08年の帝王賞JpnIで、勝ったフリオーソから差のない4着と好走したマルヨフェニックス。ダートグレードのひとつやふたつくらいはそのうち、と思わせながらも、そのタイトルがないまま今年6歳。前走の名古屋大賞典JpnIIIは、そうした応援もこめて◎にしてみたのだが、勝ったラヴェリータからは2秒も離された4着だった。とはいえ地方勢では最先着で、5着のマイネルアラバンサには4馬身差をつけた。地方勢同士ならまだまだ負けられない。今回のメンバーで、ほかに重賞勝ちは、荒尾時代のケイウンヘイローと、2年前の3歳時に快進撃だったサチコゴージャスのみ。定量戦でもあり、言い方は悪いかもしれないが、マルヨフェニックスにとっては前々走の東海クラウン同様、調教代わりといった相手だろう。
こうした断然の1強では相手探しが難しい。それなりの実力馬が真っ向勝負を挑んだときに惨敗し、着狙いの人気薄が台頭するというようなパターンがよくあるからだ。
さすがにそうした裏の裏まで予想はできないので、実力どおりに評価すれば相手はケイウンヘイローだろうか。昨年9月の荒尾から転入直後は今ひとつのレースぶりだったが、年明けからA1特別でも常に上位争いができるようになってきた。
地元東海勢に近走好調な馬があまりいないだけに、兵庫からの遠征馬2頭にチャンスがありそうだ。チャンスといっても、もちろんマルヨフェニックスの2着争いだが。ゲイリーディライトは、ここ2戦こそ結果が出ていないが、昨年末から3走前までは兵庫のA1特別で上位争いを続けていた。仮にマルヨフェニックスがいなければ、このメンバーなら勝っても不思議はない。1400メートルの距離も、もっとも得意とするところ。
プリンセスジュディは、昨年夏にJRAから園田に戻り、堅実に入着を重ねてA1まで出世してきた。再転入後は15戦して掲示板を外したのが2回だけ。1400メートルを中心に使われているだけに、ここでも上位に食い込む可能性は十分にある。
エイシンイッテンは、中央からの転入初戦こそマルヨフェニックス、エーシンアクセランに続く3着で、このクラスでも勝負になるところを見せたが、続く前走は7着惨敗。調子が戻っていれば上位争いも。
◎マルヨフェニックス
○ケイウンヘイロー
▲ゲイリーディライト
△プリンセスジュディ
△エイシンイッテン
ファイナルグランプリを制した牝馬のビービーバイラ。直線で力強く抜け出してくるレースぶりには驚かされた。単勝6番人気でしかなかったのは、牡馬オープンクラスとの対戦が初めてだったからだろう。それにしても08年秋にホッカイドウから転入し、下級条件からほぼ休みなく使われ、福山では34戦して連対を外したのが2回のみ。その2回にしても、勝ち馬からはともにコンマ3秒差の3着と4着という安定したレースを続け、着実にクラスを上げてきた。今回は初めての2250メートルという長距離に加え、牡馬の一線級からマークされる立場になるだけに、そうした状況で自分のレースができるかどうか。
アポロコマンダーは、さすがに黒船賞JpnIIIこそ勝負にならなかったが、その前はA1特別と黒船賞トライアルを連勝。重賞初挑戦だった4走前のマイル争覇も着順こそ4着だが地元馬では最先着。地元福山同士なら重賞でも十分に勝負になる。
ナリタブラックは今回と同じ2250メートルが舞台の福山菊花賞で2着。そして正月には2600メートルの福山大賞典で重賞初制覇を果たし、園田に遠征した2400メートルの六甲盃でも3着と好走した。今回、上位2頭にとっては初めての距離となるだけに、経験という意味ではこの馬が逆転の可能性もある。
このレース連覇を狙うクラマテングは、年明け後は5戦して未勝利。ただ福山大賞典、ファイナルグランプリと、ともに2着。ここ一番で強さを発揮するタイプだけに、軽視はできない。
昨秋の福山菊花賞以来勝ち星から遠ざかっているナムラベンケイは、かつての勢いはなくなってきたとはいえ、長距離の重賞なら巻き返しがあるかもしれない。
◎ビービーバイラ
○アポロコマンダー
▲ナリタブラック
△クラマテング
△ナムラベンケイ
昨年末に中央1000万クラスから転入したコスモアブソルートは、正月競馬で金沢デビューとなるはずが雪で競走取止め。一旦兵庫に転厩し、3戦して再び金沢に戻ってきた。その兵庫では勝ち星こそなかったものの、A1~A2で常に上位争いなら、いきなりの重賞でも勝負になりそう。他馬がすべて冬季休み明けなのに対して、園田で実戦を順調に使われてきたことも大きなアドバンテージ。昨年も金沢のリーディングを守った吉原寛人騎手が鞍上なのも心強い。
