今年の地方競馬の3歳世代は、各地で傑出した活躍馬が目立った。
ジャパンダートダービーJpnIを制したミックファイアは、現状の南関東三冠体系最後の三冠馬となった。
8月27日の黒潮菊花賞ではユメノホノオが高知三冠に、続いて29日の王冠賞ではベルピットが北海道三冠馬となった。
ほかにも、現在は脚部不安で休養中だが、名古屋のセブンカラーズはデビューから無敗のまま東海ダービー制覇。金沢のショウガタップリは、大井・黒潮盃で初の敗戦を喫してしまったが、地元金沢では11戦11勝で、石川ダービーなど重賞6勝。兵庫ダービーを制した牝馬スマイルミーシャは、その後古馬B1特別を制して8戦7勝、敗けたのは菊水賞の2着だけ。
秋になって、西日本ダービー(9月10日・佐賀)やダービーグランプリ(10月1日・盛岡)で、各地を代表する3歳馬の直接対決があるのかどうか、楽しみなところ。
そのなかで、高知三冠を達成したユメノホノオの収得賞金が7196万円にもなっていることにはちょっと驚いた。三冠だけで3200万円もの賞金を稼いだ。
スペルマロンが高知所属馬として高知所属時に史上初めて1億円の賞金を獲得したことが話題となったのは、一昨年10月のこと。ユメノホノオがデビューしたのは昨年7月で、それから1年1カ月で7000万円超の賞金を稼いだことでは、近年、いかに高知競馬の賞金が高額になっているかがわかる。
ユメノホノオは、2009年のグランシング以来、14年ぶり4頭目の高知三冠となったが、歴代4頭の高知三冠の賞金を比較すると、以下のとおり。左から順に、黒潮皐月賞/高知優駿/黒潮菊花賞の1着賞金、【 】内はその合計で、単位は万円。
1998 カイヨウジパング 250/300/300【850】
2000 オオギリセイコー 200/300/300【800】
2009 グランシング 27/27/27【81】
2023 ユメノホノオ 800/1600/800【3200】
地方競馬の売上はバブル直後の1991年に戦後のピークを記録し、そこから徐々に減少。2011年にはピーク時の約1/3ほどまでに落ち込んだ。高知競馬の浮き沈みは地方競馬全体よりもさらに極端で、上記3歳三冠の賞金を見ると、2009年は2000年の1/10となり、そこから14年が経過して2023年には、じつに40倍という賞金に跳ね上がった。2000年と2023年の比較でも4倍となっている。
高知競馬の売上がもっとも落ち込んだのは2008年度で、1日平均4042万円余り、年間で約38億8千万円。JRA-PATで地方競馬の馬券発売が始まった2012年頃から飛躍的に売上を伸ばし、2022年度には1日平均8億6796万円余り、年間で約946億円となった。どん底だった2008年との比較では、年間でじつに約24倍となった。
あらためて、高知競馬の現在の売上や賞金はすごいと思うが、もっとすごいと思うのは、どん底だった時期に、その売上とその賞金で、今に競馬を繋いできたこと。
かつて地方競馬は全国30場で行われていたが、2001年、大分県の中津競馬廃止以降、売上の減少などで地方競馬は相次いで廃止となり、現在は15場となっている。
そうした状況でも高知競馬が継続できた要因のひとつとして、売上が低迷した時期には積極的に他地区に遠征して賞金を稼いだということがある。ただそれにしても、他地区に遠征して勝負になるような、ある程度のレベルの馬がいなければできないこと。当時の売上、賞金体系で、それなりのレベルの馬を高知に入れた馬主と、それを育て上げた厩舎関係者の努力があればこそ。
地方競馬は今年の2歳戦から全国的にレース体系が大幅に見直され、新たな時代に向かう。現在まで、高知所属馬でダートグレード競走を制したのは、1998年、第1回として行われた黒船賞のリバーセキトバが唯一。
あらたなダート体系のもと、高知競馬から四半世紀以上ぶりに、ダートグレード勝ち馬が出てくることを期待したい。