先日、地元四日市で行われたGIII万博協賛競輪を制した浅井康太選手(三重90期)。このGIIIでの優勝は実に1年7か月ぶり。かなり間隔が空きました。常に新しいスタイルを求めて進化を模索するトップレーサーが抱える葛藤とはどんなものなのか。競輪選手としてではない「人間・浅井康太」の一面に深く迫ってみました。
橋本:まず、直前の地元GIIIを優勝されまして、非常に嬉しそうな表情と、ヘルメットを投げ入れたりっていう喜びの表現が印象的でした。
浅井:そうですね。やっぱり一年七か月ぶりの優勝ってことだったんで、だいぶ間隔が空いたなっていう思いです。最近の中部勢の中でラインの層の薄さを感じることが多くて、なかなか決勝で勝ち切ることができないとか、決勝戦に乗っても勝てないとか、決勝にそもそも乗れないとか、色々あったんで、このところは厳しい中で戦ってるなという実感がありましたね。
橋本:今回は別地区の嘉永選手(嘉永泰斗選手・熊本113期)と決勝で連携しました。
浅井:そうですね。今回の決勝は嘉永くんとライン組んで共に戦って、改めてラインっていうのは凄く大切なんだなっていうのを感じ取れた開催でしたね。
橋本:元々ラインの大事さっていうのは理解はされてたと思うんですけど、それにも増してということですか?
浅井:やっぱそうですね。嘉永くんとラインを組んだ理由というのも色々あって。別の地区なんですけど、ライン組む人間同士の信頼関係ですね。その中でお互いの持ち味を生かし、ラインの良さを出すということの大切さを感じました。
橋本:高校時代の嘉永選手が浅井選手にサインを貰ったというニュースを拝見しました。
浅井:「熊本競輪場で僕、学生時代に浅井さんにサインを貰いました」って話を初日のレースが終わってクールダウンの時にしたんですけど、いきなりそんな話になった訳ではなくて、嘉永が「自転車なんかちょっと駄目なんです。調子悪いんです」みたいな感じで話しかけてきて、それなら「こうした方がいいんちゃうか」みたいな話をしていたら「実は僕・・・・」みたいな感じになったんです。で、その前段階に遡るんですけど、共同通信社杯(2022年9月17日、名古屋12R二次予選A)の時に、僕が単騎っていうコメント出して、その単騎ってコメントを出した後、瓜生(瓜生崇智選手・熊本109期)と嘉永が僕のところに来て「浅井さん、こいつに付いたってくださいよ~」みたいな事があったんですよ。
とはいえ「もう俺もコメント出したで~」ってなりまして、まぁやっぱり中部の自力選手として後輩たちもいることやし「ここはしっかり単騎でやるわ」と返して、申し出を断っているんですよ。で、また何か機会があった時は、しっかり考えて付かせてもらうかもしれないって話をしていたというのがあったんです。で、それがたまたま今回の四日市GIIIの決勝戦で、十夢さん(渡辺十夢選手・福井85期)とみたいな感じになった中で、嘉永が単騎になるかもしれないっていう状況だったんですよね。
で、記者さんには「浅井つくの?どうするの?」みたいになっている時に、嘉永が「浅井さん、ついてください」って話しに来たんです。そんなの、なかなか先行選手が「ついてください」ってないじゃないですか。それも、この前の共同の事があって、嘉永の中では、その共同の時、次にこういう機会があったら「自分から浅井さんに言いに行こうと思ってました」らしく、僕としても、そこまでの気持ちがあるなら「つかせてもらうわ。よろしくね」ってなったんですけど、僕が地元だからといって、無理に仕掛けるとかじゃなくて「絶対取るレースしろよ」って。もうそれこそ何回も何回も「絶対取れよ。絶対取れよ。絶対の絶対に取れよ!そしたら自然に俺もチャンスあるから、絶対に優勝狙えよ(笑)」と伝えて、全部嘉永の作戦で、嘉永があの走りになりました。
橋本:色んな事が伏線になっていたんですね。本当にいい話です。
浅井:そうですね。なんか本当にうまく繋がったって感じになってますよね。それがほんとに学生時代にサイン貰ったってところから始まって、一緒にライン組めて、それで地元GIIIで優勝できて、それもワンツーで決まって。それがGIとかGPとかだったら、もっといいんだろうけど。でもやっぱり、地元GIIIってところでも大きいですよね。
橋本:かつてサインした少年と一緒に戦えた、そんな浅井さんの嬉しさがとてもよく伝わってきます。
浅井:サインを貰いにいった様な憧れの選手と走る事って僕も経験あるんですけど、実は僕の場合、神山さん(神山雄一郎選手・栃木61期)なんです。印象に強く残っているそのレースで、僕はブロックされたんです。これは捲れると思っていったんですけど、その捲りがブロックされて、止められて。凄いなぁって肌でその凄さを感じて、嬉しさもあり悔しさもあり。でも、その時、そこを乗り越えることができたら、いつかタイトルを取れるかもな、と考えたのがいい経験になったというのはありますね。だから、今回は僕が優勝しましたけど、次は「40手前のおじさんにもう抜かれないぞ!」という気持ちでね(笑)今後やってもらえたら、すぐにタイトル取れるんじゃないかな。と思います。
橋本:これは長いこと超一流のポジションにいないと、味わうことのできない思いですね。浅井選手が長年そういうポジションに居続ける事ができたから、いや、できているからこそです。
浅井:それはあるかもしれないですね。ただ、やっぱりそういう風に憧れてましたって言われても、弱くなると結局は「なんだ~昔は強かったけどな」みたいなのって嫌じゃないですか。やっぱり憧れられているという思いに応えたい。だからこそ、今の状態を維持しないといけないというか。なので、逆に言うと本当にそのことが僕を支えてもらってるんだなっていうのはありますよね
橋本:その気持ちっていうのは、例えば同県の後輩から「弟子にしてください」みたいな憧れとは受け止め方は違うんですか?
浅井:全然違いますね。結局同じ地区とか、もしくは同県とかってなってくると、身近に感じすぎることの弊害というのかな。それはあると思いますね。元々は自由に練習して「これやっとけよ~」みたいな感じでやってたんですけど、仲間の成績が落ちてきた時期に、ちょっとグループとしてまとまってないなぁ。と思ったので、みんな良くなるために、こうした方がいいんじゃないかなと、アドバイスみたいな事をしたんですが、なかなかうまく伝わらなくて、それが悪い方向へいってしまうというか。良かれと思って言ったことが悪い方向へ行ってしまうので、それならもう言わない方がいいのかな、という。
橋本:これはもう対人コミュニケーションの本当に難しいところですよね。
浅井:だから基本的に人のことは構わずに自分の事だけ考えてやるのが、最近はベストかなって考えてました。
橋本:ラインっていうのは暗黙の了解で、同地区の者たちが一つのチームになるっていうのが、ずっと長年続いてきた中であるんですけど、同じ地区、近いところに住んでいる者同士だから人間関係の深い繋がりがあるかっていうと、必ずしもそうとは言えないし、もちろん逆の場合もある訳で。そう考えると、ラインを同じ地区同士だからという理由だけで組まないといけないっていう、この暗黙の了解は選手にとって、すごくストレスになる部分っていうのはあるかもしれないですね。
浅井:そうですね。やっぱり信頼できない相手とは連携したくないと思うんですよね。
あと、最近は先行選手が上で、マーク選手が下、みたいな雰囲気が強いですけど、そういうものではないと思っていて、先行選手としてしっかり役割を果たして、マーク選手が止めてくれるっていう仕事をする。それでしっかりとしたラインが形成できて、ワンツーが決まる確率が上がる。先行、捲り、追い込み、マーク、それが合わさって効果を発揮する訳ですから、そうならないのであれば、ラインなんて組む必要は全くないかな、とは思いますね。
ちなみに谷口(谷口遼平選手・三重103期)とかに言うんですけど「練習で俺がお前よりもタイムが良くて、それで後ろにつくんやったら安心せんか」って(笑)確かに、最後抜かれるかもしれないけど、逆に脚がなかったら千切れて仕事どころじゃないし、それこそ「ダッシュでギリギリついてきて仕事もせずに抜かれるのは一番嫌なんちゃうか~」という。
やっぱり、レースの積み重ねが信頼関係に繋がる訳なんで。ただ、時と場合で切り替える時は全然あるよというのも言ってます。でも、それはお前(谷口遼平選手・三重103期)のスピードが周りのスピードよりも、劣ってるから切り替える訳で、もう仕掛けるタイミングがない場合は仕方ないというのは伝えています。
橋本:これは非常に相手の受け止め方が難しいところで、切り替えられるとあの人は冷たい人だ、って思われかねないですよね。
浅井:そうそう。そうなんです。簡単に言えば、ホームでカマされた先行選手を2角で入れたら、自分は4番手か5番手か。まぁ、先行選手は4番手くらいになるじゃないですか。もうそうなってしまって勝負圏があるかってなったら、ないですよね。この間の決勝で新山(新山響平選手・107期)が一人で来て、嘉永がハマってという状況なら分かります。それなら直線勝負できるんです。ここの違いですよね。本当にカマした選手が弱かったらいいんですよ。でも、それはGIでは通用しないですよね。
橋本:ですよね。実は、そういったレースの積み重ねの中で、浅井さんはとても葛藤しているんだろうなぁというのは以前から感じていました。というのも浅井選手というのは、ファンの皆さんへのこれまでの対応とか、そういうのをずっと見せてもらう中で、本当はめちゃめちゃ優しいんじゃないかと、でも、その優しさを捨てなければいけないというか、非情にならなければいけないというのを無理してやってるんじゃないかと。敢えて非情になるという表現はおかしいかもしれませんが。
浅井:あの~最近、優しいっていうことを周囲が分かってくれてきたようで(笑)最近そう言ってもらうことが増えてますね。競輪に関係のない人たちと会っても「なんでこんな優しいの」って言われたりもあって。自分で言うのも何ですが、確かに昔から優しいタイプだとは思います。
橋本:でもその優しさでは勝てない。叩かれてしまった自力選手と同じように付き合ったら共倒れになりますから。
浅井:そう、そうなんです。切り替えに関して、自分で絶対に決めているルールが一つあって。それは前を任せた選手が捲りになってしまう。でも、それが不発だろうなと思って、先に切り替えるのは無しなんですね。捲り、カマしになって「これはいけないだろうな」と思っても、ついていくとこまでは、しっかりついていって、そこから無理だったら切り替えるって形なんですよ。これに関しては自分の中で間違えたと思ったことはないです。
橋本:そういう時のファンの皆さんの声ってのはどう感じていますか?ネガティブな意見もあると思いますが。
浅井:最近、新しく競輪を知ってファンになってくれた皆さんは、本当に応援してくれて、SNSを使って競輪の魅力を発信してくれたり、本当にありがたいんですけど・・・例えば、切り替えたという、その状況だけを捉えて判断されてしまうというか。その先「こういった結果に繋がるから、このように動いたんだ」という部分を理解してもらえてないような。それが残念に感じることはありますね。この選手の動きはこういう意図があってやったんだ、とか、その前後の動きを予測した状態でこういう判断になった。みたいなことが分かってくると、もっと競輪っていうのが面白くなると思いますしね。
橋本:選手のプロフェッショナルな部分ですね。
