平地の競馬でも、馬によってコースの得意不得意はあるが、ばんえい競馬ではそれがさらに極端に出る。もちろんコース適性はあまり関係ないという馬も多いが、岩見沢記念で本命になるであろうアンローズは夏場の岩見沢が大の得意。対照的に、冬の帯広はからっきし走らない。ここまで岩見沢は41戦17勝だが、帯広は36戦してなんと1度も勝ったことがない。
ばんえい競馬は昨年度から通年開催になったが、帯広開催は4カ月ともっとも長い。このあと2カ月の北見開催をはさんで帯広に行く前に、アンローズとしてはなんとしてもこの岩見沢で稼いでおかなければならないのだ。
もし今回アンローズが勝てば、このレース3連覇。過去にはキンタローが岩見沢記念で3勝を挙げた記録はあるが、3年連続制覇は史上初の快挙となる。
サダエリコが820kgなのに対し、ばんえいグランプリを勝っても810kgで出られるアンローズはかなり有利。3連覇の可能性はかなり高いと見る。
相手には、今シーズンの上がり馬トモエパワー。ベテランの坂本東一騎手に乗替った今回は勝負だろう。
別定のプラス10kgをどう克服するかだが、ミサイルテンリュウも早めに障害を越えられれば十分勝負になりそう。
この岩見沢開催は不振だが、忘れた頃に好走して穴をあけるシンエイキンカイを押さえる。
旭王冠賞で完全復活と思わせたサダエリコは、別定のプラス10kgもあるが、最近はどうも障害の掛かりがよくないので見送る。
ばんえいグランプリ2着で大穴をあけたミサキスーパーは前走も2着で好調だが、本来夏場からこの時期はよくない馬。そこそこ人気にもなりそうなので、こちらも見送る。
アンローズとトモエパワーの馬単表裏が本線。
◎アンローズ
○トモエパワー
▲ミサイルテンリュウ
△シンエイキンカイ
ゴールド争覇は、今年で34回の歴史を重ねる重賞だけに、過去の勝ち馬には歴史に残る活躍馬も少なくない。
84年の勝ち馬ステートジャガーは、大井の東京ダービー3着のあと、笠松への転入緒戦がこのゴールド争覇だった。翌年には中央入りし、サンケイ大阪杯で3冠馬ミスターシービーをハナ差2着に退けて優勝。種牡馬入りしたものの産駒にはあまり恵まれず、それでも93年に北関東菊花賞(高崎)を勝ったステートジョージや、94年にアーリントンカップと毎日杯を制したメルシーアトラを出した。すでにこのときステートジャガーは乗馬になっていたが、奇跡的に去勢はされておらず、種牡馬として復帰を果たした。
86年の勝ち馬ジュサブローは、同年のオールカマー(中山)を勝って地方代表としてジャパンカップにも出走(7着)した。
翌87年のワカオライデンは、中央から笠松に転厩したあと重賞戦線で活躍し、種牡馬としてもライデンリーダーを出すなど地方のリーディーングサイヤーにもなった。
90年の勝ち馬マックスフリートは、3歳時に古馬相手の全日本サラブレッドカップや東海ゴールドカップを制した女傑。連覇を狙った4歳時の全日本サラブレッドカップのレース中に故障し、この世を去った。
そして翌年は、マックスフリートの半弟マックスブレインが勝っている。
95年の勝ち馬トミシノポルンガは、地方のみの交流だったダービーグランプリ(水沢)や、中央に遠征した芝のテレビ愛知オープンを制した活躍馬。このゴールド争覇が引退レースとなった。
96年のマルブツセカイオーは、中央との交流のオグリキャップ記念を勝ち、引退レースとなった東京大賞典でも3着。97年のライフアサヒは、川崎記念であのホクトベガの2着という輝かしい記録がある。
しかしそれ以降は、残念ながら全国区で活躍するほどの馬は出ていない。
