4月14日 第7回菜の花賞(3歳牝馬 水沢1600m)
(写真・佐藤到)
1着 パラダイスフラワー
絶好枠の1枠にも入り、ムチを入れながら先手を取る。道中は楽なペースで逃げ、4コーナーまで持ったまま。その手応えなら直線で後方をグングン突き放すかと思ったが、伸びがもう一つ。これは昨年の強さをイメージしているのが大きいかもしれないが、まだ本調子ではなかったか。
とは言え、勝つことが競走馬にとって最大の妙薬。これできっかけを掴んで昨シーズンの快進撃を期待したい。
「まだレース中に物見したり走りがフワフワしていたりするし、もっと良くなる余地があるのかも。これくらいのメンバーだとこの馬にとっては余裕すぎる、ということかもしれませんね」と小林騎手。
2着 シュクジャンヌ
逃げたパラダイスフラワーを見て3番手インを追走。直線を向いて外に持ち出してからの反応が良く、結果2着ながら成長の跡がハッキリ。前回の1着はフロックではないことを自らの脚で証明した。
3着 マツリダワルツ
前回と同様、前半は後方に待機して向正面からロングスパート。4コーナーでは一旦、パラダイスフラワーに並びかけるシーンもあったが、早めに動いたのが響いて直線は伸びを欠いて3着。しかし、これはパラダイスフラワーを負かしに行ったもので、3着も仕方なしと解釈。前走より馬体重も7キロ増加し、今後も目が離せない。
4月15日 第33回スプリングカップ(3歳オープン 水沢1600m)
(写真・佐藤到)
1着 セイントセーリング
大外12番枠に入ったが、手をしごいて主導権を握る。その後はマイペースに持ち込み、一貫してセーフティリード。直線を向いて満を持して追い出すと鋭く反応し、後続を突き放す一方。休み明けの前走は好位からアッサリ退いて7着。正直、物足りなさを感じさせたが、その一戦を叩かれて気配アップ。今回はメンバーも楽だったにせよ、2着に6馬身差をつけたのは収穫大。これで弾みがついて再度、パラダイスフラワー、ネバーオブライトと雌雄を決することになる。
2着 ハルサンヒコ
中団外目に待機し、3コーナーからスパート。元々、堅実な差し脚には定評があったが、内で粘るダンストンリアルを直線半ばで交わして2着を確保した。
デビュー当初はレース勘が身につかず凡走を繰り返していたが、シーズン終盤に2勝をマークしてひと皮むける。かつて叔父ハルサンヒコー(こちらは“ー”と伸びる)はトウケイニセイの18連勝をストップするなど名脇役で鳴らしたが、その領域に到達できるか注目していきたい。
3着 ダンストンリアル
終始2番手をキープして、先行馬ペースの流れからそのまま流れ込むかと思ったが、ハルサンヒコに交わされて3着。これで3着6回目と詰めが今後も課題だが、このメンバーでの3着は価値がある。
4月8日 特別・第19回栗駒賞(水沢1600m)
(写真・佐藤到)
1着 ダンディキング
逃げるケースも多いが、決してテンが速い訳ではない。草地騎手もそれは承知済みで1周目4コーナーに入るときは中団の位置取りだったが、スタンド前、逃げたジュリアがスローに落とすやいなや、馬なりで先頭に立ち、主導権を握る。2コーナー手前では後続を3馬身ほど離して逃げ、そこでうまく息を入れる。それが結果功を奏し、3コーナーで各馬がスパートをかけても余裕で先頭をキープ。
直線を向いてもダンディキングのスピードは衰えず、イン強襲トミケンマイルズを半馬身、外ブラーボウッズの追撃も0・2秒差封じて待望のオープンタイトルを手にした。
ダンディキングはアラブの女傑ミスハクギンを母に持ち(父ダンディコマンド)、05年のデビュー2戦を圧勝。その後は若駒賞2着、一息入れた寒菊賞は2着、続く金杯は8着で2歳シーズンを終了。
昨3歳時は七時雨賞、スプリングカップと連勝し、一躍首位戦線に躍り出たが、盛岡・岩鷲賞2着以降は体調を崩して7月、ガーベラ賞6着から4ヶ月の休養に入った。その判断は正しくオープン重賞・早池峰賞、トウケイニセイ記念3着。以降に期待を抱かせて冬期休養に入った。
前走(3月27日)は4番手インの競馬から4コーナーで一旦2番手まで進出したが、最後の伸びを欠いて3着。この時は前走比プラス9キロと太目残りの影響もあったかもしれない。今回はひと叩きされてマイナス3キロの472キロで出走。そして草地騎手の好判断も後押ししてタイトル奪取を果たした。
