牝馬は、夏に強い!というのは有名な話。
まぁ、馬にもよるのですべての牝馬が夏に強いわけではないけれど、現役時代の愛馬の中で、夏と冬では異常に変わる馬がいた。
彼女の名前は「アイティーウェルズ」。めんこに、「愛」の文字がデカデカと刺繍してあったので、覚えている方もいるかもしれない。
彼女は大井競馬場から移籍して来て、当初は菊地厩舎に入厩した。季節は冬。初めて馬場入れした時からおとなしく、とても乗りやすい馬だった。レースに行ってもおとなしいのが玉にキズだったけど、とにかくてのかからない、私の指示もよく聞く優等生だと思っていた。
ところが・・初めての夏。アレは忘れもしない7月1日。調教中、いきなり跳ねて落とされた。すぐに捕まえて、もう1度騎乗すると、また落とされた・・おとなしいはずのアイちゃんが、豹変した瞬間だっだ。
当初、体調が悪いのではないか??と関係者は推測していた。それで、苦しくてワガママしているのではないか?と。
しかし、レースに行って見ると、押さえきれない程に引っかかり、そのまま逃げ切り勝利!!それまで3着にも来た事がなかったのだから、もの凄い配当が出た。その夏中、アイちゃんは大活躍したけれど、調教中や返し馬で、私は20回近く落とされた。跳ねる、飛ぶ、回る、立ち上がる・・と考えつく限りの抵抗をして、私が落ちると満足そうに、1人で厩舎に帰って行くのである。
そして、秋の声を聞くと・・途端に優等生に戻るのだ。その後、アイちゃんは私の所属厩舎である畠中厩舎に転厩したけれど、再び夏が来た時、またまた豹変した。私を落とすと、必ず昔の菊池厩舎に帰ってしまうので、いつも謝りに行っていた。
そんな事を何年繰り返しただろう??手がかかる馬で勝った時というのは、至極の喜びだ。毎年、アイちゃんで初落馬するたびに、「ヨシッ」と嬉しくなったものだ。
あまりにも可愛く、そして憎いアイちゃんのために、特注でめんこを作ってもらった程、愛しかった。
そんなアイちゃんも、高崎競馬最後の開催の次の日、トラックに揺られて旅立っていった。先生が、旅立ちの時間を教えてくれたけれど、私は見送りには行かなかった・・というか、行けなかった。
夏が来るたびに、必ず勝ち星をプレゼントしてくれたアイちゃん・・落馬女王の私でも、こんなに落とされた馬はいない。今でも、夏が来るとなんとなく緊張し、秋になるとホッとする、アイちゃんショックが抜けない私です・・。
思い出話が長くなりましたが・・9日の南部杯、いいメンバーですねぇ。2着続きから脱したシーキングザダイヤと、休み明けの昨年JBCスプリント王者ブルーコンコルド、それにヒシアトラスと、どれを本命にするか悩み中!
でもね、対抗は決まってるんですよ。ジンクライシスで!!この馬、堅実ですよね。地方馬代表として、魅せてほしいものです♪