3月に、福井競輪場のウィナーズカップ最終日に行われた『ガールズケイリンコレクション2020・福井ステージ』を優勝した児玉碧衣選手(福岡108期)。
その時の振り返りと、今後への意気込み、そして現在の練習状況や目標などをお伺いしました。
(このインタビューは4月19日に取材したものです。)
山口:『ガールズケイリンコレクション2020・福井ステージ』優勝おめでとうございます。
児玉:ありがとうございます。
山口:前検日はどのような気持ちで入りましたか?
児玉:1月にガールズケイリンコレクショントライアルレースで負けてしまい、5月のコレクションには出られないのがわかっていましたし、入る前までの賞金ランキングでも下の方だったので、年末のオッズパーク杯ガールズグランプリに出るには今のままだと厳しい状態でした。
「この3月のコレクションを優勝しないとグランプリは難しい、優勝しないといけない、絶対優勝したい」という強い気持ちがありましたね。
山口:私も現地でインタビュアーをしていて、走る前の特別選手紹介の時にも「優勝しないと」ということを仰っていました。また優勝後も5月のガールズケイリンコレクションが出られないということを仰っていましたが、そこは強く意識されていたんですね。
児玉:はい、そうですね。今年はここまで、賞金争いが去年よりも熾烈だと思います。このコレクションを走る前の段階で、私の成績は岐阜のトライアルレース決勝で7着を1回、後はすべて1着で完全優勝も何度もしていたけど、賞金ランキングトップの選手とはかなり差がひらいていました。
それに加えて5月のコレクションが出られないので精神的にも辛く、自分の中で「どうしよう、今のままじゃ厳しい」という状態でした。でもその気持ちでレースを走りたくなかったのでここで優勝するぞという強い気持ちをもっていましたね。
2020年前半で、ある程度賞金ランキングで上位にいられたら、後半はガールズグランプリに向けて集中したり、少し余裕を持てると思いますし、後半になって賞金ランキングの差が詰まってきた場合でも、コレクションを1本優勝していれば精神的にも楽になると去年感じました。
そういう1年を通して総合的な面、後は5月が出られないなら尚更、今回のコレクションは優勝したい気持ちが強かったです。
山口:プレッシャーもあったと思いますが、それを「自分に言い聞かせているのかな」と感じたんですがどうですか?
児玉:めちゃくちゃ自分に言い聞かせていましたね(笑)。もうこれ優勝しないと今年はグランプリ出られないぞ、と言い聞かせていました。
山口:焦らず走れましたか?
児玉:福井に向けてものすごく練習をしたんです。それでしっかり自信をつけて前検日に入りました。普段は、前検日はあまり緊張しないんですが、さっきも言った「ここで優勝したらグランプリ出場が厳しくなる」という自分へのプレッシャーもあったので、今回の前検日はかなり緊張していました。
緊張しすぎると体が硬くなって消極的になってしまい、本来の力が発揮できなくなることが以前は多かったのでレース直前には「負けたら負けたで仕方ない。自分の力を発揮して最大限やろう」と気持ちを切り替えて臨めました。
山口:レースを振り返ります。梅川風子選手(東京112期)が正攻法からそのまま先行体制になりましたが、展開はどう想定していましたか?
児玉:今回のコレクションを走る選手で、直前に調子を上げていたのは梅川さんだと思っていて、実は注目をしていました。上がりタイムも良かったですし。だから、得意パターンの捲りでくるかなと思っていたので、まず前を取るのが想定外でしたね。
全員のあの位置だと梅川さんが逃がされる形になりそうだと思い、その時点で梅川さんの事は捲りきれると思ったので、他の選手の動きに注意を向けました。
もし梅川選手が捲りだった時、私の捲りが合わされてしまう、もしくは内に詰まってしまうのが一番の負けパターンだと怖かったんです。でも梅川さんが先行になりそうで、そのパターンはなくなりました。
後は真備さん(高木真備選手・東京106期)が途中で車間あけてるな、くらいでかなり落ち着いて走れました。
山口:最終バックストレッチでは前とかなり遠かったように思いましたが、その辺りはいかがでしたか?
