デビュー戦の四日市・ルーキーシリーズで見事優勝を飾った東美月選手(兵庫124期)にお話を伺いました。スケートからの転身ということで、選手を目指したきっかけやここまでの振り返り、今後の目標を聞いてみました。
山口:まずは選手を目指したきっかけは何ですか?
東美月選手:もともと高校までスピードスケートをしていて、大学進学と同時に違うスポーツをやりたいなと思っていました。高校生の時に、親のすすめでガールズサマーキャンプに参加し、自転車に乗るのは楽しかったと思い出して始めました。
その時点ではプロになりたいとは思っていなかったんですが、父が自転車の練習環境を探してくれている中で、通っていた接骨院の先生に師匠の澤田義和選手(兵庫69期)を紹介していただきました。「自転車競技をやろうかな」という軽い気持ちだったんですが、澤田さんと最初に練習させてもらった時に「選手を目指すなら本気でやらなあかんぞ」と言われて流れのままに選手を目指しました(笑)
山口:急展開!(笑)
東:最初にプロの方を紹介していただいたので、そういう流れになりました。でも練習をしていくうちに強くなっていくのが楽しくて一生懸命練習しました。だんだん「好きな自転車を職業にできたら良いな」と思うようになったので、今となっては良かったです。
山口:流れにのったら良い方向へいったんですね(笑)
東:そうですね。流れにのっていきました(笑)ガールズケイリン選手に絶対なる!という強い気持ちもなく、そもそもそこまで自転車、競輪というものを知らなかったので、勢いもありますね。
山口:それがまだ2年ほど前ということですよね。
東:そうですね。大学1年からアマチュアをやり、2年生の年に試験に合格して、3年生で大学を休学して競輪選手養成所に入りました。
山口:澤田選手と出会ってからすごいスピードで動いていったんですね。
東:はい。高校でスケートをやっていて、ぼんやりと「次は何をしようかな、何がしたいだろう」とあやふやだった時があったので、自転車に出会えて「もっと強くなりたい」と思えました。
一般的に大学生の頃は、たくさんの人が「将来何をしたいか、どう働くか」を迷う時ですが、私も明確に何がしたいかと決められない時期に自転車と出会い、競輪選手という職業があると知り、運命を感じたというか、「競輪に挑戦してみよう」と道が開けたのは嬉しかったです。
山口:プロとしてお金が稼げるというのもやってみようと思った理由の一つですか?
東:はい、そうですね。私は自分が普通の会社員をやっているのは想像ができず、スポーツ関係の仕事をやりたいかなと思っていたので、そこでガールズケイリンと出会えて良かったです。
山口:自転車経験のない中の養成所生活はいかがでしたか?
東:とても楽しかったです。兵庫は今ガールズケイリン選手がいなくて、たくさんの女子と一緒に練習する機会はなかったので楽しかったですね。もちろんきついこともありましたが、練習環境が整っていたので充実した1年間でした。
山口:基礎的なことも訓練できたんですね。デビュー戦のルーキーシリーズ・四日市ではいきなり優勝を手にしました。卒業してデビューまでの間はどんな練習をしたんですか?
東:男子選手に追走してダッシュもがき、というのを中心にしていました。アマチュアの時は男子選手と一緒に練習してもついていけなかったんですが、卒業をしてからは兵庫の練習環境に慣れ、男子選手についていけるくらいスピードを上げられるようにを第一の目標にしていました。徐々についていけるようになり、一緒にもがき合えるようになったので成長しているのかなと思います。
山口:デビュー戦・四日市は(3・2・➊)と優勝されました。振り返っていかがでしたか?
東:決勝は車番も良くて位置取りもうまくいったので、最後まで体力を温存できました。力を出すところで出せて、ゴール前で強い竹野百香さん(三重124期)を差せたのは良かったと思います。優勝というのは良い経験になりましたし、「次は自力を出して勝ちたい」という新たな目標が見え、より頑張ろうと思えました。
山口:最後3コーナーからは狭いコースをいきましたね。
東:自分でも「よくあそこにいけたな」と思います(笑)雨が降っていて、前も見えにくかったのに必死でしたね。先輩方にも「よくあんな狭いとこ通ったな」と言われました。
山口:内も外もいて、真ん中の隙間を追い込みでしたね。あのコースいける方はガールズでは少ないと聞きます。
東:はい、ここしかない!と思って踏み、ギリギリを通り抜けられました。
山口:振り返りをありがとうございます。ではルーキーシリーズを終え、本格デビューまで1か月ありました。その間はどう過ごしましたか?
東:1か月あったので、練習に身が入っている時とそうでない時の差がありました。コンディションを整えるのが難しかったですね。
山口:短期目標があった方が練習がしやすいタイプなんですね。
東:7月からはレースが次々とあって、その方が目標がたくさんあるので頑張れる気がします。練習期間は短いですが、レースも一走一走に学びがあるのでもっとたくさん走っていろんな経験をしたいです。
山口:自転車経験が少ない分、実践でもたくさん学びがあるんですね。
東:ルーキーシリーズと本格デビュー後でレース展開やスピードなど違いもたくさんあるので、まだ苦戦しているんですが、都度反省をしつつ、経験を積み重ねて成長していければなと思います。
山口:ルーキーシリーズと本格デビュー後、どこが一番違うと感じますか?
東:ルーキーシリーズは、1年間一緒に競走訓練をしてきた同期なので、どういう選手なのか知っていて慣れています。先輩たちは走りもわからないし、スピード感覚も全く違います。ルーキーシリーズの方がややゆっくりでしたが、7月からはスピード感覚が違いすぎてレースについていくのもやっとでした。自分でレースを動かしていくこともなかなかできなかったので、少しずつできれば良いなと思います。
山口:いきなりトップ選手との対戦ですもんね。
東:デビュー戦の大垣でいきなり7着・7着を取ってしまい、正直メンタルがやられてしまいました。でも自分はルーキーシリーズでは優勝させてもらいましたが、一気に成長をするタイプではなく地道な積み重ねが結果に繋がっていくタイプだと思うので、一戦一戦、少しでも前へ進んでいきたいです。「7着7着でも最終日は確定版へ」など小さな目標を少しずつクリアしていきたいです。
山口:レース間隔が詰まっている方が良いですか?
東:そうですね。間隔が空くと緊張感も増します。今は数をこなしていくしかないですね。いっぱい走りたいです。
山口:2戦目・前橋の最終日は捲っての本格デビュー後、初1着がありました。自力が出せましたね。
東:自分でも展開がハマったなと思ったレースでした。養成所の訓練でも、捲りは不発になることが多くて、あんなにきれいに捲りきれたのは気持ち良かったです。
山口:かなり後ろを離して(4車身差)の1着でしたもんね。自信になりましたか?
東:はい、今度は予選で出せるようになりたいです。
山口:青森の最終日は五味田奈穂選手(千葉124期)と長い距離のもがき合いがありました。
東:先行をする予定ではなかったんですが、レース後にVTRを見た時に、長い距離を自分が外で踏み合って、2着に残れたので良かったのかなと思いました。前に出られなかったのは反省なんですが、最後まで負けずに踏み合えて残れたのは収穫があったかなと思います。
山口:お話を聞いて本当に一つ一つが力になっているんだなと感じました。今の目標は何ですか?
東:一番の目標は、オッズパーク杯ガールズグランプリに出場することです。直近だとガールズフレッシュクイーンの出場を目指しています。競走得点はまだ低いんですが、少しずつ上げていって出場したいです。
山口:そういう意味では『競輪ルーキーシリーズ2023プラス(京都向日町競輪にて)』へ選出は一歩目標に近づいたのでは?
東:そうですね。選ばれた選手たちはみんな強いので、その中で自分がどんなレースをするか、もう少し時間があるのでじっくり考えたいと思います。
山口:地元地区の京都向日町ですね。走ったことはありますか?
東:昔に走ったことはあります。久しぶりに走れるのも楽しみですし、勝ちたいですね。
山口:他の選手たちの印象はいかがですか?
東:自力が強い選手が多いです。自分も自力なのかそれとも自在なのか、いろいろ考えて臨みたいです。
山口:今後の戦法はどんなイメージですか?
東:なんでもできるようになりたいので、全ての決まり手に数字を付けたいです。レースの展開によって自在に動けるようになりたい、というのもありますし、今はまだ自分に何があっているのかハッキリしていないので、いろいろ試したいです。一番得意なものを見つけていけたらなと思います。
山口:ではレースのお話とは違う話題を伺います。先ほど大学は休学して養成所へということでしたが、復学されたんですね。
東:はい。養成所を卒業して4月からは、練習と大学を両立しています。
山口:忙しいですね!
東:宿題や学校でバタバタしています。先生方と相談して、調整もしてもらっているんですが、行ける時はなるべく行って両立するようにしています。今は8月で夏休みなので、競輪に集中できてほっとしていますが、9月からはまた授業が始まります。忙しいんですが、頑張ろうと思います。
山口:オフの日はどうですかと聞こうと思ったんですが、学校があるんですね。
東:そうですね。大学生なので、学業もしっかり頑張っています。競輪に繋がることを学んでいるので活かしていきたいです。
山口:差し支えなければ、どんなことを学んでいるか教えて欲しいです。
東:スポーツ学部です。ゼミでは競輪のことを研究しているので、練習はもちろん走りに繋がりますが、スポーツ科学のような専門的なものを学びそちらも競輪に繋げていきたいです。
山口:賞金は何に使いましたか?
東:学費ですね(笑)
山口:そうですよね(笑)
東:自分で払っているので、今後の授業費を貯めつつ、それ以外の残った分を服やコスメを買っています。
山口:両立してますね。
東:まだ学生というのは変わらないので、ブランド物とか大きい買い物は卒業してからです(笑)
山口:頑張ってください!では目標とする選手はどなたですか?
東:奥井迪選手(東京106期)や児玉碧衣選手(福岡108期)です。レースを動かせる選手になりたいので、お二人は目標です。児玉選手は先日もガールズドリームレースで逃げて優勝されていて、かっこよかったです。どのレースも自力を出して勝っているので、そういう選手になりたいなと思いました。
山口:今の練習環境はどんな感じですか?
東:師匠や男子選手と一緒に練習させてもらっています。今はガールズがおらず実践的な練習ではないのですが、いずれは他の県のガールズの所へも出稽古へ行けたら良いなと思います。今は兵庫の練習環境に慣れて強くなりたいです。
山口:バンク中心ですか?
東:はい、明石に競技場があるので、そこをメインに練習しています。
山口:フレッシュクイーンへというお話は出ましたが、今後の目標を改めて教えてください。
東:まだまだレースでは自力を出せていなくてビビっているところもあるので、早くレースに慣れて自分で展開を作っていける選手になりたいです。
山口:では最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
東:確定版にのれるように、自力を出して全力で頑張ります。応援よろしくお願いします!
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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