デビュー以来、ガールズケイリンとナショナルチームを両立してきた太田りゆ選手(埼玉112期)。東京オリンピックの延期が決まり3月からガールズケイリンに復帰。
7月にはいわき平競輪場で行われるガールズケイリンフェスティバルへ走ることが決まりました。久々にガールズケイリンを走った感触や今後の意気込みをお伺いしました。
山口:3月の久留米で約半年ぶりのガールズケイリンのレースでしたが、走った感覚はいかがでしたか?
太田:3月の世界選手権の後は、ほとんど練習ができない状態で久留米のレースに入ったんですが、まずは優勝できて良かったです。
ずっと何年も東京オリンピックのためにナショナルチームと両立をしてきましたが、3月までの私の国際大会の成績では、代表選手に選ばれるのは難しいなと自分ではなんとなくわかっていました。なので気持ちは落ちており、うまく立て直せない状態でのレース参加だったんです。メンタル面で落ちていたので気持ちのコントロールが難しかったですが、寛子さん(石井寛子選手・東京104期)を相手に優勝できたのは大きな自信になりました。「もう一度がんばろう」と前向きになれました。
山口:決勝では先行した南円佳選手(鹿児島116期)の後ろという好位置でしたね。
太田:あの位置を取れてしかも優勝ができたのは、とても価値があるレースでした。
世界選手権が終わりオリンピック代表選手に選ばれないと思った段階で、ガールズケイリンの斡旋を入れて欲しいとお願いしていたんです。日本でのレース経験が浅いし、勝負所での詰めが甘くレーステクニックも欠けていると思ったので、もっと走りたかったからです。
私はデビューをしてからすぐにナショナルチームをメインにしており、ガールズケイリンのレースには、選出されたビッグレースやその前後の開催を中心に、わずかなレースしか走っていませんでした。1着を目指すレースを心掛けていても、どうしても「競技に支障が出るから怪我をしてはいけない」と思っていた部分が、振り返るとあります。
なので、位置を厳しく取りにいくような攻めた走りなど、やりたいこともなかなかできずにいたんです。どうしても自分のスピードだけを頼るレースになっていました。
久留米の決勝で寛子さんと走った時もそうですし、その後の玉野でもいろんなパターンの攻めができたと思います。
山口:確かに3月からの太田選手の走りは今までのイメージとは違いますね。位置を取りに行く動きなどもありましたね。
太田:そうですね。たぶん積極的に位置を取りに行く動きを見せたのは、ガールズケイリンでは初めてだったと思います。ただ競技では位置取りを重視してレースを組み立てることが得意なんですよ。なので最近になってレーススタイルが変わったのではなく、「自分らしいレース」になった、という感じです。
山口:競技の経験がガールズケイリンに活かされていますね。
太田:はい。競技は「勝つために何でもやる」という精神でやっていたので、その思いを、最近のガールズケイリンのレースでは実践できています。自分らしく走れていると思います。
山口:位置取り以外にも、国際大会での競技経験がガールズケイリンに活かされるのはどういう部分でしょうか?
太田:ルールが違う所が多いので、どこがどう活かされるかというのは答えるのが難しいです。コースもガールズケイリンはあらかじめ車番が決まっていますが、国際大会でのレースは抽選でコースが決まります。
他にも、「重注(重大走行注意)」などガールズケイリンにはありますが、競技ではその違反をした段階で即「着なし」になります。なので全く違うものとして走っています。
山口:はっきり切り替えて走っているんですね。
太田:はい。今はガールズケイリンに気持ちを切り替えて走っていますし、競技がメインになる時はそちらに切り替えて。両方うまくできるように心掛けています。
山口:先日オリンピック代表選手が内定し、太田選手はリザーブ(補欠)と拝見しました。今後は練習環境などは変わるんですか?
太田:特に今までと変わりはありません。もし万が一、小林優香選手(福岡106期)に何かアクシデントがあった場合や、今の世界情勢の問題、新型コロナウイルスの影響で日本よりポイント上位の国がオリンピックに参加できなくなった場合は、スプリントランキング8位の日本のリザーブが一番最初に繰り上がるんです(7位までがオリンピックに出られるルールのため繰り上がりの一番手にいるのは日本)。
今回のルールでは、スプリントとケイリンのどちらかのランキングで上位ならば、同じ人が2種目出られることになっているので、優香ちゃんと私、二人での出場もあり得ます。
もしものことがあるかもしれないので、私は出るつもりで今も変わらずトレーニングを重ねています。
山口:東京の次、パリオリンピックも目指してナショナルチームでは引き続き練習されるんですか?
太田:はい。SNSでも表明したんですが次のパリを目指します。自転車を始めてからまだ3年なんですが、200mを10秒台で走れるくらいタイムも縮められました。東京オリンピックでは補欠ですが、パリを見据えてこれからもナショナルチームでも頑張りたいですし、ガールズケイリンでもたくさん走ってレースの経験を積みたいです。強くなってガールズケイリンでも競技でも結果を出したいですね。
山口:斡旋が、今のところ7月いわき平でのガールズケイリンフェスティバルが入っていますが、今後もコンスタントに走っていくんですか?
太田:今のところは月に一度はガールズケイリンを走れるように、斡旋をお願いしています。オリンピックが近付いてきたらまた走らないかもしれませんが、今のところはそのようなスケジュールですね。
山口:練習環境もまだ伊豆のままですか?
太田:はい、特に変わりなく伊豆で練習しています。
山口:今のガールズケイリンの目標は何ですか?
太田:もちろんガールズケイリンフェスティバルの優勝も目標です!もう一つ、まだ結果がわからないのですが、もし選出されていればオールスター競輪でのガールズドリームレース、アルテミス賞レースを頑張りたいです。
もともと8月に開催予定だったオリンピックが延期になったので私が選ばれない場合もあり、その時は仕方ないですけど(苦笑)。いずれにしても8月のレースは良いレースをできたら良いなと思います。
山口:ガールズケイリンフェスティバルのメンバーは動けるタイプの選手が多いですが、どんなレースをしたいですか?
太田:先ほども話したように、自分で位置を取りに行くレースも今までやらなかっただけでできるので、そういう攻めたレースをしたいです。
自分ではタテ脚よりも自在に戦うタイプだと思っているので、強い選手をマークしたり何でもやっていきたいですね。今までだったら後方で捲りに構えるレースが基本でしたが、「太田りゆはそれだけじゃないよ」というのをお客様には知っていただけると良いですね。
山口:久留米や玉野で一緒に走った他のガールズ選手には「自在なレースもするんだね」など、聞かれましたか?
太田:はい。久留米2走目に前を取りに行ったんですが、その時に「(太田選手が)前を取るのは予想外。データになかったからどんな組み立てをするのかわからずに難しかった」と言われました。
玉野の決勝では同期の梅川風子選手(東京112期)の後ろをマークしながら追い込むレースをしてみました。他のガールズ選手からしたら「何ができるのか、どんな動きを作戦として持っているのか」が未知だと思います。
山口:そうですよね。今まで見てきた太田選手のレースとは違う動きを実際のレースでされるんですもんね。
太田:はい。なので、その自在性をいかせるように走りたいです。
山口:今の強化ポイントは何ですか?
太田:スピードや瞬発力はナショナルチームでかなりトレーニングを積んでいると思います。なのでガールズケイリンを走っていないからこそ経験が浅い、レースの展開や位置取りの強化をしていきたいです。それは後々、競技にも活きてくると思うんです。
山口:ガールズケイリンフェスティバルが行われるいわき平競輪場の印象はいかがでしょうか?
太田:今まで2回走っていて思うのは、特に走りにくくはなかったです。3月は体調面で万全ではなかった開催なので印象は良くないですが、バンク自体のイメージは悪くないと思います。
2018年8月・アルテミス賞レースで走った時は、ハワイアンの雰囲気がとても良くて素敵だなと思いました(笑)。お客さんが入るかどうかはまだ未定ですが、お客さんがたくさん内側から声援を送ってくださると嬉しいし力になりますよね。
山口:競技では室内のバンクが中心と伺いましたが、外のバンクはいかがですか?
太田:室内との違いなど違和感があるかもしれないと、皆さん思われるみたいですが、外での練習もかなりしているので問題ないです。海外合宿などは外のバンクで猛烈な風の中で練習をしたりもあります。あまりガールズケイリンのレースで風の抵抗や強風で大変だったことはないですね。
山口:ありがとうございます。では最後にオッズパーク会員の方へガールズケイリンフェスティバルへ向けての意気込みをお願いします。
太田:東京オリンピックの代表選考では補欠ということが決まり、たくさんの方が私の気持ちが折れてしまったんじゃないかと心配をしてくださいました。
でも自分自身ではかなり良い形で前進していると思うので、これからも良い競走を心掛けたいです。新たな気持ちで太田りゆは頑張っているんだ、と見てもらえて、応援していただけたら嬉しいです。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA