今月17日、初めて訪れた山陽オート。
オートレース初心者の私には、見るもの聞くものすべて新鮮。
競馬とはまた違った魅力、そして競馬と共通する魅力を発見し、大いに楽しんだのでありました。
まず最初にインタビューさせていただいたのは...
山陽支部長・田方 秀和(タガタ ヒデカズ)選手。
この日は10Rに騎乗?出場?登場?なんていうんだろう...出場かな。
レース前に愛車【ラファエラ】を整備中。
:お疲れ様です。今質問してもいいですか?
「いいですよ。何が知りたいの?」
:まず、初心者にもわかるオートの魅力を聞きたいんですけど。
「そうですねぇ。やっぱりハンデがあることじゃないかな。公営競技の中で、明らかな距離のハンデがあるのは、オートだけだから」
:前からスタートする時と、後ろからスタートする時では、気持ちが違いますか?
「まぁ、後ろからスタートする人の方が余裕があると思うよ」
:え?後ろからの方が?前じゃなく?
「そう。だって、その人は速いから後ろにいるわけだから。OPのレースになってくるとまた違うけど、基本的には8号車の人が一番ハンデを背負ってるから、その人が一番余裕あると思う。なっ」
と言って、田方選手のロッカーで漫画を読みながらリラックスしている、伊勢崎のスター高橋貢選手を振り返りました。
この日、12Rの優勝戦に出場する高橋貢選手。
田方選手とは22期の同期で、とても仲がいいそうです。
「肩組んだのなんて、何年ぶりだ...」
と、照れるお2人の表情は、お互いを信頼し尊敬しているように見えました。
:12Rの優勝戦、高橋選手が8号車なのも一番速いから?
「いや、今回の優勝戦は、全員S級でハンデはないです。枠は、枠順選択でその節のポイント順で選ぶんですよ」
なるほど。
枠順選択の場合、選手にもよりますが、2枠3枠など内枠が人気なのだそう。
8枠は強い選手の代名詞であると共に、コーナーに入ることを考えると、多少のハンデでもあるわけですね。
かなり単純で初心者丸出しの質問にも、心よく答えて下さいました。ホントすみません。
田方選手のインタビューに戻って...
:バイクを調整する上で、一番注意していることは何ですか?
「タイヤの食い付きと、エンジンの作り方ですね。
タイヤもエンジンも、気温や天気、湿度なんかで大きく変わるんですよ」
と言って見せてくれたのがこちら↓
晴れタイヤと雨タイヤ。
どっちがどっちだかわかりますか?
正解は、手前が雨タイヤ、奥が晴れタイヤです。
私には違いが全くわかりませんが、全然違うんだそうです。
何が違うって、溝の深さ。
こういう道具や...
こういう道具で、その日の天気や気温を想像しながら、地道に削っていくのだそう。
そうして出来上がった、世界で1つだけのマイタイヤ。
しかし。
レースで使えるのは、人にもよるけど3,4走なんだって!!
なんて儚いんでしょうか。
だから、せっかくベストなタイヤが出来ても、すぐに使えなくなってしまう。
しかも、急に雨が降ったり、暑くなったり、予想してた天気と違ったら、これまたベストなタイヤではなくなってしまうという...
オートって、奥が深いですね。
続いてはエンジンの話。
「エンジンは、みんな同じものだけど、パーツや部品を変えて調整するんですよ。これも天気や温度や、色んなことを考えながらね」
:エンジンはどのくらい使えるんですか?
「これはもう人によるね。早くて3ヶ月の人もいるし、部品変えてずっと使う人もいるし」
:調整はいつしてるんですか?
「バイクはレース場以外に持ち出し禁止なので、基本的にはレースの前の日。前検したら、もう選手でも触れないから」
:え~?そんな短期間に調整するんですか?
「そうですよ。だから練習も出来ないです。前検して、レースの日を迎えてまた天気に合わせて調整して、レースしてまた調整してって感じです」
:では、レース当日の調整がすごく大事なんですね。
「そうですね。レース終わってすぐに調整する人もいるし、当日にする人もいるけど。
これでまた、レース直前になると自分でも触れなくなるから」
検量?点検?を終えて、レースを待つバイクたち。
:急に雨が降ったらどうするんですか?
「規定の時間内だったら、タイヤを取り替えたりしてもいいんですよ。ただ時間もないし、一人では出来ないから、同期や所属の仲間と助け合うんです」
:なるほど。孤独な作業も多いけど、仲間も大切なんですね。
「はい。フレームにエンジンを乗せたりするのも一人では出来ないし、タイヤや部品の情報も重要ですから、仲間は本当に大切ですよ」
オートレーサーたちの、全く知らなかった一面を見た気がしました。
お互いに助け合いながら、でもピットに出てレースをする時は真剣に。
レース中、ちょっとのことで大事故にも繋がるオートレース。
選手は命を賭けて走っていますから、一緒にレースする人たちとの信頼関係は、本当に大切だと思いました。
最後の質問は、試走について。
競馬でいう、パドックみたいなものかな。その日の調子を計る上で、かなり重要な要素です。
:試走って、みなさん本気で走ってるんですか?
「基本的には信じて大丈夫ですよ。試走の上がりタイムと、レースでの上がりタイムの差が規定を超えると、選手には制裁がありますからね。みんな一生懸命走ります。
ただ、メンタルな面も含めて試走とレースは違うから、どうしても試走でタイムが出ない選手もいますよ。そういう所もわかるようになったら、上級者ですね」
試走でタイムが出やすい選手、逆に出にくい選手がいるわけです。
実に人間らしい特徴ですね。
続いてお話を伺ったのは、山陽副支部長・吉松 憲治(ヨシマツ ケンジ)選手。
6Rの戦いを終え、自転車と共にパチリ☆
オートレーサーの貴重なチャリショットです。
:まずは、オートレースの魅力を聞かせて下さい。
「スピードと、格闘技っぽいところかな」
:格闘技ですか?
「レース中は接触もあるし、危険が多いですからね。レース前のバチバチもあるし、レース中目でチラッと見たりとかね」
:ピットの中で戦ってるんですね!
「レースになったら戦いですよ。真剣に戦ってます。
ただ、1人じゃ出来ないので、仲間も大切ですよ」
:選手はライバルであり、仲間なんですね。
「そうです。僕の場合、いつも手伝ってくれる後輩たちがいるんですけど。そいつらには負けたくないですね。まだまだ意地を見せたいです!」
やはり吉松選手も、仲間の大切さを語ってくれました。
競馬では、1頭の馬にたくさんの人が関わってレースに送り出しますが、オートレースは、選手個人の技術と、仲間との信頼関係がとても重要なのだと感じました。
孤独な競技...と勝手に思ってましたが、全然違っていたことに、驚きと共に感動です。