浅井:とはいえ、僕らからすればそれが普通だけど、そこまで見れないのは当たり前というのもあるんですよ。でも実際、僕らからしてみれば、走ってる感覚と、映像で見た感覚っていうのは大分、差があるんですよね。例えば、今3角ぐらいかなと思ったら、もう4角になっていたり。そのくらいズレがある時もあったりして。だから気付いた時には、もう相手がそこまで来ている可能性があるんで、それで遅れてしまうというのはありますね。
橋本:GIクラスなんかだと、本当に瞬時の判断なのでとても難しいと思います。だからこそ、ラインの総合的な戦闘能力が必要、ということになるんでしょうね。
浅井:やっぱり追い込み勢の人たちが以前より優しくなり過ぎたっていうのはあるでしょうね。最近は先行選手同士が並ぶじゃないですか。僕はあんまり昔はこうだったっていう話は好きじゃないんですけど、例えばチャレンジとかA級のレベルでも、決勝戦になって、先行選手同士が並ぶってなったら、追い込み選手が競りにきましたからね。そして、競りにこられるなら、ということで同じ地区同士であっても若手が分かれて「じゃあ、もう各自、自力でやりましょう」ってなって、別線になる。そして別線になることで、同地区でも相手に対するライバル心というか、負けたくない!って気持ちが強くなって、そこで切磋琢磨できるのに、今は、そこで自力同士でラインをしっかり組みましょうっていう流れになってしまう訳で。だから、元を辿れば追い込み勢の優しさには問題があるからだろうな、という風には思いますね。以前、例えば永井さん(永井清史選手・岐阜88期)と僕が並ぶ時とか、僕と深谷(深谷知広選手・静岡96期)が並ぶ時とか、他地区の誰かが競りにくるっていうのは結構ありましたし、そんな中で別線勝負を選んだっていうのもありましたし。だからこそ、若いうちは追い込みを覚えるべきではないと思うんですよね。
橋本:目先の勝利を追いかけるのか、将来の事を考えるのか?というテーマになりますね。
浅井:そうですね。そういうのは、ここで勝ったらタイトル!っていう時に考えるものじゃないかなとは思いますね。やっぱり脚力をつけるためにやるのが大切で、じゃあ、それは何故なのかと言われると、GIとかGPで勝つためにというものだと思うんですよね。それなのに最初から番手回って優勝したりしてしまうと、楽を覚えてしまうというか。人間早いうちから楽を覚えてしまうと、そこから上にいけないですよね。やっぱり一番しんどいことができる人間は絶対に強くなるんで。そう考えると厳しく接する先輩が減ったっていう責任もあると思うんですよね。
橋本:とはいえ今は厳しくし過ぎるとハラスメント、みたいなところもあるので難しいですよね~。でも、今、お話を伺っていて、これからは打てば響く!そんな若い選手たちとの交流というか巡り合わせが生む相乗効果が、これからの浅井選手にとってはとても大切なのではないかと感じました。
浅井:僕は向上心を持って聞きに来る若い選手たちには、全て教えようと思っています。
ちゃんと自分自身を理解して、聞いたことを実践してみて、真剣に強くなりたいと思って取り組んでいる選手。それは敵とか味方とか関係なく、全て伝えて、それでも俺は負けないようにっていう風な思いでやってますね。
橋本:そういうところなんですよね。本当の意味での優しさというか、聞かれたことには誠実に出し惜しみせずに答えようという。でも、厳し過ぎるがあまり中部の後輩は恐れているのかも知れないという(笑)
浅井:検車場でよくヘラヘラ笑いながら過ごしてる人いるじゃないですか。あれが嫌いなんですよ。
橋本:あ!!僕らの取材のせいでヘラヘラさせてしまったりするかも(笑)
浅井:いやいや、というか、普通に仕事行ってヘラヘラしてる時間ないだろって僕は思っていて。勿論、仕事が終わって、部屋でのんびりする時間に楽しく会話をしながら食事みたいなのはいいんです。でも、それを検車場でする必要はないだろう、と僕は思うんです。僕からすると、もうその時点できちんと向き合えてないな、と感じてしまいます。とはいえ、結構周りにも「浅井が若手を育てろよ~」みたいなことも言われるんですが、そうは言われても普段そんな岐阜勢や愛知勢の選手たちと会う機会もないし、そもそも上位のレースに来る選手も少ないので、教えるどころか会話する機会もないんですよね。だから、まず自分自身で上のクラスのレースに参加できるレベルまで努力して欲しい。僕の仕事は、そこからの話だとは思ってます。
橋本:ここまで本当にズバズバと。多くの人が言いにくいことも、しっかり口にできるところが僕は個人的に浅井選手の魅力ですね。表面的なリップサービスがない分、言葉に重みというか力を感じます。
浅井:今回の四日市のGIII、確か三日目だったと思うんですけど、勝利者インタビューの時に、僕のラインスタンプを持ったファンの方が来ていて暖かい応援だったんですが、その時「浅井さん暖かい応援ですね~」みたいな事をインタビュアーの方が言ってくれたんですけど「いや僕、実は3,4年前はすごいヤジばっかで、この雰囲気になったの最近です」
という話を普通にファンの皆さんの前で(笑)
橋本:いやいやいやいや、正直すぎるやろ(笑)でも、お客さんの前で常に正直でいるって凄く勇気のいることだと思うし、正しいか間違っているかという話だけではなく、色んな逆風にも負けずに、言い続けることができる存在って、本当に貴重だなと思います。競輪選手って「こういう思いで走っているんだ」ってことを、インスタライブなんかでも発信されてるじゃないですか。
