8月の京王閣記念(GIII)でS級初優勝を果たした田尾駿介選手(高知111期)。追い込みに転向して約2年で掴んだ栄冠。優勝した時の気持ちや今後の目標などを伺いました。
ナッツ山本:京王閣記念(GIII)優勝おめでとうございます。
田尾駿介選手:ありがとうございます。
ナッツ:1ヶ月程経ちましたが、お気持ちはいかがでしょうか。
田尾:優勝できるとは思っていなかったのですごく嬉しいのと、A級チャレンジ1-2班でなかなか勝てなかった中で、高知の選手やグループの方々がずっと練習に付き合ってくださったことや、家族にも支えてもらったおかげで優勝できたという気持ちが大きいですね。
ナッツ:優勝した直後と今で気持ちの変化はありますか。
田尾:やっぱりその後のレースに行くと声をかけてくれる選手が多くて、これから更に頑張って行かないとダメだなっていう気持ちが強くなりました。
ナッツ:優勝インタビューでお立ち台に上がった時にはもう本当に近くから、沢山のファンの声が飛んでいましたね。
田尾:やっぱり弱い中で優勝できて、あの場面で実感が湧いたって感じですね。お客さんから声をかけていただいて、 僕でも応援してくれてるファンの人もいるんだな、と感じて嬉しかったです。
ナッツ:感情がすごく溢れていたような印象もありました。
田尾:そうですね。まさか自分が本当に優勝できると思ってなくて、A級でも勝てなかったという悔しい思いもある中で、1つ1つこうして克服したからこそ優勝できたのかなっていう感じはありました。しんどかった思いというか、そういうのがあって、支えてくれた人への感謝と、そういうものが重なって。
ナッツ:優勝インタビューでラインへの感謝の言葉も出てましたし、やっぱりあのあたりにすごく、田尾選手の人柄が出ていたと感じました。
田尾:後ろに付いていても、なかなか前の頑張りに応えられないこともやっぱりあるので、決勝も含め、前の選手が頑張ってくれました。本当は康平(久米康平選手・徳島100期)と一緒に決勝に乗りたかったので、決勝に乗れて嬉しい気持ちも申し訳ない気持ちもありました。
ナッツ:レースに関しても少し振り返っていきたいのですが、まずは記念を迎えるにあたっての状態面はいかがでしたか。
田尾:その前の岸和田に関しては自分でも捲ることが出来ていたので、良い状態では迎えられたかな、とは思いました。特に脚力が上がっていたとか、そういうことではなかったのですが状態は良かったです。
ナッツ:初日特選に関しては、河端朋之選手(岡山95期)マークでの戦いでしたがいかがでしたか。
田尾:苦しい流れでしたが、自分の踏んだ感覚は結構良かったです。しっかりと追走はできていたので、悪くはないかなって。
ナッツ:河端選手に関しては、今までの連携実績はいかがですか。
田尾:3回程ありますね。離れることもあったのですが、抑え先行の時は僕が1着になったこともあって僕的には相性がいいと思っています。(笑)こないだの向日町でもおめでとう、って言ってもらえましたし嬉しかったです。
ナッツ:そして2日目と3日目に関しては、先ほどもお話にあがっていた久米選手マークでの競争でしたが、改めて田尾選手にとっては久米選手はどういう存在ですか。
田尾:同級生ですし、高校の時から同じ地区の自転車部で一緒にやっていて、康平が先にプロになって活躍していたので、 早く追いつきたいという気持ちもありますし、自力選手としてやっぱり四国への貢献度がすごく高いと思うので、尊敬している選手の1人ですね。
ナッツ:その中で3日目に関しては、久米選手が早めに一気にスパートして主導権を奪う展開でしたが付いていていかがでしたか。
田尾:康平が残り2周回の2センターの時にカマしたのですが、ダッシュタイプなので離れないように集中して付いていました。その後すぐ窓場(窓場千加頼選手・京都100期)が来たので、そこはブロックしたかったんですけど、窓場のスピードがすごく良くて、自分の技術のなさで康平が7着まで沈んでしまったので申し訳なかったですね。
ナッツ:そして決勝は中四国勢4車になりましたが、並びはすんなり決まったのでしょうか。
田尾:そうですね。室井さん(室井健一選手・徳島69期)も「中四国でしっかり4番手固めようか。俺の前回れよ。」って言ってくれて、僕は3番手を回してもらえることになりました。
ナッツ:前を回ったのが久保田泰弘選手(山口111期)で、久保田選手も同期という間柄ですがその辺りはいかがですか。
田尾:久保田も今はマーク選手に変わってすごく強いので、同期で目標とする選手の1人でもありますね。彼のレースも毎回見てチェックしていて、レース中の動きとか、自分にはない良いところを持っている選手なので、久保田が河端さんの番手で、しっかり後ろからの動きも止めてくれるだろうなと思いながらついてましたね。
ナッツ:その中で迎えた決勝戦。車番が悪い中後ろ攻めとなりましたが、作戦としてはいかがでしたか。
田尾:僕のところか室井さんのところで絶対粘られるだろうなと思い、 そこはしっかり対応しようと思っていましたね。
ナッツ:やはり地元の鈴木竜士選手(東京107期)が粘ってくるだろうと思われている方も多くいましたが、その辺りは事前に頭に入れてという感じですか。
田尾:そうですね。もう併走になったらそこで負けないようにと思っていました。
ナッツ:その中で打鐘のあたりがポイントだったように思われますが。
田尾:そうですね。やっぱりあの3コーナーの辺りですね。あそこで少しでも油断したらやられると思ったので、締めて回って、上手く対応できたことが勝因かなと。
ナッツ:その3番手を守った後、真後ろに鈴木選手が入ったっていうのは結構プレッシャーも感じそうですが、その辺りの対応はいかがでしたか。
