昨日荒尾市議会で、市長が荒尾競馬廃止を発表しました。
内容は、12月23日をもって荒尾で競馬を開催することを終了し、場外発売は来年の3月まで行うということです。
『霧島賞』の次の日に大きく新聞で報じられ、その時点で廃止濃厚という空気が漂っていましたが、実際に発表されるとまたショックが大きいです。
現実問題として、中津や高崎の時と違い、廃止に対して反対の声が少ないのは...
何年もかけて、関係者たちはかなりのところまで追い込まれていたからです。
預託料は1か月1頭約8万円。中央競馬が約70万円、南関東が約20万円ということを考えると、どれだけ少ないかわかりますよね。
最低賞金は1着10万円、2着2万円。出走手当が1回につき3万5千円ですから、例え1月で2回走っても2着までに入らなかったら預託料をペイすることは出来ません。
JRAや南関東のように、勝った時の賞金が大きければまだいいけれど、勝っても馬主が手にする賞金は8万円ですから、出走手当が低くなったため、かなりの頭数が他の競馬場に移ったそうです。
ジョッキーの騎乗手当は1レース3千700円。
例え勝っても、(最低賞金10万円の5%で5千円)+(騎乗料3千700円)だから、8千700円しかもらえません。
勝っても1万円にならないんです。
悲しいけれど、これが地方競馬の現状です。
高崎の廃止が発表された時、廃止反対の関係者と、廃止賛成の関係者に分かれました。
たとえ賞金が下がっても、このまま高崎で競馬を続けたいと望む人は多かったけれど、中には賛成の人たちもいたんです。
賛成派の中にも種類があって、廃止になって補償金をもらって引退したいと思っている年配の方たちと、廃止になれば他の競馬場に移籍出来ると考える人や、今ならまだ新たな職に就けると考えている若手の人たちがいました。
騎手や調教師は、基本的には所属競馬場が廃止にならなければ、他場に移籍することは出来ません。
特例はいくつかあるけれど、この基本は絶対です。
当時のジョッキーの移籍には年齢制限があったし、それを覆すことは本当に大変でした。
年齢制限などで、当初水野貴史騎手は南関東への移籍が困難でしたが、本人の熱意と、南関東の騎手たちのバックアップを受けて、浦和に移籍出来ることになったのです。
競馬場の廃止というのは、本当に難しい問題です。
廃止に賛成だからといって、それが悪いことだとは思いません。
特に今回の荒尾は、反対するパワーさえも失っている状態まで追い込まれていましたから。
最近の地方ジョッキーは、若いうちにジョッキーを引退し、JRAの厩務員や助手になったり、有名牧場に勤めるという流れが増えています。
夢を叶えてジョッキーになったのに、モチベーションを維持出来ずに辞めていく人が本当に多いです。
近くで見ていて、とても切ないけれど...それぞれの生活があるし、現実を受け入れるしかありません。
それに、新しい夢を見つけてイキイキとしている人もいますから。
荒尾競馬が廃止になると、サラブレッドの生産頭数にも影響がでてきます。各競馬場だけでなく、北海道や九州などの馬産地にとっても大打撃です。
毎年北海道の日高に行っていますが、10年前とくらべると、馬を辞めて牛の牧場にしたり、牧場自体を廃業したところが多く目につきます。
荒尾が廃止になったことで、九州競馬として連携していた佐賀競馬場にも影響が出てくるでしょうし、他の主催者も廃止論争が熱を帯びるのではないかと不安です。
でも、現状の体制のままではもうダメだと思うんです。
どんなに賞金を削って延命措置をしても、内部崩壊していくだけです。
今、地方競馬の1つの希望は、来年度から始まるJRAでの地方馬券発売です。
廃止論争などでも、この話を持ち出してなんとか食い止めている競馬場もあります。
JRAと協力していくことはもちろん、もっと地方競馬同士が協力出来る体制を整えないと、このままでは本当に悲しい未来しかありません。
まだ廃止が決まったばかりで、これから移籍問題などがどうなっていくのか、しっかりと見届けて、協力出来ることがあればしていきたいです。
今後の流れですが、まず荒尾競馬から全国の各主催者に対し、関係者の受け入れを要請します。
地方競馬全国協会も、その流れを受けて各主催者に働きかけていくそうです。
一人でも多くの関係者が、希望の道をみつけられますように...
そして馬たちの活躍の場が、これ以上無くなりませんように...