ばんえい2歳の1冠目、ナナカマド賞。
8月16日の青雲賞をプラス5キロで勝利したテンマデトドケはデビューからずっとベテランの大河原騎手だったのが、重賞のここで期待の新人・長澤騎手に任されることになった。そして大河原騎手は、これまでずっと鈴木恵介騎手だった牝馬のホクショウシャネルに乗り、その鈴木恵介騎手はといえば、やはりデビューからずっと乗ってきた青雲賞2着馬ハクバオウジのほうを選んだ。
普通に考えれば格上のテンマデトドケのほうが大河原騎手のままということになりそうなものだが、これは長澤騎手への期待の表れなのだろうか。う〜ん。このあたりは悩みどころではある。
ここは青雲賞で1番人気に推されながら5着に敗れたホクショウバトルの巻き返しに期待したい。青雲賞では第2障害をひと腰で越えられず、さらにゴール上で一瞬止まったことで負けてしまったが、それほど離されていたわけではない。前走のA-1ではすんなりと障害をクリアし、第2障害手前で止めずに先行したミスタートカチを余裕で交わし去った。現状、もっとも安定したレースぶりを見せているのはこの馬ではないか。
相手にはハクバオウジ。青雲賞2着で、前走ホクショウバトルが勝ったA-1では差のない3着。ばんえいプリンセス賞をワタシハキレイズキで制し、今シーズン不動のリーディングを守っている鈴木恵介騎手の勢いを買う。
ミスタートカチも差はない。プラス5キロの青雲賞は4着だったが、その後の2戦はホクショウバトルと1、2着を分け合った。
以上3頭の騎手は、奇しくも今シーズンのリーディング目下の上位3名。ここに新人・長澤騎手のテンマデトドケが割って入れるかどうか。
ただ近走のレース内容からもこの4頭には差がない。第2障害で仕掛けるタイミングや駆け引きが結果を大きく左右しそうだ。
◎ホクショウバトル
○ハクバオウジ
▲ミスタートカチ
△テンマデトドケ
中山・オールカマーへの出走がかなわなかったコスモバルクが再び盛岡の芝を狙ってきた。前走、せきれい賞ではコスモヴァシュランに7馬身差もつけられるまさかの2着。3コーナーで先頭に並びかけたときはそのまま楽勝かと思ったが、うしろから来たコスモヴァシュランにあっさり交わされ、直線でも差を詰められなかった。ただこの日は雨の不良馬場。田部調教師はレース前に「雨、上がってくれないだろうか」と何度も言っていて、たしかにレースの時にはほとんど上がっていたのだが、馬場は水しぶきが上がるほどの状態だった。今回はピンポイント予報を見ると天気も馬場状態もよさそうなだけに、負けるわけにはいかない一戦。
中央に在籍していた05年以来、4年ぶりに芝のレースに出走するキングスゾーンにも期待したい。ダートグレードでは苦戦するようになってきたが、水沢のみちのく大賞典を制し、園田でのオッズパークグランプリ2009でもマルヨフェニックスの2着と、地方同士なら全国区でもまだまだやれる。当然のことながら問題は芝がどうかということだが、コスモベルクは別格としても実力だけで言えばこのメンバーなら上位だ。
地元勢の期待はやはりボスアミーゴ。2番人気だったせきれい賞は大きく離された6着だったが、これは馬場の影響だろう。昨年10月のきんもくせい賞でも、やはり小雨の不良馬場で1番人気に支持されながら5着に敗れていた。コスモバルク同様、良馬場で走れるであろう今回はあらためて期待。
せきれい賞で、「芝のほうがいい」という陣営の期待にこたえたコスモヴァシュランだが、コスモバルクに7馬身という差は期待をはるかに上回るものだったようだ。レース後、町田騎手は「ほかの馬はみんなノメっていた」と言っていたように、水しぶきが上がるほどの不良馬場はこの馬にだけ大きく味方した。良馬場になるであろう今回、あらためて力が試される。
◎コスモバルク
○キングスゾーン
▲ボスアミーゴ
△コスモヴァシュラン
「アラブ系」という条件のレースもとうとうこれが最後となった。
大井の全日本アラブ大賞典の最後が96年のことで、あのときはまったく別の仕事が押してしまい、品川駅でタクシーに飛び乗って大井競馬場に着いたのが発走の5分ほど前だったのを思い出した。あれからもう13年もたったのかと思うと感慨深い。
最後のレースが7頭立てはちょっと寂しいが、ぼくなどはむしろここに出走している馬よりも、父の馬名を見てさまざまなアラブの名勝負を思い出す。さすがにそれを書き始めると長くなるのでやめておくが。
アラブの最後に際して出てきた強い馬がラストアラビアンとは、馬主さんのセンスのよさを感じさせる。そんな馬がラストのレースで重賞初制覇に賭けるわけだが、近走の直接対決では、やはりフジノコウザンのほうに分がありそうだ。
フジノコウザンといえば、アラブ系として最後の全国交流となった07年のタマツバキ記念アラブ大賞典を4番人気で勝ち、鞍上の池田敏樹騎手とともに重賞初制覇を飾って話題となった。
フジノコウザンがここでも最後のアラブ重賞を制することになるのか。それとも、ザラストアラビアンが最後のアラブ重賞で重賞初制覇を果たすのか。いずれにしてもこの2頭の勝負だろう。
ホワイトモンスターは、今年1月以来勝ち星から遠ざかっているものの近走でも常に上位争い。モナクカバキチは、長らく名古屋や荒尾でも活躍したが、アラブが最後になるにあたってデビューの地、福山に戻ってきた。この2頭が上位2頭に割って入れるかどうか。
◎フジノコウザン
○ザラストアラビアン
▲ホワイトモンスター
△モナクカバキチ
転入初戦で半信半疑の面はあるが、吉田稔騎手を起用してきたエイシンラージヒルの実績に期待してみたい。前走阿蘇ステークスは最下位だったが、前々走のKBC杯は勝ち馬から0秒7歳の4着。中央のダートオープンでこれだけ走れる力があれば、今回のメンバーなら能力は最上位。あとは地方の砂に適性があるかどうかということになる。
テキサスイーグルは昨年、連対を外さない活躍で下級条件からオープンまで上り詰め、名港盃を制した。その後中央入りして500万では3着が最高だったが、再び名古屋に戻って名港盃を2着。くろゆり賞で離された5着はミツアキタービンが強すぎたためで、前走A3特別をきっちり勝った。エイシンラージヒルに未知数な部分があるため、連軸ならこちらかもしれない。
安定度ならサンキストゴールド。重賞勝ちこそないものの、昨年4月にA級に格付けされて以降、30戦して3着以内を外したのは4回のみという堅実な成績。
フサイチウィードは6月のサマーカップで5着、8月のくろゆり賞では4着、金沢に遠征してのイヌワシ賞で3着と、重賞で確実に掲示板を確保。一線級不在の今回のメンバーなら馬券圏内も期待できそうだ。
◎エイシンラージヒル
○テキサスイーグル
▲サンキストゴールド
△フサイチウィード
2歳牝馬による重賞で、1戦1勝の馬以外、ここまで勝ち続けている馬がいないという難解なレース。
ここは「地方では負けていない」ということで、金沢から遠征のクラピカンハマーを狙ってみたい。地元での2戦ともに900メートル戦だったが、JRA新潟のダリア賞で1400メートルを経験した。後方ままの13頭立て11着という成績だが、勝ち馬からは1秒3差とそれほど離されたわけではない。芝の速いペースでの経験が生きるはずだ。吉原寛人騎手は兼六園ジュニアカップまで今シーズン早くも重賞3勝。鞍上にも勢いがある。
地元勢ではラッキーガーデンが筆頭。デビュー戦こそ逃げて2着に敗れたものの、その後距離が1400メートルに延びた2戦を連勝。好位からの抜け出しというレース運びにも安定感があり、いずれも勝ちタイムはまずます。
金沢のスマートパワーにもチャンスはありそう。前走は逃げてクラピカンハンマーに差されたとはいえ、クビ差の2着。こちらも1400メートルはJRAのダリア賞で経験。最下位に敗れたが、直線を向くまで先頭というスピードは見せた。
デビュー戦5着のあと2連勝のオンワードキラもスピードはありそう。
アートオブビーンはデビュー戦を10馬身差で圧勝。2戦目は4着に敗れたものの、先着されたのはいずれも牡馬で、1400メートルのタイムだけを見れば、ラッキーガーデン、オンワードキラとまったく同じ1分31秒2で走っている。
◎クラピカンハマー
○ラッキーガーデン
▲スマートパワー
△オンワードキラ
△アートオブビーン