かなりかなり日にちが経ってしまったが、10月4日に行われたダービーグランプリは、地元岩手のフレッチャビアンカが、1番人気の浦和・ティーズダンクに4馬身差をつけての快勝となった。
単騎で逃げた地元のグランコージーが直線でも先頭で見せ場をつくったが、4コーナーを回るところでまだ3馬身ほど差があった2番手で並んだ3頭の追い比べから突き抜けたのがフレッチャビアンカだった。ラチ沿ぴったりを回って抜け出したところなどは、さすがに今年岩手のリーディングを争う高松亮騎手の見事な騎乗だった。
さて、ダービーグランプリ今昔の前編(こちら)は、中央との交流になった最初の年、1996年まで触れた。
1998年のダービーグランプリで断然の注目となっていたのは、名古屋・名古屋優駿(GIII)、旭川・グランシャリオカップ(GIII)、中山・ユニコーンステークス(GIII)、大井・スーパーダートダービー(GII)と、当時行われていた3歳馬のダートグレードで破竹の4連勝としていたウイングアローだった。
そして迎えたダービーグランプリは、ウイングアローのダートグレード5連勝を見届けるレース、と思われていた。しかしその日の盛岡競馬場は雪が降り続き、第5レースまでで打ち切り(ダービーグランプリは第10レース)。当時、大井で行われていた交流GIIのスーパーダートダービーが10月30日という日程的な兼ね合いもあったのだろうが、山の上にある盛岡競馬場で11月23日という開催では雪のリスクもあった。
3週後に延期となった舞台は水沢競馬場。当時、ユニコーンステークス→スーパーダートダービー→ダービーグランプリが3歳ダート三冠となっており、ウイングアローは三冠馬に与えられる2000万円のボーナスは確実と思われた。しかし、早め2番手から直線で抜け出したナリタホマレをとらえきれず、3/4馬身差で2着。勝ったナリタホマレの鞍上マイケル・ロバーツ騎手は、前日の朝日杯3歳ステークス(当時)をアドマイヤコジーンで制しており、2日続けてのGI勝利となった。
3歳ダート三冠は逃したウイングアローだが、5歳になった2000年にはフェブラリーステークスとジャパンカップダートを制し、古馬になってまぎれもないダートのチャンピオンとなった。
中央との交流になって以降のダービーグランプリで地方馬が勝つことはなかったが、前出ウイングアローをはじめ、その勝ち馬からは、ダート・チャンピオン級の馬が何頭も出た。
2000年のレギュラーメンバーは、翌年の川崎記念、さらに第1回JBCクラシックの勝ち馬となった。
2002年のゴールドアリュールは、第4回を迎えていたジャパンダートダービーから3歳ダートGIを連勝。その年末には東京大賞典を勝ち、年が明けてフェブラリーステークスも制した。そして種牡馬となったゴールドアリュールは、ご存知のとおり日本のダート血統を塗り替えた。エスポワールシチー、スマートファルコン、コパノリッキーら、ダートGI/JpnIを制した産駒がすでに種牡馬として活躍をはじめている。地方馬ではララベルがJBCレディスクラシックを制した。さらに現役にはゴールドドリーム、クリソベリル、サンライズノヴァがいる。
2003年のユートピアは、その後04、05年とマイルチャンピオンシップ南部杯を連覇。そして06年、はじめての海外遠征となったゴドルフィンマイルを制し、モハメド殿下率いるゴドルフィンに400万ドルでトレードされた。その後アメリカでG3を制し、種牡馬としてアメリカ、のちにトルコでも繋養された。
2005年のカネヒキリもジャパンダートダービーからの連勝。6歳時、屈腱炎による2年以上のブランクから復帰2戦目でのジャパンCダート制覇は"奇跡の復活"と言われ、続く東京大賞典、川崎記念も勝ってGI/JpnIを3連勝。ダートGI/JpnIで計7勝を挙げた。種牡馬としては、産駒のミツバが川崎記念父仔制覇を果たしている。
