鈴木宏和選手は全国屈指のスタート巧者。三本の指に間違いなく入る選手です。そんな鈴木選手は意外にも記念タイトルは無し。近況ではグレード優勝戦常連となっていますが優勝まであと一歩手が届かないという状況が続いていました。そんな中、ついに12月17日に飯塚で行われたGI開設記念でグレード初制覇!その時のお話をお聞きしていきました。
(取材日:2024年12月19日)
AKI:悲願のグレード初制覇!おめでとうございます!優勝した今の気持ちはいかがですか?
鈴木:ありがとうございます!!あまり実感はないのかな?とにかく嬉しいという気持ちですね。もうグレードレースは優勝できないと思ってたから。2強(浜松32期:鈴木圭一郎選手、伊勢崎31期:青山周平選手)がいるし、励くん(川口35期:佐藤励選手)も出てきちゃったし厳しいと思っていました。
AKI:GIの前の節に接触し反則がありましたが、今節というのはどうでしたか?
鈴木:初日はピットにいる時に気になりましたね。また落車させたらどうしようと考えたりしていつもよりドキドキしました。けど、自分の車も接触があったのでGIの前検にフォークを交換していたんですがそれも良かったかもしれません。
AKI:初日は不安定走路でした。最近は湿走路の複勝率も上がってきていませんか?
鈴木:金子さん(浜松29期:金子大輔選手)に乗り方、バイクの押さえ方など教えてもらっています。山陽でも雨の練習で引っ張ってもらったりしてそれが少しずつ結果に繋がっているんだなとは感じています。金子さんにはまだまだと言われるのでこれからも練習が必要ですね。
AKI:2日目以降の車の状態はいかがでしたか?
鈴木:2日目終わって急遽シリンダーを交換しました。前検日に浜松で買っていたシリンダーを入れていたんですが合ってない感じがしたし全然タイムも足りないし。なので、測り直していたものを入れたら3日目少し良くなったんですよね。ただ、スタートで自分は切れてるけど前が重なったりして行く場所がなく上手くいかない感じがあって後方からのレースになったりしました。それでも連に絡めていたので状態は良かったんだと思います。あと準決は斑走路になったんですが、実は斑走路好きなんですよ。体重が軽いからか、他の人と同じタイミングでグリップを開けても自分の方が出ていってくれるし、GIでは晴れのタイムが足りてなかったので斑の方が良いかもしれないと思っていました。
AKI:そして迎えた優勝戦ですが、試走タイムは3.30で少し劣勢でしたがご自身の感触いかがででしたか?
鈴木:少し雨がパラついたのも気になったし少し滑るなとは思ったんですが体感は悪くなかったんです。ただ、タイムを見た時は「あ、無理だな」と思いました。結果、ピットの中では気楽に過ごせましたね。タイムが出てた方が緊張してダメだったかもしれません。
AKI:スタートラインに立ってからのレースを振り返っていかがですか?
鈴木:スタートラインに立っても緊張はありませんでしたね。とにかく、スタートしっかり切ろうと思っていました。ただ、10mの角度があるし内に荒尾さん(飯塚27期:荒尾聡選手)がいて先行はできないと思っていました。そしたら荒尾さんが少し浮いたのと、自分自身も100点のスタートが切れて先行できました。本当によく切れましたね。けど、そこからの8周回は長かった。最初は道中で誰かに入られると思っていたし入られたらしょうがないと思ってインコースを固めず走っていました。そしたら影が見えなかったから「あれ?」と思って。結局レース終盤しか影も見えませんでしたね。
AKI:周回を重ねてゴールが迫ってくる中で、どの辺りで優勝を意識しましたか?
鈴木:ラスト2周ですね。「え!?優勝できる!!?」って。そこからは力が入りましたね。イン開けたらダメだって。結果的に影も見えたけど近い感じはなく焦らずゴールすることができました。
AKI:ゴールしたし瞬間というのはいかがでしたか?
鈴木:めちゃくちゃ嬉しかったですね。レース後すぐに一緒に走っていた金子さんが「おめでとう」と挨拶してくれて「うわぁ、、、」となった後に走路の近くに俊太(浜松34期:深谷俊太選手)たちが見えてウルッとしました。涙もちょっと出たけど、戻ったらすぐにみんなが迎えにきてくれるので恥ずかしいなと思って「乾け!!」と思っていました(笑)本当に嬉しかったです。ガッツポーズもお客さんの前でのあの感じは初めてでした。
AKI:その後一度ロッカーに戻った時は胴上げもされていませんでしたか?
鈴木:してもらいました!人生初の胴上げは気持ちよかったしめちゃくちゃ高かったです。凄い飛びました(笑)本当嬉しいしかなかったですね。
AKI:表彰式では言葉を詰まらせる場面もありましたね。
鈴木:喋ってたら感極まっちゃって。だって11年ですよ。長かった。それに、全く獲れない感じでもなかったのでそういうことを思い出したらウルッときましたね。インタビューでは家族や親にも優勝したことを伝えたいと言いたかったんですがもう喋れなくて。泣きそうになって最後まで言えなかったです。あとは、表彰式でたくさんのお客さんが残ってくれてたのも嬉しかったですね。ずっとグレード優勝の話をしてもらってるのになかなかできなかったのでやっと獲れてホッとしました。
AKI:グレードレース初優勝のトロフィーは特大サイズでしたね!
鈴木:トロフィーが大きかったですね!!トロフィーが!!(笑)レース後いろんな人からトロフィーとの写真が送られてきます。ギリギリ自分の方がトロフィーに勝ってますけどね!(笑)
AKI:ここまでの優勝戦ではスタートを切って道中で捌かれるということも多かったと思いますが、ここ数年タイムも上がっていた印象あります。何か対策などは行なっていたんですか?
鈴木:最近はとにかく跳ねないようにセッティングを作れるようになってきたというか、直線が出過ぎないようなエンジンの作り方にしてみたんです。体重が軽いせいかエンジンの回転が上がりすぎて車が暴れて跳ねてしまっていたと思うんです。周りの選手の体重だと暴れるまでエンジンの回転を上げれないのに自分は上がってしまうから、わざとそこまで上がらないようなエンジンを作るというか。昔は直線で他の人より伸びるのにコーナーが遅いみたいな乗り方をしてたんですが、それを直線の終わりで丁度いっぱいになるように作る感じ。とにかく直線を出せば良いんだというエンジンの作りからを辞めたんです。なので、他の人があまりやらないセッティングをしてるかもしれないです。他の人がエンジンの音を聞くと軽すぎると言われます。そしたら自分の体重ではオッケーだなという感じです。ただ、このエンジンの作り方だと直線が弱くなるのでスタートも出ていかなくなった時期があったんです。けど、それはレース道中のためにそうしていて。それをクラッチのセッティングを変えて、弱いパワーでもスタートが伸びるようなセッティングを探しました。結果、今は道中も垂れないしスタートも昔ほどではないにしても良化してきた感じはあります。あとはスタートにムラがあるので今後は良いスタートを毎回出せるようにするのが課題ですね。消音マフラーだと露骨に出るので改良していきたい。人と違うぶん難しいし分からない事も多かったけど少しずつ分かってきて、今回グレードレースが獲れて良かったなと思いますね。結果に繋がって良かったです。
AKI:いい形で年末のスーパースタートライアル戦に臨めそうですか?
鈴木:今回2回目のトライアル戦なので1回目よりは緊張せずに臨めるかなと思います。1回目はとにかく緊張しましたし出れたことに満足してしまっていたと思います。それに毎日8周じゃないですか。長ければ長いほど苦手なんで(苦笑)けど、今回8周回で優勝できたんで、今年は最終日の王座決定戦の残りたいです。前回は9番目だったので。
AKI:年末の目標を聞きましたが、今後の目標は考えていますか?
鈴木:やっぱり地元の記念は獲りたいですね。GIIでもGIでも。あとは、一生に一回はSGを獲りたいです。そこが大きな目標です。優勝するためには2強を倒さないといけないんですが、スピードも上がってきてるし対抗できる可能性も0じゃないと思えるようになったので独走力を課題にこれからも頑張っていきたいですね。そして「日本一のスタート」になれるように、「スタートは絶対先に行く」というところまでいけるように頑張ります。
AKI:それでは最後にファンの皆様へメッセージをお願いします。
鈴木:まだかまだかと言ってくれるファンの方もいっぱいいました。お陰様でやっとグレードレースを獲ることができました。次はSGも獲りにいきたいのでもっとスタートを磨いて活躍できるように頑張ります!
(写真は飯塚オートSNSより)
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