2019年の悔しさをバネに挑んだ2020年。その最初の全日本選抜競輪(GI)で約1年8ヵ月振りの決勝進出。
決勝3着と好スタートを切った山田英明選手(佐賀89期)にレースの振り返りや2020年の意気込みなどを伺いました。
大津:全日本選抜競輪(GI)お疲れ様でした。
山田:ありがとうございます。
大津:決勝3着という好結果を収められましたがご自身ではいかがでしょうか。
山田:出来すぎたかなっていうのが率直な感想です。去年が不甲斐なく終わった一年だったので競輪祭が終わってからすぐに来年に向けて切り替えて練習をしていたのですが、 今年一発目で結果が出たので良かったです。
大津:昨年の12月から自転車のフレームを新しくしたのですか。
山田:去年・一昨年くらいから山崎賢人選手(長崎111期)や清水裕友選手(山口105期)など人の後ろに付いていくレースも増えてきて、そういった競走にも対応していく為に自転車も変えてみようと思いました。
FIでは自力の番組が多いのですが、特別競輪だとマークに回る機会も出てきますからね。
大津:大きな大会で急に人の後ろを回るのはプレッシャーも多いように感じるのですが。
山田:自分より強い選手の後ろを回るので、チャンスもあるのですが付いて行くのに必死だと感じることもあります。
大津:人の後ろを回ることの難しさは、どのような時に感じますか。
山田:タイミングが合わなかったり技術的な部分が非常に大きいと思います。今までそういった練習をしてこなかったので、準備不足だったなと。
大津:今は練習の中でマークをする練習などもしているのでしょうか。
山田:意識の問題だと思うのですが、普通に人の後ろに付いて練習をしていたところを実際のレースの想定をしながら走るように心がけています。
ただ今回は準決勝戦で山崎選手の後ろで離れてしまったので、そこが課題だなと痛感しました。
大津:ただ、準決勝戦は離れてからご自身での巻き返しもありました。
山田:あのレースは山崎の気迫がとても伝わってきました。離れてしまったのですが、山崎があそこまでのレースをしてくれたので中途半端な競走をして着外に沈んでしまったら前を走ってくれた選手にも申し訳ないので絶対に決勝に乗らないとと思い、必死に縦に踏みました。
大津:全日本選抜競輪(GI)の初日では先行逃げ切りもありましたね。
山田:特別競輪の初日1レースにあてられたので、悔しかったって思いが正直ありました。なので、そこで逆に気合が入りましたね。
大津:先行して予選をクリアしたというのはご自身の中ではいかがでしょうか。
山田:先行で逃げ切るというのは自信になりますね。2次予選も先行して2着に残ったので。
先行という武器が一つ増えるだけでレースも戦いやすくなりますから、そういう意味では非常に収穫のある二日間でした。
大津:捲りだけではないというのは対戦相手にとってもプレッシャーになりますよね。
山田:自分がされると嫌ですからね。逃げても強い、捲っても強いという選手が相手だと僕はどう対応したら良いのってなります。
そういう相手だと自分のやれることが狭まってくるので、逆に僕がそういうことをすることによって相手にそう思わせることができますし、上で通用する選手になる為には必要だと感じています。
大津:一次予選では番手の松岡貴久選手(熊本90期)の好アシストもありました。
山田:本当に貴久をはじめラインのおかげだと思っています。僕みたいな自在選手にしっかりついてくれるので本当にありがたいですよね。
僕一人の力では先行ではなかなか勝てませんから。
大津:インタビューの中で「力勝負で勝ち上がっていかないと特別での優勝はみえてこない」というお話が印象的でした。
山田:特別競輪は力が拮抗しているので、その中で力勝負して勝ち上がっていくのは本当に難しいことだと思っています。
初日二日目は逃がされたようになりましたけど、それでも自分の得意ではない戦法で勝ち上がれて、決勝戦も外を捲って3着だったので戦える手ごたえは掴んだ気がします。
大津:約1年8ヶ月振りの決勝戦はいかがでしたか。
山田:僕の中で一番印象に残っているのが2018年の全日本選抜競輪(GI)です。あのときは1・1・1で決勝戦に勝ち上がったんですが、なにかフワフワした気持ちがあって決勝戦に乗れただけで満足した部分もありました。
「僕なんかが獲って良いのか。」と僕自身思ってしまうところもあって。
でも今回は本気でタイトルを獲りたいっていう気持ちでのぞめた初めての決勝戦でした。
そういう意味ではようやくスタートラインに立てたんじゃないかと思います。
大津:今シリーズの調子ではタイトルを獲れるという自信もあったのではないですか。
山田:勝負所で踏み上げていった瞬間はチャンスがあるかと思ったのですが、清水くんの格が違いましたね。
大津:決勝戦の並びですが松浦選手-清水選手ラインの三番手という選択肢もあったのではないですか。
山田:九州の後輩が僕の為に頑張ってくれていましたし、他地区の三番手を回るのはどうかなという気持ちが強くあったので回りませんでした。
僕も自力で戦っているので、そこで獲ってもなにか違うというのが自分の中でありましたから。
大津:そのような考えに至る経緯というのはなにかあったのでしょうか。
山田:2018年の高松宮記念杯競輪の決勝で原田研太朗選手(徳島98期)の番手に付いたんですが、決勝戦が終わった後にファンの方たちに自力で獲ってほしいって言われたんです。
その年はオールスターのファン投票でドリームレースにも選んでもらえて、そのお客さんが「山田には自力で獲ってほしい。」「特別の決勝戦で九州勢の連携がみたい。」とかそういう風に僕のことを見てくれていたので、その気持ちに応えたいとその時に感じたんです。
大津:九州の後輩というワードが出てきましたが、山田さん自身も後輩を育成する立場になってきました。
山田:僕は言葉で伝えるのがあまり得意ではないので、こうしたほうが良いというようなアドバイスはほとんどしません。
その分、後輩たちがヒデさんと一緒のレースで走りたい、ヒデさんの前で戦いたいという想いを持ってもらえるように僕も日頃の練習やレースを頑張ろうと思っています。
僕の中では荒井さん(荒井崇博選手・佐賀82期)、井上さん(井上昌己選手・長崎86期)、合志さん(合志正臣選手・熊本81期)が目標でした。
特別競輪の決勝戦で走るときには、その三人と走りたいという気持ちが凄く強かったんです。そこが自分の原動力になっていました。
ですので後輩からも僕がそういう存在になれれば嬉しいです。
大津:では改めて2020年の目標を教えてください。
山田:やっぱりグランプリですよね。グランプリに出たいです。それだけです。(この問いかけの中で何度も何度もグランプリに出たいという言葉が飛び出していました)
佐藤慎太郎選手(福島78期)が言ってたんですけど「どんなレースでも大切だよね」って、本当にシンプルな考え方なんですけど本当にその通りだなって感じて、特別競輪だけではなく記念競輪やFI戦も1走1走しっかりと戦っていきたいです。
大津:4月には地元武雄記念があります。
山田:地元のお客様が一番応援してくれるってのもありますし、そこで恩返しすることが一番だと思うので武雄記念は絶対獲りたいです。
大津:それでは最後にオッズパーク会員の方へメッセージをお願い致します。
山田:胸にオッズパークさんのロゴが付いてもらえるように、オールスターのファン投票もお願いします・・・というのは冗談ですけど、目の前のレースを一つ一つ大切に走っていくので、これからも応援よろしくお願い致します。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社