今日の荒尾のメインレース、北関東で活躍していた『トウショウゼウス』が出走する。ちなみに6レースには高崎所属だった『ヒカルナデシコ』が出走する。この2頭には直接関わった事はないけれど、敵として同じレースで走ったり、間近で走りを見てきたので、名前を聞くだけで懐かしい。
『トウショウゼウス』の主戦だった鈴木正騎手は、今はシンガポールでジョッキーとして復活。『ヒカルナデシコ』の木村芳騎手は地元群馬でいちご農園を営んでいる。
北関東で活躍していた人達それぞれが、新しい夢や仕事を頑張っている事は、私にとってもものすごく励みになる。
私が引退した直後は、上京して「浅草今半」に勤めていた。競馬界からは完全に離れた状態。新しい仕事、新しい環境に慣れるように、私なりには頑張っていたつもり。あの頃、何故か競馬に興味のないフリをしていた・・中央も地方も一切見ないようにしたし、競馬関係者ともなるべく連絡を取らなかった。
引退した事に対して、悔いはない。当初は移籍も考えたけれど、私を受け入れてくれる競馬場は、全部高崎と同じような状態で、いつ廃止になってもおかしくない。高崎で廃止を経験してから、2度と廃止には立会いたくないと思った。厩務員としてなら、南関東でも受け入れてくれると言われたけれど、私の周りの優秀な厩務員さんを見ていて、自分が同じ事を出来るとは思えなかった。
競馬界を離れても、戻ってくる人はたくさんいる。だってこの世界、本当に面白いもの。だから、自分も戻りたくなりそうで、引退した事を後悔しそうで、競馬が見られなかった。
そんな私を競馬界に引き戻したのは・・「クウガ、名古屋で頑張ってるよ。」という新谷さんの一言だった。
オンワードクウガ・・彼のお陰で、どれだけの喜びと苦しみを味わっただろう・・。500キロ以上の馬体、怖がりの気性、私の技術では、どうしても乗りこなせなかった。
何十回と彼に騎乗し、10勝させてもらったけれど、会心のレースはたった1度だけ。能力があるのに、動かせない・・技術が足りない分、私はギリギリのラフプレーをするようになった。
クウガのレースでは、毎回先輩ジョッキーに怒られるし、必ず裁決委員に呼ばれ注意を受けた。それでも、私は乗り方を変えなかった。今考えると、なんて自己中な・・と思うけれど、あの頃の私は、クウガの背中にいる時だけは、完全に周りが見えなかった。怪我人出なくて、ホント良かったです・・。
クウガの最後のレースになるはずだった、高崎最終レース。前日に裁決委員に呼ばれ、「同じ乗り方をしたら、騎手免許停止にする。」と宣言された。それでも、変えるつもりはなかった。
この時、私は引退を決意したんです。本当に、一緒にレースに乗るジョッキーには迷惑な話ですが・・「クウガのレースで燃え尽きよう!」そう決心していたのに・・大雪で・・。結局幻のレースとなりました。
それほど思い入れが強かったクウガ君が、今も現役で頑張っている・・。私は何をやっているんだろう・・逃げていてはダメだ・・と思ったわけです。
そこから、友人のライターさんに助けてもらい、事務所に所属し、今に至る。
私にとって、競走馬は動物ではなく、人間と同じ、仕事のパートナー。だから馬肉は人肉と同じ感覚。絶対食べられないし、見るのも無理!
私の元同僚たち、人間だけでなく、競走馬も頑張っている。いつか、そんな仲間たちに会った時、胸を張って、「元気?」と言える、自分でいたい。
さぁ、今日は宝塚記念!英雄の登場です!!
昨夜は焼肉を食べ(京都なのに・・)、元気一杯で競馬場へ行くと・・人!人!人!すんごい人!!
今回は記者席には入らず、一般席にいたのですが、あまりの人の多さに圧倒されてしまいました。
彼氏に連れて来られた女の子や、息子と一緒に来たお母さん、夫婦で来ているおじいちゃん・おばあちゃんなどもいて、競馬ファンの層は厚いな・・と感心。
出走時刻が近づくと、みんな一斉に傘を閉じて雨に濡れながらの応援。「おぉ、さすが競馬ファン!愛があるなぁ〜」とまたまた感心。
今回は地方競馬の星☆コスモバルクが出走しているので、私も力が入りました!
