さて、今回の北海道取材、1番の目的は、「サマーセール」でした。
社台のセールと違い、日高の個人生産者の馬が多く、億単位の馬を探すというより、安く、いい体の馬を見つけようと、たくさんの関係者が、目を光らせていました。
人気だったのは、やはりサンデー系の血統ですが、「タニノギムレット」と、フォーティーナイナーの仔「コロナドズクエスト」も高く売れていました。
私の1番の注目は、「ワイルドラッシュ」。アメリカの馬で、今回の1歳が日本では初産駒。当初、種付け料200万円だったのが、その後、アメリカで産駒たちが大活躍!現在は500万円に跳ね上がっている。社台以外の種牡馬が活躍すると、今は淋しい日高の町が、昔のように元気になると、生産者たちは喜んでいました。
「サマーセール」で売れる割合は、約3割。その後は、10月の「オータムセール」に賭けるわけですが、ここではバーゲン並に値下げして、必死で売るそうです。種付け料が200万円だとしても、母馬の血統がイマイチだったり、脚の曲がった仔が出れば、200万円では売れなくなる。そうなると、売れて赤字という事になり、個人生産者たちの経営は、地方競馬以上に大変な事態になっている。
少しでも、自分の馬をよく見せようと、入念にブラッシングして、ツメにはマニキュアまで塗って来る。それでも、買い手の声がかからないと、淋しそうに帰って行く。
高崎には、100万円以下の馬たちがたくさん入って来ていた。地方競馬5場が廃止になり、そんな馬たちの受け皿が少なくなり、当然買う人も減った。
元々、競走馬の牧場だったのが、羊や牛に転向せざるおえない所が続出しているそう。
今年は、6億円という史上最高額の馬が現れました。でも、ピラミットの底辺は、確実に狭まっている。長い目で見たら、底辺の崩壊は、頂上をも崩す事になると思う。馬産地・日高が元気になる事が、日本の競馬のレベルを上げる事だと、現場を見て、改めて思った。
そして、売られていく馬たちを見て、彼らは商業動物なんだと、実感した。そこには、生活がかかっており、甘えのない世界があった。