昨年はデビュー以来、初めてガールズグランプリ出場を逃した悔しい1年になった石井寛子選手(東京104期)。昨年からの思いと今年にかける意気込み、また2月にガールズ初の600勝を達成した振り返りを中心にお話を伺いました。
山口みのり:まずは600勝達成、おめでとうございました。
石井寛子選手:ありがとうございました。
山口:少し経ちましたが今のお気持ちはいかがでしょう?
石井:600勝は目指していた数字なので達成できて良かったです。
山口:500勝からは約1年半での達成です。それはいかがでしょうか?
石井:え?(1年半しか)経っていないですか?それはびっくりです。2023年が自分の中ではあまりうまくいっていない年だったので、そっちのショックの方が大きくて特に「早かった」などは思わなかったですね。
山口:先も見ていらっしゃると思いますが、今後についてはいかがでしょうか?
石井:目標は大きく持って、走ることに感謝をしながら実績を積み重ねていきたいです。
山口:ガールズケイリンの勝利数でずっとトップを走っていますが、それは意識はしますか?
石井:今後はあまり意識はしないかもしれません。他の皆さんも積み重ねているし、今後何があるかわからないので。気持ちを新たにまた一走一走丁寧に走りたいと思います。先ほども言った感謝を忘れずに走りたいと思います。
山口:ありがとうございます。では昨年からの振り返りもお伺いします。昨年は非常に悔しい1年だったと思いますが振り返っていかがですか?
石井:目標を達成できなかった1年でした。普段開催の1着や優勝が取れない時も多くあり「私は何をやっているんだ」と反省ばかり。さらに負ければ負けるほど自分に圧をかけてしまっていたので、気持ちが小さくなっていました。
山口:焦りもありましたか?
石井:ガールズグランプリの出場が最後の最後、競輪祭女子王座戦(GI)までもつれこみました。私は今までの10回のグランプリ出場は、競輪祭の前までに「賞金ランキング上位のためほとんど確定」という場合が多かったんです。ギリギリでも出場できた年もあったので、ギリギリで逃したというのは初めての経験でした。
「ここで決まる」となった競輪祭の自分の走りは、心と体が伴っていなかったように思います。7位になるのと8位になるのでは大きく違いますが、その心構えができていなかった。体は動いていたと思うので、心ですね。そこがグランプリ出場の7人に比べて負けていたんだと感じました。
山口:10年、経験していなかったことを初めて去年味わったんですね。
石井:はい。似たような年も過去にはありました。でも「だめだ、このままじゃグランプリに出られない」と思った年でも、結果としては出場できていたので、そう思っていけなかった初めての年が去年です。
山口:競輪祭女子王座戦(GI)が終わり、ガールズグランプリ出場ができないと決まってから、気持ちの切り替えはどうしましたか?
石井:まず「どうしよう」と思ったのが競輪祭の2日目の夜でした。私が決勝に行けなかった瞬間に、「最終日に自分がどれだけ頑張って1着を取っても、決勝を走る7選手の着順次第でグランプリ出場ができない場合がある」ということに頭を抱えたんです。でもそこで「明日、誰が優勝してもおめでとうと言おう。もし自分がグランプリに出られなかったら、また来年頑張れば良い」と決めました。
山口:落ち込んだのは一瞬だったんですね。
石井:はい。決勝の結果次第でしたが、そう決めたことでスッキリはしました。なので最終日は1着が取れたし「2023年にグランプリに出場できなかったのは、最後のGIで決勝にいけなかったことが全て」だと思えました。
山口:その経験は今年に活きますか?
石井:活かすだけではなくもっと変わりたい。さっきも言いましたが今年は、去年までとガラッと変えて、感謝の気持ちのみで走ります。
山口:石井選手の成績が昨年末からほぼ1着なので、私は勝手に「去年より更に結果を求めて」という気持ちなのかと思っていたんですが、真逆だったんですね。
石井:そうですね。ここからの私は違うぞ、感謝の気持ちだけだぞ、という感じです(笑)
山口:(笑) では今年の目標は何でしょうか?
石井:2024年は絶対にガールズグランプリ出場を目指して頑張ります!
山口:昨年は初めてGIができた年でしたが、一昨年と比べていかがでしたか?
石井:3つのGIができて、まだ1年を通してのリズムが掴めていなかったのかなと思いました。最初の6月パールカップが特に私は成績がボロボロだったので「やっぱりGIの空気は違うな」と思いましたし、いつも以上の緊張がありました。
一昨年までは、とにかく体力がある選手が有利だと思っていたんです。数多く走って優勝を積み重ね、賞金を積み上げていく。中0日の追加(流用)でも行く選手も何人もいましたしね。そんなタフな選手がグランプリに出場できる、グランプリを優勝できるんだ、というイメージでした。
昨年は、3つのGIをどこか1つでも取ればグランプリ出場という条件に変わりました。それによって「自分のピークをGIに合わせられる選手」がグランプリに出られる、勝てる、強い選手なのかなと感じました。
山口:では今年は石井選手も、1年を通してピークの持っていき方や戦い方は変わりますか?
石井:自分でそれが調整できたら良いんですが、私はできないので、いろんな人に全部相談をしようと思っています。
山口:選手の仲間やトレーナーさん、家族などいろんな人にですか?
石井:そうですね。全てを相談して、助けてもらって、やっていきたいです。
山口:いろんな意見をもらって迷ったらどうしますか?
石井:それはあるかもしれませんね。でも私が相談する人は、私と同じ方向を向いていると思うので、バラバラな意見にはならない気がします。
山口:頼もしいですね。
石井:はい、それも感謝です。
山口:ではまず今年のビッグレースとして3月ウィナーズカップ(GII)で行われる『ガールズケイリンコレクション2024取手ステージ』があります。出場が決まった時はいかがでしたか?
石井:まさか出られると思っていなかったのでびっくりしました。単発のビッグレースがGIに変わっていく中でコレクションがあるのもキッチリ把握はしていなかったですし、年度で変わるので「ガールズケイリンコレクション」として行われるのは最後のコレクションなのかなと思います。
先日3月の予定を組んだのですが、久しぶりの単発レースなので直前の調整がすごく難しいです。なのでトレーナーさんなどに相談して頼って、いろんな方に助けてもらいます。
山口:コレクション出場メンバーの印象はいかがでしょう?
石井:強烈すぎますよね。昨年の後半から今年に入ってグランプリ出場選手たちと、普通の開催で対戦することが多かったんです。今まであんまりなかったんですが、今回もすごいメンバーなのでこれからいろんな展開を考えて準備したいです。
山口:助けてもらいながら、ですね。
石井:そうですね。あと今年の目標は「GIも頑張る」+「普通開催も頑張る」=「両方頑張る」と決めました。昨年は普通開催での3着、4着、5着なども多かったのでそれをもう一度見直すということを1月からしています。
山口:結果に表れていますね。
石井:それは良かったです。
山口:石井選手のスケジュールや練習はハードだなといつも思っているんですが、最近の息抜きやリフレッシュ方法は何ですか?
石井:去年から推しができました!『Mrs. GREEN APPLE(ミセス グリーンアップル)』というバンドです。ミセスのことを考えているとすごく楽しくて、今まで競輪のことを8割以上考えていたガチガチの頭が、今は柔らかくなった感じです(笑)
山口:オフの時間も大切ですよね。今年だけ、とかではなく今後何十年も続いていく競輪人生ですもんね。
石井:はい、楽しくて仕方ないんです!でもショックなこともありました。
私はミセスの中でボーカルの大森元貴さんが好きなのですが、その大森さんが突発性難聴になってしまったんです。「何で大森さんの耳なんだ」とファンはみんなショックを受けたし私も思いました。でも大森さんは、ファンに心配させないようにライブを続けていたり、テレビで歌ったり、SNSを更新したりしてくれていました。
歌手の人の耳って、私たち競輪選手にとっての脚と同じくらい、重要だし大切なものだと思うんです。それが病気になってもファンのことを考えて行動をしている。それってすごいことだなと心から思いました。
大森さんの大変さを考えたら、私は普通に走れているし、実はそれは当たり前じゃない、奇跡なんだなと。
山口:ミセスの話から、競輪へ繋がってきましたね(笑)
石井:やっぱり競輪に繋がりますね(笑)ウォーミングアップをするときにも曲を聴いたりライブ映像を観たりしているので、めちゃくちゃ力をもらっています。
山口:昨年お話を伺った時は「普通の開催を大切にしている」と仰っていました。先ほどは今年はGIも普通開催も両方頑張るというお話があったので、その変化は何か思うところがあったんでしょうか?
石井:GIで結果を出さないとグランプリに出場できないからです。GI優勝者が最大3人。決勝2着の賞金も大きいです。いくら普通開催を頑張って賞金を積み重ねても、GIの賞金は追い抜けません。だから両方頑張らないとグランプリ出場が見えてこない。厳しい戦いになりますね。
山口:他の選手の戦い方も変わってくる気がしますね。
石井:そうですね。そこは変化も感じながら、私は私で戦っていきます。
山口:頑張ってください!それでは最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
石井:一緒に練習してくれる仲間、一緒に走るガールズメンバー、お客さん、周りの施設の方、その他関わってくれている方達、それ以外にも、走れている体、自転車などの機材、練習環境や施設、ごはんが食べられることなど全てに対して感謝して日々を過ごしていきます。大森さんの病気から感じたように、走れることが奇跡なことだし、病気だけではなくいろんなつらい思いをしている方もいます。私は自分ができることを、目の前の一走一走を思いを込めてこれからも走り続けたいと思います。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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