
今回は九州地区の先行レーサーとしてデビューから5年半、S級1班に昇格して丸三年を経て飛躍をつづける伊藤颯馬選手(沖縄・115期)に今年の展望などをうかがいました。
― 昨年の最終戦だった寺内大吉杯(静岡FI)での優勝に続き、年始めの高知FIと全日本選抜(豊橋)の直前も松山FIで優勝されました。
伊藤:ありがとうございます!年末年始は流れも向いたのだと思います。
― 今年初戦の高知戦は完全優勝。捲りの決まりにくいバンクで3連発でした。
伊藤:ええ。ただ実のところ内容や脚はまだイマイチな部分があるんです。松山も調子は絶対に優勝できない程度だったんです。これから寒い時期が終われば良くなっていくんじゃないかと。
― さて昨年は全てのビッグレースを走りました。名だたるトップレーサーに力勝負を挑みましたね。あらためて振り返っていかがでしたか。
伊藤:色々経験できて楽しかったです。ウイナーズカップの決勝を走ったのはその中でも大きかったです。
これからも全部かは分かりませんがビッグに出走して出来ればいい結果を残したい、そのために頑張りたいと思えた一年でした。
― ウイナーズカップの優出は沖縄出身の選手として初の快挙として話題になりました。さらなる飛躍が注目される今年の目標や課題は?
伊藤:一番の課題は"落車しないこと"です。調子が上がってきたときの落車は上向いた流れにブレーキを掛けますからね。
怪我をせず走って状態を維持していければ、たとえラッキーでも特別の決勝を走るチャンスがやってくるんじゃないかと思います。
― 伊藤選手といえば九州地区の中でもデビュー当初から仕掛けの早さが挙げられます。
伊藤:前で走るからには、ですね。あと仲良くしてもらっている皆さんのために頑張ろうって思うことはあります。
といってもラインに恩を着せるようなつもりはないですけど(笑)
― ダッシュを活かして先手を取るいわば急先鋒として走る強い意識はどのように維持してきましたか?
伊藤:負けても悩みすぎないことです。レースに内容があればきっと収穫があるし、続けてればいつか結果につながってくれれば。
行こうと思ったところで動いていればポジティブで居続けるとやってきました。
― 自力だけでなく捌きも強烈です。横の動きは練習で身につけたのですか?
伊藤:いやぁ、レース本番での引けないってなった気持ちだと思います。練習だと怖くて出来なかったです。
― それは意外でした!
伊藤:最近はようやく練習でもやれるくらいに慣れてきましたけど元々は競ったり、目の前で競られてもメチャ嫌だったんです。
それでもなんとなくレースでタイミングが合ったときに競ったら出来ただけでキッカケはたまたまなんです。
― 引くに引けずの状態を横の動きで切り抜けたのを見た師匠や練習仲間の皆さんの反応はどうでしたか。
伊藤:そのときは「やるじゃん、強いじゃん!」って言ってもらえましたけど戦法の幅を広げようと意識せずにまず脚をつけることに一生懸命でした。
― デビューから5年半、S級1班に昇班して丸三年で印象に残ったレースは?
伊藤:振り返って思い出すのは落車したレースばかりです。まだまだ胸を張れる結果を出したわけではないですから。
― GIIIの優勝は意識していますか。
伊藤:したいですけれど皆さん強くてなかなか厳しいのが現状。先行しても番手に差されるし、捲られている間は難しいです。
― 更なる飛躍をめざすために伊藤選手が必要と感じていることは?
伊藤:ゴール前の伸び脚が足りないのを感じています。中途半端なところで動く癖があるんです。サッサと仕掛けるなら仕掛けるで構えるなら構える。捲り追込みをする勇気とそれでも結果につなげる脚力をつけたいです。
― "たとえ立ち遅れても必ず動く"のは一般的に自力選手へのプラス評価ですが、それだけではダメだと?
