デビューして1年半が経った小泉夢菜選手(埼玉122期)。昨年2023年は1年を通してレースを経験しました。どのように感じたのか、また今年はどんな目標を持ってレースをしていくのかを伺いました。
山口みのり:去年は初めて1年通して走りましたが、振り返っていかがでしたか?
小泉夢菜選手:デビュー当時と比べるとだいぶ成長できたかなと思います。
山口:優勝も何度もありましたよね。
小泉:一番の思い出は4月のガールズフレッシュクイーンでの優勝です。それによって7月のガールズケイリンフェスティバルの出場権を獲得でき、走れました。フェスティバルでは初めてお会いする選手を含めてトップレベルの選手たちと一緒に走らせてもらって、レースも間近で見て得られるものもすごく多かったです。
山口:悔しさなどよりも充実感の方が大きかったですか?
小泉:自分の中ではできる限りのことはやっていたので、勝てないのは実力不足だし次に向けて頑張らないとなと常に思っています。なので経験は力になりましたし、もっと頑張りたいなと思いました。
山口:昨年は後輩の124期生も入ってきましたが、それによって変化はありましたか?
小泉:少し焦りはしましたが、もともと「3年は苦労するかもしれない」と思っていたので、そこまで特に対策をしたりはなかったです。自分が出来ることを少しずつ頑張っていました。
山口:戦法はデビュー時と比べていかがですか?
小泉:最初は追い込みや捲りがメインでした。それは変わっていないのですが、デビュー時と比べると力はついてきたと感じるので、積極的に動いていこうという意識はあります。実際に「ここからなら仕掛けなきゃいけないな」という時には動けている気がします。
山口:「何をするかわからない選手」と思わせられたらレースもしやすいですね。
小泉:そうですね。「何をするかわからない選手」だと、相手も展開を読みにくいと思うので、そうなれたら良いなと思います。
山口:練習状況には変化はありますか?
小泉:特に変わらずです。バンクに入る時にはグループの皆さんと一緒に練習をして、その他はジムでトレーニングをしています。ジムでは、できなかったことをできるようにするためにトレーニングをやっています。デビュー時は脚だけで踏んで自転車に力を伝えていたんですが、上半身を今ようやく使えるようになってきました。それで、仕掛けたいタイミングで仕掛けることができるようになってきました。
山口:上半身を使えるとどんなところが変わるんですか?
小泉:パワーが自転車に伝えやすくなります。力が伝わりやすくなると、長い距離を踏むこともできますし、ダッシュ力も上がります。それが以前と比べて少しはできるようになってきました。
山口:プロになってから取り入れたトレーニングだったんですか?
小泉:いえ、養成所に入る前から上半身を使えるようにするトレーニングをしていたんですが、養成所時代は決められた練習があったのでそこで一旦中断し、またデビューしてからやり始めました。それが今やっとできるようになったので、ものすごく時間がかかってしまいましたね。まだまだ使えていない筋肉を使うのは大変です。
山口:そうですか。1年以上やり続けてやっと、なんですね。でもやり続けていないとだめですもんね。
小泉:そうですね。後は、同じ練習グループの皆さんも、私がやってきたトレーニングをやり続けて強くなってきたと聞いているので、私も「時間はかかるけど焦らないでやろう」と決めていました。
山口:今はようやく思うようにレースができているんですね。
小泉:はい。でもまだまだ使えていない筋肉が多すぎるので、少しずつ時間をかけてでも、使えるようになったら良いなと思います。
山口:今後はどういうところを鍛えたいんですか?
小泉:やっぱりメインは上半身です。あとは腹筋まわりと広背筋です。広背筋はやっと使えるようになってきたんですが、まだ自転車には伝えられていないのでもっとできたら、更に自転車は進むなと思います。
山口:理想のレースはどんなレースですか?