さて、今年のゴールド争覇は、全国区のタイトルまであと一歩届かないマイネフォクシーが格上。
あとは、大井から転入緒戦のトミケンマイルズに、各地のダートグレードや重賞に積極的に遠征し、勝てはしないものの着実に賞金を稼いでいるクインオブクイン。
3連複や3連単ならもう少し手広く流さなければならないが、勝負になりそうなのはここまで。
◎マイネフォクシー
○トミケンマイルズ
▲クインオブクイン
東海・北陸・近畿・中国地区交流の、JRA阪神ジュベナイルフィリーズのステップ競走代表馬選定競走となっている姫路チャレンジカップ。
昨年からサラブレッドが導入された福山から3頭が挑戦してきた。中でも注目は、デビューから楽勝続きで7連勝のサニーエクスプレスだろう。この馬が初の遠征競馬でどんなレースをするかがひとつの見どころとなる。
その福山からは3頭、笠松から1頭の遠征があり、地元兵庫8頭のフルゲート12頭で争われる。
スタートから飛ばして行って押し切るサニーエクスプレスのスピードは魅力だが、層の厚さや対戦相手のレベルを考えれば疑ってかかる必要がある。初のアウェーでのレースでもあり、本命には推しにくい。
ここはデビュー戦こそ2着に敗れたものの、その後3連勝中のホクザンパラダイスを中心にしたい。前走初の1400メートル戦では向正面でトーコーオリンポスに競りかけられながらも再び突き放して押し切るレースぶりには、単なるスピード馬ではない奥深さを感じる。重賞7勝を挙げているホクザンフィールドの下という血統的な魅力もある。
対抗にはユキノキラリ。前走金沢に遠征した兼六園ジュニアカップは4着に敗れたが、逃げて後続から目標にされる厳しいレースをした経験は大きい。
3番手にサニーエクスプレス。以下、デビュー戦でホクザンパラダイスを負かし、それ以来の休み明けとなるワイケイリズム、笠松で2戦目のJRA認定競走を勝ったウェイクアビリティまで。
応援はしたいがサニーエクスプレスにとっては、地元と同じように楽なレースはさせてもらいないだろう。
◎ホクザンパラダイス
○ユキノキラリ
▲サニーエクスプレス
△ワイケイリズム
△ウェイクアビリティ
東海・北陸・近畿地区交流のオータムスプリントカップは、過去3回で兵庫、笠松、金沢と、各地区で勝利を分け合っている。
昨年勝ったケンゴウザンは、中央から金沢への転入5戦目での重賞初制覇だったが、このときの鞍上は渡辺壮騎手だった。
その渡辺壮騎手は、昨年10月の調教中の落馬事故以来長期休養中。新聞報道などによると残念ながら引退が決まったうで、奇しくもこのケンゴウザンでのオータムスプリントカップ制覇が現役最後の勝ち鞍となった。
通算成績は2086戦1273勝で、勝率、連対率はそれぞれ27.1%、43.6%と驚異的な数字を残した(地方競馬のみの成績)。90年代前半に金沢のリーディングを続けていた全盛期は、勝率4割、連対率6割という信じられないような確率で勝ちまくっていた。
個人的にもっとも記憶に残っているのはミスタールドルフで勝ったダービーグランプリ(当時は地方のみの全国交流で、水沢競馬場での開催)で、ハイペースで競り合った笠松のサブリナチェリーと船橋のプレザントが失速したところ、先に抜け出した高崎のヨシノキングを直線で差し切った。
ウイニングランでスタンド前に戻ってきた渡辺壮騎手は大喜びで、金沢から来ていた応援団にムチやらゴーグルやらを馬上から投げ入れたのを覚えている。
さて、今年のオータムスプリントカップだが、ケンゴウザンの連覇濃厚と見る。6月の百万石賞では9着と惨敗したものの、その後は4連勝。長距離はいまひとつだが、この距離では負けられないところ。
