勢いのある若手選手がたくさんいる中四国の中で、ベテラン追い込み選手として今年GIでも決勝に進んでいる小倉竜二選手(徳島77期)。
ビッグレースの振り返りと、現状の中四国の雰囲気や練習環境、そしてGI高松宮記念杯競輪への意気込みをお伺いしました。
山口:今年は2月の全日本選抜競輪(別府)、そして先日の全プロ記念競輪(松山)で決勝(全プロはSPR賞)に進出していらっしゃいます。近況はどうですか?
小倉:全日本選抜に関しては、初日、2日目は太田竜馬くん(徳島109期)と連携でした。3番手だった松浦悠士くん(広島98期)に抜かれましたけど2着で優秀・スタールビー賞に勝ち上がれたし、優秀も同様2着でした。全プロ記念も2日間太田くんと一緒で、初日は抜けましたがSPR賞はマークで2着。完全に太田くんに勝たせてもらっている感じですね。
山口:全日本選抜の準決勝では中川誠一郎選手(熊本85期)のカマシ捲りにもぴったり追走でした。
小倉:以前はちょっと練習量も少なかったので、捲りやカマシには離れることが多々あったんですが、周りにスピードのある選手が多いので今は意識して練習をしています。練習メニューにもスピード練習を取り入れてやった結果だと思います。
山口:中四国の勢いは感じていらっしゃいますか?
小倉:そうですね。かなりあると思います。自分自身「再びトップへいくぞ」という気持ちはないんですが、GIを優勝する可能性としては太田くんが今かなり良い感じだし、それに刺激されて原田研太朗くん(徳島98期)も復調していると思います。自分としては彼らを見守っているような感覚です。
山口:練習は一緒にされるんですか?
小倉:はい、一緒にさせてもらっています。今の徳島の練習は刺激だらけですよ。さっきも言いましたが、スピードのある選手が多いので、対応出来るように練習もしています。
山口:四国だけではなく、中国地区も盛り上がっていますよね。
小倉:中国地区と連携する時は、松浦くんと清水裕友くん(山口105期)が上位にいるので連携することが多いですね。愛媛にも佐々木豪くん(109期)や松本貴治くん(111期)もいるので、自力選手がたくさんいて自分としては目標の選手がたくさんいて頼もしいです。
山口:近年までは先行選手が少なかったイメージです。その時と今とのレースへ臨む気持ちの変化はありますか?
小倉:昔は後方になった時に、どのようにして自分でコースを見つけて切り込んでいくか対策をしていたんですが、今は先行してくれる選手の番手を回る事が多くなりました。そこが昔とガラリと変わりましたね。なので、4コーナーで番手にいたら、しっかりと勝ち切る、ラインで決めるというのが今の対策です。
山口:小倉選手が番手だと先行選手も安心ですね。
小倉:そう思ってくれていると嬉しいですね。僕も仕事をして、前の子はその子の仕事をきっちりする。それだけですけどね。
山口:練習は変わりましたか?
小倉:練習量は昔より増えました。太田くんなど先行選手のスピードは凄いですし、先行すると当然長い距離を踏むので、追走する自分もしっかりとついていかなければいけない。昔はまくり選手の番手を回る事が多かったので、後方になっても自分でコースを見つけて何とか出来たんですが、今はしっかり前で駆けてくれるので自分も仕事(牽制など)をしなければいけない。その分脚力は必要と感じています。
山口:練習内容など、年齢を重ねていくと変化はあると思うのですが、ケアなどして負担がないようにされているんでしょうか?
小倉:逆に負担をかけています。あえて壊れる直前まで追い込んでいますね。調整を失敗するとぎっくり腰が出たりするんですが、そこまでしないと筋肉が成長するのが遅いですし、ホルモンが出ないので。きつめの方が体は大きくなりやすいですね。
山口:それはいつ頃からやっているんですか?