浅井:それがファンサービスというより、それ自体も仕事だと思いますね。確かに、そこにお金が発生してないからファンサービスになるかもしれないけど、競輪選手としての思いをお客さんにしっかり伝えるということも、大切な仕事ですよね。インスタライブだけじゃなく、例えばコラムなんかでも、伝えたいことを文字で伝えるのは、どういう勉強なのかと、考えながら取り組むことによって、自分が成長できる訳じゃないですか。「喋ってくれたら文章はこっちで起こします」って最初はそんな感じだっんですけど、それだと勉強にならないんで「僕、自分でやります」って言って。話の内容や構成を自分で考えて、誤字脱字は最後にチェックしてもらいますが、そこも自分の成長の為に必要な事だと思ってやってます。
橋本:競輪に限らずあらゆることに理解が深まって成長していく事に対する、喜びというか達成感というのを凄く大切にされているんだなというのがよく分かります。
浅井:若い時にはできなかったことに挑戦して克服できたら、それはもう進化だと思うんです。そう考えると人間はいつまでも進化し続けるという捉え方ができる訳で。だから年老いたなとかって思うんじゃなくて、年齢と共に挑戦し続ける事ができれば、老化ではない。それは進化だと考えています。勿論、考え方が変わっていくのは当たり前だし、変わる事も進化の一つじゃないですか。昔はこう言ってたかも知れないけど、それが間違いだった、ではなく、年を取っていく中で新しいものを取り入れて、意見が変わった。それは当然の話ですね。ヤジに関しても、進化のきっかけになることもあるし、僕は「アホ、ボケ」も言われるのが当たり前だと思ってます。そりゃ、お金賭けて期待に応えられなかったら、そう言われるのは当然だと思うんですけど。
橋本:確かにあの耳の痛い言葉の中に、何か気づきを与えてくれるようなものというのはあるでしょうね。
浅井:ヤジは、そう、必要。言われて育つと思うんですけどね~。
橋本:浅井選手の中で、競輪選手としての進化、何か現時点でありますか?
浅井:実は、四日市の時に初めてシューズを変えたんですよね。アシックスのクラシックのやつからカーボンのやつに変えまして、今、それが違和感しかないんです。要は、これまでのやつがとにかく履きやすいんです。でも、なんでもそうだと思うんですが、新しいものっていうのは機能は増してると思うんですよね。例えばiPhoneでも新しく変えたら最初は使いにくいじゃないですか。でも使っていくうちに、新しい方が便利になっているって、色んな場面であると思うんです。だから、今の成績を変えるために、その増している機能に対応できる自分に変化してみようというのはありますね。旧型じゃなく、新型に変えてみて、どこまでやれるかを試しているところですね。
橋本:なるほど。新しい道具を操れる自分に変化することによって、レベルがワンランク上がっていけるようにと、まさに進化ですね。とにかく今日より明日、明日より明後日と、そのたゆまないストイックな取り組みはさすがとしか言いようがありません。
浅井:いやいや、僕ストイックじゃないですよ。三日坊主ですよ。
橋本:そんなアホな!!(笑)
浅井:いや、あの三日坊主って大体、途中で辞める事を言うじゃないですか。じゃなくて、僕、三日で習得するぐらい集中してやり続けて、辞めるっていう三日坊主ですね(笑)
橋本:すごい天才じゃないですか!
浅井:いやいや、そうじゃなくて
橋本:あ!!没頭できるんや。
浅井:そう、ずっとあの下手したら起きた瞬間から寝るまでというか、寝ててもパッて起きたりするじゃないですか、その時に思い浮かんだら、動いてみたりとか。それが大体三日という。集中してマスターする努力を三日で完結する感じですね。そしたら、また次に新しいものが出てくるんで、またこれまでやってたのをリセットして、新しい方向へという。それって、心技体の心の部分なんです。心というのはしんどい時に踏ん張るとか、気合で何とか!みたいな捉え方をされている事が多いと思うんですが、そうじゃなくて精神状態をどうもっていくかという。本当にその世界に入りこむっていう無心の状態になれるかどうかという話なんですよね。いわゆるゾーンに入るという感覚です。
橋本:何となくわかります。無心になって没頭するっていう時が一番、作業効率もいいし、吸収が早いですよね。いわゆる座禅の、禅の教えとでも言いますか。
浅井:どんな状況に人は置かれても無心になれるし、没頭するものがあれば進化は続けられると思うんです。極端な話、牢屋に入って、ずっと外に出られなくたって、きっと文章を書いたり、筋トレできたり、とにかく集中して取り組める何かはあると思うんです。ちなみに僕も座禅とかはやったりしますよ。
橋本:いやぁ、今日は本当に競輪選手としての浅井康太というよりも、一人の人間としての話と言いますか。どこでどんな状況に置かれても、浅井さんはその中で、ポジティブに生きていける人なんだろうなって感じました。
浅井:悩みはいっぱいありますよ。ありますけど、それに縛られて結局前にも進めないというのではなく、自分が動かんことにはアカンっていうか、自分が考えないと意味がないんで。悩むんなら、とにかく動いてみようって話ですよね。
橋本:選手としての側面だけではなく、人間としての浅井康太が今後、どういう風に変わっていくのか一人のファンとして非常に楽しみにしています。しかし、今回の取材、本当に選手としての調子とか状態とか、全くお聞きしませんでした。このコラムを最後まで読んだけど、浅井に関して車券予想の参考になる収穫はまるでなかったぞ!と読者から言われそうで怖いですが(笑)
浅井:いや、これ、めちゃめちゃよく喋ったんで、あれですよ!頭が回ってる時は、大体調子も上がってくるんで、多分調子はいいんじゃないかなということに・・・・きっと調子は上がってくるということに(笑)
橋本:では、絶好調ということでいいですか?
浅井:いや、ボチボチということで・・・(笑)
橋本:あ・・・ありがとうございました。ダービー頑張ってください。
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※インタビュー / 橋本悠督(はしもとゆうすけ)
1972年5月17日生。関西・名古屋などでFMのDJを経て、競輪の実況アナウンサーへ。
実況歴は18年。最近はミッドナイト競輪in小倉を中心に活動中。
番組内では「芸術的なデス目予想」といういいのか悪いのかよく分からない評価を視聴者の方から頂いている。
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今年初めてのGI戦に挑み、1989年の中野浩一さん(福岡・引退)以来34年ぶりに全日本選抜競輪を連覇した大阪の古性優作選手(大阪100期)にお話を伺いました。
大津:全日本選抜競輪優勝おめでとうございます。
古性:ありがとうございます。
大津:今年初のGI戦で優勝したお気持ちはいかがですか。
古性:脇本さん(脇本雄太選手・福井94期)と竜生さん(三谷竜生選手・奈良101期)のおかげで優勝できましたし、すごく嬉しいです。
大津:大会連覇に関してはいかがでしょうか。
古性:そこに関しては特に意識はしていませんでした。
大津:昨年もそうでしたが、早めにグランプリ出場を決めたことで気持ちに変化などはありましたか。
古性:精神的に楽にはなりましたが、それでも結果は求められますし、プレッシャーはどのレースを走っても付いてくるのでって感じです。
大津:古性選手の場合、岸和田で高松宮記念杯競輪も控えてますもんね。
古性:そうですね、それも大きいです。
大津:今回のシリーズにはどのような思いでのぞまれましたか。
古性:奈良記念ではお客様に迷惑をかけてしまいましたし、その分もしっかり取り返したいなと思って走りました。練習もGIに上手く合わせられた気がします。
大津:初日は自らが前で走る番組でした。
古性:しっかり自力を出そうと思ってました。
大津:レース自体のイメージはどのようにお考えだったんですか。
古性:特にはなかったですね。スタートしてから流れの中での判断でした。
大津:初手は後ろからの組み立てになりましたね。
古性:深谷さん(深谷知広選手・静岡96期)が強いので、一度深谷さんを後方に置きたいなとは思ってました。
大津:後方になった深谷さんの巻き返しも凄かったように感じます。
古性:本当に凄かったです、とてもかかっていました。
大津:最後は古性選手が内に進路を選択されました。
古性:全く考えてはいなかったです。
踏んだ時に郡司(郡司浩平選手・神奈川99期)が外に振ってきて、和田君(和田真久留選手・神奈川99期)が中に入っていったスピードが僕は負けていたので和田君の進路を塞ぐしかないなって思って入った感じですかね。
大津:一走して手応えはどうでしたか。
古性:高知のバンクだったのでよく分からなかったです。高知のバンクは特殊なので。
状態は良いはずだったんですが、進みもあまり良くなかったので、僕自身の進みが悪いのかバンクの特性なのか、そのあたりが分からなかったです。結局四日間通して最後まで分かりませんでした。
大津:高知は約4年ぶりの登場でした。
古性:そうなんですか、もっと走ってないイメージがありました。
改修工事があって新しくなったそうなのですが以前の感じも覚えていないので、特に今回も印象などはありませんでした。
大津:2日目は脇本選手の連携でした。
古性:強かったです。いつもと違う動きだったので、どうなるかとは思っていましたが強かったです。
大津:いつもと違う動きとは具体的にどういう動きだったのでしょうか。
古性:前のラインに付いていって、そのまま切りにいったところですね。僕としてはそのままワンテンポ待つのかなと思ったのですが。
大津:その辺りは事前に脇本選手と作戦会議はされるのですか。
古性:いや脇本さんとの作戦会議は全くありません。初手も分からないです。
大津:脇本選手が「腰痛」というコメントを出していましたが、後ろに付いていて感じる部分はありましたか。
古性:状態っていうよりか、高知のバンクが苦手そうだなってのは感じました。
大津:スタールビー賞では新山選手(新山響平選手・青森107期)に叩かれた後に古性選手が切り替える場面がありました。
古性:新山君が脇本さんを締めた時に脇本さんのペダルがバンクに当たってる感じがあってバランスを崩していたので一瞬脇本さんが転けるかなって思いました。
凄い勢いで下がってきたので、それで切り替えたんです。もう行くしかいかなって判断しました。
大津:切り替えてからは郡司選手を捌きながら更に強襲して一着を取りました。
古性:脇本さんがあそこまで連れていってくれましたし、新山君もすごい長い距離をかけてたので自分が何とか届いたのかなって感じですね。
大津:準決勝でも脇本選手と同じレースでしたが想定はされていましたか。
古性:いや、その辺りは何も考えていなかったです。
大津:毎回別ラインに警戒される中で結果を残すのは、かなり重圧もあるように思います。
古性:僕よりは脇本さんのプレッシャーのほうが凄いと思います。準決勝は特に厳しい相手だったので、そこが難しかったです。
大津:ホームで脇本選手が仕掛けてからは古性選手も車間を空けてアシストされていました。
古性:脇本さんが逃げる展開になれば任せてくれって感じでした。
大津:決勝戦のメンバーが出揃っての印象はいかがでしたか。
古性:本当に強い選手ばっかりで難しいなって印象でした。
大津:展開の中では自分の位置で粘られる可能性も考えていたのでしょうか。
古性:そこは毎回考えていることなので油断は全くしていませんでした。自分のところで粘られたら、そこは僕が頑張るだけなので。
大津:レース中は古性選手自身はどのようなことを気を付けながら走っていたのでしょうか。
古性:とにかく飛付かれた後の対応と、しっかり脇本さんに離れないように付いていくことを考えていました。
大津:実際に新田選手が内で粘ってきました。
古性:そこはきっちり外をさして対応できたかなと思います。
大津:最後の直線コースでは優勝の確信はありましたでしょうか。
古性:いえ、僕もけっこう脚を使っていたのでちょっとしんどかったです。どうなるか分からなかったです。
大津:ゴールした瞬間の気持ちは覚えていますか。
古性:自力で勝つのは難しいのですが、ホンマにラインの人たちに助けてもらったって感じでしたね。脇本さんと竜生さんのおかげです。
大津:ファンの声援も大きかったのではないですか。
古性:そうですね、GIの歓声というのは普段の開催よりも一段階大きいのでその中で勝てたというのは本当に嬉しかったですね。
大津:今年ここまでを振り返ってみていかがですか。
古性:しっかり走れている部分と失格してしまって迷惑をかけてしまっている部分があって、良いところもあれば悪いところもあるのかなっていう感じです。
大津:今年は特に勝ち星を量産されているイメージがありますが何か昨年と違いはありますか。
古性:色々あります。練習など意識的に変えているところもあり、その辺りが良い感じで噛み合ってきているのかなと思っています。
大津:打倒近畿を掲げている他地区の動向はどう感じていますか。
古性:特に感じる部分はないです。とにかく目の前の一戦一戦を大切にしていくことを心掛けています。
大津:次は5月にダービーが行われます。
古性:日本選手権競輪は日本一を決める大会だと思っていますし、それを獲りたいという意識は強くあります。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願いいたします。
古性:いつも応援ありがとうございます。これからも応援してもらえるよう頑張ります。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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4月高知記念で行われる『第5回ガールズフレッシュクイーン』このレースはガールズケイリン120期、122期の選手のうち、選考期間内の競走得点上位者だけが出られます。
選考順位1位で出場となった吉川美穂選手(和歌山120期)。昨年も平塚でのフレッシュクイーンを走り、惜しくも2着でした。こちらに向けての意気込みや、近況のご自身のレースの振り返りを中心にお話をお聞きしました。
山口:まず今年の成績についてお伺いします。ここまで二度の優勝がありますが、振り返っていかがですか?
吉川:今年最初のレース(広島)で胃腸炎になってしまい欠場することになりました。また2走目いわき平の後も体調を崩してコンディションを落としてしまい、なかなか流れに乗り切れていなかったです。そんな中2月名古屋、3月松山で優勝できたので、良かったです。
山口:前回吉川選手にインタビューさせてもらったのは11月でした。その時は「オッズパーク杯ガールズグランプリ出場の賞金争いにここまで自分が絡めると思っていなかったので、1月から意識しておけば良かった」というお話が印象に残っています。今年はその辺りは既に意識されていますか?
吉川:今年は3月にベトナムで行われたロードレースに出ることが昨年末には決まっており、その期間はガールズケイリンは走れないのはわかっていました。なので「賞金争い」や「ガールズグランプリ出場」という大きな目標よりも、目の前の1レースをしっかり走ろうと意識しています。一つ一つ勝てるように、ですね。
山口:直近のレースを意識されているんですね。
吉川:はい。その中で7月のガールズケイリンフェスティバルであったりGIに出られたら良いなと思っています。GIは今年から新設されたので、まだしっかり把握はしていないんですけどね。
出られたら良いなとは思いますが、先日ガールズケイリンコレクションを優勝した佐藤水菜選手(神奈川114期)や児玉碧衣選手(福岡108期)、ナショナルチームを卒業してガールズケイリン1本に絞った小林優香選手(福岡106期)など強い選手がたくさんいて、私じゃまだまだ太刀打ちできないかなと感じています。GIを優勝したらグランプリ出場ですが、そこの大きな目標は直近ではなく、いずれその優勝争いに絡めるように脚をつけていきたいです。
山口:今、ご自身で強化することは何ですか?
吉川:昨年1年ガールズケイリンを走って、ベースの能力が落ちていると感じました。体調不良などもありましたが、今は基礎的なレースの能力を戻してから、スピードの強化をしたいと思っています。
山口:ベース、というのは具体的にはどんなところですか?
吉川:体力面もそうなのですが、わかりやすく言うと「レースの周回中に脚を使うか使わないか(消耗するかしないか)」ですね。勝負所よりも前に脚を使ってしまう(消耗してしまう)と、勝負所で自分の思った仕掛けができません。ベースが上がれば高い出力で踏んでいても疲れない状態にもっていけます。
以前、私は中長距離のナショナルチームに所属していたので、ある程度ベースは高いところを保っていられました。周回スピードがどれだけ速くてもペースが上がっても余裕があったんです。ベースが下がったことで、周回中に「きついな」と感じたり、勝負所で脚がなくなってしまったり(消耗してしまったり)するのが最近の状態です。そこを戻していくことが最優先ですね。
山口:ナショナルチームから練習環境を和歌山に移したことで違いはありますか?
吉川:和歌山も練習はとてもしやすい環境です。ただナショナルチームの時は練習スケジュールがキッチリ決まっていてある程度の強制力がありました。今は自分で練習をしているので、どうしても甘えてしまう部分があるんです(苦笑)しっかり考えてトレーニングを頑張ろうと思っています。
山口:ベトナムのロードレースに出場したというのも、ベースを上げたいという思いですか?
