内田利雄騎手が、6月24日から8月15日まで岩手競馬で期間限定騎乗する。昨年に続き岩手では2度目のこと。
状況はこの1年で大きく変わり、期間限定騎乗も地方競馬のすべての地区で、それぞれの条件に沿った形で受け入れられるようになった。
1年前、こういう形で(当時は「短期所属替」と言っていた)騎乗が可能になったことは驚きとともに伝えられた。
当時、ぼくは少しでも早く状況を把握したくて水沢まで話を聞きに行った。
その年の3月限りで宇都宮競馬が廃止となり、居場所をなくした内田利雄騎手は、騎手免許は全国共通のものだから、1カ所にとどまらずに全国の競馬場を転戦して騎乗できるよう希望し、その道を模索していた。
当時から、2〜3カ月ずつさまざまな競馬場に所属して全国を回りたいという希望を持っていたが、それはかなり夢物語に近かった。しかし、その後、笠松、南関東(浦和)、兵庫と所属場所を替え、そして今回また岩手に戻ってくるという、思い描いていたことを最初の年から実現してしまったことには驚くばかりだ。
3000勝ジョッキーとはいえ、いわばアウェーの地で、有力馬はなかなかまわってこないという厳しい状況。それでも岩手では、船橋からの遠征馬でクラスターカップGIIIへの騎乗を果たした(11着)。
笠松では、かつて同じ北関東の高崎で活躍していた川嶋弘吉厩舎のタイガーロータリーの鞍上をまかされ、重賞・スプリントを制した。
昨年はJBCが名古屋での開催だったことで、その時期に笠松に所属してJBCにも騎乗できれば……という希望も見事に叶え、そのタイガーロータリーでJBCスプリントに出走した。
そうこうしているうにちに最大の目標だった南関東でも期間限定騎乗の門戸が開かれ、年明けからは浦和に所属して南関東で騎乗した。
こうやって活躍している場面ばかりを挙げていくと華々しいが、やはり生活は苦しいという。賞金の高い南関東で長期間騎乗できるなら別だが、賞金がギリギリまで切り下げられたような地区ではかなり厳しいという。
それゆえ、厩舎の空き部屋か、調整ルームの一室を借りて住むという生活が続いている。
栃木にいる家族と離れた生活を強いられることも、並み大抵の苦労ではないだろう。
さて、2度目の岩手でのシーズンがスタートする。
1年間全国の競馬場をさすらい、おそらくパワーアップしているであろう騎乗ぶりを、また岩手の地で見られるのが楽しみだ。