小泉:私は1着を取ることを目標にレースをしています。デビューして半年間は確定板を目指してレースをしていたんです。でもガールズケイリンフェスティバルが終わってから「1着を取るにはどんなレースをしたらいいのか」を考え、今の私の脚質なら捲りや追い込みが主体なんですが、いずれは先行でも勝てるようになりたいです。まだまだ実力は足りないんですが、少しずつ1着を取れる戦法を増やして「どんな風に走るんだろう」と相手に思わせる選手になりたいです。
山口:戦法にはこだわらず?
小泉:はい、とにかく1着を目指して、ですね。
山口:プロですね!
小泉:仕事なので。賭けてくださっているお客さんもいるので頑張りたいです。
山口:データを見ると、3連対率が8割弱というのは車券に貢献していますね。
小泉:3着以内だと高いんですが、2車単とか、私を1着固定で買ってるよと言ってくださる方もいるので、全然貢献できていなくて申し訳ないなという気持ちの方が大きいです。
山口:お客様からの声も直接届いているんですね。
小泉:はい。直接言っていただけることもあります。そんな時は本当に申し訳ないですね。
山口:期待の表れですね。
小泉:いずれは1着でたくさん貢献できるようになりたいです。
山口:頑張ってください。それでは今年の目標は何ですか?
小泉:完全優勝をすることと、GIに出ることです。
山口:昨年はGIは悔しい位置だったんですよね。
小泉:はい、3つのGIのうち2つが補欠でした。補欠じゃなく今年は正選手として選ばれて走りたいです。
山口:『オールガールズクラシック(GI)』の選考期間が1月末までですね。
小泉:はい。残り少しなので頑張りたいです。
山口:外から去年のGIを見ていかがでしたか?
小泉:走りたかった気持ちが大きいので、悔しかったです。
山口:ガールズケイリンフェスティバルを走ったからGIも、というのもありますか?
小泉:はい、それはあります。
山口:フェスティバルではどなたかとお話されましたか?
小泉:尾方真生ちゃん(福岡118期)と前検日の前入りで同じ飛行機で「良かったら一緒にご飯行きませんか?」と誘ってくれたんですが、私のホテルと真生ちゃんのホテルが遠くて行けなかったんです。でも開催中も、私が122期で参加選手の中では一番下の期だったので、先輩選手のユニフォームを手伝ったりいろんなことをするんですが、それも吉川美穂選手(和歌山120期)と一緒にしてくれました。122期は私一人だったので大変なのかなと思っていたんですが、たくさん手伝ってくれました。
山口:素敵な話です。
小泉:はい。西の選手とはなかなか一緒のレースになることがなかったので、仲良くなれた気がします。
山口:レースはご自身が走って、または直接見てどう感じましたか?
小泉:フェスティバルに出られると決まってから、練習をしすぎてしまって逆に調子を落としてしまったんです。なので、やり過ぎも良くないんだなと学びました。
山口:そうでしたか。調整は大切ですね。
小泉:はい、走れると決まって気合いが入り過ぎました。ギヤ比もフェスティバルに向けて、以前は3.71から3.79へ変えました。「皆さんと同じレベルで戦えるように」と思って練習したらやりすぎてしまって......。もっと調子を整えていけばもう少し何とか勝負できたのかなと反省です。
山口:初めてのビッグレースでしたもんね。次に繋げていきましょう!
小泉:はい、次に走る時にはしっかり調整をしていきます。
山口:私の印象ですが、小泉選手は勝負強いなと思っています。ガールズフレッシュクイーンもそうですし、デビューのルーキーシリーズも連続優勝でしたよね。
小泉:自分でも勝負強さというのは感じています。これまでも節目だったり大切な時は優勝できることが多かったです。高校生の時も含めて、自転車競技を始めてからそう思うようになりました。
山口:それは強力な武器ですね。
小泉:はい、自分でもそこは武器だと思っています。
山口:緊張しすぎることがない、などですか?
小泉:いや、私は緊張しないと気合いが入らないので、なるべく自分で「よりよい、ほどよい緊張にもっていく」ことを大切にしています。その方が良い状態で走れます。
山口:高校時代からそれは心掛けていたんですか?
小泉:はい。自転車競技を始めてからずっとです。
山口:そのコントロールは素晴らしいですね。プロではより大切そうです。
小泉:はい、そう思います。
山口:オフなどのお休みの日は決めていますか?楽しみなどはできましたか?
小泉:競走の前後は休むようにしているんですが、今度同期ととしまえんのハリーポッターのスタジオツアーに行こうと話しています。楽しみなこともたくさんありますね。
遠征先で後泊の時にはご飯にも行ったりします。野寺楓選手(静岡122期)と、後泊で手羽先を食べました。かなりおいしかったです。
山口:レースもですが、終わった後はリフレッシュもできますね。
小泉:はい、終わったら楽しんでいます。
山口:では、今年の目標を完全優勝と掲げていましたが、より強化していきたいのはどんなところですか?
小泉:自転車にパワーを伝えることですね。
山口:もう、ずっとそれを集中しているんですね。
小泉:はい。一番の課題ですし、やらないといけないことだと思っています。
山口:レース中の位置取りは気を付けていますか?
小泉:デビュー時はかなり位置にこだわっていたんですが、今は後方になったら自分から動こうと思っています。そう思えるようになってきたので、以前よりはこだわらないんですが、それは成長なのかなと思っています。
山口:脚を使ってでも前へ、という気持ちなんですね。
小泉:はい。自分から動こうと思っています。もしそれで捲られたりしてもそれは自分の脚力不足だし、動いた結果なので納得できます。でも自分で仕掛けた方が良い方に繋がることが多いです。
山口:全国いろんな競輪場を走ったと思いますが、得意不得意は出てきましたか?
小泉:ホームバンクが大宮なので、やっぱり500バンクが好きです。走り慣れているし、自分の脚質にもあっていると思います。逆に33は頭を使わないと一気に後方になってしまうので、それこそ位置取りが大切ですね。
山口:ありがとうございます。ではレースへ向けての調整はいかがですか?
小泉:競走へは良い状態で持っていきたいので、練習とマッサージをうまく組み合わせていこうと思っています。
山口:やり過ぎに注意、ですね(笑)
小泉:はい(笑)体調を崩してより悪くするよりは、バランスよく休みも取り入れていきます。
山口:レース中のご声援はいかがですか?
小泉:私は結構ずっと聞こえているタイプなので、レース中でもたくさん名前を呼んで応援してもらえるのは嬉しいなという気持ちです。
あるファンの方が「小泉夢菜」という名前を書いたグッズを持って応援してくれるんですが、それは目に入るので気合いが入ります。しかもその方が私のファンだと一目でわかるので、別のファンの方と交流する機会があるそうなんです。「この前〇〇競輪場で、夢菜ちゃんのファンの人と仲良くなって、それをきっかけに自分も夢菜ちゃんを応援するようになったよ」と、他の方に言ってもらえました。そうやって応援してくださる方が増えるのはすごく嬉しいし、またグッズを持って応援してくれるその方には感謝しています。そういう方のためにも、もっと頑張って期待に応えたいなと思います。
山口:グッズなどで目立っていると、別の方も声を掛けやすいかもしれませんね。
小泉:はい、そうみたいです。嬉しいです。自分も一目で「今回来てくれているんだな」とわかります。
山口:声を出しにくいなという方はグッズを持ってみるのはありですね!
小泉:はい。でも、声も聞こえます。特に名前を呼んでもらう時は聞こえていますから気合いが入ります。
山口:今後は1着を増やして、という話もありましたもんね。
小泉:はい、応援してくださっている方々のためにも頑張りたいです。
山口:ありがとうございます。それでは最後に今年の目標をオッズパーク会員の皆様へお願いします。
小泉:まずはGIを走って良い成績を取りたいのと、完全優勝をできるように、もっと力をつけて練習したいと思います。これからも応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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