児玉:真備さんがかなり車間をあけていたのがわかったので、真備さんの仕掛けを待ってから私が仕掛けても良いかなとも思いましたが、仮にそれで負けた場合すごく後悔すると思うんです。それなら仮に負けたとしても、自分のタイミングで仕掛けていって負ける方がまだ後悔はしないなと覚悟して仕掛けました。
真備さんに捲り合わされてもがき合う、もしくは私の後ろに貴子さん(石井貴子選手・千葉106期)がいたので、どちらかとの勝負かなと思っていました。
あのタイミングで仕掛けたのが、結果として正解でしたね。
山口:例え負けたとしても、という覚悟は勇気が必要だったと思います。
児玉:そうですね。でも真備さんの車間が1車身や2車身ではなく、それ以上あいていたように思ったのでそれが怖かったんです。勇気を持って仕掛けてその踏み出したスピードがとても良かったので、それで最後まで自分を信じて踏みましたね。
山口:今お話を聞いて意外だったのが、展開として先行した梅川選手の2番手から尾崎睦選手(神奈川108期)が先捲りをしました。でも児玉選手は、尾崎選手より高木選手を注意していたんですね。
児玉:そうですね。私はさっきも言いましたが、車間があいているのが怖いんですよね。去年、荒牧さん(荒牧聖未選手・栃木102期)にそういう負け方を何度かしているんですよ。
車間あけて牽制をされ捲りが届かずに着外など、何度か経験をしてその記憶があるので恐怖感があるんだと思います。【車間のあけすぎ注意】みたいな...(苦笑)
山口:なるほど!今までの経験があったんですね。
児玉:はい、他の選手の仕掛けを待つんじゃなく自分から仕掛けようと思っていきました。
山口:優勝したことで、ご自身の中では一安心ありましたか?
児玉:優勝はもちろん嬉しいんですが、賞金ランキングでは実はあまり差がひらいていないんですよ。開催も中止になっている部分もあり、各選手の斡旋に差があるので仕方ないんですけどね。なので、まだ中盤頑張らないといけないです。
山口:今のモチベーションとしては何を目標にしていますか?
児玉:次のビッグレースが7月いわき平でのガールズケイリンフェスティバル(サマーナイトフェスティバル)なので、そこで優勝したいです。
今までのビッグレース、コレクションで、3月、5月、8月(ガールズドリームレース)、競輪祭でのグランプリトライアルレースは全部優勝しているんですが、唯一ガールズケイリンフェスティバルだけ優勝できていないんです。なので、今年こそ、という気持ちです。
山口:いわき平は初めてガールズケイリンコレクションを優勝したバンクですよね。
児玉:そうなんです。初めて大きい舞台を優勝できたのが2018年8月いわき平・オールスター競輪でのガールズドリームレースだったので、今年は私にとって良いバンクでガールズケイリンフェスティバルをやるなぁと思っていたんです。なので、そこでも優勝して賞金ランキングで上位にいき、余裕を持ってガールズグランプリを走れるようにしたいです。今走れるレースをしっかり勝って、賞金を上積みしていきたいです。
山口:今、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から開催が全国的に中止になっています。練習はどのような状態ですか?
児玉:いつまでこのような状態が続くかもわからないので、やれることは限られていますがそれを頑張るしかないですね。室内でのトレーニングやその他でもできることを見つけてやっています。
山口:モチベーションの維持はどうしていますか?
児玉:競輪場によって開催をやる、やらない、の判断は難しいと思います。でも私は5月のコレクションに出られない分、走れるところはしっかりと優勝していきたいので、それをモチベーションにやっています。一本一本集中して頑張ります。今年全体を見てだと、先ほどのガールズケイリンフェスティバル優勝と、ガールズグランプリ3連覇を目標にしています。
山口:3連覇は年頭から意識しているんですか?
児玉:はい、しています。昨年のグランプリはあまりすっきりした終わり方ではなかったんです。アクシデントがあり私も審議の対象だったので、結果が出た時も「1着だ、連覇ができて嬉しい」よりも「失格じゃなくて良かった」というほっとした気持ちでした。なので、今年は「勝ったぞ!」という気持ちを味わいたいなと思うんです。
山口:なるほど、ありがとうございます。では最後にオッズパーク会員の方へメッセージをお願いします。
児玉:いつも応援ありがとうございます。今、大変な時期ですが自分のできることを精いっぱいして、走れる開催の時は精いっぱい走って優勝したいです。
またこの後、7月ガールズケイリンフェスティバルそしてガールズグランプリと続けて優勝、3連覇できるように頑張っていきます。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA