地元で10年振りに行われたビッグレース「第37回共同通信社杯GII」でタイトルを獲得し最速GII優勝記録を更新した山口拳矢選手(岐阜117期)にお話を伺いました。
大津:共同通信社杯優勝おめでとうございます。
山口:ありがとうございます。
大津:優勝したお気持ちはいかがですか。
山口:地元で結果を残せたので凄く嬉しいです。
大津:GII制覇の最速記録を大幅に塗り替えましたね。
山口:個人的にはあまり最速記録というのは意識はしてなかったです。それよりも地元でタイトルを獲れたってほうが感慨深いです。
大津:地元戦でプレッシャーもあったのではないですか。
山口:大会前とかは周りの人が思っているほどプレッシャーは感じていませんでした。ただ、勝ち上がるにつれて自分の中でプレッシャーが重くのしかかってきました。
大津:今大会はどのような思いでのぞまれたのでしょうか。
山口:そこも特に気負うことなく他のレースと同じ感じで入りました。
大津:立川から共同通信社杯まで少し日にちが空きましたが、調整面などはいかがでしたか。
山口:立川からフレームを新しくしたので、そのフレームを共同通信社杯でも使うかどうかというのを悩んでいました。その中で師匠にセッティングをみてもらってだいぶ良くなったので使うことにしました。実践で使って、もしダメだったら変えようかなと。
大津:今大会は自動番組が組まれました。初日は積極的にいく場面もありましたが振り返ってはいかがでしたか。
山口:想定内の動きでした。詰まったところで仕掛けられたので、結果は4着でしたが悪くはないなと思いました。
大津:2日目は芦澤辰弘選手(茨城95期)の先行をバンクレコードタイの10秒7の快速捲りで捉えました。
山口:芦澤さんのコメントがすごくヤル気だったので駆けていくだろうと考えてました。なので自分は焦らずに仕掛けていこうと冷静にレースの流れを見ていました。2日目が風がなくて一番走りやすかったです。踏み込んだ時点でいけるという感触がありました。
大津:準決勝戦は吉田選手(吉田拓也選手・茨城107期)、新山選手(新山響平選手・青森107期)、嘉永選手(嘉永泰斗選手・熊本113期)との細切れ戦となりましたが、どのような作戦を立てていましたか。
山口:新山さんと嘉永くんが主導権争いをするかなと思ったので、そういう時に自分がどの位置にいるかなってところだったんですけど、スタートから並びが想定外っていうのがあって瞬時に動けませんでした。結果的に前が仕掛けてくれたので最終的に自分が届いたのですが、動かなければならないところで動けなかったのが悔しかったです。
大津:ここまでお話を伺っていると山口選手はかなり綿密に作戦を練ってのぞむような印象を受けます。
山口:メンバーを見て直ぐにシミュレーションはします。前の日からけっこう何パターンか作戦は考えますね。
大津:シリーズを走っていく中で脚の感じはいかがでしたか。
山口:日に日に良くなってました。こういった感覚っていうのは自分の中で今までになかったのですが、決勝戦にピークは持ってこれたなという自信はありました。
大津:かなり良い状態で決勝戦を迎えられたのですね。
山口:そうですね、アップした段階で四日間の中で一番動くなって感覚はありました。
大津:これまでもサマーナイトやオールスターと大舞台を経験されましたが、その経験が今開催に活きた部分はありましたか。
山口:準決勝戦で負けてはしまったのですが、オールスターでは様々なパターンで前々に動けて、ある程度は通用したかなと思ったので、そこで得た自信は大きな経験として活きたと思います。
大津:決勝戦の顔ぶれを見た時はどんな印象を受けましたか。
山口:強い人がみんな勝ち上がってきましたし、特に北日本は新田さん(新田祐大選手・福島90期)が番手ということだったので、正直そこを打ち崩すイメージというのはなかなか湧かなかったですね。
大津:その中でどんな作戦でのぞまれたのでしょうか。
山口:裕友さん(清水裕友選手・山口105期)や平原さん(平原康多選手・埼玉87期)含め位置取りがシビアな人ばかりで簡単に良い位置を回らせてもらえないなって思ったので、行けるところからしっかり動いてって考えてました。地元から唯一勝ち上がって何も出来ずに終わるのだけは避けたかったです。
大津:実際にスタートしてからのレース展開はどうでしたか。
山口:郡司選手(郡司浩平選手・神奈川99期)が前受けというスタートから自分の中で想定していた展開と違ったので、レースの流れで前々に攻めようと思いました。
大津:勝負どころの立ち回りはいかがでしたか。
山口:自分の中では誰かが仕掛けて、新山さんの番手から新田さんが出たところを仕掛けたほうが届きやすいかなって思ってたんですが、2コーナーで詰まったので想像よりも早く自分の出番が来たなと思い縦に踏みました。捲りに行った瞬間に2日目の捲りよりも感触が良かったので新田さんの横まではいけるかなって思いましたね。
