女子オートレーサーを牽引してきた川口所属の佐藤摩弥選手。2011年に44年ぶりの女子レーサーとしてデビューし注目を集めた。それから12年、2023年7月17日、地元川口で行われたGIキューポラ杯で女子オートレーサー初のGI制覇を飾りました。その時のお話、今後のこと、女子レーサーについてなど色々とお話していただきました。
(取材日:2023年7月28日)
インタビュー / AKI
AKI:GI初優勝おめでとうございます!今のお気持ちはいかがですか?
佐藤:ありがとうございます!周りの方が「すごい!」「おめでとう!」と言ってくれて嬉しいですね。私自身も嬉しかったです。ただ、SGだったらもっと喜べたのかな、という風にも思えるようになりました。自分の中では、S-1(伊勢崎31期:青山周平選手)、S-2(浜松32期:鈴木圭一郎選手)がいない中で勝てた。誰でもチャンスがあるという中で勝てた、チャンスをものにできたというのは良かったと思います。ただ、やっぱりSGを獲るためにはトップの2人に勝たないといけないので、GIとSGの壁というのをなお感じましたね。あの2人がいなかったから獲れたのかな、とどこかで思っています。もちろん嬉しいんですけどね!今年は本当に調子が良くて、良い状態の時にグレードで勝てるか勝てないかというのは大事なこと。勝てたというのは大きいです。
AKI:優勝した節の車の状態はいかがでしたか?
佐藤:キューポラの時の消音マフラーは、6月末に優勝した時のマフラーとは違って正直厳しいと感じていました。準決まで1着は取れず。あまり良い感触ではなかったですね。セッティングを扱って少しずつ上向いてはいたと思います。後は、下周りを扱ったのも良かったと思います。準決と優勝戦に関しては、以前完全優勝した時のタイヤをはいて走りました。それも良かったですね。優勝戦までに全体的な上積みはあったと思います。
AKI:スタート自体はどうでしたか?
佐藤:スタートで良い位置に行けたのが大きかったですね。凄く良いとは言えないエンジンでもスタートで良い位置が取れれば展開は全く違うので。消音マフラーのスタートも最初に比べると失敗は減りましたね。宏和くん(浜松32期:鈴木宏和選手)が内枠にいたので、そのスタートに乗っていければ、と思っていました。先に行こうとは思ってなかったので展開は予定通り。私自身は良いスタートではなかったんですが、宏和くんが行ってくれたので良い位置につけれました。
AKI:その後、鈴木宏和選手を追う足というのはどうでしたか?
佐藤:多分、宏和くんが立ち上がりでがぶったか滑ったんですよね。失速したとこを捕まえられた感じです。全てはあそこですね。あれがなかったら絶対抜けてなかったです。もちろん気持ちは行きたいんですが厳しいと思っていました。自力じゃ抜けない感じ。エンジンは宏和くんの方が仕上がってましたし。本当にたまたま。相手のミスではあるんですが、そこを捉えられたのが1番ですね。その後、2番手に立ってから先頭に立つまでも時間がかかってしまって。高石さん(川口28期:高石光将選手)の車の状態も良さそうで、後ろにつけた時も最初は隙がありませんでした。慎重になりましたね。けど、その後先頭に立ってからは、抜かれないように走ることに必死。コースを守って。青旗の時に外から音が聞こえたので、懐しっかり取って最後は内に宏和くんが来ると思ったので内をしめて。上手くブロック出来て良かったです。
AKI:ゴールの瞬間というのはどうでしたか?
佐藤:「やったーーー!」という感じ。獲れるチャンスはあると思っていたので、獲れる時にしっかり獲れてホッとしました。ホッとしたという気持ちの方が大きかったかな。期待されてる事は分かってたので、優勝出来て安心しました。
AKI:SGのお話も出ましたし、周りの方からも次はSGという声もあると思います。
佐藤:んー。やっぱりSGはまだ遠いですね。今年はSG優勝戦で2着があったんですが、その時も消音マフラー。消音マフラーもあってか、エンジンが仕上がってるという人がいませんでした。誰が優勝してもおかしくないような感覚がありましたね。私もそうですけど、消音マフラーはまだまだ苦戦してる人は多いと思います。だからこそ、あの時は誰も仕上がっていなかったのでチャンスがあったかもしれません。普通マフラーになると青山くんとか手が付けられないくらいじゃないですか。差は凄く感じますね。
AKI:GIタイトルホルダーになりました、今後の目標は何か掲げているんですか?
佐藤:元々、目標を立てるタイプではなくて。SGを優勝するために何をするか、とかそこまで考えていません。どちらかというと、まずは目の前の一走一走をというタイプですね。ただ、トップ2人はとにかくストイック。とにかくずっと仕事をしています。本当にすごい事だと思うんです。ただ、自分は同じことをしてしまうと仕事に対する楽しさがなくなっちゃう気がするんです。私は仕事を楽しんでした方が結果に繋がるタイプだと思っています。開催も増えてきて、練習もすれば良いとは思っていません。集中力が大事だと思います。集中していないと上手く車をコントロールすることが出来ないと思いますし。女性の30歳を過ぎたら体力的にもピークは過ぎてると思うし、私は割とマイペースに。やる時はしっかり仕事に集中するというやり方です。このスタイルは20代前半の時とは違います。今は成績が良いからモチベーションを保ててるのはあると思います。ただ、1年前はずっと調子が悪かったんですが、メンタルだけは大丈夫でした。この仕事は一喜一憂し過ぎたらダメ。もちろん勝てたら嬉しいんですけどね。ダメな時はダメなことを引きずっても何も良くない。「そのうち良くなるか!」というスタンスで。もちろん部品交換とかいろんなことを試しますが、それでも悪い時は考えすぎても疲れるだけでダメなので、自分のペースで頑張ろうと思っています。
AKI:減量もかなり話題になりましたが、その後もキープされていますよね。
佐藤:そうですね。減量も結果成績に繋がってるかもしれません。体重だけでなく、体を動かすことによって気持ちも前向きになりますし良い方向にいきます。リフレッシュになって良かったかもしれません。全部が良い方向にいきましたね。最近は週1でトレーニングに行ってる感じでなんとかキープ出来ています。
AKI:最近は女子レーサーの活躍も目立つようになりましたが、佐藤選手から見てどう思いますか?
佐藤:私なんかは小さい頃からバイクに乗っていたので、オートレースの世界に入ってもクラッチ操作とか当たり前なことってあると思うんです。けど、バイクに乗ってこなかった女子選手が普通に走れてること自体凄いなと思います。みんなスタートも上手だし。男女の差はないって言いたいんですけど、どうしても筋力的に差は絶対にあるんです。スピードは出せるかもしれないんですけど、競走車を押さえるっていうのは、男性の押さえる力と女性の押さえる力の感覚は違うと思います。消音マフラーは特になんですけど、しっかり押さえないといけないんですよね。最近は慣れてきましたけど、手の力がなくなるくらいいっぱいになるんです。そう思うとやっぱり筋力は必要だなと凄く思うようになりました。女子選手のこれからの課題は筋力的な部分じゃないかなとも思います。もしかしたら、最近の好調の要因は筋トレをするようになって下半身のトレーニングが効いているのかも。車を押さえる力が上がって操作性が安定したことによって成績に繋がってるのかもしれません。1人で走る分には良くても、人を捌くとなると車を押さえて操作するというのが必要になる。女子レーサーって逃げたら速いと思うんですが、捌くとなるとまだまだ苦労してるイメージがあるんです。それって、車のコントロールが出来ていないからじゃないかな。そうすると車を押さえる力というのは絶対的に必要になると思います。逆にその部分ができるようになれば女子レーサーってもっと活躍できると思うんです。今は女子レーサーを教える側が男性で、その辺の教え方も男女の力の違いを考えていけないのかなと思います。日和ちゃん(伊勢崎35期:新井日和選手)なんかは、バイク未経験なのに凄くバイクの使い方が上手いと思うんだけど、まだコントロールが出来てないのかな?と思うところもあります。そこができればもっともっと上があると思います。十分上手なんですけどね。まだまだ女子レーサーが強くなる可能性は十分にあると思いますよ。
AKI:佐藤選手も追い付かれないように!ですね!
佐藤:そうですね。実際、女子戦とか多少意識しちゃうんですよね。みんなで一緒にレベルを上げていきたいと思っていますし、いずれ負けてしまう時がきてしまうとは思うんです。ただ、今はまだ女子No. 1でいたいなと思います。まだまだ負けたくないです。そういう点で、女子レーサーのレベルが上がってきてる事は良い刺激になってます。本当に。今の成績に影響してると思いますよ。日和ちゃんとか、翔子ちゃん(浜松35期:西翔子選手)とか本当に楽しそうに練習に行くんですよ。それは速くなるよなと思っています。そういう姿を見るとまた刺激になりますね。何年か前に女子戦をしてた時と今は全然違います。女子のレベルが全体的に上がってるのは間違いありません。業界全体が盛り上がって、その中で私が1番が良いです(笑)この負けず嫌いが1番の武器だと思います。
AKI:それでは最後に読んでくださった皆様にメッセージをお願いします。
佐藤:GI優勝が話題になって、新聞でも裏一面にしてもらったりして、オートレースを知らない人も「何これ?」と思うキッカケになったと思います。1人でもオートレースを好きになってくれる人がいたら良いなぁと思っています。ファンの皆さんは次のステップ"SG優勝"を期待してくださってる方も多いと思います。選手13年目でここからもっと上手くなるというのはなかなかできることではないと思いますが、自分ではまだ成長できると信じてやってるので、少しずつでも成長できるように、今よりさらに強くなれるように。"現状維持"の考えではそれ以下になると思うので"今よりさらに強くなる"を目標に頑張っていきます。そして、今回の女子レーサーGI初優勝で話題になって、「私もオートレーサーになりたい!」と思ってもらえれば。ちょうど38期の選手候補生も募集してるので、私を目標にと言ってもらえるようにこれからも頑張ります。
(写真の一部は川口オートSNSより)
福岡県宗像市出身のタレント。福岡でテレビ番組やイベントMCなどで活躍中。飯塚オート3代目「勝利の女神」。飯塚オートでは、AKIのAKIらめない予想やバスツアーなどを開催。川口オート、伊勢崎オート、浜松オート、山陽オートでもイベント出演中。
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