少し前のことになるが、11月14日、久しぶりに帯広競馬場を訪れた。コロナの影響もあってなかなか競馬場の取材に出かけることもできず、開催中のばんえい競馬は2020年3月21日のばんえい記念以来、じつに1年8カ月ぶりのこととなった。
この日まず驚いたのは、コロナ以前と変わらないくらい多くの入場者でにぎわっていたこと。帯広市では1カ月以上コロナ陽性者がひとりも出ておらず、それゆえここにきて観光バスが一気に動き出したとのこと。現在の帯広競馬場には、『とかちむら』という地場産品を販売する『産直市場』を中心にした道の駅のような施設もあり、人気の観光スポットにもなっている。
そしてコロナの影響で長く無観客開催が続いていたにもかかわらず帯広競馬場はかなり進化していて、競馬や馬券にはあまり興味がないかもしれない観光客にも楽しめる場所になっている。
まずはスタンド裏。以前はおそらく単なるコンクリートの壁だったと思われるところが、ばん馬をモチーフにした美しい壁画となっていた。
さらにこれは以前からあるのだが、かつてスタンド裏のパドックだった場所にできた『ふれあい動物園』も充実。引退したばん馬だけでなく、ポニーやヤギなどさまざまな動物とふれあえるようになっていて、多くの人たちで賑わっていた。ここでは人参が販売されていて、馬に直接食べさせることもできる。
そして帯広競馬場に行ったら、競馬ファンもそうでない人も、ぜひ訪れたいのが入場門の外にある『馬の資料館』(入場無料)。ばんえい競馬が帯広市の単独開催(2007年度から)になる以前からある施設なのだが、当時はさまざまな歴史的資料が雑然と並べられているだけだったのが、近年ではきちんと順路ができて、展示物もかなり整理された。
ばんえい競馬に関することだけでなく、開拓時代の北海道と馬との関わりや、日中戦争のときに軍馬として十勝の馬が供出された歴史などもある。
ばんえい競馬ファンにとって必見は、ばん馬の祖ともいえる、イレネー号に関する展示だろう。
イレネーは明治44年にフランスから輸入され、昭和3年まで種牡馬として供用された。その直仔は579頭で、そのうち196頭が種牡馬となり、その血をひく種牡馬は全道で599頭にもなったと言われている。イレネー記念という、2歳シーズン(明け3歳)のチャンピオンを決める重賞のレース名としても知られる。
当然のことながら、競馬場内にも『とかちむら』にも、豚丼をはじめとした十勝ならではの食べ物も充実しているのだが、それをここで紹介すると長くなるので、また別の機会に。
夜になると目を引くのが、LED 15,000球が輝く『ばんえいイルミネーション』だ。そりに乗って記念撮影もできる。
そして競馬場を後にする際には、ライトアップされた偉大なるイレネー像を拝んで帰ろう。