世界の壁は・・厚い。本日真夜中に行われた、「凱旋門賞」を見て思った。ディープなら、やってくれるんじゃないか・・と、ものすごい期待していたし、競馬ファン以外の方々も、熱くなっていた。
結果、敗れてしまったけれど、日本最強馬として、胸を張れる内容だったと私は思う。
普段あまりスタートがよくない馬が好スタートを決めると、最後の直線で伸びない事がある。ディープのような馬には接した事がないので、比較にはならないけれど、いつも出遅れて2着・3着という馬が、スタートが決まり好位置につけると、惨敗したりする。馬とは、競馬とは、単純なものではないんですね。
ジョッキーは、ゲートの扉が開いた瞬間に、早く出るか、普通に出るか、遅れるかがわかる。馬が1歩踏み出す前に、わかるんです。本当に1瞬の事だけど。
で、出遅れないと判断すると、その馬なりの、そのレースなりのベストポジションを取る事を考える。出遅れると、私の場合、1コーナーくらいまでは前の様子をうかがう事が多く、その時は「馬なり」のペースで走らせていた。
ベストポジションを取ろうとする場合、「馬なり」よりも速く走らせる事が多い。これが原因で、普段出遅れている馬は、走るリズムを崩す事がある。
ジョッキーはレース中、めまぐるしく頭を回転させている。ゲートが開いた瞬間にどの辺りにつくか決め、1コーナーに入る前にはペースが遅いか早いか判断する。1秒でも迷ったら、かなりのロスになってしまう。
レース前に展開を予想してシュミレーションするけれど、ほとんどその通りにはならないし。
私はどう頑張っても、力では男性に勝てっこない。だから、頭で勝負しようと色々考えていました。まぁ、あんまり上手くいかなかったんですけどね・・。
1人のジョッキーに注目してみると、「あ、今迷った。」とか、「最近吹っ切れたな。」とかって、人間性が見られる瞬間がある。現役時代、ファンの方にそういう指摘をされて、よく観てるなぁ〜と驚きました。
ジョッキーにとって、ファンの目線はとても温かくもあり、怖い存在でもある。そして、そんなファンの存在が、ジョッキーを育てて行くんです。
さてさて、地方競馬では、偉大な記録が誕生しましたね!ご存知「エスケープハッチ」の最多勝です!!次走は2週間後を予定しているそうで、このまま順調に勝ち星を重ねてほしいですね。
高知といえば、ちょっと前に「ハルウララ」が話題になりました。現在休養中との事ですが、復帰のメドは立っておらず、あれだけ盛り上がったのに、引退レースも出来そうにない状況・・。
高知は何年も前から、ギリギリの経営が続いているけれど、ニュースター「エスケープハッチ」の記録達成で盛り返してほしものです。
落馬とうものは、ご想像通り、とても痛い。出来れば、避けて通りたい道である。
現役時代、「落馬の女王」というありがたくない称号を与えられるほど、私は何度も落馬した。落馬の数なら、間違いなくトップクラス!自慢にならないですけどね・・
昨日の「センとライト記念」で、私とほぼ同じ勝負服の蛯名騎手が落馬したのを見て、自分が落ちたようで、体が震えた。ああいうシチュエーションで落ちた事、あるんですよ。しかも私の場合、自分の意思で突っ込んで・・。
デビューした頃の私は、馬群の間隔がわからず、かなり狭いところでも平気で突っ込んで行った。周りに何度怒られても、「どこが危ないの?」てな感じ。「1度落馬しないと、コイツわかんないな。」と言われていた。で、その通り落馬して、「ここまで行ったら落ちるのね・・」と納得。
調教中の落馬はそれほどスピードが出てないし、後続馬もいないけど、レース中の落馬というのは怪我に繋がる事が多い。特に、引っ掛かってるのに身動きが取れないと、前の馬と蹄鉄が当たって「カンカン」鳴ったりする。それはもぅ、落馬へのカウントダウンのようで、本当に怖い・・。
あれだけ落馬しても、大きい怪我をしなかったのは、運が良かったのかな?昨日のお二人も、大事に至らないといいけど・・。
