6年ぶりに出場した『オッズパーク杯ガールズグランプリ2022』で2着、また先日伊東温泉競輪で行われた『ガールズケイリンコレクション2023平塚ステージ』のトライアルレースでは決勝2着と、コレクションへの切符を掴み取った山原さくら選手(高知104期)。ガールズグランプリ、トライアルレースの振り返りと今後の意気込みをお伺いしました。
山口:まずは6年ぶりのガールズグランプリ出場はいかがでしたか?
山原:久しぶりに走らせてもらえるので、すごく緊張しました。
山口:前夜祭の配信の時にもお話伺いましたが、動くタイプの選手も多くいらっしゃいましたね。
山原:自力の選手が多く、先行をしたいという選手もいたと思います。「どの位置なら自分の持ち味が出せるんだろう」と逆算した時に、やっぱり皆さん強いので、たとえ私が展開を上手く組み立てられても脚が足りない分、なかなか自分が優勝できる想定ができませんでした。
山口:前検日入られた時は雰囲気はいかがでしたか?
山原:「やっぱりグランプリは違うな」と久しぶりにこの雰囲気を味わえた嬉しさと、緊張感が混ざっていました。
山口:昨年はビッグレースも何度か走られましたが、また違いますか?
山原:そうですね。やっぱりグランプリは特別です。入る前から、いや出場が決まった時から実は緊張していました。いざ競輪場へ向かおうという移動中も緊張しましたね。前検日は、忙しすぎてあっという間に終わってしまったんですけどね。
山口:取材などが詰まっていたんですか?
山原:そうですね。「こんなに取材があるんだ!」と思ってびっくりして、あっという間に1日が終わりました。今年は前検日の27日に入り、28日は走らない日で空いていたんですがそこも緊張してました。一番は当日の特別選手紹介の時にお客さんの前に立った時です。本当にたくさんの数のお客さんがいたので、死ぬほど緊張しました。
山口:6年前のグランプリと比べていかがでした?
山原:6年ぶりに出場できた嬉しさもあったんですが、実は自分の中では「これが最後のグランプリかもしれない」という思いだったんです。だからその二つの感情に加えて、今、防府競輪場で練習でお世話になっているのですが、皆さんにギリギリまで練習やアドバイスをしてもらったので、何とか結果で応えたいという思いと、たくさんの感情が交錯しての緊張感でした。
山口:そうでしたか。たくさんの思いを背負ってのグランプリだったんですね。ではレースを振り返っていきます。打鐘で後方から動いていきました。一旦は前に行こうという感じだったんですか?
山原:スタートではもう少し前の位置にいられるかなと思っていたんですが、予想が外れて6番手になってしまい、更に前では尾方選手ー奥井選手の順で並んでいたのを見て「あ、もう終わったな」と思いました(笑) 「競輪祭が終わってから1か月間、作戦めちゃくちゃ考えたのに、私の作戦を考える力が甘かったのかな」と反省しました。
山口:そうですよね、メンバーが出てからはずっと考えますもんね(笑) でも、その二人の後ろに入り、尾方選手の先行を奥井選手が番手から捲りに行きました。後方の仕掛けも警戒していたと思うのですが、あの時はいかがでした?
山原:捲りがちょうど奥井さんの仕掛けと合ってしまったんですよ。事前の想定練習では、2コーナーから捲りに行くというイメージでやっていたんですが、いざそうなった時に「どうしよう、捲りたいけど後ろの仕掛けも気になる。もう少し待った方が良いかな、でも捲りに行きたい」と葛藤がすごくありました。
山口:奥井選手の捲りを追い、4コーナーから追い込んで行く時は優勝も見えていたのではないですか?
山原:必死でしたね。とにかく。
山口:外から誰かが来ているなというのはわかったんですか?
山原:すごい勢いで誰かが飛んできた、というのはわかりました。スピードにびっくりしました。
山口:そうでしたか。結果は2着でしたが、ご自身で内容や結果を振り返っていかがですか?
山原:初めてグランプリで確定版に乗れた(3着以内に入れた)ので、すごく嬉しかったです。でももう少しで優勝というのもあったので、優勝は難しいんだなと思いました。
山口:ただグランプリ1着~3着の選手は、今年2023年のGIは有利になるんですよね?
山原:そうですね。GIの出場権はあるみたいなので、気持ちは楽になりました。
山口:また今年もグランプリへ!という気持ちはいかがですか?
山原:昨年は最後かもしれないと思い頑張っていたんですが、今年も頑張ればチャンスがあるかもしれないと思えるので、もうひと頑張りしたいです。出られるだけでもありがたいし、しかも初めてのGIという大会なので嬉しいですね。
山口:年明け、伊東温泉ではビッグレースの出場権はご自身で勝ち取りましたね。グランプリが終わり、トライアルレースがすぐあるというのはどうでしたか?
山原:新年初戦からしっかり走りたいと思い練習はしっかり取り組んでいたんですが、グランプリの疲れが思いのほかありました。終わった直後から疲れすぎて「こんなに疲れるんだ・・・」と思いました。体も頭も、脳も疲れて出し切ったみたいです。初戦の松山には疲れが取り切れないまま参加してしまい、「こんなんじゃダメだ」と反省して以降はしっかり走れたと思います。優勝はできませんでしたが、走り切れました。
山口:伊東温泉のトライアルレースもグランプリで戦った奥井選手をはじめ、先行が得意な選手たちがたくさんいましたね。
山原:皆さん「私が先行!」という自力で強い選手たちばかりでした。私も先行をしたいけど、すんなり先行はさせてもらえないメンバーだなと思っていたので、結構しんどかったです。
山口:予選2では前で一気にスピードがあがり、石井貴子選手(東京)が逃げ切りました(山原選手は追い上げて2着)直前・松山の決勝のような形(見合っている中、先行した高木佑真選手が逃げ切り優勝)になったのかなと思ったのですが、振り返っていかがですか?
山原:最近はあのように牽制されるレースが増えてきており、慌てて前を追っても届かない事が多くなってしまいました。今まではそこまで牽制されなかったので、戸惑いながらも対策をしないとなと思います。
山口:きっと今後は、ビッグレースを中心に山原選手に対する作戦を取ってくる選手もいるのではないでしょうか。
山原:そうかもしれません。牽制されても、気にせず自分の走りをしたら良いのかなとは今思っています。伊東温泉の予選2では、前とタイヤ差まで迫れたので悪くはなかったのかなと思います。
山口:続いて決勝ですが、スタートでは最後方になってしまいましたね。
山原:そうなんです。奥井選手がスタートを取って私は位置がありませんでした。それだと厳しいなと思い、一か八か上がっていったら奥井選手が前に入れてくれた形で前からの組み立てになりました。助かりました。
山口:もし上がっていってどこにも入れなければ、下がって後ろからの組み立てと思っていたんですか?
山原:そうですね。でも奥井選手がスタート行くような気がしていたので、一か八かでした。
山口:荒牧選手が2番手の外で並走をしていました。「前を切りに行くかな」という予想だったんですか?
山原:はい。でも結果が出てから振り返ると、私が荒牧選手を突っ張って出させなければ、石井貴子選手(東京)が行き、その上を久米選手がかましにいったので、私は3番手が取れたんですよね。そうしたら、もっと久米選手とゴール前で良い勝負が出来たんじゃないかと思いました。
山口:なるほど。一車でも前にいたら、もっと捲りで迫れていたということですね。
山原:はい。石井選手や久米選手も出させないくらい突っ張れるのが一番良いですが、もしいかれたとしても2車で、自分は優勝の射程圏の3番手だったと思うと「ちゃんと突っ張れたら良かった」とすごく後悔しています。
山口:1着の久米選手との着差が【3/4車輪】ですもんね。
山原:そうですね。前との車間もあいていましたが、脚は悪くなかったのであの展開でも行けるかなというのはあったんですけどね。
山口:コレクションの絶対権利は決勝2着でしたが、権利は取れるかなというのはありましたか?
山原:はい、最終ホームストレッチでは確定版はいけるかなと思いましたし、感じも良かったので優勝まで!とも思いましたが、久米選手が強かったです。
山口:コレクション出場をご自身の手で掴みました。結果が出て改めていかがですか?
