姫山菊花賞は、好ダッシュから逃げたタガノウィリアムが直線を向いても先頭で、人気のジンギはこれをとらえきれなかったばかりか、転入2戦目のラッキードリームにまとめて差し切られてしまった。前もうしろも気にしながらという展開で、タガノウィリアムの淀みのないペースに惑わされたかもしれない。ジンギにとっては、2020年の姫山菊花賞でエイシンニシパの2着に負けて以来、じつに2年ぶりに兵庫所属馬に先着を許した。今回はあらためて兵庫の古馬中距離ナンバーワンをアピールしたいところ。
姫山菊花賞を制したラッキードリームは、ジンギ、シェダルに続く3番人気で、それほど警戒されることもなく、下原理騎手も気楽な立場で臨めたかもしれない。今度はライバルからある程度マークされる立場になってどんなレースを見せるか。
タガノウィリアムは、2走前の摂津盃ではスタートでダッシュがつかず、後方からとなって見せ場なく最下位。やはりこの馬は快足を飛ばして逃げるしかなく、前走姫山菊花賞以上に他馬のマークは厳しくなるかもしれない。
スマイルサルファーは佐賀に遠征した鳥栖大賞こそ前をとらえきれず3着だったが、地元に戻っての前走は見事に逃げ切り。今回のメンバーでは好位に控えてという展開になりそうで、前が競り合ったときに勝機をつかめるか。
エイシンニシパは、得意の佐賀・はがくれ大賞典を今年も勝って4勝目。その後、地元に戻っての兵庫大賞典はジンギの3着で、前走A1A2特別は、勝ったスマイルサルファーに3馬身差をつけられての2着。今回は年明けの新春賞5連覇、6勝目に向けて格好をつけておきたい一戦。
◎8ジンギ
○6ラッキードリーム
▲4タガノウィリアム
△5スマイルサルファー
△3エイシンニシパ
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ばんえい競馬のトップジョッキーとして活躍してきた松田道明騎手が調教師試験に合格(12月1日付免許)、11月28日がラストライドとなった。
重賞での最終騎乗となったのは、前日27日のドリームエイジカップで、コウシュハレガシーに騎乗して5着。最終日となった28日の第7レースではダイヤディープで勝利を挙げた。
そして最後の騎乗となったのが最終レース。3番手で第2障害を越え、一旦は前に迫る見せ場があったが、5着でゴール。1990年4月のデビューから、通算21,673戦2,630勝という成績を残した。
その最後の騎乗のゴール後には、騎手たちからの胴上げとなり、その様子はばんえい十勝の公式YouTubeの動画で見ることができる。
引退セレモニーなどは、本人の意向により残念ながら行われれず、引退に際してのコメントは、ばんえい十勝の公式サイトに掲載されている。
松田道明騎手といえば、思い出されるのはカネサブラックだ。ばんえい記念2勝を含め重賞21勝は、その後オレノココロに更新されるまで、ばんえい競馬の重賞最多勝記録だった。
松田騎手がカネサブラックの主戦となったのは、2007年5歳時の9月から。その後は一度も他の騎手に手綱を譲ることがなく、松田騎手では重賞18勝。カネサブラックが古馬路線の中心勢力となってからのほとんどの時期のパートナーであった。
2011年、1度目のばんえい記念制覇が、松田騎手にとっても初めてのばんえい記念制覇でもあった。
翌2012年のばんえい記念は、残念ながら馬インフルエンザの影響で出走できず。前哨戦とも言える帯広記念を勝っていただけに、もし出走できたらと思わざるをえない。
そして2度目のばんえい記念制覇は2013年で、これがカネサブラックの引退レースでもあった。第2障害を先頭で越え、何度か止まりながらも単独先頭をキープ。しかしゴール前10mで一杯に。松田騎手は体がうしろに倒れそうなほどバイキ(手綱を大きく引いて反動をつけること)しても、カネサブラックは前脚を突っ張って動かず。いよいよギンガリュウセイが迫ってきたとき、カネサブラックはそれに気づいたのか、最後の力を振り絞って歩き出し、先頭でのゴールとなった。
2013年3月24日、引退レースとして臨んだばんえい記念を制したカネサブラック。松田道明騎手の渾身のバイキでゴールを目指す
この年のばんえい記念の1着賞金は300万円。バブル期の1989年以降、ばんえい記念の1着賞金は長らく1000万円で続いてきたが、売上の減少にともない2003年以降、賞金も徐々に減少。この年はばんえい記念の賞金がもっとも落ち込んだ年でもあった。
その後、2017年に再び1000万円に復活するのだが、カネサブラックはばんえい競馬のどん底の時期を王者として支えた存在でもあった。
松田騎手はその後、2016年にもフジダイビクトリーでばんえい記念を制した。
ばんえい競馬は2006年度に売上げの減少による廃止の危機があり、しかし翌07年年度からは帯広市の単独開催で存続。その後も経営的には苦戦を続け、先行き不透明なことから引退する騎手はいても、あらたにデビューする騎手が出てこないという時期があった。
2011年1月には、赤塚健仁騎手、島津新騎手、西将太騎手など4名の騎手がデビューし、2012年1月には舘澤直央騎手(引退)がデビューしたが、その後はしばらく新人騎手のデビューが途絶えた。
8年近くの空白があって新人騎手となったのが、2019年12月にデビューした林康文騎手。カニ漁師からの転身で、38歳でのデビューということでも話題になった。
2020年12月には金田利貴騎手が続き、そして今年12月には、今井千尋騎手、小野木隆幸騎手、中村太陽騎手と、3名の騎手が新たにデビューすることになった。
ここ10年ほど、地方競馬全体で売上が回復を遂げたなかで、ばんえい競馬も順調に売上を伸ばしてきた。そして今年、多くの地方競馬主催者で、売上の伸びが頭打ちになったかという状況にありながら、ばんえい競馬は今年度10月末現在、総売得額で前年同期比115.3%、1日平均で同114.0%と、いまなお伸びを見せている。
とはいえ、厩務員不足や、後継者不足による重種馬の生産頭数の減少など、ばんえい競馬をとりまく環境は、まだまだ憂慮すべきことは少なくない。
それでも新人ジョッキーが増えることでの騎手の世代交代は明るい話題といえる。