8月に行われたオールスター競輪でのガールズドリームレースで優勝をした石井寛子選手(東京104期)。レースの振り返りと現状の成績や活動、また年末へ向けてのお話をお伺いしました。
山口:ガールズドリームレース、優勝おめでとうございます。
石井:ありがとうございます。
山口:率直なお気持ちはいかがですか?
石井:嬉しかったんですが、走っていて「今後どうしよう...」と思いました。
山口:具体的にはどういうところですか?
石井:私が勝ったことによって碧衣ちゃん(福岡108期・児玉碧衣選手)の強さを身に染みて感じたレースでした。本当に嬉しかったんですが、レース後にはどう対策を立てようかも全く思い浮かびませんでした。
山口:すんなり児玉選手の後ろを取れたら勝てるけど、そうではない場合は、ということですか?
石井:「勝てる」ではなく「今回はたまたま勝てたけど次はそうじゃない」という感じです。今回以上の良い展開はないだろうし、今度もそういう展開にはならないと思います。
山口:他の選手も、石井選手にあの位置を取られたら厳しいと思うでしょうしね。
石井:どうでしょうか。他の選手はどうかわかりませんが、今回に関してはただ碧衣ちゃんの強さを凄いなと思いましたね。
山口:どのあたりで特に強さを感じましたか?
石井:碧衣ちゃんがダッシュをした時に、私も踏んでついていき良い位置を取れました。最終バックストレッチも2番手の位置だったので「これは差せるかもしれない」とは思い、自分の好きな展開にはなったんです。
でも、終わって上がりタイム(残り半周のタイム)を見たら、碧衣ちゃんが11秒7の逃げで私は11秒6の差しでした。11秒6って私の自己ベストなんです。逃げてこのタイムなら、捲りだと多分もっとタイムが良いはずですよね。
今回のこの絶好の展開だったから優勝を出来ましたが、他の作戦だと絶対に自分の優勝はなかったとタイムを見て確信しました。本当に今後の対策をどうしようか難しいです。
山口:ただ、この優勝はひとつの大きなものだと思いますが、いかがですか?
石井:そうですね。賞金ランキングでも上位にいるので、まだ確定ではありませんが、年末のオッズパーク杯ガールズグランプリ出場も大丈夫かなと思えたのが嬉しいです。
山口:今後は年末へ向けて集中できますか?
石井:そうですね、そのようにしていきます。
山口:いつも思うのですが、勝負所では必ずと言っていいほど好位にいるイメージです。レースで展開を作っていくのは何パターンくらい考えるんですか?
石井:メンバーを見て、最高のパターンと最悪のパターンを含めて最低でも5パターンくらいは展開を考えます。私の場合は、レースは頭脳戦ですね。出たとこ勝負は今までで一度もありません。
山口:そうなると相手の走り方も把握しないといけないですよね。
石井:そうですね。そこをしっかり把握して想定しておきます。新人選手もまだバッチリ把握はしていませんが、どんな感じでレースをするのかは何走かのVTRなどを見て情報収集をしています。
山口:それが想定外の時はありますか?
石井:うーん、あるんですがそこまで多くはないですね。最悪の負けパターンも考えて「こうならないようにしよう」と思って走るのでそんなにないです。
山口:道中で負けパターンの展開になってしまった時はどう修正しますか?
石井:「あ、これは負けたな」と思います(苦笑)。もちろん立て直しに行くんですが、できない時ももちろんありますね。その時には、やっぱり道中から展開想定をしたように走らないとだめだな、そうならないようにしようと改めて思います。
山口:今後はまず競輪祭でのガールズグランプリトライアルレースがありますがどのような走りをしたいですか?
石井:走り方が難しいですね。各グループで優勝をしたらグランプリに出られるレースですが、私はほぼ賞金ランキングでの出場が決まっています。もちろん出るからには優勝を目指して走りますが、一緒のグループに小林優香ちゃん(福岡106期)がいるので、優香ちゃんに対してどう戦うかがポイントかなと思います。
ナショナルチームで世界のトップ選手たちと戦っている彼女と自分との間にどれくらい差があるのかは知りたいなと思います。
山口:先ほどは対戦した児玉選手のお話もありましたが、小林選手の存在は意識されますか?
石井:そうですね。優香ちゃんはトップレベルだし、今スピードなどもナンバーワンだと思います。対戦してそれを体感したいです。
山口:今後、ご自身では年末へ向けてどのように練習に取り組んでいきたいですか?
石井:体づくりをもう一度やり直したいのと、今年は怪我や病気を例年より多くしてしまい、そのたびにできあがっていた体が戻ってしまうことが多かったので基礎トレーニングをメインにしていきます。
山口:タイムのお話も出ましたが、直前で良いタイムが出るのはモチベーションにもなりますか?
石井:そうですね。数字は大事だと思います。タイムだけではなく、ウェイトトレーニングでも、●kgあがったなど気にしています。感覚としては、男子選手のダッシュに楽に追走できたかなど、そちらで実感することが多いですね。
山口:戦法として追い込み主体のレースをされているからこその感覚なんでしょうか。
石井:それもあると思います。スキル重視でいきたいです。
山口:今後の目標は何でしょうか?
石井:やはりガールズグランプリをもう一度勝ちたいです。しかし今はもう一つ目標があり、来年3月のガールズケイリンコレクション(福井・ウィナーズカップにて)に出場するための選考期間(12月まで)なので、それも出られるように走っています。
山口:本当に1年通して、本当にずっと戦いは続いていきますね。
石井:そうですね。まだグランプリに向けてやっているということは徐々に上がっていっているということなので、10月11月も頑張れるんじゃないかと思います。
山口:先日の台風への寄付もされましたが、今までも何度か寄付はされています。どんな思いでしょうか?
石井:大きいレースを優勝したら寄付をしようと決めています。今回はガールズドリームレースを勝ったので被害の大きかった佐賀と千葉へ寄付しました。また台風19号も重なってしまって、ちょうど私も走っていた川崎ナイターも1日順延をしました。
その川崎を優勝できたので、優勝賞金の一部からもしたいと思っています。やっぱりガールズケイリンができたことが何よりも感謝することだと思うので、その恩返しをしたく自分のできることをしています。
山口:私個人的にですが、トップ選手がそういう活動をされるのは影響力が大きいと思いました。
石井:皆さんにそう思ってもらえたら良いですけどね。私のお金だけでは全然足りないので、私は私のできることをして、それが他の方へも波及して少しずつ積み重なっていけば良いですね。今後も大きなレースや節目の時には続けていきたいです。
山口:ガールズケイリン選手では初めて、獲得賞金が1億円を突破されました。それについてはいかがですか?
石井:自分ではそこまで意識はしていなかったので、記者さんから聞いて「そうなんだ、1億円突破したんだ」という感じでした。ただ、そのニュースをたくさん記事にしてもらったことで多々声を掛けていただけるようになり、プロスポーツ選手としてはとても大切なことだと思いました。
山口:なるほど。プロだからこその夢のある金額ですもんね。
石井:稼げるということを示していけるためには必要だと思います。自分がピックアップしてもらった記事を見てガールズケイリンを始めたいと思ってくれたら最高だなと思います。
山口:そうですよね、ありがとうございます。今後まだレースは続きますが、最後にオッズパーク会員の方へメッセージをお願いします。
石井:10月11月は1着を狙って点数を上げていきたいですし、今後ガールズグランプリへ向けて頑張っていきます。後、今(10月下旬)優勝回数が90回になったので100回を目指して頑張りたいです。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA