ガールズケイリン人気を牽引してきた白井美早子選手(大阪102期)。大怪我から復帰し、昨年初優勝!近況や今後の目標をお伺いしました。
山口:一昨年大きな怪我をされましたね。その時のことをお伺いしていいですか?
白井:一昨年8月にアキレス腱断裂をして、昨年3月に復帰しました。ただ復帰をしたのも体調が万全だったからではなく、自分が代謝制度の対象だったのでそれを回避するため。復帰した前期(昨年6月末まで)は、何とか点数を取らなければという感じでした。
7月以降は優勝を目標にしていましたが、休んでいた間にガールズケイリンのレベルがすごく上がっていたのを痛感しました。自力選手の強さだけじゃなく、追走技術が上手い選手も増えて、自分が思っていた以上でしたね。その時に自力がないとこれからは厳しいなと感じました。
落車後、昨年12月にデビュー初優勝をして、今まで一番の目標だった優勝をできたあとは、その次はもっと自力をつけて優勝したいと欲がでてきたんです。
復帰した直後は無事に走るだけだったのが、もっと上を目指して出来る!と感じ始めたから、自分の走りやレースを作っていける脚力を求めていますね。怪我の影響はもう全くないです。
山口:リハビリは川崎競輪場でされていたようですね。
白井:はい。怪我をしたのが都内で、運ばれた川崎のスポーツ整形の病院で緊急手術になったんです。でも信頼できる先生がいて、できればリハビリもここでして欲しいという指示があったんです。緊急の手術を引き受けてくれたし、リハビリの先生も良い方だったので自分自身もお任せしたいと思いお世話になりました。
山口:しっかり集中して治せたんですね。
白井:先生のお陰で後遺症もないですし、アキレス腱断裂をした他の患者さんと比べて自分の今の状態がすごく良いので、気にせずレースも走れているので、あの時その選択をして良かったなと思います。
山口:その時に刺激を受けた方はいましたか?
白井:リハビリ中にアキレス腱を断裂した色んなスポーツ選手を調べていたら、阪神タイガースの西岡剛選手や、関取の安美錦関のことが出てきました。
今まで落車をしたときは大きな怪我もなく1ヵ月程で復帰していたんですが、この長期離脱は腱だったので、体を動かしたくてもまず腱が繋がらないと動かせないし、再断裂のリスクがあったりと、骨折以上に大変でした。鎖骨だとボルトが入っていても繋がりますが、腱はただ糸で繋がっているだけなので脆いんです。しっかり腱同士が繋がってはじめて運動機能回復のリハビリが出来るようになるので、それまでは精神的にもキツくもどかしかったです。
そのときにアキレス腱断裂して自分以上に厳しい状況でも復帰しないといけない安美錦関
が頑張っていらっしゃるニュースやブログを見て、励みになりました。
またご縁があって知り合った元普天王の稲川親方にはお世話になっていて、私が初優勝した開催の前に縁起物の鶏を一緒に食べさせていただいたんです!
山口:いいご縁ですね。同期の選手たちの反応はいかがでしたか?
白井:実は怪我をした時は誰にも言わなかったんです。大事にはしたくなくて。ただレースの都合で数人には連絡していたんですが、内緒にしてもらっていました。
私がずっと欠場していると同期から連絡がきて、そのときに事情を話したんです。ただ1期生は私以上の大怪我した選手も何人もいるので頑張るしかないなと思っていました。
優勝したときは同期がたくさん連絡してくれて、すごく喜んでくれましたね!怪我をしても諦めずに私がやってたのを、みんな見てくれてたみたいで「同期が優勝するのが一番嬉しい」と言われたときは、やっぱり同期は良いなぁと思いました。
山口:復帰されてから気持ちの面はいかがでしたか?
白井:怪我をしているときにたくさんのスポーツ選手と出会う機会がありました。自分がプロスポーツ選手としてやりたいと思っていても、怪我が原因でチームと契約できなくて引退を選択しないといけない、など自分の意志だけでは続けていけない状況のプロスポーツは多いですが、競輪は自分が走りたいと思ったら走れます。だから結果は付いてこないとわかっていても走りました。
ただその時、自分の想像以上に走れなくて見えている世界も違いました。展開が読めなかったりレースに参加できなかったり「私こんなに弱くなっていたんだ」ととてもショックで悔しくて。
でもその時リハビリしていたときに知り合った他のスポーツ選手の状況を思い出すと、走れているだけで幸せなんだなと思えて、切り替えて次頑張ろうと思えました。
山口:先ほどの話に出てきた「欲」はもっと上を目指すということですか?
白井:そうですね。怪我のときは復帰出来るかどうかも不安だったんです。選手としてまず走れるのか、走れても勝てないのではないかという、復帰しないとわからない状況でした。みんなの中で戦えているからこそ、怪我をする前よりも強くなりたい、より上へいくために内容や結果を求めているので、そのために今は戦法を見直そうか迷っています。
山口:近況はいかがですか?
白井:もう少し自力を出してレースがしたいですね。最近は自分から動いてレースを作っていっても、結果が良くないんです。それでも続けて自力を出していった方が良いのか、戦法を変えた方が良いのか、その辺りが迷い所ですね。
山口:後輩期が増え、動ける選手が多い中で勝つために戦法チェンジ、というのも理由の一つですか?
白井:強い選手の方がレース中でも有利な位置を回れたり、どうしてもレースの中心になります。ガールズケイリンは男子選手のようにラインもない単騎戦なので道中の展開などは少ないですが、強い選手が自分の勝てる位置からしかけられてしまうと勝てません。その位置をすんなり取らせないためには、自分がレースを動かしていく自力が必要だと考えています。だから自力を出せた方が良いのはそうなんですよ。
写真:板根 茜弥選手(中)・細田 愛未選手(右)
山口:強い選手が動くのを待つのではなく、その前に仕掛けるということですね。
白井:そうです。自分で動いて、強い選手が不利になるように展開を動かしていくのが、自分が勝てるベストな方法だと思うんです。 それには今までのような自分のレースではダメだなと思います。今のトップ選手は自力のある選手ばかりですからね。
山口:今後の目標は何ですか?
白井:また優勝もしたいですが、一番はガールズケイリンコレクションに出たいです。大きい舞台で一度は走ってみたいですね。地元の岸和田はGⅠの開催を何度もしていますが、その時の男子選手を見ていても大きい舞台で走れるのは凄いなと思いますし、自分も一度はそこで走りたいですね。
山口:今年はそこへ向けてですね!では最後にオッズパーク会員の皆さんにメッセージお願いします。
白井:怪我をしている間もたくさんのメッセージをいただきありがとうございます。また2回3回と優勝を出来るように頑張りますのでこれからも応援よろしくお願いします!
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※インタビュー / 山口みのり
※写真提供:公益財団法人 JKA