそうやっていたんですか?
日野:どうなんでしょう。けど慰めだけじゃなくて「あそこで行けたやん」「ここで仕掛けやな!」と率直に言い合うのは、遠慮のいらない仲だからと思っています。
山口:良い関係です。終わった後の打ち上げも写真が上がっていましたね。
日野:そうですね。行けない子もいたんですが、予定の合う子はみんなで行けました。やっぱりあれだけ同期が集まることはないので珍しかったし、楽しかったです。
山口:柳原真緒選手(福井114期)も良い笑顔でしたね。あんまりはしゃぐイメージがなかったので素敵でした。
日野:実は同期の中では、結構ふざけてくれます(笑)1着を取ったら「すごい」と褒め合ったり、本当に良い雰囲気ですね。
山口:最後にパールカップ(GI)への意気込みを、オッズパーク会員の皆様へお願いいたします。
日野:今、選手になって初めて成績も安定してきているのは投票してくださる皆さんの応援のおかげです。ビッグレースでも怯まずにレースをするのが私の選手人生なので、それをふまえて応援してくれたら嬉しいなと思います。
後は、もし自在のレースをしたいなと思ったらハッキリ「自在」とコメントを出すので、しっかり事前のコメントをチェックして予想をして欲しいなと思います。
山口:予想には大切なことですね。「自力」なのか「自在」なのか。
日野:そうですよね。私は自分のやりたいレースのイメージの通りにコメントを出すので「積極的にいきたい」と言う時は早めの仕掛けだったり、予想の参考になるコメントをするのでチェックお願いします!
山口:しっかり書いておきます!後はお客様に伝えたいことはありますか?
日野:オールガールズクラシック(GI)を終えてから、車間を切ってタイミングを見て捲ったりの練習もしているので、久留米よりは上手に自力を出せるようにしたいです。
山口:ガムシャラに何が何でも、という訳ではなくですね。
日野:そうです!ただ仕掛けるだけではなく自分が勝てるような仕掛けを練習しているところです。
山口:車間を切る、というのは今まではしてこなかったですか?
日野:はい。前と離れすぎちゃったら怖いし「それで捲れなかったらお客さんにどう言い訳するん?」という私のファンだった時の思いもあり、でなかなかできなかったんです。でも男子の先輩から「やってみないとできないから、失敗して学べ」とアドバイスをもらいました。今は心掛けていることの一つです。
山口:そうじゃないといつまでも、後ろからいかれちゃいますもんね。
日野:そうなんです。こわいですが、練習で頑張っています。
山口:うまく車間を切ってですね(笑)
日野:はい(笑)頑張ります!
最後には本音の部分と、ファンだった時の目線をふまえての話をたくさんしてくださった日野未来選手でした。
ありがとうございました!
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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