バルクは少し掛かりそうになりながらも、鞍上の五十嵐騎手が押さえ、反抗する事なく流れに乗っていました。でも・・4コーナー過ぎ、五十嵐騎手が振り向いてディープの姿を確認した次の瞬間、並ぶ間もなくアッサリ交わされて・・
「ディープ!」「ユタカー!!」「カツハルー!!」とみんながそれぞれ叫んでいる時、私も「バルクー!!」と絶叫。結局馬券に絡む事なく負けてしまったけれど、国民的英雄と同じレースに出走し、いい夢を見させてくれた。
馬券が外れたって・・夕ご飯が京懐石から湯豆腐に変ったって・・損したとは思わない!
コスモバルク様、あなたは地方競馬の英雄です!!!
今日は京都競馬場にて初のイベント。
明日はディープ登場とあって、玄関前にはすでに並んでいる人も・・改めてディープの偉大さを実感。
初のイベントという事でちょっと緊張したけれど、MCの領家華子さんと、お笑い芸人の池山心さんの爆笑トークに助けられ、楽しみながら終える事が出来ました。
イベントを進めている内に気付いたのですが、予想する時、調教時計を重要視する方、多いんですね。私自身、全くとは言いませんが、あんまり気にした事がなかったので以外でした。競馬ファンにはあたり前の常識をたまに見落としてしまうんですねぇ・・。
地方競馬の場合、開催のたびに使うのが基本です。そのたびに目一杯追い切りしたのでは、馬が疲れてしまう・・この辺の事情が、中央競馬とは違いますよね。
我が畠中厩舎では、追い切りをする時に半マイル・3ハロン・2ハロン・ラストとそれぞれタイムを決められ、1秒狂うと怒られました。速くても遅くてもダメ。指示の通りのタイムで走らせる。これがすんごく難しいんですけどね。
だから調教タイムが速いのは速く走らせたからで、遅いのは遅く走らせたから・・という概念が抜けないようで・・。
「追い切り動いても、レースに直結しませんよ。」という私の言葉に、「数字は嘘をつきません!!」と池山さん。確かに、走り方や反応で判断するよりも、正確でわかりやすいかも。
私が予想する時の判断基準は、まず鞍上を見る。で、前走&過去成績を見て、血統と馬場状態を考える。実際に競馬場へ行った時や、中継を見られる時、一番重要視するのは返し馬なんですけどね。
私の返し馬予想、これがなかなか当たるんですよぉ〜。でも・・前日予想は試行錯誤中!!完全に迷宮に入り込んでる状態です・・。
池山さんの意見を参考に、調教時計も大事に扱ってみようっと。結果は後日、ご報告します。
昨日今日と、美浦トレーニングセンターに行って来ました!
初めて記者用の寮に宿泊したのですが、なかなか快適。さすがJRAですね。
何人かの記者さんとお酒を飲みながら、色々な話をしました。苦労した事や嬉しかった事、悔しかった事など、マスコミならではのお話を聞いて、なんだかとても考えさせられました。
現役時代、私はマスコミの事をどう思っていたか・・よくよく考えてみると、それほど重要視していなかった気がする。競馬専門の記者さんは別として、私にインタビューに来る方々は、競馬に興味のない人が多かった。「トレセンて何ですか?」「調教師って何ですか?」と言われると、いくら出たがりの私でも、テンション落ちるってもんです。「なぜジョッキーになろうと思ったのか」「女性だからこその苦労は?」とお決まりの質問が続き、「セクハラ対策は?」と来る。
そもそもセクハラが何であるかよくわからず、よって全く気にした事がない私。でも、記者さん達はそんな答えは望んでないので、なんとか「苦労話」を引き出そうとする。私が語った話を自分の価値観で編集
する訳ですよ。そうすると、結局私の言葉とは意味が違う物になってくる。
「そういう意味で言ったんじゃないのに・・」という事が何度もあり、だんだんと無難な答えしか言えなくなって行きました。人に伝えるって、本当に難しい。そして赤見千尋の文章として世の中に出回れば、例え私の言葉じゃなくても、撤回する事は難しい。 自分が伝える側になってから、こういう事だけは絶対に避けたい!と思ってます。