しかし中央との交流だったのは2006年まで。累積赤字が嵩み、その年度末には岩手競馬の存廃が論議された。一旦は廃止が決定されたが、最終的に議員の多数決1票差で存続となった。2007年のダービーグランプリは馬インフルエンザのため岩手限定となり、08、09年は休止された。
それでも2010年には地方全国交流として復活(1着賞金800万円)。その年の勝ち馬ロックハンドスターは、岩手三冠馬ともなった。その後、11年カミノヌヴォー、12年ロッソコルサと地元馬が制したが、13〜16年は南関東所属馬が4年連続で制した。
2017年からは地方競馬で『3歳秋のチャンピオンシップ』のシリーズがスタート。ダービーグランプリは、そのファイナルとして1着賞金も1000万円に増額され、注目度が高まった。雪が降る中で行われたその年のダービーグランプリは、のちに北海道で不動のチャンピオンとなるスーパーステション。翌18年は、6年ぶりに地元岩手のチャイヤプーンが制し、3歳秋のチャンピオンシップのボーナスも獲得した。
地方全国交流として復活して以降、その2018年までは11月下旬の水沢開催(18年は延期されて12月)だったが、19年からは大幅に開催時期が繰り上げられ、10月上旬の盛岡開催となっている。これは地方の3歳の代表馬をJBCクラシックへの参戦を促そうというもの。ダービーグランプリ優勝馬が、その年のJBCに出走した場合、JBC出走奨励金として200万円が支給される。
そして今年は1着賞金がさらに1500万円へと増額。その舞台で、冒頭のとおり、地元のフレッチャビアンカが勝ったという価値は大きい。フレッチャビアンカは北海道でデビューして船橋を経由し、岩手転入後は6戦5勝、2着1回と充実ぶりを見せた。
かつて岩手競馬からは、メイセイオペラ、トーホウエンペラーがGI馬となって全国区で活躍したが、また強い岩手の時代が来ることを期待したい。
まだ底を見せていないといえそうな成績がダイセンハッピーとブンブンマルで、これに北海道から転入初戦のミッドナイトクロス、この3頭の争い。
ダイセンハッピーは、2戦目でベツセタイに6馬身差をつけられて2着に敗れたが、これは3コーナー最後方からの一気のまくりという相手が強かった。続く3走目が2着ヌーベルアヴニール、3着ハーピーマロンらに大差をつけて圧勝。一方のブンブンマルはデビュー戦でハーピーマロンの3着に敗れ、前走セレクトゴールドは勝ったものの2着ヌーベルアヴニールに3馬身差。
それら、対戦相手との比較からも、このメンバーではダイセンハッピーが頭ひとつ抜けている。ホッコータルマエの初年度産駒として重賞勝ちの第1号となる可能性も高そう。
門別から転入初戦のミッドナイトクロスは、1000メートルのデビュー戦は出遅れて後方からの追走も、ゴール前で抜け出し力の違いを見せた。2戦目のウィナーズチャレンジは見せ場をつくれなかったが、デビュー戦の勝ち方を見ればそれが実力ではない。4カ月半ぶりの実戦で名古屋初戦、1600メートルへの距離延長など未知な要素は多いが能力は高い。
笠松から参戦のアリスパレスは、前走秋風ジュニアでは向正面で一杯になってしまい、それを度外視なら◎○に食い下がる場面もあるかもしれない。
◎○と勝負付が済んだ感じのロジータミニスターは3着争いまで。
◎1ダイセンハッピー
○3ブンブンマル
▲8ミッドナイトクロス
△12アリスパレス
△6ロジータミニスター
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佐賀王冠賞でウノピアットブリオの2着と善戦したアンバラージュは、その後遠征の旅に出て門別・ノースクイーンカップ2着、水沢・ビューチフルドリーマーカップ3着と好走を見せた。今回は重賞で常に上位争いという馬がいないメンバー構成だけに、タイトル奪取のチャンスといえそう。今年佐賀再転入後、まだ勝ち星がないのが不思議なほど。
ゲットワイルドは今年3月に船橋から転入後、下級条件から連対を続けクラスを上げてきた。前走までB級の準重賞と特別を3連勝。今回、A2級に格付けされての重賞初挑戦でも勝ち負けの期待ができそう。
イケノアサは、前走1番人気に支持されるも向正面で一杯になって10着。とはえい3走前と2走前には、1800、2000メートルの特別戦を連勝していた。昨年7月の佐賀王冠賞(7着)以来の重賞挑戦だが、前走度外視なら互角に戦える。
佐賀では絶対的な存在になると思われたグレイトパールだが、今年は佐賀記念JpnIII(6着)のあと5着が最高という成績。休養明け2戦目でどこまで戻しているか。
ゲットワイルドと勝ったり負けたりのウェーブキングにも上位争いの力はありそう。
前走大淀川特別では直線先頭で見せ場をつくって3着だった3歳のエアーポケットは、このメンバーに入ってどこまでやれるか。
◎2アンバラージュ
○9ゲットワイルド
▲3イケノアサ
△5グレイトパール
△10ウェーブキング
△1エアーポケット
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留守杯日高賞、ひまわり賞に続く、岩手の3歳牝馬三冠目として新設されたOROオータムティアラ。
マルケイマーヴェルは、一冠目の留守杯日高賞は5着だったが、それでも地元馬最先着。その後も崩れることなく、ひまわり賞では4コーナーで先頭に立ってそのまま押し切った。前走A二組戦は4着(勝ち馬と0秒4差)だったが、3歳牝馬としては上々の内容。デビュー3年目の岩本怜騎手には、またひとつ飛躍のチャンスだ。
ビブショウは、中央1勝クラスから転入して2連勝。前走盛岡1600メートルのB1五組戦は後続を引きつけての逃げで、ゴール前の接戦を制した。上のクラスでもやれそうだが、今回は距離延長に対応できるかどうか。
モモイロキッスは、中央未勝利から転入しての5、6月はそれほど目立つ成績ではなかったが、8月以降、3歳B1から古馬格付けのB2まで4戦連続連対中。秋になっての充実ぶりが目立つ1頭。
ひまわり賞2着だったエムワンリーフは、同じく古馬B2戦で連対という実力なら上位を狙える。
ひまわり賞3着だったアンズビジン、目下3連勝中で岩手のダートではまだ負けていないセシールらもそれほど差はない。中央未勝利から転入して芝で2連勝のムーンライトリバーはダートでどうか。
◎6マルケイマーヴェル
○9ビブショウ
▲8モモイロキッス
△11エムワンリーフ
△2アンズビジン
△7セシール
△4ムーンライトリバー
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読売レディス杯で7着だったスターリングブルスだが、それでも地元馬ではロンギングルックに続く2番目の入線。続くクロユリ特別では3コーナー先頭から後続を寄せ付けず完勝。前走御前が峰特別では抜群の手応えのまま4コーナー手前で先頭に立ったものの、ゴール前でイリュージョニストにクビ差とらえられた。とはいえ今回と同じ1900メートルの2戦のレースぶりはおおいに評価できるもの。全国交流の読売レディス杯と違って、それほど強力な遠征馬もなく、牝馬同士なら重賞初制覇のチャンス。
遠征勢も含めて3歳馬は4頭が参戦。中でも筆頭は、地元のハクサンアマゾネスだろう。前走A1一組特別では4コーナー手前から3頭が横一線に並んでの追い比べとなって3着に敗れたが、その相手2頭は牡馬。古馬相手でも牝馬同士なら勝負になる。
ロンギングルックは今シーズン、徽軫賞を制し、読売レディス杯は地元最先着の4着。勝負どころから長く使える脚があるだけに、距離延長は歓迎だろう。
名古屋のB級で連勝のシーアフェアリーも能力的には遜色なさそう。あとは経験がない1900メートルに対応できるかどうか。
名古屋から遠征の3歳馬、ビックバレリーナ、ジェネラルエリアは、春には同世代同士の重賞で上位を争っていたが、ともに休養明け2戦目で、上積みがあるかどうか。
◎10スターリングブルス
○8ハクサンアマゾネス
▲3ロンギングルック
△1シーアフェアリー
△11ビックバレリーナ
△5ジェネラルエリア
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