1月に行われた豊橋記念で優勝し、今年は良いスタートを決めた吉田敏洋選手(愛知85期)。昨年は3場所連続の落車に辛い時期もあったといいます。そこを乗り越えて手にした勝利。その豊橋記念の振り返り、そして、中部地区のリーダー格として、このあと迎える全日本選抜競輪(GI)に向けての気持ちも伺いました。
星野:豊橋記念 優勝おめでとうございます。
吉田:ありがとうございます。
星野:2018年3月の名古屋記念以来、3回目の記念制覇でしたが、いかがでしたか?
吉田:ラインの先頭で走るレースは1日もなかったんですが、まずは決勝戦に勝ち上がるためにどう戦っていくのかを考えて、自分で勝ち上がりを作っていけた開催だったと思います。過去に名古屋記念を2回優勝して今回で3回目ですが、ここまでやってきたこと、考えてきたことが間違ってなかったんだと、達成感も感じています。
星野:では、その開催を初日から振り返っていただきたいんですが、まずは竹内雄作選手(岐阜99期)との連携でした。緊張するとおっしゃっていましたがいかがでしたか?
吉田:雄作とは今回参加していた他の自力選手と戦ってきた歴史が違うので、その点での緊張感がありました。竹内イコール先行というブランドが彼にはあります。それだけに、下手なレースは出来ませんから。結果、ラインで決まるレースになって良かったと思っています。
星野:そして、2日目は松浦悠士選手(広島98期)との連携で、意外だなという印象を受けました。
吉田:そうですね。過去、近畿地区の選手についた事はあるんですが、それ以外の地区の自力選手につける事はなかったので、正直どうしようか迷いました。岡村(岡村潤選手・静岡86期)も同じ位置を主張していたので、自力で戦う選択肢もあったんですが、やはり地元の開催ですし、勝たないといけないレースだと分かっていたので、松浦の後ろを選択しました。
星野:レースは近畿勢が先行して、松浦選手が巻き返す展開になりましたね。
吉田:あの日は雪もちらついて、気温も低く、冬の豊橋の風は暴力的に強くて、あの松浦でさえホームで行こうとしていましたが、行けなかった程でした。 結果、2コーナー辺りから松浦は踏み上げて1着でしたが、自分は踏み出しに遅れて、厳しい展開から最後は何とか3着に入れたかなという感じでした。
星野:このレースは地元の開催への強い気持ちも感じました。
吉田:そうですね。勝ち上がらないといけない所で勝ち上がれましたし、ここを乗り越えた事で気持ちも楽になりましたね。
星野:そして、準決勝戦、決勝戦は浅井康太選手(三重90期)を目標にしてのレースでしたね。
吉田:準決勝は浅井でダメなら仕方ないくらいの気持ちでマークしていました。この時点で愛知勢は自分しかいなかったので、とにかく、愛知のみんなの気持ちを背負って、決勝戦に行くことだけを考えていました。
星野:決勝戦のメンバーには愛知支部から静岡支部に移籍した深谷知広選手(静岡96期)がいました。今まで一緒に戦ってきた選手と別線勝負というのはどうだったんですか?
吉田:自分が自力の戦いだったら、思う所もあったろうし、意識もしていたかも知れませんが、マークの競走だったので、そこは考えずに走れました。それが、逆に良い成績になったのかと思います。とにかく浅井の動きに集中しようって感じでしたね。
星野:ゴールした瞬間はいかがでしたか?
吉田:豊橋はホームバンクではないんですが、同じ愛知で準地元ですし、嬉しかったですね。それに、苦しい位置になりましたが、一か八か行ってくれ、スピードに乗せてくれた浅井のおかげだと思っています。
星野:昨年は9月の共同通信社杯競輪での落車から3場所連続でアクシデントがあり、大変な時期もあったと思いますが。
吉田:1回ずつのケガは大したことなかったんですが、3場所連続となるとダメージが回復するまでに次のダメージが来て、どんどん上書きされていく感覚がありました。昨年末までは状態を戻すことを優先して走っていましたが、やっぱり違和感はありましたね。
星野:そのなかで、12月末の広島記念は決勝戦へ勝ち進みました。
吉田:広島記念に入るまでは手応えもなかったんです。最高の結果とはなりませんでしたが、ここで決勝戦に乗れた事で少し安心して年末年始を過ごす事ができました。今思えば、これが良かったのかなと思っています。
星野:そこで気持ち的にもリフレッシュ出来たんですか?
吉田:お正月にレースがなく家にいるのも久々だったので、どこに出かけることもなくゆっくり過ごしました。いつもはオフの日でも、自転車の事を考えたり、何かと競輪が頭から離れなかったんですが、めずらしく完全に頭の中もオフになりました。それが良かったんでしょうね。お正月が終わったら、年末まで苦しんでいたものがなくなりました。体は100%戻っていないんですが、気持ちの面で上向いて、その中で豊橋記念を迎えられたのが優勝に繋がったのかなと思います。
星野:さて、中部地区ではリーダー格としてまとめて行く立場だと思いますが、今の中部地区を吉田選手から見ていかがですか?
吉田:グレードレースに行くと、他地区に比べ人数も少ないですし、若い選手が出てきても、伸び悩んでいる所があります。やはり、自分の中では山口幸二さん(岐阜62期・引退)に教えていただいた影響が大きく、怒られた事もたくさんありますが、今の自分がここまでやって来られたのは、その教えがあったからだと、この年になって特に実感しています。だから、それを若手にも伝えていかないといけないなと。でも、自分達が教わってきた時と今は時代も違う。指導する立場として、そこをどう接していくのか、今後の課題ですね。その為にも、若手とのコミュニケーションも大切にしてアドバイスをしないと、本当の意味での理解は出来ないと思います。
星野:時代や世代というところを考えると難しい所がありますね。そんな状況の中で、2月には全日本選抜競輪(GI)がやってきます。
吉田:開催メンバーを見ると、中部地区は人数もですが、自力選手も少ないので、自分がラインの先頭で戦う事が多くなると思います。他地区の若手相手にどこまでやれるか、中途半端な気持ちでは太刀打ちできない。そこは20年やってきた経験値と年齢と走ってきた本数でカバーして、使えるものはすべて使って勝負して行きたいと思っています。変わらず状態は良いハズですし、特別競輪でも自力を出して、まだまだやれるという存在感を見せていきたいですね。
星野:自力で戦う吉田選手の走りをGI戦でも楽しみにしています。では、最後にオッズパークの会員の皆様へメッセージをお願いします。
吉田:昨年の大変な時期からここまで建て直せたことは、これから調子の悪いときや悩みがある時にどうやっていくかという復活ストーリーを作り上げる良い時間だったと思っています。これからも若手相手に自力で戦っていきますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 星野めぐみ(ほしのめぐみ)
大阪府出身。タレント、アナウンサー、競輪キャスターとして活躍中。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社