2024年2月25日に行われたSG全日本選抜オートレース優勝戦。ここ数年は青山周平選手、鈴木圭一郎選手の2人によるSGタイトルの取り合いのような状況が続いていました。しかし、今年の全日本選抜では2強を倒し金子大輔選手が2015年以来のSG制覇を成し遂げました!そのSGのお話をお聞きしてきました。
(取材日:2024年3月19日)
AKI:SG全日本選抜優勝おめでとうございます!少し時間が経ちましたが、お気持ちはいかがですか?
金子:ありがとうございます!やっぱり嬉しいですね。川口オートでは死ぬまでSGは獲れないと思っていたので獲れると思ってなかったし、ご存知の方も多いと思うんですが、年末のスーパースターでは何かよくないことが起こる。それも何年も。7、8年くらい悪魔に取り憑かれてたんじゃないかなって思うくらい(笑)散々苦しめられて。僕だけじゃなく、中村さん(川口28期:中村雅人選手)なんかも毎年年末は苦しんでたりして。だから、川口でSG 優勝なんてことが起こるなんて夢かと思いました。レースが終わった後、何日も何回も自分のプロフィールを見て。「あれ、僕本当に勝ったのかな!?」と思ってプロフィールを確認して、「全日本選抜24」と書いてるのを見て「本当やん!!」って。それくらい現実味がなかったですね。
AKI:優勝戦を振り返りますが、しっかりスタートも切れて良い展開作りましたよね。
金子:スタートはそんな悪くなかったですね。特にクラッチ周りを扱ってたわけではないんですが、消音マフラーの方がスタートは切りやすいです。だから、予選8枠からでも8番手スタートというのはなかった。優勝戦も凄い良かったわけじゃないんですけど、2番手くらいに出られたのが良かったのですね。あとは圭一郎(浜松32期:鈴木圭一郎選手)が少し遅れたからそこを抑えて2コーナーに入ったら周平(伊勢崎31期:青山周平選手)が上手く曲がれなそうだったので、「インコース入ろうかな」という感じで入れて。入れた時は「やった!」という感じでした。
AKI:そこからの10周回ですよ。
金子:こういう時は絶対周回盤は見たらダメって分かってるんですよ。なのに残り7周で見ちゃって。「やべーな。まだ普通開催の優勝戦より長いじゃん!!」となって(笑)ただ、走ってたら後ろとの差が詰まってくる感じもないし、ビジョンを見ても等間隔で詰まる感じもなく。「あれ?これ行けるんじゃね!?」っとなってから残り2周くらい急に「やばい、ここで落車したらやばい。」と考え出してしまって。急に守りに入っちゃいました(笑)なので、残り2周は絶対落車しないスピードになって、ちょうどその辺りで圭一郎が2番手に上がってきて詰められてしまいましたね。スピード出して滑らせたり変なこと起こったらやだなって急に大人な考えになってしまいした(笑)10周回先頭はやっぱり辛いです。ただ、エンジン的には余裕があって乗りやすく息切れする感じはありませんでした。無理しなくてもしっかり走れるような感じだったから疲労感とかはなかったですね。ただ「長いな。勝負あっただろ!」とは思っていました(笑)ただただ長かったですね。後ろとは距離があって詰められなかったので「自分だけ6周でよくない?」と思うくらいでした(笑)
AKI:節間振り返ると車の状態は良かったんですか?
金子:予選道中は結果は良かったけど車の手応え的にはあまり良くなかったんですよ。イマイチ。何かバチッと合ってないというか。もうちょいだなと思いながら過ごしていました。自分なりにセッティングをしながらレースに行ってたんですが、加賀谷さん(川口27期:加賀谷建明選手)に負けたレースだけは悔しかったです。そんなに大きく扱ってなかったんですが雰囲気良くなくて。雨で敵なしの加賀谷さんに勝ちたかったですね。本当に悔しかったです。状態が良ければ結構自信があった分悔しかったです。
AKI:優勝戦が1番良い状態だったんですか?
金子:そうですね。あまり扱ってないんですが時間帯にあってくれた感じ。節間の中でも1番状態が良かったですね。セッティング的には予選道中と同じ感じですよ。リング交換をしたくらい。暗くなって冷えだした時にピッタリあったかなっという感じですね。
AKI:前日から雨予報でしたがどう感じていましたか?
金子:んー。初日と準決勝戦だけ晴れてて、あと3日間は雨。準決勝戦は1着取れたけど有吉さん(飯塚25期:有吉辰也選手)が後ろにピッタリついてストーキングされていましたし。怖かったです(笑)なんで、雨の方が結果が出やすいかな?とは思っていましたね。
AKI:優勝戦は2枠となりましたが、枠に関してはどう思っていましたか?
金子:とりあえず準決勝戦を1着でクリアできたというのが大きくて。有吉さんに負けて2着だったら5枠以降。そうしたら今回の優勝は絶対ないんですよ。展開が大きく変わりますからね。なので、自分があの位置に入れなかったらどんなにエンジンが良くっても、あのメンバーを後ろから捌いていくっていうのはきついと思うんですよね。だから、準決勝の1着が優勝への後押しじゃないけど、大きなポイントでしたね。みんなあまりフォーカスしてこないんですけど、何が優勝の勝因かって言われたら"準決勝の1着"です。2枠を取れたから優勝戦であの展開に持って行けたのかなと思います。あとは、誰が自分の外枠にいようとも空いてる内枠を取るつもりではいたので。迷うことはなかったですね。「黒川(川口33期:黒川京介選手)や周平がいるからその外に行こうかなと思ってる時点で勝てない。永井さん(川口25期:永井大介選手)も言ってましたもんね。わざと外枠を取るって自信がないわけじゃないですか。スタート良い選手の外から乗っていってとか考える時点でSGの舞台では勝てないと思います。自信がなくても「自分でスタート切る!」くらいの気持ちで行かないと。SGの優勝戦って小細工が効かないんですよ。力勝負というか。誤魔化しは効かない舞台。力と力の勝負だと自分は思っていますね。そんな中、最近のSGは圭一郎と周平しか勝ててない。お客さんもそうだったと思いますし、選手も「自分たちだって一生懸命やってるんだぞ!」と。ただ、あの2人が速いのは間違いない。その中で、あの2人がいないSG優勝戦よりもいる優勝戦で勝てた方が気分がいいですよね!ただ、いなくてもSG優勝はもちろん半端じゃなく嬉しいですよ!
AKI:9年ぶりのSG優勝となりましたね。
金子:やばいっすよね!9年ってなんなんですか(笑)ただ、実は言うと嫁のお母さんが去年の秋に亡くなってしまって。凄く僕のことを応援してくれてたんです。オートレースも大好きで。僕のこともずっと気にかけてくれていました。だから、今回のSG優勝は凄く見せたかったです。今回の優勝は嫁のお母さんの力もあったのかなと思っています。年末の普通開催優勝から今回のSG優勝は僕の力だけじゃないなというのは思ってましたね。
AKI:9年前SG優勝された際は「重量級でも勝てるんだぞ!!」と仰っていましたが今も考えは変わらないですか?
金子:んー。重量級じゃ勝てない。訂正(笑)9年前から今、タイヤやクラッチ、マフラーも違う。いろんなことが9年前とは変わってるんですよね。今のタイヤはスタートで良い位置つけないと後半滑るんです、昔より。グリップ感が弱くなった感じ。だから、昔はスタートで行けなくても抜いていくレースができてたんです。分かりやすく言うと夏場は走路温度が上がってタイヤに熱がこもってグリップ感が弱くなって後ろが抜き辛いじゃないですか。ただ、その分冬は追い込みが効いてた。けど、今のタイヤになって冬場で少しでもエンジンが合わないと滑る。そこがここ9年で変わったことですね。昔より、前の選手と後ろの選手のタイム差ってそこまでないんですよね。自分はもっと行きたいのにその前にタイヤが滑るから前の選手とタイムがあまり変わらない。タイヤの限界が昔より早くきてしまうようになりましたね。ハンデを背負う選手は本当に大変です。なので、昔のイメージとは違うかぁと思います。ただ、試走を全力で走ってないかと言ったらそんなことはないんですけど、試走タイムだけが全てじゃないという感じがしています。たとえば初日とかは分かりにくいんですけど、何日間か走ったら試走がこれくらいだと上がりタイムがこれくらい出るというのが分かると思うんです。なので、予想する時はその日だけの試走タイムだけじゃなくて前の日のタイムを参考にしてほしいですね。どれくらいの試走偏差で走ってるのかを何日間か測ると分かって来るんじゃないかなと思います。
AKI:色々な要素はありますが、軽量級の方が有利ということですね。
金子:そうですね。竹谷さん(飯塚23期:竹谷隆選手)や別府さん(飯塚23期:別府敬剛選手)に「お前が勝たないと重量級でも勝てることを証明できないだろ!」と言ってもらえるんですよね(笑)自分も軽くなったとはいえ60kgくらい。大体上で活躍してる選手って40kg後半から55kgまでだと思うんです。だから痩せたと言っても重量級なんですよ。だから、竹谷さんと別府さんに「ようやったな!」とめちゃくちゃ褒められました(笑)
AKI:レース後に走路内を歩いたり運動をされてますよね。
金子:できる時は運動してますし、家でも毎日やってます。川口SGは雨が多かったので階段を7階まで登ったり降りたりしてました。もちろん自分のレースに向けてやることはやって、レース後も全て仕事を終わらせてから運動していました。
AKI:いろんな努力や力があってのSG優勝だったんですね!
金子:そうですね。お客さんも「2強をよく倒したな!」と思ってくれてる部分があるかもですね。川口の表彰式のいつもが分からないんですが、凄いお客さんがいっぱいいて。「俺のトーク聞きにきてるのかな?」と思うほどでした(笑)本当にびっくりしましたね。地元でもないし。遠征なのにこんなに残ってくれてるなんて。これがいつもの川口かは分かりませんが、思ったより残ってくれてたのは嬉しかったですね。ウイニングランもSGはやっぱり違いますね。肩がはずれるくらいガッツポーズしちゃいました(笑)気持ちが出ちゃいましたね。
AKI:今年最初のSG優勝で良い一年のスタートになりましたね。
金子:そうですね。去年から状態は比較的安定して良かったですし、落車もなかったし、大きいレースは取れなかったけど安定してたし。今年もまさかこんな良いスタートを切れると思ってなかった。良くなったきっかけは良いクランクに出会ったことだと思います。一昨年の秋くらいなんですが、それくらいから良くなり出していて今も使えてますよ。ただ、消耗品なのでその恐怖に襲われてるんです。あいつがいなくなったら俺どうなっちゃうんだって。だから、また新しい良いクランクを探さないとですね。こればっかりは巡り合わせですから。
AKI:流れが良い状態ですが今後の目標は考えていますか?
金子:第一には怪我しない。これは毎年変わらないです。あとは、もっと優勝を意識して。去年は優出回数に対して優勝回数が少なかったんで、今年は優勝回数を増やせるよう取り組みたいですね。川口での呪縛も取れたんで。むしろ、今は川口の走路大好きですからね。表彰式で移籍すると冗談を言うくらい(笑)あとは、消音マフラーもいいですね。消音マフラーの使用が始まった頃は訳分からなかったですし、1年に数回しか乗らなかったので取り付けも1人じゃできないくらいでした。けど、最近乗る機会も増えて"消音はこうしたら良いんだ!"という特徴を掴めるようになってきて結果に繋がった感じですね。あとはさっきも言ったクランクが良いので扱いやすいですね。仕事がやりやすい。そして、危ないレースはしないように心がけて。去年は1度も「危ない!」というレースはなかったですし、フェアプレイ賞というものをもらって。こういうことは継続していきたいですね。「ロッカーでは輩みたいだけど走路では紳士だね!」って言われるんですよ。褒めてくれてるなぁって、選手に言われるのは嬉しいですね。ただ、輩でもヤンチャでもないんですけどね。褒められたと思ったら悪口も言われてるし(笑)ただ、良いことなので続けていきたいですね。
AKI:それでは最後にオッズパーク会員の皆様にメッセージお願いします。
金子:引き続き頑張っていきます。あと、浜松でSG優勝記念Tシャツを発売してるので是非手に取って、着て応援してください!!
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