「ピリッとした脚がない替わりにバテもしないタイプ。自分の競馬ができるかどうかがすべて」と草地騎手がダンディキングを評したとおり、今回のようなレース運びができれば重賞・シアンモア記念でも好走は約束された。
2着 トミケンマイルズ
転入初戦の前走(3月25日)はヤマニンエグザルトの2番手を追走したが、直線で伸びを欠いて0・7秒差3着。2月28日に笠松でレースを使われた強味もあって2番人気に支持されたが、内容に若干不満が残って今回は10番人気まで落ちていた。しかし4番手インをずっとキープし、直線インを鋭く伸びて2着を確保。やはりアフター5スター賞(大井)、グランドマイラーズ(船橋)のマイル2重賞制覇はダテではなかった。
3着 ブラーボウッズ
例によって最後方待機策から向正面でまくって3コーナーでは3番手まで進出。最後の直線は脚色がいっしょになったが、先行競馬で決まった今回のレースでも豪快なマクリを披露。マイルは気持ち短い印象がない訳ではないが、シアンモア記念も展開次第では一気突き抜ける可能性もでてきた。
4着 ニューベリー
終始3番手外をキープしていつでも交わせる態勢で道中を進めたが、勝負どころの3コーナーでは反応がひと息。転入初戦でヤマニンエグザルトを一完歩ずつ詰め寄ってクビ差2着まで肉薄した末脚を評価され、単勝2倍の1番人気に支持。ところが今回は伸び切れずに4着止まり。これで評価は微妙になったが、岩手では群を抜く実績を誇り、本番での巻き返しを期待したい。
7着 オウシュウクラウン
馬体重こそ川崎記念からマイナス5キロの494キロと大幅な増減はなく、毛ヅヤも上々に映ったが、レースでは後方に位置し、直線では一瞬いい脚を見せたが、差を詰めただけの7着に終わった。
今回は遠征の疲れが残っていたため急仕上げを避けて出走。様子見の感が強く、本格的な始動はもう少し先になりそうだ。
1月31日、川崎競馬場で行われた今年最初のG?「第56回川崎記念」(川崎競馬場 2100m)の取材に行ってきた。このレースには岩手からオウシュウクラウン、テンショウボスの明け4歳馬2頭が挑戦した。
前者オウシュウクラウンは大晦日12月31日のファン投票・桐花賞を快勝して見事復活。一方のテンショウボスは桐花賞で3コーナーから早めにまくりをかけ、一発勝負に出たものの0・2秒差4着に敗退。しかし、続くトウケイニセイ記念で待望の重賞タイトルを獲得し、上昇ムードは明白。また今後の岩手競馬を占う意味でも興味尽きない一戦となった。
本題に入る前に両馬の臨戦過程を若干お伝えしたい。岩手競馬は先月1月15日をもってひとまず2ヶ月半の休養に入ったが、その後もオウシュウクラウンは盛岡競馬場、テンショウボスも水沢競馬場で調教を継続できた。本来なら15日以降、両競馬場の馬場が閉鎖されてしまうのだが、G?の晴れ舞台に向かうのであれば…と岩手県競馬組合も全面協力。通常開催どおりコースにハロー掛けを行い、加えて暖冬にも味方されて両馬とも順調に攻め馬を消化。1月20日にまずオウシュウクラウンを盛岡で積み、続いて水沢に寄ってテンショウボスをピックアップして2頭で仲良く川崎競馬場へ移動した。
幸い長距離輸送の疲れもなく、オウシュウクラウンは長坂厩務員、テンショウボスは阿部英俊騎手とのコンビで翌日21日から川崎競馬場で調教を再開。またオウシュウクラウンは主戦の小林俊彦騎手が九州(M&Kジョッキーズシリーズ)遠征から途中、川崎へ立ち寄って最終追い切りを敢行。半マイル(4ハロン)50秒9の好タイムを馬なりでマーク。またテンショウボスの方も阿部騎手を背に、一杯に追って半マイル50秒ジャストを出して好調さをアピールした。
さて当日。オウシュウクラウンは前走比マイナス2キロの499キロ、テンショウボスも増減なしの528キロ。とほぼベストの状態で出走にこぎつけ、パドックでも落ち着いて周回していた。
ところが予期せぬアクシデントが発生した。本馬場入場後、返し馬に向かったオウシュウクラウンが、あろうことか暴走。小林騎手は必死に抑えようとしたが、歯止めが利かず馬場を2周半も全速力で走り続けてしまった。場内に馬体検査のアナウンスが流れ、数分後に競走除外の発表があったが、それはオウシュウクラウンではなくゴールデンイースト。オウシュウクラウンはいわゆる放馬した状態と同じとなりながら、ギリギリ(おそらく)のところで出走に支障なしと判断されて出走となったようだ。
