今年は寛仁親王牌を制覇してグランプリ出場を決めた村上博幸選手(京都86期)。GI・GII・GIII全てのグレードレースを手にした2019年ここまでの振り返りと、4回目のグランプリに向けてのお話、また現在の競輪に対する想いを伺いました。
森松:グランプリ出場おめでとうございます。
村上:ありがとうございます。
森松:今年はGIを獲っての出場、喜びもひとしおですか?
村上:そうですね。まさかGIを獲れると思っていなかったので本当に嬉しいです。
森松:寛仁親王牌の優勝、ご家族の反応はいかがでしたか?
村上:家族は自分が毎日していること、競輪に対する姿勢をずっと見てくれていたので本当に喜んでくれました。子供にはおもちゃを買ってあげました(笑)
森松:それはお子様喜んだでしょうね(笑) 改めて2019年ここまでを振り返っていただきたいのですが、松阪記念完全優勝、奈良記念優勝から始まりました。
村上:振り返ればいいスタートダッシュでしたね。
森松:そして7月のサマーナイトフェスティバルでGII獲得でした。
村上:めちゃくちゃ嬉しかったですね。チャンスがあれば獲りにいこうと、そこに合わせてトレーニングを積んでいました。調子も良かったし、まわってきたチャンスをものにできて良かったです。
森松:開催前から獲れるという自信があったのですか?
村上:GIになると若い選手も強くて、2019年前半戦は脚力的にも流れも自分に向いてないという感覚がありました。その中で後半戦に入るサマーナイトに向けてしっかり合わせようと思って取り組んでいました。
森松:サマーナイトのインタビューで「脚が三角になった」という言葉もありました。村上選手は冷静なイメージがあったので意外でした。
村上:自分でも意外でした(笑)追い込み選手として色んな展開、パターンを想定して走りながら4コーナーを迎えて「これはチャンスや!」というのがあって、「このチャンスを逃したら...」という思いから緊張してしまった。緊張して踏み込みがずれたのは初めてかもしれません。
森松:その後、平安賞の欠場は苦渋の決断でしたか?
村上:自分も含め、京都勢にとって平安賞は特別な想いがあります。自分の場合一年の始まりは平安賞からという気持ちもあります。去年より成長した姿をみてもらうというのが支えになっています。準備もしていたし、去年より成長できているという手ごたえもあったので、出られなかったのは残念でした。
ただそこに合わせてきたのが寛仁親王牌に繋がったのかなとも思います。
森松:その寛仁親王牌で5年ぶりにGI獲得、この年月というのはどう感じていますか?
村上:タイトルは何回も獲れるものではないと思っていて...。年数というより「また獲ることができた!」という気持ちのほうが大きいですね。前のGIのときに「もうこれが最後」と思ったし、サマーナイトのときも「これで最後、やりきった」と思っていました。
森松:初日に義弘選手(村上義弘選手・京都73期)に前をまわしてもらったのも大きかったですか?
村上:そうですね。その時は賞金争いもしていたので気合が入りました。
森松:寛仁親王牌の決勝は緊張はなかったですか?
村上:そのときはこういう風に踏み込んだら進むだろうという頭の整理ができていました。
森松:GIの決勝戦で冷静に走れるというのは年数や経験ですね。
村上:それはあると思います。4コーナーに入るまでにもレースはいろんなことがあります。それを考えながら走っているので4コーナーまでにどれだけ意識を残せるかは重要だと思います。
森松:このクラスになると同じ対戦相手と戦うことも多いと思うのですが、相手によって様々な想定をされるのですか?
村上:そうですね。ただ周りも常に新しいことを考えていく向上心のある選手ばかりで、自分の想定とずらされることもあります。なので深く考えすぎたり、固定概念にとらわれないようにしています。
森松:今年はグランプリメンバーの顔ぶれも変わりましたね。
村上:去年一年走った中で、2019年はいっきに若い選手がくるなという予感がありました。その中で今年のグランプリにベテラン勢がいるのはさすがだと思うし、数少ないチャンスをものにしているナショナルチームは別格だと思います。
森松:村上選手や佐藤選手(佐藤慎太郎選手・福島78期)といった追い込みの選手、そしてスピードタイプの選手、楽しみなメンバーです。
村上:自分や慎太郎選手のようなタイプは少なくなってきていると思います。スピード競輪が主流になっている中で、やはり慎太郎さんはすごいと思います。
森松:競輪からケイリンになりつつある現状はどう感じられていますか?
村上:競輪は息の長いスポーツです。それはスピードだけではなく総合的な面のおかげだと思っています。キャリアが邪魔するところもありますが、スピード以外の面をいかにリカバリーするかを考えながら過ごしています。ラインのおかげで自分がここに立てていると思うので、そこは大事にしていきたいですね。
森松:綿密なスケジュールを立ててトレーニングをされている村上選手ですが今はどう過ごされていますか?
村上:逆算してメニューを組んでいます。難しいところはアドバイスをもらいながらですね。年々自分の体の変化も感じるので同じ調整ではいけないという難しさも感じています。
森松:元々コツコツ続けられる性格だったのですか?
村上:選手になっても最初はそんなことなかったですよ。気分屋なところもありました(笑)A級の時にグランプリを見て「ここを目指さないといけない」と思ってから色々努力していくようになったし、年々緻密になってきた感じですね。
森松:義弘選手とまた一緒にグランプリにという気持ちも?
村上:もちろんあります。今回兄がいない一人での参戦となりますが、思い返せば兄弟でグランプリに出続けることの大きさは感じます。兄弟で出続けるすごみは僕らが一番分かっていると思いますから。
森松:グランプリを獲ったらこうしたいなというのはありますか?
村上:それは全くないですね。今のところ悔いなく調整してしっかり走ることだけ考えています。実際グランプリ終わったら何も考えられなくなるでしょうし、お正月もありますし(笑)
森松:お正月ぐらいはゆっくりとですね(笑)それではオッズパーク会員の方々にメッセージをお願いします。
村上:今年一年自分の中で良い年だったと思える成績、そして練習ができました。グランプリまで悔いなくしっかり取り組んで、当日も悔いなく思いっきり走れるように頑張ります。
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※インタビュー / 森松さやか
大阪府出身。岸和田競輪初心者ガイダンスコーナーアシスタント、競輪キャスターとして活躍中。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社