JBCは今年も中央勢が上位を占めた。力関係から当然の結果といえばそれまでだが。
マイルのほうは、メイショウバトラーが直線抜け出して「これはヤラれたか」と思ったがブルーコンコルドが楽々と差し切った。南部杯でマイルを克服してからはさらに力をつけた感じで、来年のフェブラリーSでどんなレースをするのか楽しみなところ。
クラシックは岩田騎手が見事な騎乗だった。5番人気でしかなかったタイムパラドックスだが、川崎では去年の川崎記念を勝っていて、今年の川崎記念も3着とはいえ、それほど差はなかった。結果論だが川崎コースは得意なのかもしれない。3コーナーで先頭に立ったときは驚いたが、過去のレースを確認してみたらなんと勝った去年の川崎記念でも3コーナーで先頭に立つという同じようなレース運びだった。川崎コースではそういう早め早めの競馬ができるのかもしれない。それにしてもシーキングザダイヤは……。
さて、地方競馬はJBCが終わってとりあえずひと段落という感じがしないでもないが、5日には秋を感じさせる重賞が2つ。
北上川大賞典というと、盛岡競馬場でのシーズンも終わりだなあという思いにさせられるレース。
みちのく大賞典や、シアンモア記念、不来方賞などの伝統の重賞が何度か開催時期が変更されているのに対して、年末(たまに正月も)の桐花賞と、この北上川大賞典だけはほぼ固定された時期に行われている。
メンバー的には昨年ハナ差で1、2着だったエアウィードとコアレスハンターの一騎打ちと見てよさそうで、今年みちのく大賞典を制したコアレスハンターが逆転と見る。
この2頭以外では、前走赤松杯では低評価を覆し岩手での2勝目を挙げたブラーボウッズ。姫山菊花賞で兵庫のトップクラスとそれほど差のない競馬をしたタカオライアン。青藍賞で差のない3着のあるミサキノハンターまで。
やはり実力では上位2頭が抜けている感じだ。
◎コアレスハンター
○エアウィード
▲ブラーボウッズ
△タカオライアン
△ミサキノハンター
福山3歳牝馬特別は、3月のクイーンカップの覇者ユノマリアージュが抜けている。牡馬との重賞でも堅実に走っているのはこの馬だけだし、格付けで古馬に編入されているのも今回のメンバーではこの馬だけ。
相手はクイーンカップこそ9着だったものの、その後力をつけてきたテイクウイン。ここ2戦も3歳1組で連勝と好調だ。
実績的にはこの2頭で堅い感じで、穴を探すなら4走前の3歳1組1600メートル「ライター梶原もじゃ引退記念」でテイクウインの3着だったスイセイタカラか。
クイーンカップで2、3着だったハイスイノジン、グレインズはその後結果を残してないので厳しそう。
◎ユノマリアージュ
○テイクウイン
△スイセイタカラ
早いもので、「楠賞」がサラブレッド3歳以上の重賞になってもう3年がたった。
楠賞がサラブレッドのレースだというと、ちょっと違和感を感じる人のほうが今はまだ多いことだろう。それでもあと5年もたてば、かつてアラブが走っていたことすら昔の思い出になり、それも素直に受け入れられるようになるのだろうと思う。
現に菊水賞や六甲盃などはもはやサラブレッドのレースであることに違和感を感じてなかったりしませんか?
そして20年もたてば、「楠賞と言えばな、昔ケイエスヨシゼンて馬がいてな……」だとか、「ワシュウジョージって馬はな、栃木から来たなんだかって馬に楠賞で負けてだな、三冠をだな……」とか、競馬場に来ている若者をつかまえてぐだぐだと語るおやじが出現しているに違いないと思うのだ。
そしてこの場合、「楠賞」は「くすのきしょう」ではなく「くすしょう」でなくてはならない。
それで思い出したが、初めて園田に競馬を見に行ったとき、地元のおじさんたちはサラブレッドのことを「アラブ」に対して「サラブ」と言っていることに新鮮な驚きを感じた。今思えば、その「サラブ」という表現にはやや蔑視的なニュアンスがあったように思うのだがどうだろう。
で、話を元に戻す。ぼくは競馬場で昔話をぐだぐだと話すおやじが決して嫌いではない。何年も前に浦和競馬場で「俺はハイセイコーが大井で走ってるのを見てるんだ」と延々と話しかけてくるおやじに遭遇した。話はやや支離滅裂だったような気もするが、競馬ファンにおいて「少しでも昔のことを体験しているほうがエライ」という雰囲気は、素直に受け入れることにしている。
もちろん話しかけてくるおやじがべろんべろんに酔っぱらっていたりしたら問題だが、そうでなければそれはむしろ競馬場の由緒正しきあるべき姿であるとも思う。
園田や姫路に行ったときに、ぐだぐだと話しかけてくるおやじから紀三井寺や春木の話は聞いてみたい気はする。
というわけで前置きが長くなったが楠賞である。
ここは素直にジョイーレ本命で間違いないだろう。3歳の重賞ではなかなか勝てなかったが、古馬と重賞で対戦するようになったらあっさりと勝てるようになった。
相手も素直に姫山菊花賞3着のレッドペガサスで、一角崩しがあるとすれば3連勝中の上がり馬ギャランティビート。
今年の兵庫大賞典を勝って以降精彩を欠いているロードバクシンだが、休み明け2戦目で巻き返す可能性も十分ある。
◎ジョイーレ
○レッドペガサス
▲ギャランティビート
△ロードバクシン
印としては一応こうなるが、希望としてはギャランティビートがジョイーレを差し切ってほしい。
なんといってもギャランティビートの父はアブクマポーロであり、ジョイーレの父はメイセイオペラだ。
アブクマポーロはすでに種牡馬を引退して乗馬となり、メイセイオペラは種牡馬を続けているものの韓国に渡ってしまった。
20年くらいののちに、「メイセイオペラが地方馬として初めて中央のGIを勝ったときはだな……」とか、「アブクマポーロが東京大賞典を勝ったときはだな……」とか、競馬場に来ている若者にぐだぐだと話しかけているおやじがいたら、それはもしかしてぼくかもしれない。