小倉:太田が出てきた頃くらいですね。以前のままだと追走は出来なかったと思ったので。
山口:先ほどのお話で、中四国勢みなさんで上がっていっているイメージがあります。
小倉:太田などが出てきてから、一気に駆け上がっていった感じでしたね。だんだん若手の人数も増えていって、自分も少し焦りを感じていたのかなと思いました。練習量が増えて、今はダッシュの出だしにも少し追走に余裕が出てきたのが成果です。前まではダッシュに追走するのでいっぱいになってしまっていて、最後の追い込みまで脚が残っていない状態でゴール前も抜けない事が多かったんですが、今は以前よりは余裕を持って追走できているのでゴール勝負出来るようにはなりました。
山口:この後、GI高松宮記念杯競輪がありますが、目標にする選手がたくさんいるとチャンスも増えますね。
小倉:ずっとチャンスです(笑)
山口:なるほど(笑)GIだからチャンス、という訳ではないんですね(笑)
小倉:そうですね。GIももちろんですが、その後には地元の小松島記念GIIIもありますし、別府でのサマーナイトフェスティバルもあります。気を引き締めていくだけです。
山口:岸和田のイメージはいかがですか?
小倉:結構成績は良いですし、走りやすいイメージがありますね。直前の5月にもFIを走っていますし、そういう面でも良かったですね。その時は決勝にはいけませんでしたが、感覚は掴めました。
山口:地元記念についてはいかがでしょうか?
小倉:毎年走っているので、そこまで気負いはないんですが、もちろん頑張りたい気持ちはあります。
山口:先日終えた取手記念は中四国が4人の決勝でした(小倉選手は3着)。振り返りをお願いします。
小倉:先頭の松浦くんが早めに仕掛けていったのにゴール前1着に突き抜けられないのは、ただ練習が足りないんだと思います。あれを抜くのはトレーニングしかないですね。新ルールのスピード感も後半にいくにつれて慣れてきました。それは次へ向けて良い材料です。(山口補足→何度も冗談で「決勝の松浦を抜けないんじゃ、オリンピックを目指すにはまだまだ足りない」と仰っていました。私の個人的な見解ですが、高松宮記念杯競輪での脇本選手などナショナルチームの選手への対策をしたいという事なのかなと思いました。)
山口:失礼かもしれませんが、小倉選手はいつも飄々としているイメージなんですが「絶対優勝したい!」など勝利へ貪欲な時はありますか?
小倉:ないですね。一走一走もちろん1着は取りたいですが、決勝になると、乗っただけで安心して緩んでしまうかもしれません。それがダメな所ですね。シリーズ通して勝ちたい、ではなく。まず今日の一走という感じで挑んでいます。
山口:若い時から変わってきた部分はありますか?
小倉:若い時より真面目になりました(笑)
山口:そうなんですか?(笑)体力的に万全ではない時もある中で、調整をしっかりするという意味もあるんでしょうか?
小倉:今の方が、若い時より万全に持っていっています。昔は体調が悪くても走れていましたが、今はそうではなくきっちりと調整しています。例えばお酒も、昔は毎日飲んでいましたが、今は練習やレースの時には飲んでないですから。それを止めただけでも体調面では大きく違いますね。
山口:感覚は研ぎ澄まされているんですね。
小倉:そうですね。敏感にはなっていると思います。
山口:小倉選手はお客様の車券への貢献度も高いです。オッズなどは見たりしますか?
小倉:見ますね。期待を裏切ってしまう事もあるんですが、人気になっているのを見ると気が引き締まりますよ。
山口:高松宮記念杯競輪は東西対抗ですが、その辺りはいかがですか?
小倉:西だけのトーナメントになるので、予選で中国地区と敵になる場面もあるので、組み合わせ次第では潰し合いになってしまう可能性もありますね。去年も一次予選で中国と四国は別線でしたし。そういうのがあるのでやりにくい部分もありつつ、いつも連携をしているので相手の出方もわかる。お客さんは面白いかもしれませんね。
山口:最後にオッズパーク会員の方へメッセージをお願いします。
小倉:いま中四国勢は自力の若い選手がたくさんいるので、しっかり引っ張ってもらって僕を勝たせるようにして欲しいですね(笑)
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター/MC/キャスター/声優。
競輪関係では取手競輪中継司会、松戸競輪リポーターをメインに各競輪場で活動中。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社