田尾:後ろに鈴木君がいるのわかったんで、内は絶対にあけないぞと。そして捲ってきたら久保田が止めてくれる、そう思っていました。
ナッツ:田尾選手からすればしっかり3番手の仕事をしようと。
田尾:そうですね。もし被ったら内を踏もうと思っていましたが、窓場と鈴木の捲りも僕の横までだったので、あとは直線は外を踏ませてもらいました。
ナッツ:その直線、ゴールした瞬間は1着の確信はありましたか。
田尾:1着かな、とは思ったんですけど、ビジョンだったり周りの選手と確認しあって、そこで自分が優勝したのが分かってガッツポーズが出ましたね。(笑)
ナッツ:このS級での初優勝を記念競輪で成し遂げるっていうところが本当にすごいなと感じます。
田尾:運がいいと思います。恵まれて、というか本当に周りの方々のおかげですね。
ナッツ:優勝した後の周りの反応はいかがでしたか。
田尾:LINEがすごくて100通くらい来ましたね。それを返していたらもう朝になりました。(笑)
ナッツ:100通はすごいですね。ご家族とは何かお祝いはされましたか。
田尾:ちょっと外食に行ったぐらいですが、「お疲れ様」って感じで、特別何かする、とかではなかったですね。あとは師匠の篠原さん(篠原龍馬選手・高知89期)と小原さん(小原周祐選手・高知99期)、山原親子(山原利秀選手・高知63期、山原さくら選手・高知104期)とも祝勝会をしました。あとは特に物欲もないので、画面が割れていたiPhoneを買い替えたくらいで。(笑)もう変わったことはせず、いつもと変わらずやるべきことやるという感じで過ごしましたね。
ナッツ:そのあたりは普段から意識してるんですか。
田尾:そうですね。落ち込んだり、喜んだりを毎回せずに、やっぱり気持ちを安定させていくことが大切だなと。
ナッツ:そして田尾選手と言えば、元々は自力で戦っている中で、早くから追い込みに転向した印象がありますが、そのきっかけは何かあったのでしょうか。
田尾:元々自力がガンガンあるタイプでもなくて、師匠からも「お前は自力ではちょっと厳しいかもしれん」みたいな感じで言われて、自分でも練習している中でもこれは追い込みに変わった方がいいな、そっちの方がやっぱ持ち味が発揮できるなと思って、もうすぐに変わろうと。自分が得意なところを出すにはそれが1番いいのかなと感じたことが大きいですね。
ナッツ:S級に上がって印象に残ってるのが、函館記念で橋本智昭選手(宮城99期)の番手の伏見俊昭選手(福島75期)のところを取り切って、というレースがインパクトがありました。
田尾:追い込みに転向しようとしたのはそこからですね。そこから、もう中途半端にするのはやめようと思いました。先行の力のある選手の番手で競ろうと思って、その時野本さん(野本翔太選手・高知91期)にも許可をいただいたので頑張ろうかなと思って番手にいきましたね。
ナッツ:そこで自分が追い込みに向いてるというか、こっちの方がいいなっていうような。
田尾:その時点ではまだまだ厳しい環境でしたけど、徐々に慣れて、レースも安定してきた感じですかね。最初から出来ていたわけではないので、まだ技術不足なんですけど、少しずつ良くはなってるかなと思います。
ナッツ:本当に少しずつ追い込みの力を上昇させていったからこその今回のタイミングでの優勝という感じもしますが。
田尾:それも自力選手の頑張りですね。僕も番手を回らせてもらうことがやっぱり多いですし、先輩にも3番手を固めていただいているので、責任を持って自分ができることをしっかりやろうと思っています。これから更に求められるものは高くなってくると思うので、責任感がありますね。
ナッツ:その中で田尾選手が目標とする追い込みの選手はどなたかいらっしゃいますか。
田尾:そこはやっぱり徳島の小倉さん(小倉竜二選手・徳島77期)ですね。横にも強くて怪我もしにくいというのが追い込みとして凄いですし、もちろんタテもあるので。
ナッツ:実際、小倉さんとお話しするような機会もあるんですか。
田尾:追い込みに変わるというか、これからどうしたいかと考えていた時に少しアドバイスいただいたりはしましたね。あとは開催中に声をかけていただくこともあります。
ナッツ:その中で普段はどのような練習を。
田尾:やっぱり自力脚が強くならないと仕事もできないし、今中四国の自力選手もめちゃめちゃ強いので、まずは追走の部分からしっかりできるように取り組んでいますね。
ナッツ:そして今回はGIII初優勝ということで、GIである競輪祭の権利もゲットしました。ビッグレースに対しての意識はいかがでしょうか。
田尾:11月に競輪祭(GI)に出られるのはもちろん嬉しいですし、そこを目標にはやっていこうと思ってるんですけど、まだまだ力が足りないので、まずはしっかりと内容を求めてやっていきたいですね。
ナッツ:それこそ今回優勝した時のように、1つ1つ課題をクリアしていく上でビッグでも戦えるような存在にということでしょうか。
田尾:そうですね。そこはしっかりとやっていきたいですね。そしてあとは地元記念ですね。今年の4月の地元記念は2次予選で犬伏選手(犬伏湧也選手・徳島119期)に離れてしまったこともあるので、まずはしっかり地元記念でも決勝に乗りたいなと思います。
ナッツ:では最後にオッズパークをご覧の皆様に一言メッセージをお願いします。
田尾:今後GIのような大きな舞台で活躍できるように、これからも少しずつですが強くなっていけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一年発起し脱サラ。今年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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