昨日のレース、私はジャンクが本命だったんですが、隣で落馬して、けっこうビックリしていた。競馬は、何が起こるかわからない・・でも落馬は、ない方がいい。
今日の「ダービーグランプリ」、オウシュウクラウンの地方馬初勝利を期待してる。でもこういうアクシデントがあると、人馬共に、無事にゴールしてくれる事が1番だと感じる。本日は、だいぶロマン派より。
「頑張れ!オウシュウクラウン!!」
やっと、復活しました!思いのほか、長々と寝込む事になってしまいましたが・・
私が寝込んでいる間に、私の大好きなジョッキーがまた1人、引退してしまいました。
益田から川崎に移籍した、沖野耕二ジョッキー。益田に遠征した時、関係者の温かさと騎手のレベルの高さに感銘を受けました。土地柄もあるでしょうが、トップに立つ沖野ジョッキーの、技術と人柄による所が大きいと感じました。
川崎に移籍してからは、お会いしてないのが残念ですが・・オッズパーク的には南関ネタは関係ないので、今日は移籍の難しさについて、ちょっと触れてみたいと思います。
地方競馬場というものは、それぞれの競馬場で考え方が全く違う。中央でも各競馬場によって乗り方は変りますが、美浦・栗東から遠征する訳で、基本的な競馬の考え方は一緒です。
でも地方は、競走馬に対する気持ちや接し方、ジョッキーの扱いや育て方まで、競馬場によって変ってきます。同じ北関東でも、高崎は若手が育ちやすく、宇都宮では難しかった。同じ地区でも全く環境が違う訳だから、気候や土地柄が違う多地区になれば、馴染むまでに相当の時間がかかる。
特に、デビューしたての人間と違い、1度どこかの競馬場の色に染まっている場合は、余計に難しい。
「前の競馬場では、こうやってました。」なんて通用しない。みんな、自分の競馬場が1番!という愛情とプライドを持っているのだから、質問する事さえ憚られる。
競馬界は実力社会である。でも、純粋な実力社会では、決してない。ジョッキーは、所属調教師の考え方1つで、育ちもするし、死にもする。周りの環境が、成績に直結するのだ。
私自身は、所属調教師にとても恵まれた。父娘のような関係だったし、所属厩舎の馬は、ゲート難以外すべて乗せてくれた。そして、「自厩舎の調教より、他厩舎を優先しなさい。」と言い、他の調教師に私を乗せてくれるよう、頭を下げてくれた。こんな調教師は、滅多にいない。そして高崎自体も、若手にチャンスの多い競馬場だった。
移籍する事で、今までの環境はすべて変る。それが吉と出るか凶と出るか・・ジョッキー自身の技術も関係するけれど・・ある意味、賭けだ。
高崎から佐賀に移籍した浅沼傑ジョッキー。常に一生懸命で、バカがつくほど(傑君ごめん・・)真面目。みんなが嫌がる馬に喜んで乗って、それで怪我をしてもその姿勢を崩す事はなかった。傑なら、移籍もうまく行くだろう・・そう思っていたけれど、色々大変な思いをしている様子。
高崎と違い、佐賀は若手が育ち難い環境。加えて、馬主の考え方も全く違う。レースに至っては、同じ所を探す方が難しい・・。現在は厩舎が変り、同じ高崎から移籍した佐藤厩舎に所属している。
明日は、1・5・7レースに騎乗予定。もうすぐ2人目の子供が産まれるし、先月あたりから調子も上向き、ファンクラブまであるようで、是非頑張ってほしいと思う。
「ジョッキーを続けられて良かったね。」と簡単に人は言う。でも、ジョッキーを続ける方が過酷な場合もある事を私は知っている。
今日は東京競馬場。
ダービーを生で見るのは、『スペシャルウィーク』『アドマイヤベガ』に続いて3度目だけど、他のG?とは違う独特の雰囲気がありますね。うまく説明出来ないけど、ファンファーレと共に手拍子したり、「ウォー」という歓声も、気合いが入ってる感じ。
私は岩田騎手から買っていたので、またまた撃沈した訳ですが・・・
東京競馬場内にある、盛岡競馬場外馬券場にもいっぱい人がいたので嬉しくなっちゃいました!!