とは言っても全速力で走った直後のレースではさすがにオウシュウクラウンも堪えた。一周目スタンド前では折り合いがつかず、向正面で早々と失速。なんとかゴールにはたどり着いたが、1着ヴァーミリアンから離されること18秒!ブービーのゲットザサミットからでも12秒3の大差しんがりで入線した。
一番心配したのは鼻出血とか故障だったが、幸い大事には到らなかった。最初から電光掲示板に載れればいいのでは…というのが正直な気持ちだったので、仮に返し馬で暴走しなくても勝ち負けできるとは思っていなかった。それでもレースで力を出し切れずに終わった今回の川崎記念は陣営にとっても不本意だったに違いない。
一方のテンショウボスは11着。岩手勢には非常に残念な結果となってしまったが、これに懲りず是非、もう一度チャレンジして欲しい。そう願っている。
12月31日 第32回桐花賞(3歳以上オープン 水沢2000m)
(写真・佐藤到)
1着 オウシュウクラウン
枠差を考えれば逃げの手もあっただろうが、ニッショウウララがやや出遅れながらも絶対に逃げる構えを見せたので中団5番手に控える。1周目スタンド前で行きたがる仕草を見せたが、小林騎手が砂を被らせて折り合いをつけるのに専念。それでうまく折り合いがつき、3コーナーから満を持してスパート。
4コーナーを回る時にはすでに3コーナーで先頭に立ったテンショウボスを射程圏に入れ、ラスト100mで交わす。その後、ちょっととぼけるシーンもあったが、外ゲイリーエクシードが接近すると、そこからまたひと伸び。ゲイリーエクシードとの差は3/4馬身だったが、まだ余裕十分。着差以上に強い内容で完勝し、前回・白嶺賞2着の雪辱を晴らすとともに、世代交代を高らかに宣言した。
「久々の2000mで馬が行きたがったりしたし、自分から動いていった分ペースが上がって、最後に差し馬が迫ってくるのは仕方がないと思っていた。でも、直線で抜けだした時、後ろから馬が来たらまた反応して伸びて、きっちり勝ってくれて嬉しかったです。自分もこれが桐花賞初勝利。勝ててホッとしています」と小林騎手。
この結果を見て陣営は次走にG?・川崎記念を視界に入れた。もちろん万全の態勢が条件だが、順調に攻め馬を消化できれば遠征する可能性が高くなった。
2着 ゲイリーエクシード
「スローになるだろうからと、いつものこの馬の位置取りにはこだわらず前に行った」(沢田騎手)の言葉どおり、前々の競馬に心がけて4コーナーではオウシュウクラウンの後ろにつける。翌日には10歳となる高齢馬だが、今季14戦6勝2着7回3着1回と抜群の安定感。「この年でこれだけ走ってくれたんだからたいした馬だね」と沢田騎手が語っていたが、毎回の好走にはただただ頭が下がるばかりだ。
3着 チュードサンデー
ゲイリーエクシードの前のポジションを取ったが、勝負どころで置かれ気味。これまでならそこで終わってしまうのだが、今回は再度、大外から鋭く伸びて3着。当日はメンバーが大幅に強化され最低の10番人気だったが、それを見事に覆し、3連単78,940円の高配当を演出した。
4着 テンショウボス
終始3番手外につけ、3コーナーでサイレントエクセルの手応えが怪しくなったのを見て一気に先頭。一発勝負に出たが、先に仕掛けた分、最後の伸びを欠いた。それでも見せ場十分で0・2秒差の僅差なら評価は高い。
7着 サイレントエクセル
絶好の2番手をキープし、いつでも抜け出せる体勢かに見えたが、3コーナーで脚色が怪しくなり、直線に入ると馬群に飲み込まれる。「中間の気配は悪いと思わなかったが、芽に見えない部分で遠征(船橋・クイーン賞)の反動があったかも。それと元々、動きが硬いタイプなので寒い時期も合わなかったのかな」と板垣騎手が語っていたように、改めて遠征の難しさを垣間見せた。
1月2日 金杯(2歳 水沢1600m)
(写真・佐藤到)
1着 セイントセーリング
「前回(寒菊賞)で大事に乗りすぎたので今回は思い切ったレースをしようと考えた」(菅原勲騎手)。戦前は外枠(10番)でもカネショウエリートが逃げるだろうが、大方の味方だった。それを覆して意表をつく逃げの手に出て、道中の手応えも抜群。直線に入ってもスピードは衰えず、パラダイスフラワーの追撃を完封し、大金星をあげた。
寒菊賞では貯める競馬に徹し、直線勝負に賭けたが、伸び案外。菅原勲騎手はイメージしたシャープさがなかったようで、それで今回、逃げの戦法を取った。これまでタイトルは芝特別・黄菊賞の1つにとどまり、消化不良のレースを繰り返していたが、今までのうっ憤を一気に晴らした。馬も頑張ったが、それ以上に菅原勲騎手の好プレーが光った一戦だった。
2着 パラダイスフラワー
全日本2歳優駿で見せ場なく9着に敗れたが、地元ダートでは敵なし。圧倒的な1番人気に支持され、絶好の3番手外をキープ。ほぼ負ける要素が見られず3コーナーで早めにスパートをかけたが、いつもの爆発力が見られず半馬身差の2着。
こちらもサイレントエクセルと同様、遠征の反動が大きかったようで改めてアウェーでの戦いの過酷さを見せつけられてしまった。今後は冬期休養に入り、自厩舎で来シーズンへの英気を養うという。
3着 アンダーボナンザ
馬がラチにぶつかるのを覚悟の上で後方8番手の最内を走り、3コーナーからエンジン全開。ところが仕掛けたあとに前がふさがる不利があり、そのロスが大きかった。それでも持ち直して直線大外を強襲し、鋭く伸びたものの3着に終わった。
相変わらず気性面に課題を残しているが、素質は間違いなく一級品。この冬で精神的にどこまで成長できるかにかかっている。
重賞「第32回早池峰賞」(水沢1400m オープン)
(写真・佐藤到)
1着 ヤマニンエグザルト
ハタノアドニスが果敢に逃げ、前半36秒台のハイペースを形成。前回同様、じっくり控える戦法を取ったが、「駒ケ岳賞(中団6、7番手を追走)とは違って反応が良かった」(板垣騎手)ため、向正面では早々と4番手インにつける。3コーナーでハタノアドニスが一杯となり、替わってオリエントボスが先頭。それを見てスパートをかけ、直線は最内コースを選び、オリエントボスが渋太く粘るところ、ラスト50mで交わして快勝。トライアル・駒ケ岳賞を含め3連勝を飾るとともに、待望の重賞タイトルを手に入れた。
「水沢は動きがひと息と聞いていたが、自分が乗るとこっち(水沢)の方がずっといい。ただ前回は追い出してからの反応が凄かったが、今回はちょっと物足りなかった。それでもしっかり勝ってくれましたから、この距離が合うんでしょうね」と板垣騎手。
昨シーズン(今年3月まで)は最下級C3スタートから13勝を荒稼ぎ。一気にオープンまで出世したが、今季は頭打ちのレースを繰り返し、駒ケ岳賞以前は平場戦の4勝のみに止まり、上限が見えたかに思えた。ところが駒ケ岳賞を強いレースで勝ち、続いて今回も連勝。おそらく1400mの距離も合ったと思うが、加えて父プレザントタップといえばタップダンスシチーが有名だが、その馬と同様、ここにきてさらにパワーアップしたと解釈したほうが適切。そう断言できるほど、ここ2戦の内容が際立っていた。
次走は適距離、守備範囲であるトウケイニセイ記念(水沢1600m)を使いたいと伊藤和調教師。
2着 オリエントボス
ハタノアドニスの逃げを見て2番手外を追走。ハイラップを刻んでいたが、楽に追走して3コーナーで先頭。その後も脚色は衰えなかったが、最後の最後でプラス8キロ(512キロ)がこたえて2着に敗れた。
理想は500キロを割る馬体重なのだが、想定外の512キロ。見た目にも腹回りが太く、ちょっと苦戦を強いられそうだと思ったが、何と渋太いこと。栗駒賞レコード勝ちでもそうだったが、この水沢1400m。そして速い時計勝負の馬場適性は抜群。できれば前に行く馬がもう少し粘っていれば、違った結果になったかもしれない。それほど内容的には文句なしだった。
3着 ダンディキング
1400mでは思ったほどスタートダッシュがきかず、1周目スタンド前はハタノアドニス、オリエントボスの間にはさまれてちょっと窮屈になったが、馬群がばらけた1コーナーでうまく3番手外に持ち出す。3コーナーでオリエントボスが動いたのと同時にスパートをかけたが、最後は伸び切れず3着に終わった。しかし控える競馬でも我慢できてこと、また初の一線級相手に上位入線を果たし、これで今後の見通しが非常に明るくなった。