ただ・・伝える側になって初めてわかった事もある。読み手が望んでいる内容、スポンサーが望んでいる内容、そして語ってくれた人の望んでいる内容と、自身の書きたい内容と・・それらを総合的に考えなければいけない。それは傍目で見るよりも簡単な事ではなく、事実、現在の私の一番の悩みになっている。
美浦でお話した記者さん達は、競馬専門で知識も多く、競馬サークルでもお馴染みの方々。現場の人からも信頼されているようだけど、全員が友好的、という訳でもないらしい。
中央の現場の方々は、私とは比べものにならないくらい取材を受ける。中には、自分が語った事とは違う事を書かれたり、大幅に脚色されて、嫌な思いをした人もいる。そうなると、マスコミと距離を置きたくなる気持ちは良くわかる。 一人でも、そういう記者がいるとしたら、現場としたらいちいち見分ける時間はないので、マスコミ全般に不信感を抱かなければならない。
でも結局、そういう記者は一部だし、多くの記者さんは信念と常識を持って仕事している。「自分がマスコミ側になって、それが良くわかりました!」と、某有名記者さんに伝えると、「ありがとう」と言って嬉しそうに乾杯してくれました。
大切なのは、一人一人との人間関係。現場対マスコミではなく、人対人。人間としての信頼があれば、本音を語ってくれるし、語られた側も、悪用する事は出来ない。現場側でもマスコミ側でも、最後はやっぱり人間性。
私自身、信頼に値する人間か?と考えた時、まだまだ未熟さを痛感。文章力や表現力、競馬知識を勉強するのはもちろんだけど、コミュニケーション能力や人間性も追求しないと、この世界では大きくなれないな・・と実感した、美浦の静かな夜でした。
先日、ジャパンタイムズの記者・バーバラと、バーバラの乗馬クラブ仲間の女子大生・マサエちゃんとアイリッシュパブに行って来ました。
バーバラとは、ダービーの時に知り合ったのですが、日本に20年以上滞在しているとあって日本語ペラペラ、アラン・ムンロ騎手の通訳をしていた事もあって競馬界の内情に詳しく、話していてとても楽しい♪ マサエちゃんは夏休みにアメリカにホームステイするそうで、外人のお客さん達と一生懸命話してました。
その日来ていたお客さん達、おそらく7割は外国の方々。英語・ドイツ語が飛び交い、意味のわからない私・・一応、うんうんと頷いたり、みんなが笑うと慌てて笑ってみたり・・なんと情けない・・。
しばらくして場慣れした頃、バーバラのお友達、カトリーナ登場。彼女は日本に来たばかりで日本語がほとんど話せません。バーバラが通訳してくれて、なんとか会話していると、どーやら彼女、恋に破れて落ち込んでいる様子。これは慰めなければ!と勝手に使命感をおび、つたない英語・・というか単語で、必死に話始めました。するとカトリーナ、日本語でイヤな男を表す言葉は?という質問。日本語ならまかせて!と得意になり、「最低」「最悪」「ろくでなし」というワードを伝授。こんな言葉、教えちゃって良かったのかな・・と後で反省したけれど、乙女心は万国共通なんだな、と実感しました。
私の名前「ちひろ」は、外国の方々には馴染みのない響きらしく、いつの間にやら「チャーリー」と呼ばれ、マサエちゃんは「サミー」と呼ばれ、どう考えてもここが日本だと思えない状態に。
外国の方々って、初対面でもフレンドリーに話しかけてくる。日本人でもそういう方はもちろんいるけれど、やっぱり文化の違いは大きい。短期免許で来日する外国人ジョッキーたちも、楽しそうに見えるし。
地方競馬のジョッキーたちが中央競馬に風穴を開けたように、外国人ジョッキーたちもまた、大きな存在になりました。競馬界の異文化交流がどんどん進んだら、現場は大変になるけど、見る方は断然面白い!地方競馬こそ、もっと外国を受け入れればいいのに・・なーんて無責任に考えちゃうけど。
偉そうに言う前に、私自身が異文化交流を始める事が大事だな・・絶対英語話せるようになるぞ!!
ちなみに通知表、恥ずかしながら『2』でしたけど・・
チャーリーズエンジェル気取りで、ギネスと英語に酔っ払った、楽しい一夜でした☆