今年は名古屋から3頭、笠松から2頭の遠征があるが、重賞ではいまひとつ足りないメンバーで、相手も地元勢でよさそうだ。
相手筆頭はビッグドン。前走1500メートルのA1特別ではケンゴウザンより1キロ重い斤量で半馬身差まで迫る2着。今回は同斤量で、逆転の可能性があればこの馬だろう。
その次はイヌワシ賞でビッグドンと差のないレースをしているマヤノオスカー。
大駆けの可能性は名古屋のテーマミュージック。昨年のイヌワシ賞では1番人気のケンゴウザンを4着に退ける勝利で、近2走も条件戦だが連勝と好調だ。
笠松のマルヨサンデーは、近走の重賞はいまひとつの成績だが、今年1月の白銀争覇では、レジェンドハンター、フジノテンビー、ケンゴウザンなどの実績馬をまとめて負かしている。
ケンゴウザンからビッグドンを本線に馬連複で流す。ケンゴウザン、ビッグドンを1、2着の表裏で、3連単の3着を手広くながしてもおもしろいかも。
◎ケンゴウザン
○ビッグドン
▲タクミシルバー
△テーマミュージック
△マルヨサンデー
芝1600メートルの重賞OROカップ。今年で第8回を迎えるが、最初の2年は2400メートルで、第3回に1700メートルに短縮され、第4回から現在の1600メートルとなった。
今年はフルゲート14頭に、名古屋から2頭、船橋、川崎、金沢、笠松から各1頭が遠征してきた。ダートグレードの場合は中央勢の力が際立っていて馬券的妙味が薄いレースになりがちだが、今回のメンバーのようにダートグレードではちょっと力不足だが地方ではトップクラスという勢力の全国交流は馬券的に勝負のしがいがある。こういうレースはダートグレードと同じようにもっと盛り上がってもいいと思うのだが。
まずは地元岩手勢だが、抜けているのはジェーピーバトルとサイレントグリーン。
昨年まで岩手の芝ではサイレントグリーンが断然だったが、今年はジェーピーバトルがその覇権を奪い取った格好。
ジェーピーバトルは岩手生え抜きだが芝を初めて使われたのが5歳の昨年のことで、B級で2戦2勝。そして今年芝ではA2からオープンまで5戦して3勝2着2回。負けたうちの1回は中央との交流で中央馬に先着されたもの。せきれい賞、桂樹杯ではいずれもサイレントグリーンを2着に退けているだけに、岩手勢だけなら間違いなくこの馬がトップ。
そのサイレントグリーンは、中央遠征以外は崩れることがなく堅実な成績を残しているが、昨年7月のせきれい賞以来勝ち星に恵まれず、やや陰りが見えてきたか。しかし中央の一線級との対戦でサイレントグリーンのほうが経験豊富なことは確か。飛ばす馬がいて厳しい流れになってジェーピーバトルが崩れるような展開になれば十分にチャンスはある。
楽しみなのは名古屋勢の2頭。ウイニングウインドは前走くろゆり賞ではレッドストーンに競り勝ち、一応は東海地区のトップに立った。芝の実績は中央在籍時に未勝利戦を勝ったのみ。
芝での実績ではマヤノモーリスが上。中央時代は芝でのみ4勝を挙げ、準オープン2着の実績がある。名古屋に移籍緒戦の東海桜花賞では逃げ粘るウイニングウインドを差し切ってアッと言わせた。
岩手2頭とマヤノモーリスの三つ巴で、ウイニングウインドが押さえ。
そのほかの他地区勢では、アンフィトリオンが中央時代に芝でのオープン勝ちがあるものの、前走はせきれい賞に遠征し、ジェーピーバトルに完敗の4着。このメンバーなら上位に入れる力はある。あとは川崎のジルハーまで。
◎ジェーピーバトル
○マヤノモーリス
▲サイレントグリーン
△ウイニングウインド
△アンフィトリオン
△ジルハー