相手筆頭は、昨年末の中日杯で8馬身差の圧勝劇を見せたゴールデンミション。その後年明けのA1特別も快勝。コスモアブソルート以外のすべての馬に言えることだが、あとはシーズン初戦で仕上がっているかどうか。
ナムラグローリーは、昨年中央から転入してオータムスプリントカップを制覇。その後、北國王冠3着、中日杯2着と重賞で常に上位争い。オータムスプリントカップからの6戦はすべて3着以内と金沢のオープンクラスで安定した成績。今回のメンバーなら引き続き上位争いは間違いない。
10歳になったビッグドンは、08年3月のイヌワシ賞以来重賞タイトルからは遠ざかっているものの、昨シーズンもA1特別を2勝。北國王冠ではナムラグローリーやゴールデンミションに先着の2着と好走しているだけに、展開次第ではまだまだチャンスはありそう。
◎コスモアブソルート
○ゴールデンミション
▲ナムラグローリー
△ビッグドン
ジョインアゲンとポートジェネラルが2日前の大井・東京スプリントに遠征したため、残った馬たちでのタイトル争いとなる。
昨年黒船賞JpnIIIでの3着や、福山に遠征して西日本グランプリを制するなど活躍したフサイチバルドルの実績を評価したい。中央から移籍して以来ほとんどのレースで手綱をとっている赤岡修次騎手は、今年も高知でダントツリーディングなのは当然として、全国リーディングでも大井の戸崎圭太騎手と抜きつ抜かれつの争いをしている。6日時点での93勝は、戸崎騎手に5勝差をつけてトップ。勝率46.0%は、NARグランプリ最優秀勝率騎手賞を受賞した昨年の35.6%を大幅に上まわっている。今年はどんな驚異的な数字を残すのか、楽しみなところではある。
相手には10歳馬ゲイリージュピター。黒潮スプリンターズカップから前々走までの3戦は、ポートジェネラルやグランシュヴァリエなどの強敵が相手だったため、1秒以上の差をつけられての敗戦。しかしそうした強豪がいなくなった前走のA1特別は1番人気にこたえて快勝。勢いに乗りたいところ。
中央から転入後、福山遠征も含めてこれが6戦目になるのがアイアムドラマ。ここまでの5戦で勝ち星こそないものの、いずれも5着以内に善戦。ここでも上位争いにはからんでくるだろう。
セトノジェネシスは勝ったり負けたりの波が大きいが、黒潮スプリンターズカップではゲイリージュピターに先着する4着。今回も連下争いなら。
昨年の3歳三冠馬グランシングは、11月に古馬相手のA1特別を勝ったものの、それ以降は勝ち星なし。巻き返しを期待したいところ。
◎フサイチバルドル
○ゲイリージュピター
▲アイアムドラマ
△セトノジェネシス
△グランシング
14日のマリーンカップJpnIIIで他地区枠の選定馬となっているトウホクビジンが、1週前のここにも出走してきた。前走から中2週開けての出走は、昨年10~11月にかけて以来となる。地元笠松は1月7日にA3特別を4馬身差で圧勝して以来の出走で、それ以降はダートグレードのみを使われているので実際にどのくらいの実力なのか比較が難しい。加えて遠征続きの疲れがあるのかどうかも気になるところ。
ゆえにここは前走同じ笠松1900メートルの重賞マーチカップを圧勝しているヒシウォーシイを中心にする。08年に東海ダービーを勝って以降は、重賞ではなかなか結果を残せなかったが、昨年11月の東海菊花賞で久々の重賞勝ち。その後はやや苦戦し、梅見月杯は離された3着。しかしそのとき前で競り合ったマイネルアラバンサ、キングスゾーンという全国レベルでも通用しそうな2頭が今回は不在のため、前走マーチカップに続いて重賞連勝のチャンス。
相手はトウホクビジン。ダートグレードでの馬券圏内はまだないものの、昨年12月のクイーン賞JpnIIIは、勝ったユキチャンからコンマ7秒差の6着。年明けのTCK女王盃JpnIIIもユキチャンからコンマ8秒差の7着。着順はともかく、牝馬同士なら全国レベルでも大きくは負けていない。さらに、中央馬が3頭しか出走しなかった佐賀記念JpnIIIでも5着と掲示板を確保した。全国レベルの馬がいない今回のメンバーなら、あっさりという場面があってもおかしくはない。
エーシンアクセランは、前走マーチカップ2着のほか、ここ6戦は3着以内と好調。勝ち負けまで持ち込めるかどうか。
A1とA2を行ったり来たりしているゴールドネオだが、重賞初出走となった正月の名古屋記念では、勝ったマイネルアラバンサから8馬身離されはしたものの2着。今回のメンバーなら上位も狙えそうだ。
◎ヒシウォーシイ
○トウホクビジン
▲エーシンアクセラン
△ゴールドネオ