大津:並びかけた時に新田選手が併せる動きもありました。
山口:新田さんがギリギリまで引き付けて出ていったのでもがき合いみたいになったのですが、そういう動きは練習でもしていたので、横並びになった時には4コーナーから外が伸びるっていうのは分かっていたので、この感じだったら下りで前に出れるなって思ってました。
大津:最後の直線はどうでしたか。
山口:もう早くゴール線来てくれーって感じです。今までにないくらいフォームがぐちゃぐちゃになってました(苦笑)目の前にGIIのタイトルがあるわけですから、力の限り踏まなきゃって感じでした。
大津:ゴールの瞬間は覚えてますか。
山口:自分のスピードも鈍っていたので外側から絶対誰か来ると思ったので、まさか自分が一着でゴール出来るとは、一瞬半信半疑な部分がありました。ただ、ゴールした後には自分が一着っていうのは分かりましたし、敢闘門ではたくさんの中部の方々が拍手で出迎えてくれたんで本当に嬉しかったですね。胸の中で昂るものがありました。
大津:ルーキーチャンピオンも地元でしたし、地元で最高の結果を残してますね。
山口:自分の地元で僕が出場出来るルーキーチャンピオンっていうのもなかなかないことですし、ビッグレースが岐阜で行われるのも10年振りで、次に大きい大会が地元で行われるのがいつになるか分からない中で結果を残せたのは本当に嬉しかったです。
大津:優勝インタビューではお父様の山口幸二さん(62期引退)からのインタビュアーを務められました。より感慨深いものもあったんじゃないんですか。
山口:いやぁ、もうお父さんにインタビューをされるのも3回目だったので正直もう慣れちゃいました。
大津:帰ってからは山口幸二さんとは父と子としての言葉は交わされたんですか。
山口:その日は会えなかったので話すことはなかったんですが、その2日後に家族でご飯に行った時に会話はしました。
大津:優勝インタビューの中で、この優勝はご家族に伝えたいというお言葉もありましたが、ご家族の反応はいかがでした。
山口:珍しく弟からもLINEが来てたので嬉しかったです。弟は競輪は全く知らないんですが、他のレースとは全く違うっていうのは分かってくれてたのかなぁって思いました。
大津:他の友人たちからの反響も凄かったんじゃないですか。
山口:新聞にも取り上げてもらったので、普段競輪を見ない友人たちからも連絡をもらいました。
大津:同期の反応はありましたか。
山口:同期だけのグループLINEがあるんですが、その中でも色んな同期から「おめでとう」って声をかけてもらいました。嬉しかったです。
大津:ロールスロイスの購入が話題になりましたが、優勝して何かご褒美は買いましたか。
山口:時計を買いました。金額は聞かないでください(笑)
大津:デビューして、一年足らずでGII制覇という結果をどのように受け止められていますか。
山口:この先はそれ以上の結果しか求められないということになるんですが、その期待を糧にして自分の中では高みを目指していきたいですね。
大津:共同通信社杯が終わって松戸FIを走りましたが、自身の中でタイトルを獲る前と獲った後で変化はありましたか。
山口:正直自分の中ではなかったのですが、周りからはGIIを獲った選手という目で見られるので、そういった部分では周囲の変化を感じました。自意識過剰かもしれないんですが、アップしている時とかも見られているのかなぁなんて思ってました。
大津:今回の優勝でグランプリ出場も視野に入ってきましたが意識はありますか。
山口:現在8位に入りましたが、まだまだ安心できる位置ではないので一戦一戦目の前のレースを大切に戦っていきたいです。
大津:これからのレースでご自分の中で強化していきたい部分はありますか。
山口:力でねじ伏せる競走が少ないので、そういう競走をしていきたい思いもあります。 レース展開を上手く読み解き、どう動くべきか判断するというのが僕の持ち味でもあるんですが、他の選手が力でねじ伏せていく競走を見た時に、あの人強いなって自分も感じるので。
大津:今後の目標を教えてください。
山口:GIの決勝に乗ることです。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願いします。
山口:まだGIIを獲っただけなので、今後はGIやGPの舞台で活躍できるよう頑張ります。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
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