吉川:そうです。去年の半ばから「ベースが落ちてきている」と感じていました。そんな中ベトナムから「10日間のロードレースに出ないか」とお誘いがありました。実はナショナルチームにいた時も走ったことのあるレースだったので、ベースを戻すのには良い機会なんじゃないかと思って出場しました。
帰国して中4日で松山を走ったんです。疲れはありましたが、ベースは少し戻ったと感じているので行って良かったと思いました。
山口:長距離を乗り込むような練習も増やす予定ですか?
吉川:やらないといけないなと感じます(笑)
山口:ずっとやってきたロードレースの能力がベースで"ガールズケイリン"の吉川選手がいるんですね。
吉川:基礎的な脚力がないとだめなので、そうかもしれません。
山口:貴重なお話でした。ありがとうございます。では次が高知記念での『ガールズフレッシュクイーン』ですね。昨年は2着でしたね。
吉川:そうでした。昨年は走り方一つで優勝もあったかなと自分でも思いましたし、師匠(稲毛健太選手)にも言われたので悔しい思いがありました。今年も同期を含めた強い選手ばかりなので、勝てるかどうかはわかりませんが一生懸命頑張りたいです。
山口:吉川選手は今年のフレッシュクイーンの選考順位が1位でした。フレッシュクイーンの選考は意識していましたか?
吉川:いえ、特に意識はしていなかったです。
山口:では日々のレースの積み重ねがあっての出場だったんですね。今年は122期の選手もいますが、昨年のメンバーと比較していかがでしょうか?
吉川:普段の開催ではここまで同期と一緒に走ることはないです。ルーキーシリーズ以来かもしれません。小泉夢菜選手(埼玉122期)と河内桜雪選手(群馬122期)がそこに加わるので、まだどんなレースになるのかなかなかイメージは出来ないですね。
山口:7選手の中では得点最上位です。警戒されるかと思いますがいかがですか?
吉川:私自身が先行主体のレースをそこまでしていないので、警戒されないんじゃないかな(笑)
山口:500バンクは数も少ないですが、それについてはいかがでしょう?
吉川:他の選手に比べたら走っている方かもしれません。大宮は2回、宇都宮や、今回の高知も走った事があります。苦手意識はないですね。直線も長いから追い込みも届くイメージがありますし、逆に追い込まれやすいというのもあると思います。レース勘を活かして頑張りたいですね。
山口:一度走った高知競輪のレースは覚えていますか?(昨年6月ミッドナイト)
吉川:はい、追加で大久保花梨選手(福岡112期)がおり「来てほしくなかったな(笑) 」と思ってました。優勝もしていきましたしね。私自身の印象では優勝はできなかったですが、悪い印象はないです。
山口:フレッシュクイーンへ向けての調整や練習はどんなことをしますか?
吉川:ギリギリまでベースを上げて、少しスピード練習も追加したいです。
山口:単発レースは記念の3日目に前検日があります。雰囲気や集中の仕方は去年は問題なかったですか?
吉川:全然問題ないです。ただ去年は、テレビで見る男子のトップ選手がいる開催は初めてだったので威圧感はありましたね。でも入ってから走るまで1日なので、勢いで乗り切れたかなと思います。
山口:今年はその経験がいきますね。
吉川:はい。単発レースは1日走って終わりなので、個人的にはモチベーションを保ちやすくて好きかなと思いました。去年のフレッシュクイーンしか走ったことないんですけどね(笑)
山口:でも初めて単発レースを走る選手もいますから、それは大きな経験ではないですか。
吉川:そう思って頑張ります。
山口:では最後にフレッシュクイーンへ向けての意気込みを、オッズパーク会員の皆様へお願いします。
吉川:昨年は2着でしたが、今年は優勝できるように精一杯頑張ります。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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3月12日の松山競輪・金亀杯争奪戦の最終日に<第121回生ルーキーチャンピオンレース(若鷲賞)>が行われました。混戦の残り200mを制して優勝した安彦統賀選手(埼玉・121期)にレースを振り返っていただきました。
大村:ルーキーチャンピオンレース優勝おめでとうございます!
安彦:ありがとうございます!
大村:今年1月末に出走予定選手が発表されました。まず対戦メンバーをご覧になった印象はいかがでしたか?
安彦:同期は皆んな強いですし、養成所時代からのタイムなど脚力の面で自分が一番下だったので厳しいレースになるだろうと感じました。
大村:今回は同県の山口多聞選手(埼玉121期)と連携し、番手を回りました。2人の並び順はいつごろ決まりましたか?
安彦:決めたのは本当にギリギリでした。多聞と僕にお互いの師匠を交えて相談しました。
大村:去年の10月の単発レース(熊本記念in久留米で行われたルーキーシリーズ2022)はそれぞれ自力で走りましたね?
安彦:ええ。今回も多聞は「自力でやりたい」とのことでした。なので自分が付くか、それとも自力でやるか...。4人でかなり時間をかけて話して番手を回ることに決めました。
大村:事前の練習や調整はいかがでしたか?
安彦:師匠(太田真一選手・埼玉75期)にお願いしてセッティングを見てもらいました。かなりの時間を割いてくださったんです。 練習はひとつ前の開催から2週間あったのでしっかりできました。ただ(山口選手の)後ろに付くと決めるのは直前だったので、やったのは自力の練習ばかりでした。本当に普段通りでした。
大村:松山競輪場のイメージは?
安彦:海が近くて潮風が吹き込むので風の強いバンクだと聞きました。それをのぞけば比較的走りやすい400mバンクだと教わりました。レース当日の指定練習では風が出ていて感触は重かったですね。
大村:レース展開のイメージや作戦はどうでしたか?
安彦:9人中5人が単騎だったので作戦は立てづらかったです。多聞が2番車だったので九州ラインよりも前の位置は取れそうでした。初手は前中団からレースを進めていく作戦でした。
スタートはおそらく五十嵐(五十嵐綾選手・福島121期/単騎)()がまず出てきそうなのと、真鍋(真鍋智寛選手・愛媛121期/単騎)(智寛選手/単騎)もいくかもしれない。真鍋はいわき平で対戦したときに単騎でもスタートとっていたので、前々に居たいかもしれないなと多聞と話していました。
大村:実際に真鍋選手と五十嵐選手がSを取りにいきました。
安彦:ええ。それで自分達の初手は3・4番手で、初手は作戦通りでした。
大村:そこからの展開はどのように読んでいましたか?
安彦:駆けるのは村田(村田祐樹選手・富山121期/単騎)か常次(常次勇人選手・大阪121期/単騎)か後藤(後藤大輝選手・福岡121期/九州前回り)のうちの誰かだろうと。
インを斬られたら、そこを更に抑えて前に出ないと9車なので後方になってしまいます。なので流れに乗って前を叩く作戦でいました。
大村:常次選手が打鐘から先行しました。
安彦:単騎の常次が駆けて、彼を出して番手に入った後藤が車間を切っていつでも発進する態勢でした。すぐ前には真鍋と五十嵐がいましたので、(打鐘前後の)バック線あたりで「これはかなり厳しいな。」と覚悟しました。
大村:埼玉ラインは6・7番手で最終HSを通過します。
安彦:ホームで多聞が車間を切ったことで最後尾まで一度ギュッと詰まってから縦長に延びたので自分や8・9番手の村田と纐纈(纐纈洸翔選手・愛知121期)は一度バックを踏んで、またホームから踏んだので脚は結構キツかったですね。
大村:村田選手が打鐘4コーナーで仕掛けようとしていました。
安彦:あのとき村田が捲っていたら多聞と僕が8・9番手だったので行かれちゃってたらホントに厳しかったです。
大村:最終2コーナーでは後藤選手と真鍋選手が捲り、山口選手はBSで仕掛けました。
安彦:多聞が無理やりでも仕掛けてくれました。3コーナーは彼のさらに外を行っては確実に届かない、内しかないと思いました。
前では五十嵐が内に斬り込んで東矢(東矢圭吾選手・熊本121期/九州番手)をどかそうとしていたのが見えました。そのもつれがどうなるかを見極めて踏みました。
大村:あの一瞬で前の状況を把握したんですか!?
安彦:高校・大学で自転車競技は中距離をやっていました。 短距離と違ってゴチャゴチャしたレースが多いので人との距離が近いことに恐怖心はあまりないです。
大村:そしてゴールは雁行状態の5人を抜いての優勝でした。
安彦:しっかり脚が溜まっているわけではなかったんですが、外から内に斬りこむことで加速できたので、バックを踏まないようにしてスピードを維持してコースを探しました。
大村:ゴール直後は右手を上げてガッツポーズ!
安彦:接戦ではなくしっかり突き抜けたのは分かりました。直線で五十嵐が外をどかそうとしてスピードが鈍ったので、その分だけ車が伸びたんだと思います。
大村:優勝の報告はどなたになさいましたか?
安彦:師匠と妻、家族にしました。いい報告ができて良かったです。
大村:ちなみに優勝賞金の使い道は決まりましたか?
安彦:やっぱり聞かれちゃいますか・・・(笑)実は養成所を出てから大きな買い物をしたことがないんです。
まだ何も決めてないんですけど・・・、実は4月に子どもが生まれるんですよ。なので、生まれてくる子と頑張ってくれてる妻のために使おうかなぁって思います。
大村:さて話は変わりますが、デビューからここまで振り返っていかがですか。
安彦:チャレンジを4場所で特別昇班したんですが、思っていたよりも早く1・2班戦で走ることになりました。(チャレンジとの)レースの流れも違っていて決勝に乗れないことが続いたんですが、今年最初の静岡戦で初優勝できました。嬉しかったです!
大村:今の課題は?どのようなことに取り組んでいますか?
安彦:自分はダッシュが他の人より少ないので、前に出られず中途半端になることが反省点です。
カマシて前に出られるように。またトップスピードも周りの選手にまだまだ及びません。なので(中距離で)今までやってこなかったダッシュを強化することに取り組んでいます。
大村:今後の目標はなんでしょう?
安彦:まずは先行選手としてS級に上がるのが目標です!
師匠の太田さんは先行してグランプリを獲った方ですし、仰ることをしっかり聞いて力をつけて結果を出したいです。
大村:最後にここまで読んでくださったファンの皆さまに向けてメッセージをお願いします。
安彦:ルーキーチャンピオンレースを優勝しましたが自力で動いて力を出し切った優勝ではないので、ルーキーチャンピオンとして先行して勝てる一人前の選手を目指します。これからも応援をよろしくお願いいたします。
大村:本日はありがとうございました。
A級1・2班戦でも赤板先行をいとわない大きなレースで戦っている安彦選手。ルーキーチャンピオンレースは熟慮した上での番手戦でした。優勝は的確な判断とコース取りの賜物でしたが、これからについて尋ねると〈先行して〉というフレーズが繰り返し出ました。
力を出し切り、風を切る。関東地区の若手けん引役としての活躍が期待されます。安彦選手の走りにどうぞご注目ください!
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※インタビュー / 大村篤史(おおむらあつし)
2012年4月から小倉競輪場を中心にレース実況を担当。名前と同様の"熱い"実況スタイルでレースのダイナミズムを伝えることが信条。2022年7月からは小倉ミッドナイト競輪CS中継の二代目メインMCとしても出演中。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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