今年に入ってからすでに3回優勝をしている太田美穂選手(三重112期)。昨年は全てのGIの出場権を獲得しましたが、秋に長期欠場があり『オールガールズクラシック(GI)』は出場が叶いませんでした。今年のオールガールズクラシック(GI)への思いと、妹・瑛美選手との関係性、また戦法へのこだわりも伺いました。
山口みのり:まずは4月の『オールガールズクラシック(GI)』について伺います。昨年は出場が決まっていましたが欠場になり残念でした。今年への思いはいかがですか?
太田美穂選手:今年に入って、柳原真緒選手(福井114期)、日野未来選手(奈良114期)、山原さくら選手(高知104期)、奥井迪選手(東京106期)と強い選手を相手に決勝で勝てているので、調子は良いと思います。GIでも仕掛けていきたいです。
山口:久留米は初めてですよね?
太田:はい、そうなんです。斡旋が入っていても毎回、直前で怪我をしてしまったり等、なかなか走る機会がなかったです。
山口:初めて走るバンクでのGIはいかがですか?
太田:400バンクは嫌いではないので頑張りたいです。
山口:予選の勝ち上がりも厳しいですよね。
太田:まだGIでは勝ち上がれたことがないので、なんとか上がりたいです。先日ガールズケイリンコレクションを優勝した坂口楓華選手(愛知112期)やナショナルチームメンバー、近況優勝をしている鈴木美教選手(静岡112期)、吉村早耶香選手(静岡112期)など同期が強い選手が多いので、追いつけるようにと思っています。
山口:昨年はすべてのGIの選考をクリアして出場権を得ました(オールガールズクラシック(GI)は欠場)。1年を振り返るといかがでしたか?
太田:初めてガールズにGIができた年に全てのGIの出場権を取れたのは良かったですし、これからも1つも落とせないのかなと思いました。でも出場するだけではだめだなと感じています。
山口:GIだとほとんどの選手が自力を持っています。同型がたくさんいる難しさは感じましたか?
太田:スタートけん制も入ることが多かったので、前を取らされて逃げる展開になった場合でも逃げ切れるような脚力をつけないとなと思いました。最近、Sを取りにいくレースをしているんですがそこから逃げ切るのはなかなか難しいです。でもやっていって、何でもできる選手になりたいです。
山口:捲りも決まるレースもありましたね。
太田:3月川崎の予選2では久しぶりに捲りがきれいに決まりました。それは良かったんですが、捲りで勝つとやっぱり自分の中でも気持ちが良いので、捲りばかりにならないように気を付けないとなと気を引きしめています。
でも展開次第では捲りも出せるように、ですね。GIはみんなが強いので何でもやっていかないと。
山口:戦法について「先行」のイメージが強いですが、こだわっていますか?
太田:師匠(萩原操さん・引退)に言われたのをきっかけに先行をやり始めたのですが、「先行」って一人しかできないんですよね。「捲り」や「差し」はその他全員ができますが先行はたった一人。それが格好良いなと思っています。
山口:では基本の考え方は、今も先行をメインになんですね。
太田:そうですね。臨機応変に捲りも、という感じです。
山口:太田選手は陸上から自転車への転身ということですが、苦労などは何かありましたか?
太田:陸上と自転車では脚の筋肉の使い方が全く違います。ゼロからのスタートだったので、師匠の教えが良かったから、そのおかげで強くなれたと思います。競輪学校(現・養成所)の時も成績は下から数えた方が早いくらいでしたが、卒業後には兄弟子が練習に付き合ってくれたのでここまで来られてとても感謝しています。
山口:地元の支えが大きいんですね。
太田:師匠もすごい方ですし、兄弟子もたくさんいてずっと今でも面倒を見てくれています。師匠は引退されて今はいないですが、兄弟子たちがいるので支えてもらっています。
山口:突然の引退でしたよね。
太田:そうですね。師匠がいない中でも強くあろうと頑張っていました。今もたまにお会いするのですが、師匠の中でも「無事で走れよ」と気にかけてくださっているようです。なので強くなるのが恩返しかなと思います。
山口:妹の瑛美選手(三重120期)も美穂選手を追いかけてガールズケイリンの世界へ入られましたね。
太田:はい。私が国体で落車し大怪我を負ったときには、妹は「自転車はやりたくない」と言っていたんですが、気づけば妹も自転車に乗っていました。実は妹は試験に一度落ちているんですが、それがあったから今の瑛美がいるんだと思います。悔しい思いをして強くなっているのでそれはそれで良かったのかなと。
山口:今も一緒に練習をしているんですか?
太田:はい、練習からバチバチやりあっていますよ(笑)0.02秒の僅かなタイム差でも一喜一憂して、本気で喜んだり悔しがっています(笑)
山口:姉妹だからこそ遠慮なくやれるんですね(笑)
太田:話し合って一緒に練習メニューを考えたり、そうやっているからこそGIも2人での出場が決まったと思うので良かったです。
山口:松戸は二人での出場は叶わなかったですが、次の久留米での活躍期待しています。
太田:頑張ります。
山口:姉妹で脚質は違いますか?
太田:妹の方がダッシュがあります。地脚がないわけではないと思うんですが、後は先行するぞという強い気持ちがあるかないかで、戦法も違うんでしょうね。私も勇気がなかった、自信がなかった時は全然先行ができませんでした。妹は練習はとても強いので、勇気を持って仕掛けていけばもっと強くなると思います。
山口:同期のお話も出ましたが、太田選手から見た同期はどんな選手たちですか?
太田:皆さんも知っているように強い選手が多いです。今はおいていかれていますが、食らいついていけるように今年は頑張って優勝もできていますが、同期のみんなも「決める時は決めてくる」ので、憧れという感情も持っています。
山口:そうなんですね。
太田:会話をしていても「レベルが高いな」と思うんです。グランプリに出場した選手もたくさんいるし。鈴木美教選手とは練習を一緒にする機会もあるんですが、やっぱり強いなと思います。
山口:気持ちから強い、というイメージですか?
太田:考え方も強いし、ペダルやチェーンなど、道具も一つ一つをこだわって、よく考えて使っているんだなと感じたこともありました。私は師匠から与えられたものを使っていたので、そこはだいぶ違うなと感じました。
山口:情報交換などで、自転車やセッティングの変化はありますか?
太田:フレームの種類などは今は良いものもあるのですが、私は背が低いので元のままでいこうと決めました。セッティング、車輪など様々な情報を交換したり相談したりした結果、やっぱり自分の乗りやすいのが一番だという結論です。
車輪に関しては先輩の舛井幹雄選手(三重71期)に組んでいただいています。自分の脚力などを判断して舛井さんも「それが良いよ」と言ってくれたので信頼してずっと乗っています。
山口:またまた周囲の方に支えられているんですね。
太田:はい、すごくありがたいです。
山口:それだけ周りの方も、太田選手が頑張っていると感じているんじゃないんでしょうか。
太田:舛井さんは、私が奥井選手と対戦して勝った時に連絡をくださったりレースも見てくれているのがすごく嬉しいので、やっぱり結果を出して恩返しをしたいですね。
山口:直近のレースを振り返りますと、先ほど太田選手からも話がありましたが3月福井、2月の佐世保の優勝は素晴らしかったです。仕掛けの迷いはなかったですか?
太田:福井は追加でいったんですが、もともと相性が良いバンクなのでしっかり仕掛けようとは思っていました。思い切って仕掛けて、突っ張りきって勝てたのは良かったです。
佐世保は初日、2日目をしっかり先行して2着1着と結果も出て、決勝も本音としては逃げたかったんですが、山原選手につっぱられたので一度休んでから、捲りに行きました。でも山原選手を捲れたのは初めてでした。
山口:太田選手は、山原選手のレースを見たのをきっかけにガールズケイリン選手を目指したという記事を見ました。
太田:そうなんです。松阪で山原選手のレースを見て「格好良いな」と思って選手になりたいと思ったんです。レースの展開は忘れてしまったんですが、とにかく山原選手のスピードがすごくて憧れました。山原選手にも直接伝えたこともあります。
山口:憧れの方に勝てたのは嬉しいですね。
太田:はい、自信にも繋がります。
山口:GIへ向けてはどんなところを高めていきたいですか?
太田:自分のレースをしっかりして、警戒される選手になりたいですね。先行をするにしても、前からの突っ張り先行、カマシ先行と戦法の幅を広げたいなと思います。
山口:ありがとうございます。
では少し話を変えます。SNSを拝見しているとレース後に選手同士で出かけたりされていますが、それがリフレッシュ方法ですか?
太田:そうですね。先日も春のセンバツ(甲子園)を見に行ったり、ディズニーランドに行ったりと遊ぶところはしっかり遊んで、練習はしっかりして、とオンとオフをしっかり切り替えてやっています。
山口:オフは外に遊びに行く方が好きですか?
太田:はい、その方が楽しいですね。
山口:レース後にそのまま近くのアミューズメントパークなどに遊びに行けるのは選手ならではですね。
太田:そうですね、遠征先でもうまく息抜きしています。
山口:ありがとうございます。ではそろそろまとめとさせてください。太田選手の走りはファンの方も多いと思いますがメッセージをお願いします。
太田:これからも「先行の太田美穂」と呼んでもらえるように頑張ります。
山口:先行といえば刈込奈那選手(千葉120期)へ練習着をプレゼントしたと拝見しました。
太田:彼女も先行で頑張っているし、私と同じように大怪我をして大変だったと思いますが、復帰して欲しかったので送りました。妹の同期でもあり仲良しなので、より頑張って欲しかったんです。
山口:太田選手の怪我も復帰まで大変だったと聞いています。今振り返るとどうだったんでしょう?
太田:「やめよう」とは思わなかったんですが、でも落ち込んだし、もう一度戻るにはたくさんリハビリや練習をしないといけないな、大変だなと感じました。それに自信もなくなりますね。
山口:そこからまた優勝やGIへ戻って来られたのは素晴らしいです。
太田:怪我から復帰してからの私は「結構強い」と思っています(笑)落車は誰でもしたくないですけど、そこから復活できたのは良かったと思います。
山口:ありがとうございます。それでは最後にオッズパーク会員の皆様へ、オールガールズクラシック(GI)への意気込みをお願いします。
太田:勝ち上がれるように、勇気を持って仕掛けられるように頑張ります。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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