山原:コレクション自体も久しぶりなので、グランプリ同様しっかり緊張感を持って頑張りたいなと思います。
山口:今年もレースが始まっていますが、今年はガールズケイリンが一気に変わりそうですね。
山原:そうですね。ユニフォームも変わりましたし、GIもできます。新しい1年になりそうですね。
山口:山原選手は2期生でデビューされて、ビッグレースに出ていない期間もありました。普通開催でのガールズケイリンのレベルの変化というのはどう感じていましたか?
山原:毎回、いつも走るたびにレベルが上がっていると感じます。大きいレースに出られない時は、「上で戦いたい」と思えなかったです。そのレースを走るのが精一杯という感じでした。「またビッグレースに出たい」と思うこと自体がプレッシャーだったりメンタル的にきつかったです。だんだん良い成績を残せるようになってくると「もっと頑張りたい」と思えるので、レベルが上がってしんどい分、やり甲斐もありますね。
山口:昨年は1年を通してビッグレースも走られましたが、以前との雰囲気や各選手の戦法の違いというのは感じましたか?
山原:一番違うのはトップスピードが上がったことだと思います。上りタイムが全然違いますね。以前は11秒台の上りタイムがでると「うわ、すごいね!」という感じでしたが、今は上位選手はほぼ11秒台を出しています。
自分もそれくらい出せるようにならないといけないですし、勝つにはそれ以上のタイムを出さないと勝てないです。ガールズケイリンのレベルが上がっていく以上は、私も新しいことに取り組んで、細かく考えながら練習をしていかないといけません。でも自分自身もそれでレベルアップしていく環境にはあるのかなと思います。
山口:今年の目標は何ですか?
山原:昨年久しぶりにグランプリを走れて「またここに戻りたい」と思えたので、年末またもう一度グランプリに出場すること。そしてGIが新設され、大きいレースを走れる機会が今年は多くなると思うので、どこかで優勝ができるように頑張りたいです。
山口:GIの新設で、単発レースが減りトーナメントが増えました。どちらが得意などはありますか?
山原:以前は単発レースの方が好きだったんですが、勝ち上がりで2走目に修正して決勝に上がれたというのも去年あったので、失敗しても修正がきくのは勝ち上がりの方ですよね。どちらが好きというのは今はなく、その時に応じた走り方をできているのかなと思います。
山口:戦法を含めて、強化ポイントはどこですか?
山原:一番はダッシュ力を強化したいですね。
山口:同型がいた時の対応も含めて、ですか?
山原:それもありますが、一番は入れ替わりの激しいレースになるとダッシュがないと立ち遅れてしまうんです。毎回ガールズでそういうレースがある訳ではないんですが、例えば33バンクだと、前の方にいたのに気づいたら後方になってしまう時もあるんです。
流れに遅れないよう前々にいるためには、パパっと動け細かく切り替えるダッシュや、相手の選手に簡単に出られないように合わせるダッシュが必要なんです。豪快な捲りを出せるよなダッシュももちろん欲しいんですが、要所要所の切り替え動作をそつなくできるようになりたいなと思っています。
山口:競輪祭の決勝が、流れに立ち遅れてしまった、そんなレースだったんでしょうか?
山原:ああ、そうですね。最初はすごく良い位置にいたんですが、自分のダッシュが無くて後ろの児玉選手の仕掛けに対応できずにあっという間に後方になってしまいました。
あの時は、競輪祭の決勝に乗れた段階で私はグランプリ出場は決まっていたんですが、7着を取り大きな課題が見えたレースでした。「グランプリ出場決定!」の嬉しい日ではなく「自分がすごく弱いな」と感じた日でした。でもそのレースがあったからこそ、グランプリに向けて色々試そうと思えました。
山口:私の感想ですが、このレースちょっと不思議だったんです。前にいる山原選手が後方になってびっくりしましたが、そのような理由があったんですね。聞かせていただきありがとうございます。
山原:そうだったんです。
山口:では、最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
山原:昨年は久しぶりにガールズグランプリを走れて、初めて確定版に乗れ、デビュー10年目にして初めて大きな結果が出せました。今年は更に自分が成長して結果を残すのはもちろん、見ていて応援したくなる選手に1年間通してなれるように頑張るので、今後も応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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