伊藤:いつもベストなタイミングで仕掛けられたらいいんですが、展開上ここは捲り追込みだぞ!って場面でも焦って早めに踏み出してしまう。
これでは却って中途半端なレースになってしまう。だったらいっそ溜めて溜めて遅めに捲る。それが出来る勇気があればいいんですけど。
― これもひとつの戦法の幅ですね。
伊藤:ええ。今でもときどき突っ張ったり後ろから抑えたりと色々やっていますが競走スタイルが固定されると前受けが多くなり苦戦しがち。なので後ろになってしまってもチャンスを作れる強さもほしいです。
― 現在はどのような練習環境ですか?
伊藤:沖縄は環境は良いのですがいっしょに練習をする人数がどうしても少なくなるので熊本に行ったり、久留米へ行ったりと色々な所で練習しています。
最近だと...東矢圭吾や後藤大輝、冬季移動で来ていた小笠原光さんと4人で練習しました。
― 若手同士のつながりが九州勢をいっそう盛り上げますね。
伊藤:九州のひとりとして「戦えている」から「対抗する」ところまでいけば素晴らしいです。
― セッティングや自転車全般の情報交換なども?
伊藤:どちらかと言うと練習のメニューを話し合って決めて取り組んでお互いを刺激しあう感じですね。僕自身はバンク練習をしたいなと考えていて出稽古してます。
それでも冬場はなかなか思うほどに追い込めてないです。暖かい時期に比べると練習不足になりがちなんです。
― 今日は2月19日で全日本選抜競輪は目の前、ということで本格的に格上との対戦が始まる現在の心境は?
伊藤:自分はまだまだ縦では勝てないし横でも技術でも及ばないし中途半端なりにせっせと頑張るしかない。実際のところは流れ一本ですよ。
落車をしないようにで厄払いにもいってますし運気はいいと思うので少しでも優勝に近づけたらいいですけど。
― ちなみに初詣はどちらへ?沖縄では首里城も有数のパワースポットですよね。
伊藤:熊本と沖縄でもお詣りしました。今年の初詣は熊本駅から近い北岡神社でした。首里城は去年初めて行きました。
実力じゃまだ勝てないんで神様とラインを組んで頑張ります!
― 練習の後や合間の時間の過ごし方は?
伊藤:マッサージに行ったりするときもありますし、お酒を飲んだり、趣味の時間に使ったり。レースの結果を良くても悪くても考えすぎないように心がけています。
今までは無意識にがむしゃらにやってきたと自分でも思いますけどこれからは何事にも意識して取り組んでいきます。
― トップレーサーの皆さんにお話をうかがうと"意識する"というワードが出てきます。
伊藤:戦えてるって状態から上位の皆さんに少しでも近づけたらいいですね。
― では最後にオッズパーク読者の皆様、全国の伊藤颯馬ファンへメッセージをお願いします!
伊藤:いつも応援ありがとうございます。今年は落車なく怪我なくを第一に。
練習に打ち込んでレースは自分らしく気負わずに頑張ります!今後とも応援をよろしくお願いします。
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※インタビュー / 大村篤史(おおむらあつし)
九州地区の競輪場でレース実況を中心に活動中。
出身地は大阪。1976年生まれ。
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・去年はGIでの活躍もありましたけど、振り返っていかがですか?
GIも含めてそこまで自信があったわけじゃなかったので、自分でもここまでできるんだっていう驚きがありましたね。自分の練習環境が整ってきて、すごく恵まれているのもあって自信がついて来ていて、もうちょっと頑張っていけばなんとか上を目指していけるんじゃないかっていう気持ちはあったんです。それがうまく結果に繋がって、6月のGIパールカップの結果だったので嬉しかったですね。4月のGIオールガールズクラシックは自分では良いと思って臨んだんですけど、体調的にもピークに持っていけなかったりとか、やってることが噛み合ってなかったんです。パールカップはそれまでにすごく練習したり、しっかり臨めてああいうふうに結果が出たので、噛み合えば結果も残していけるんだなっていう感じがありました。
・GIパールカップでは3日間Bを取る競争でしたが、走ってみてどう感じましたか?
GIでBを取る競争をして勝ち上がりたいっていう気持ちがあったので、3日間ともしっかりBを取って決勝に乗れたことはすごく自信になって良かったんですけど、やっぱりあそこまで行ったら勝ちたかったっていうのも正直な気持ちです。でもやっぱり勝てないっていうのは自分に何か足りないところがあるからこその結果なので、そこはやっぱり受け止めて向き合わなきゃいかなきゃいけないなとは思いました。
でも終わってみて、すごく悔しいって思えたんです。今までだったら多分2着ならやった方だなって感じだったと思うんですけど、2着で満足してなかったので自分の中でもびっくりというか、そういう舞台で悔しいって思えたことは収穫でした。
・今年のGIはどう戦っていきますか?
やっぱり自分の中ではBを取る競争でGIを獲りたいっていう気持ちはあるので、そこはブレずに、それでどうやったら勝てるのかってところを考えたいです。ガールズ競輪のレベルも上がってきて、正直なところ本当に自分のその走りで勝てるかって言われたら、去年はあまり自信が持てなかったんです。GIで勝つとかグランプリに出るっていうことも、自分の中でまだ実力が足りないんじゃないかっていうか思ってしまってたところがあって、、でも自分がそう思ってしまったら、もう絶対にそこは目指せないし叶わないと思いましたね。本気でGIを獲るとかグランプリに出るのを目指せてなかったのは気持ちが1番大きいと思います。自分で限界を作っていたし、まだ自分の実力ではちょっと足りないなっていうのを思ってしまってたなと。
たとえ力の差はあったとしても、獲りに行く自信持つことは絶対に大事だと思うので、去年を振り返ると戦う前からそういうところで負けてしまっていたのはあったと思います。そういう気持ちで臨んでしまうのは、応援してもらっている人や一緒に練習してもらってる人もそうだし、ファンの人に対してもすごく失礼だと思うので、自分自身が気持ちの面で本気でそこに向かっていかないといけないですし、今年は本気でGIを獲る、グランプリに出るってところを目指していきたいって気持ちがあります。
・GIの雰囲気に飲まれてしまうこともありますか?
そうですね、やっぱり自信がないといつも行けるところでも行けないことはあります。気持ちと体が噛み合ってないと自分のレースすらさせてもらえないし、今は脚力の面でも気持ちの面でもレベルがすごく上がっているので、自分自身がもっと気持ちも脚力も上げていかないと飲まれてしまうな、と去年1年間でGIを走って感じました。
・ガールズ競輪でGIが新設されて賞金ではなくグランプリに出られる枠ができたことはどう感じましたか?
本当にガールズにとっては大きい出来事だったと思います。今まではグランプリって賞金の積み重ねだったので、走って稼ぐ部分はあったと思います。ただGIにちゃんとピークを持って行って、実力のある人が勝ち上がってタイトルを獲るっていうのはすごく大変なことなので、それだけの価値があることです。
GI前に他のレースがあったり、レース間隔によって準備は変わってくるんですけど、それでも上手く対応して仕上げていかなきゃいけない難しさはありますけどね。
グランプリの出場権を獲れるっていうのはすごく大きなことだし、逆により実力の世界になってくるんですけど、それは本当に選手としては良いことだなとは思いました。
・現在賞金ランキング3位ですが、ご自身ではどう感じていますか?
まだ今年が始まったばっかりなので、全然これからです。でも去年の前半は半年ぐらい優勝できなかったので、そういう意味ではしっかり優勝できているのは大きいと思います。3日間の開催だと予選2日間で出し切ってしまって、決勝でなかなか上手くいかなかったりもあるので、、
決勝までに余力を残す、と言うと少し違うかもしれないですけど、自分のやりたいレースと、1番大事な最終日の決勝に向けて予選をどうやって走るかというのは考えています。前は力を出し切って踏み切っても決勝で自分がやりたい走りをできていたんですけど、年齢を重ねて疲労が溜まりやすくて取れづらくもなっているから、予選の2日間を乗り方も含めてどう走るかを考えながら走ってますね。うまく踏み回すというか乗り方も含めて、力で走るというより効率良く走ることも考えながら臨んでいます。
GIだと初日から効率良くなんて考えてる余裕はないので、いかに開催に入る前に疲れがなく良い状態で入るかが大事だとは思うんですけど、普段の開催はやっぱり予選の2日間を走る時も、決勝に向けてのコンディションの調整は意識しています。
・ドームはあまり好きではないと聞きました。強風などの重いコンディションが得意なイメージもありますが、いかがですか?
立川のバンクが改修してから前よりは軽くなったんですけど、前は立川は結構重くて練習でも風が強かったんです。なので他の人より風をそこまで嫌だと思う感覚がないと思いますし、それは強みかなとは思います。逆に風が強い方が自分の良さを発揮できるって気持ちを持てるのは良いですね。でも前はすごい練習量をやっていたので、そういう部分では休息を取り入れるようになったので風とか悪条件の時の強さは年々少しずつ弱くなってきたとは感じています。
・競輪はオフがないですが、練習のモチベーションはどうコントロールしていますか?
私は結構淡々としてるんですよね。毎日そんなに起伏がなくてやることをやるって感じで、練習に対して「うわーやだなぁ」とか思うことがあんまりないんです。だから毎日やることをしっかりやるっていうか。コツコツやるのが日常って感じです。逆に気持ちが上がるってこともあんまりないですけど、やっぱりまだまだ自力でやりたい気持ちがあるので、そのために何が必要かっていうのを考えて日々淡々とやってます。だから練習が嫌だっていうのはないですね!
ただ去年はちょっとやりすぎちゃって、それこそ4月のオールガールズクラシックはオーバーワークでちょっと失敗しちゃったと思います。そこで気付いて、自分自身の中でもちゃんと自分の体の声を聞いて疲れたら休むようにはしてます。
前は絶対にこれをやるって決めたらやらなきゃという気になっていたんですけど、去年ぐらいからは割り切って、疲れたら無理してやらないようにしています。それがうまくできるようになってから、ちょっとずつ成績も安定してきたし結果的には良い方向に向いた感じですね。楽しんでやっていて自分の年齢でもまだまだやれるって思えてるし、自分の可能性を楽しめていると思います。
・オフの時はどんなことをされてるんですか?
疲れた時は家でゆっくりしたり、体がそこまで疲れてない時は甥っ子が都内に住んでいるので遊びに行きます。子供が好きなので一緒に遊ぶのが1番のリラックスですし、すごく可愛くて元気をもらえる存在です。
・もともと教員もされていましたもんね。教員から競輪選手になられて当時はご両親が反対されていたってことでしたが、今はいかがですか?
今はもう本当に一番応援してくれています。優勝したら喜んでくれるし、すごくありがたいですよね。家族みんなが応援してくれてるのは、自分の中でもすごく心強いです。
・若手の選手もどんどん出てきていますが、同じレースになった時の戦い方はどのように考えていますか?
前は絶対に先行というのを自分の中で譲れない部分があったんですけど、今は先行というよりBを取る競争を意識しています。もちろんそれが先行であることがベストなんですけど、それが捲りでも今はレースの状況次第で使い分けられるようにとは思っていますね。その気持ちはちょっと前とはまた違うというか、自力にはこだわりたいんですけど何が何でも先行ってわけではなくなってきています。
・今年の目標はありますか?
今年はグランプリに出るのが目標です。
・去年のグランプリはご覧になっていかがでしたか?
私の中ではやっぱり坂口楓華選手(愛知112期)の走りがすごく印象的でした。絶対的な佐藤水菜選手(神奈川114期)に対してあれだけ良いスピードで1周カマして駆けて、もちろんタイミングとかもあったと思うんですけど、簡単には捲れなかったですし、、あれはすごい強い走りだったなってインパクトがありましたし、自分もこういう走りをしたいなって気持ちにさせてもらいました。
・佐藤選手が圧倒的に人気を集めていた中で、坂口選手の先行していく勇気がすごかったですよね。特にグランプリのような一発勝負の大きな舞台では体が動かなかったっていうのも聞きますが、奥井選手はそのような場面で強い選手を相手に先行する時の心境はどのような感じですか?
私の場合はそういう大きな舞台でも、自分のレースをしたいっていうのがデビューしてからずっとありますね。レースで魅せたいって気持ちが強いです。
先行はもちろん勇気もいるし、後ろがみんな強いから1周駆けたら自分が勝つチャンスは減るかもしれないって思うんですけど、それでもやっぱりそのレーススタイルで勝ちたいって想いでずっとやってきています。
グランプリで言えば2016年は風がすごい強かったんです。(風速4.0m)自分は先行で勝つって決めてるけど、でもこの条件の中で先行したら絶対勝てないなっていう葛藤が自分の中であって、初めてレース前に吐きそうなほど緊張?というか、、(笑)
でもやっぱりそれぐらい先行するっていう気持ちは持っていました。
だからこそ去年のグランプリの坂口さんからは、すごく伝わるものがあるなと思いました。私もそういう走りをしたいし、やっぱり坂口さんの走りに勇気をもらったというか、うわって熱い気持ちになりました。人を熱くというか心を動かす走りがしたいと思ってるので、グランプリに出るのも自分のスタイルを一年間貫いて、その先にグランプリっていうのが理想ですね。
・2016年のグランプリは惜しかったですよね。翌年の2017年のグランプリも先行して石井寛子選手(東京104期)とタイヤ差での2着と、かなり惜しかったですね。
そうですね。やっぱりその勝ちきれないっていうのは、どこか自分の気持ちの弱さがあるんだと思います。自信っていうか、やっぱり勝てる力があるっていうことをまずは自分が信じないと絶対勝てないなって思いましたね。ファンの人はそう思ってくれてるのに、一番大事な自分がそう思えてないのが自分の弱さだなって思いました。今のレベルで自信を持つってすごく難しいことなんですけど、自信を持つだけのことをしっかりやっていきたいです。
・現在598勝で600勝もまもなくですが、心境はいかがでしょうか?
節目自体はもうあまり意識はしないんですけど、100勝を振り返って怪我や大きな故障もなく走れたことや、この100勝の中で良い時も悪い時もずっと応援してくれてるファンの方がいることに感謝するっていう感じですね。周りの人達に支えられて、節目節目を積み重ねて来られているので。
500勝の時はわざわざ遠くからファンの方が前橋まで見に来てくれてて、絶対今日決めなきゃってその時は意識しました。わざわざ来てくれてる!みたいな(笑)
その時は2着で申し訳ないなって思いましたけど、そうやってわざわざ来ていただけるファンの方がいるっていうのはありがたいですね。ファンの方が自分の応援の輪を広めてくれて、色んなところで声援を送ってもらえるようになって、すごくありがたいです。
本当に1番の力になっているので、そういうことに感謝をするのが節目なのかなと思います。
・今年1年はどう戦っていきますか?
グランプリっていう目標に向けて、一戦一戦で自分のスタイルを貫いて、結果的にその目標に辿り着きたいと思っています。
本当に自分の力だけでは成し遂げられないと思うので、ファンの皆さんも1年間一緒に走ってもらえたら嬉しいなと思います。
・今年のグランプリに出場した場合は、レーススタイルにこだわりはありますか?