ダービーの後、検量所前にて、細江純子さんと吉岡牧子さんにお会いして、しばし談笑。他の騎手の方もいっぱいいらしたので一緒に行った、漫画家アシスタントの早川さんと、ライターのボマさんに
「千尋ちゃんて、ジョッキーの中ではデカイんだね。」と指摘されました。
女性の標準体型である私は、ジョッキーの中に入るとかなりデカく見えるらしい。実際は157cm、47kgなので、そんなにデカくはないんですけど、パドックで整列した時なんかも
「赤見デカッ!」とよく言われました。
ジョッキー=小さくて痩せている、というイメージが強いらしく、現役時代は初対面の人に会うと必ず、
「減量は大丈夫なんですか?」と突っ込まれました・・。「大丈夫です!!」とムキになっていた私。
私の顔が丸いからって、失礼だわっ!
しかし・・現役時代は全く減量する必要がなかった私ですが、地方競馬教養センターを受験する時の44kg制限と、センター在籍中の45kg制限にはかなり苦しみました。
特に、センターにいた2年間は外出もほとんどなく、少年院のように監視されている生活。週に一度支給されるお菓子が唯一の楽しみです。でも、それを食べるとダイレクトに次の日の体重に響いてしまう・・
そこで私は、センター内で絶対禁止されている、「食べて吐く」という事を繰り返していました。一度吐き過ぎて顔面の血管が切れてしまい、教官に見つかりこっぴどく怒られましたが・・
そんな超過激な減量をしたお陰で、デビューしてからも5年くらいは胃痛に悩まされましたが・・今は至って健康体!好きな食べ物を食べたい時に食べられる、という幸せを噛み締めております。
もしも、私がデビューしてからも減量を続けなければならない体だったら・・おそらく耐えられなくて、すぐにジョッキーを辞めた事でしょう。減量の方法や減らす体重は人それぞれですが、減量と戦いながらジョッキーを続けている方々を心から尊敬しますね。
『ジョッキーは減量する』という事はかなり知られていますが、それがどれだけ辛いかはあまり語られませんよね。「ジョッキーなんだから当たり前!」と言われればそれまでだし。
「大変なんです!辛いんです!!」と声高に宣伝するつもりはないけれど、そんな陰の苦労もしつつ、華やかな舞台で戦っている訳です。
普段のレースに飽きてしまった方へ・・パドックで周回している馬に付けられた馬具で、そのジョッキーの体重が重いか軽いか少しは判断出来ます。色々見比べてみると、面白いんじゃないかな。
今日は大井競馬場へ。
昨年のNAR年度代表馬であるアジュディミツオーが、強い勝ち方をしました。
返し馬で、初の生ミツオー君の走りを見たけれど、筋肉ムキムキの身体で、とても柔らかそうな飛びをしていました。
飛びや背中が柔らかいというのは、走る馬の条件の1つですよね。
私が出会った競走馬の中で、びっくりするくらい背中が柔らかかった馬は、
・ヒロベスト(JRAの富士Sにも出場した、高崎のオープン馬。)
・リキアイフルパワー(高崎大賞典2連覇を果たした、高崎を代表する名馬。)
私のデビュー直後に、
「ジョッキーは、走る馬に競馬を教えてもらうんだぞ。」と、関係者の方々にこの2頭の調教に乗せてもらったのだけど、本当にその通りで、
「背中が柔らかいというのは、こういう事を言うのね!」と衝撃を受けた事を良く覚えている。
あと、2頭に共通していた事は、体感速度が遅い!1ハロン18秒代で走っているつもりが、16秒代だったりする。逆に硬い馬やこずんでいる馬は、体感速度がえらく速い。
この2頭の名馬に出会った事で、色々な事を教えてもらい、競走馬を尊敬するようになりました。
ヒロベストは全身がバネのようで、とにかく走る事が大好きだった。
リキアイフルパワーには1度しか騎乗した事がないけれど、ものすごく賢くて、鞍上が主戦ジョッキーではなくヒヨッコである事を認識し、私に合わせて優しく優しく走ってくれた。
あの背中の感触、今でも忘れない。例えて言うなら、キントウンに乗ってる感じ?(乗った事ないけど。)
あぁ〜馬に乗りたいな・・と思い、東京近郊の乗馬クラブを調べてみると、あらあら・・随分お高いのね・・。
仕方がないので、ロデオボーイ(フィットネスマシーンです。)で我慢している、今日この頃の私です。