連日、スタンドから大きな歓声が湧き上がった奈良競輪・開設72周年記念春日賞争覇戦(GIII)は地元の三谷竜生選手(奈良101期)の優勝で幕を閉じました。地元記念を5年ぶりに制覇、しかも完全優勝を果たした三谷選手にシリーズを振り返っていただきました。
大村:地元記念の完全優勝、おめでとうございます。
三谷:ありがとうございます。
大村:GIII参戦の前に昨年末の小倉から続き、1月は3場所(豊橋・松戸・京王閣)連戦を経ての地元記念でした。
三谷:そうですね。(1月の連戦は)決まっていた開催でしたし、しっかり走れた実感はありました。記念直前の京王閣は優勝できたので、コンディションは良くて手ごたえを感じていました。練習も普段通りにしました。何日か凍結でバンクに入れないことはありましたが他にもやれることはありますし、調整面は問題なかったですね。
大村:そして今回はお兄様の三谷将太選手(奈良92期)と同じあっせんでした。
三谷:兄弟でのあっせんは気合が入りますね。5年前の記念優勝では兄とワンツーできてとても嬉しかったです。今年は獲りたい、獲れる状態で地元記念に入った分だけ気持ちも違っていました。
大村:仕上げて臨んだ地元記念の初日の番組をごらんになっていかがでしたか?同期の山本伸一選手(奈良101期)と同じ番組でした。どちらが前を回るかという話しあいはありましたか。
三谷:伸一さんがケガ明けでしたし、僕もまだまだ自力でやっていますし。選択肢というよりも僕が前を回る考えしかなかったですね。
大村:その自力=捲りでまずは一次予選を1着で突破しました。捲りが決まりだしている、というのはすでに昨年から専門紙やプレスの話題にも上がっていましたね。
三谷:ええ。とはいえ去年はまだ結果が出て・・・って迄はいかなかったんです。けれど調子が上がってきて、良くなっていた感覚はありましたね。
大村:初日が終わって、脇本雄太選手(福井94期)が途中欠場されました。
三谷:うーん。腰痛が出てるのは聞いていたんですが・・・、正直なところ予想外でした。けれどそれは本人の走れるか走れないかの判断ですから・・・。一年を通した戦いもまだまだ始まったばかりですし残念ではありましたけど、彼自身としてもしようがなかったのでしょう。
大村:さて明けて迎えた2日目。このあと最終日の競走までラインの先頭を回る中西大選手(和歌山107期)の番手でした。
三谷:大(中西選手)が頑張っているのは見ていましたし、これまでも何度も連携があっていつも頑張ってくれるので信頼して任せました。
大村:レースは近畿ラインの初手は中団でした。まず後方の渡口選手(渡口勝成選手・山口119期)からの中国ラインが赤板ホームで金子選手(金子幸央選手・栃木101期)を抑えました。中西選手が仕掛けたのは2コーナーでした。
三谷:後手に回らないように仕掛けてくれましたね。
大村:最終HSでは諸橋選手(諸橋愛選手・新潟79期)のけん制と飛付くような動きがありました。
三谷:そうですね。諸橋さんの動きはレースの中でも見えていました。直後に金子君が発進して、大(中西選手)が合わされそうになったのを見た上でこの後はどんな風にも対応できるように準備しました。
大村:最終的には三谷選手が自力にシフトチェンジなさいました。これも道中の選択肢にあったんでしょうか。
三谷:いえいえ。番手を回る、大(中西選手)に任せる以上は何よりしっかりと付いていくことが一番大事です。(二次予選は )金子君がサラ脚からの捲りだったのもあり、状況判断からやむを得ずに踏みました。
大村:2日目の12レースでは古性選手(古性優作選手・大阪100期)が失格しました。脇本選手と古性選手が途中欠場となり、特に地元ファンの皆さんが三谷選手にかける期待が一層大きくなったと思います。
三谷:連日ファンの皆さんに来場していただいて応援していただいて、声援も大きくなっていましたから、そういうプレッシャーはもちろんありました。
大村:そして連勝で3日目を迎えました。つづく準決勝も中西選手と一緒でした。
三谷:ええ。もちろん迷うことなく再度任せました。
大村:レースは残り2周で前団が先頭の晝田選手(晝田宗一郎選手・岡山115期)と後方から仕掛けた飯野選手(飯野祐太選手・福島90期)でもつれました。
三谷:そうですね。あの展開で晝田君と飯野さんで前がゴチャゴチャっとなったのは見えていました。
大村:そこからは飯野選手が下がると同時に中西選手が捲って、ゴールは三谷選手の絶好でした。
三谷:大(中西選手)はこれ以上ないタイミングで仕掛けてくれました。展開も向きましたし、おそらく2日目みたいにならないように行こうとイメージしていたんだと思います。
大村:そして迎えた最終日でした。ここまで3連勝、優勝は意識されましたか。
三谷:3連勝で(決勝へ)来れて近畿勢4車で上がれて正直なところ優勝も見えてきた。もうここまでくれば完全優勝を目指そうという気持ちで走りました。
大村:お話しにありました近畿勢4車のメンバーの中西大選手・山田久徳選手(京都・93期)・栗山俊介選手(奈良103期)との並び順は?
三谷:いろいろ話をして決めました。特に北日本ラインが二段掛けの並びになるだろうという予想をしながら僕らも並び順を考えましたね。
大村:いよいよ決勝戦。近畿ラインの初手は前団ではありませんでした。
三谷:北日本ラインに前を取られてしまったんですが、それでも中西がここしかないってタイミングで行ってくれました!それによって大につづいて久徳も出やすい流れになったんだと思います。栗山が後退して結果的に近畿4車で出切ってしまえなかったんですけれど、ともかく前にしっかり付いていくことを考えて走っていました。
大村:そして新田選手(新田祐大選手・福島90期)の捲りが来ました。このときの感覚はいかがでしたか?
三谷:残り2周からスピードが相当上がっていて、それでも来るんだな、凄いなと感じました。(新田選手の)準決勝の走りは見たことがないような逆転劇でしたから。でも新田さんの準決の捲りを見たので、どんな流れでもどこからでも必ず来るぞというイメージを事前に持って決勝を走れました。
大村:迫った新田選手を三谷選手は2コーナー過ぎにブロックしました。
三谷:あの瞬間は本当に体が考えるよりも先に反応しました。それでも新田さんは止まらなくて、むしろさらに力強く踏んでいて・・・。だったらもう出るしかない!となって踏みました。
大村:3コーナーを超えてのちに佐藤選手(佐藤龍二選手・神奈川94期)が切り替えて三谷選手の後ろに変わりました。
三谷:もうあの時は後ろは見えていなかったですね。目の前のゴール線をめがけて走りきるんだとしか考えてなかったです。
大村:そして完全優勝のゴールインでした。ゴール後は何度もガッツポーズが出ましたね。
三谷:そうですね。地元記念はやっぱり特別な想いがありますから、嬉しかったです!嬉しさといっしょに込み上げてくるもの、気持ちがそのままガッツポーズになりましたね。
大村:今回の地元記念は三谷選手ご自身からもラインのお蔭、ラインのチカラというお話がありました。その中で三谷選手自身の力も充実していたように見えました。
三谷:うーん。まぁ、調子のいい状態で地元記念を走れましたね。緊張がある中でも、余裕があったというか。緊張してプレッシャーも抱えた4日間でしたけどそれでも力を出し切れたなという実感はありました。
大村:優勝インタビューではグランプリへの想いも出ました。
三谷:競輪選手として走る以上はグランプリを走りたい、勝ちたいという気持ちは強いですね。ここ数年はGIやグランプリが遠のいていましたけれど常に目標はグランプリを走って勝つことですし、そこへ向けてしっかりと頑張っていくことが大事なんだと思っています。
大村:優勝のあと、お兄様とはどんな話をされましたか。
三谷:兄からは「さすがやな!やったな!」と言ってもらえました。「優勝しなければならないレースでしっかり結果を出したのは良かったぞ!」とも言ってくれました。
大村:完全優勝を経て、これからに向けたお気持ちはいかがですか。また新しい取り組みはありますか。
三谷:そうですね。今年に入って結果が出せているので特別競輪・ビッグレースでも同様に結果を出せるようにしていきたいですね。新しい取り組みは・・・特にありません。どちらかというと今までやってきたことがコンディション・調子の上昇につながっていると思いますし、普段(の練習)から今なにかを変えるつもりはありません。積み上げてきたモノに更に積み上げていくことで一戦一戦をより良いものにしたい、結果を出したいというのが現状です。
大村:普段の練習はどのようになさっていますか。私やファンの皆さんにとって"普段の練習ってどんなのだろう"という疑問がありまして・・・。また息抜きの時間はどんな風に過ごしていますか。
三谷:僕らの場合は朝はバンクに入って仲間と練習しています。昼からはバイク誘導とか。あとは自転車について、又いろんな競輪場を走った感想やお互いに気づいたことを話しあったりしますね。それから息抜き・・・ですか?難しい質問だなぁ(笑)
今は一日中競輪場にいますから。まぁたまにゲームするぐらいかな?
大村:お答えくださってありがとうございます。ところで昨年から調子が上がったきっかけは練習の中から生まれたんでしょうか。また情報交換の中で印象に残ったものは?
三谷:皆で練習する時間が増えたのは影響があったと思います。大型感染症の心配がピークのときはどうしても個別の練習になりがちでした。練習仲間でお互いを刺激しあえる環境は大きい。それと・・・印象に残った情報交換ですか?けっこう昔の話にはなるんですがワッキー(脇本選手)が奈良に練習にきてくれた時があって、当時ナショナルチームではこんな練習や調整方法をしているとか聞けたのは憶えています。
大村:脇本選手のお話が出ました。2018年は脇本選手との連携で2つのタイトルとグランプリ制覇でした。今の脇本選手の強さについてはいかがですか。
三谷:去年のグランプリから今年に入ってのレースを見ているとこれまでにない、強いなと思わされる走りです。それでも回れる機会があればしっかり付いていきたいですし、抜けたら優勝に近い位置ですからね。
大村:さて特別競輪といえば次回は高知・全日本選抜ですね。高知バンクのイメージはいかがですか。
三谷:特殊なバンクって印象がありますね。500バンクですけど捲りが効くわけでもない、かといって先行(先手ライン)が必ず残るわけでもないし。難しいバンクだなと思います。
大村:全日本選抜へ向けた意気込みをお聞かせください。
三谷:今年は初日に特選を走れるので、まず初日に向けて。そして二次予選、準決勝、決勝へ進めるように、結果を出せるように頑張ります。
大村:今日はご対応頂いてありがとうございました。最後にファンの皆さまへメッセージをお願いします。
三谷:はい。今回の地元記念はお客様からのたくさんの声援と拍手が結果に、完全優勝につながりました。ありがとうございました!これからも応援していただけるように頑張っていきたいです。よろしくお願いします!
ここ数年は"なかなか波に乗れない"と評されながらも諦めずに上昇のきっかけをつかんだ三谷竜生選手。
雌伏の時を終え、いよいよ飛翔の刻を迎えたようです。地元記念の後は全日本選抜、ウィナーズカップのビッグレースに参戦予定です。これからの三谷選手の活躍から目が離せません。
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※インタビュー / 大村篤史(おおむらあつし)
2012年4月から小倉競輪場を中心にレース実況を担当。名前と同様の"熱い"実況スタイルでレースのダイナミズムを伝えることが信条。2022年7月からは小倉ミッドナイト競輪CS中継の二代目メインMCとしても出演中。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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