そこはやっぱり力勝負というか、、去年の坂口さんみたいなすごい熱い走りとか。男子だと去年のグランプリの脇本さんも(脇本雄太選手 福井94期)
本当に抜群のタイミングでああやってしっかり仕掛けてて、やっぱりすごいなって思いました。私も見てる人に感動を与える走りがしたいです。
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※インタビュー / 太田理恵
東京大学 大学院卒、GIでは自力選手のタイムを計測。 モデル出身で、現在は競輪MCや毎月のコラム執筆を中心に活動する。 ミス・ワールド日本大会2014,2015,2020特別賞受賞。
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2月の岐阜開催において、53歳11か月5日でのS級優勝を果たし、S級最年長優勝記録を自ら更新した内藤宣彦選手(秋田67期)。
53歳という年齢でこの強さを維持している理由とは。そして今のモチベーションは。様々なお話を伺いました。
ナッツ:まずはS級最年長優勝記録の更新おめでとうございます。
内藤:ありがとうございます。
ナッツ:最年長優勝記録に関してご自身ではどう感じてらっしゃいますか。
内藤:2年前に更新してから結構時間が経ったんですけど、前回の記録はすぐ抜かれるんじゃないかなと思っていて、もう1回更新したいなっていう思いはずっとあったんですよね。
ナッツ:それが1つのモチベーションになっていたのですね。
内藤:そうですね。その前の週の川崎の決勝が「微差」で2着だったので、終わってからなんかずっとモヤモヤしていて。
川崎の時はゴールした時に抜いてないなというのは分かっていたのですが、結果を見たら微差という着差だったので、どんどん時間が経つにつれて悔しさというか、モヤモヤした気持ちが募ってしまったんです。それからの岐阜だったので優勝したい気持ちがありましたね。
ナッツ:川崎の悔しさをぶつける開催だったわけですね。
内藤:準決勝をクリアした時点で、メンバー的にもしかしたらこれは最後のチャンスかもしれないなと思っていて。
ここで優勝できなかったら、もしかしたらもう2度とチャンスないだろうなと思って決勝に臨みました。
川崎の時は宮城の和田圭(宮城92期)がいて、和田が準決勝で脱落した時点でチャンスだと思っていて、今回の岐阜は大槻寛徳(宮城85期)がいて、大槻も準決勝で脱落したんですよ。それで晋也(高橋晋也選手・福島115期)の番手が転がり込んできて。これはもうなんて言うんですか。巡り合わせといいますか、最後のチャンスをくれたんだなって思ってました。
ナッツ:決勝のレースに関しては、高橋選手がジャン過ぎからスパートして、内藤選手は追走してゴール寸前差し切った内容でしたが今回は交わしたなという感触はあったのでしょうか。
内藤:交わしたような気はするんだけど...という感じでしたが川崎のことがあるので、決定が出るまではずっとモニターを見てました。
そして1着になったのがわかってようやくホッとしましたね。周りの選手は優勝したよって言ってくれてたんですけど。
ナッツ:優勝が決まってからの周りの選手の反応はいかがでしたか。
内藤:対戦した他の6選手全員に「おめでとうございます」って言ってもらえたんですよ。
なかなかそんな風に言ってもらえることってまずないんです。みんな悔しい思いをしているわけなので。
ナッツ:本当に限られた時くらいしかなさそうですよね。
内藤:そうだと思います。みんな悔しいと思ってるのに、おめでとうと口に出してもらえたっていうのがかなり嬉しかったです。
ナッツ:前回最年長優勝記録を更新された青森の際も高橋選手と2日間連携をしていましたが、高橋選手との相性の良さはいかがですか。
内藤:やっぱり安心感がありますね。
凡走は絶対ないと思っていて、必ず仕掛けてくれるんですよね。
そしてすごく付きやすくて。なんて言うんですかね、余計な不安がないっていうか、行くのか行かないのかみたいなそういう部分がないんです。
不安がない選手でいつも安心して任せています。
ナッツ:内藤選手は近況好調だなっていう風に見ていて感じるのですが、ご自身の中ではどうなのでしょうか。
内藤:本当にもう流れが良いってことだけですね。
今に始まったことじゃなくて、何十年も特にやることは変わっていないというか。一生懸命練習しても疲れるだけなので、特別なことをやるっていう練習はやってないんですよね。毎日普通に当たり前に自転車乗るっていう感じでやってるっていうか、そんな感じなんです。
ナッツ:日々の積み重ねということですね。
内藤:そうですね。みんなはナショナルチームがやってるようなトレーニングや科学的トレーニングを取り入れて、ウェイトなりダッシュ練習なりやってるんですけど、私は昭和の練習っていうんですかね。そこまでガツガツは乗り込んだりとかもなくなったんですけど、変わらずそれなりの練習を毎日続けるっていう感じなんですよね。
ナッツ:その中で流れが味方してくれているような感覚なんですね。
内藤:そうなんです。あ、でも去年の夏くらいからちょっとセッティングをいじり始めて。
試行錯誤しながら半年くらいやってたんですけど、それが成績が上がり始めた11月あたりからちょうどマッチし始めたっていうか煮詰まったっていうか、良い状態になったんですよね。それからはほぼいじってないんです。
ナッツ:近況の好成績の1つの要因として可能性はそれもあるのですね。
内藤:フレームも含めて、パーツだったりメーカーだったり、色々な部品をちょっとやってみようかって感じでやってみたんです。
それからちょっと成績まとまってきたんですね。やっぱりそれが良かったんでしょうね。
ナッツ:セッティングをいじろうって思ったのは、何かご自身の中で変えたい部分があってということなんですよね。
内藤:はい。私は普段あんまりいじるタイプじゃないんです。ほぼいじらずに、こんなもんだろうって感じでやってきたんですけど、去年は成績が悪くてほとんど決勝にも乗れなかったんですよ。このままだと上位には歯が立たないと。
ちょっとこれはどうにかしなきゃダメだなと思っててセッティングをやってみた感じですね。
ナッツ:セッティングをいじるのは勇気がいりそうですし、もしかしたら悪い方向に出る恐れもありますよね。
内藤:それだったら戻せばいいだけなんです。
こっちの方がいいんじゃないかな、じゃちょっと試しにやってみようかくらいの感じなのがうまいこといきましたね。
ナッツ:そして内藤選手は落車がないというのも大きいですよね。
内藤:それは思いますね。このところずっと落車してないので。落車すると、やっぱり調子が悪くなる時があるので無事に走れていることは良いですね。
ナッツ:あとは53歳でS1という素晴らしい位置にいらっしゃいますが、今の競輪に対するモチベーションはどういった部分にあるんでしょうか。
内藤:モチベーションですか...難しいですね。笑
一概には言えないんですけど、やっぱりお金の部分は大きいですよね。
昔からそうなんですけど、自分にちょっと負荷をかけて物を買ったりするんです。それで支払いがあるから仕事しないといけない環境に。
ナッツ:あえてそういう環境に身を置いているのですね。
内藤:そうなんです。でも感覚的には普通にみんなが毎日会社に行くように、当たり前のように今日も自転車乗るかな、みたいな気持ちなんですよ。
ナッツ:仕事に行くのがちょっときついな、行きたくないな、みたいな時はないんですか。
内藤:嫌なのは嫌です。笑
でもルーティンというか、ご飯食べるくらいの当たり前な感じになってます。何時にあれやってこれやってみたいな。ほぼ決まってるんですよね。
ナッツ:その中でオフを取ることはあるんですか。
内藤:もう毎日自転車には乗ってますね。その日々の繰り返しなので乗らない日はないんです。
今は冬季移動で千葉の宮倉さん(宮倉勇選手・千葉58期)のグループにお世話になっているのですが、一昨年に千葉に中古のマンションを買ったんですよ。普通ありえないじゃないですか。笑
ナッツ:え、そうなんですか。確かにそれはかなり大きな買い物ですよね。
内藤:もうやらざるを得ない環境に自分を追い込んでるっていう感じでそれはそれで楽しいですかね。
ナッツ:負荷のかけ方が結構すごいですね。笑
でもそのくらいじゃないと内藤選手は気を抜いてしまったり、サボってしまうこともあるとご自身で感じていたり。
内藤:はい、多分そういう人間になってしまいますね。
全く練習しない感じになってしまうので負荷をかける環境にしていますね。
ナッツ:そして内藤選手は通算500勝にもあと約60勝まで来ています。そのあたりの意識はいかがですか。
内藤:意識はなくはないんですけど、9割方難しいんじゃないかなと思っています。
目標の1つではあるんですけどね。
ナッツ:難しいと思っているのはなぜですか。
内藤:今はまだ勝ち負けできていて年間10勝くらいはできると思うんですけど、果たして50代後半とかになって年間10勝もできるかって言ったらできるわけないじゃないですか。
ナッツ:特にこのS級の上位クラスで戦っているわけですもんね。
内藤:A級でも厳しいですよ。A級は強い若手も沢山いますし、下のクラスなら50代の年寄りが勝てるか、って言ったらそんな甘くないんですよね。
どこを走ったとしても、その年齢になると相当厳しいものがあるので、年間1勝とかしかできないんじゃないかと思うんですよ。
この先数年を考えると、470~480勝くらいで終わるんじゃないかなって思ってるんですよね。
そこまではいくと思うんですけど、そこからが年齢的にも年間2勝できるかどうか、というところで、60歳くらいになったら多分ピタっと止まるんです。
どうしても年齢を重ねると厳しい部分もあるだろうし、大体そのくらいで終わると計算しています。笑
ナッツ:すごく現実的なお話というか見方をされてるんですね。
内藤:そうですね。でももちろん500勝したいという目標はあるので頑張ります。
ナッツ:その為に前を回る選手との連係も大切になっていきそうですね。最近北日本の若手も多くなってきたのかなと感じますがいかがですか。
内藤:うーん、若手の数は少ないですね。
ぽつりぽつりと今やっとちょっと出てきたんですけど。20代の強い若手は西には沢山いるじゃないですか。
でも北日本は少ないですよね。ナショナルチームはいますけど、それを除くとなかなかね。
新山響平(青森107期)のような選手がなかなか出てきていないんですよね。
新田祐大(福島90期)も、もう40近くて若手とは言えないですし、本当に今は厳しいんですよ。特にGIレベルになると本当にいなくて。
中石湊選手(北海道125期)や山崎歩夢選手(福島125期)あたりに期待したいですよね。
ナッツ:その状況の中で内藤選手がこの成績を残せているのは本当に素晴らしいことだと思います。
流れが良いと仰っていますが、チャンスを掴む為の努力を日々されているからこそ掴めることができているわけですもんね。
内藤:そうですね。準備だけはしっかりとやっているので、チャンスをものにできるようには頑張りたいですね。
ナッツ:今後の目標を教えていただいてもよろしいでしょうか。
内藤:もう年齢的にも「上を目指して頑張ります」みたいなのはないです。笑
でもやっぱり現状維持じゃないけども、今の地位で戦うことを継続したいと思いますね。
やっぱりGIを走っていると楽しいんで。
ナッツ:GIは楽しいと感じるのですね。
内藤:はい。これは走ったことのある選手じゃないとわからないと思うんですけど、一流選手とも走れるし、一流選手と一緒に生活して、しかもタイトル争いをしているのを体感できる雰囲気って、やっぱりGIだけだなと。他のF1とか記念とは全く空気が違うんですよね。
タイトル戦っていう空気感なので、緊張感が前検日からも全く違うので、その空気は味わい続けたいっていうのはあります。
ナッツ:今後もGIで戦う内藤選手に期待しています。
では最後にオッズパーク読者の皆様にメッセージをお願いします。
内藤:かなり厳しくはなってきているんですけど、年配のファンの方も結構いると思ってレースに臨んでいます。
陰ながら期待されてると思って走っているので、その期待に応えられないこともあるかと思いますが頑張るので、今後も応援してもらいたいと思っています。よろしくお願いします。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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