みなさん、エスケープハッチを覚えていますか?
2002年に高知でデビューし、54勝を挙げて当時の地方競馬最多勝記録を更新した馬です!
2008年に引退し、現在は埼玉県にあるつばさ乗馬苑で過ごしています。
つばさ乗馬苑に到着するまでの道のりは、
佐々木祥恵さんの 「第二のストーリー~あの馬はいま~」 に詳しく書かれているので、こちらの記事を参照下さい。
エスケープハッチ、先輩への挨拶も済ませて晴れて仲間入り!
エスケープハッチ。
洗い場の隣の馬房に居たハッチは、初めましてのわたしにも、すぐに顔を出して挨拶してくれましたよ。
つばさ乗馬苑代表の土谷麻紀さんに、最近のハッチについてお話を伺いました。
エスケープハッチと、温かい笑顔の土谷さん。
赤見:ここに来て約1年ということですが、どんな様子ですか?
土谷:だいぶ羽を伸ばしていると思いますよ。
今ハッチと、そこのプレジデントとクラッチシューターと、3頭一緒に放牧してるんですよ。それで、ハッチはこの中で自分が一番強い、偉いっていう立場は譲らないんですよ(笑)。ハッチとシューターで最初仲良しにやってたんですけど、そこに後からプレジデントが入って来たんですね。シューターは誰とでも上手に付き合えるので、プレジデントと仲良くしてたらハッチがそこに割って入って。「お前は俺の手下だったろ」って感じで(笑)。新しく入った馬をなかなか寄せ付けないんですよ。
ハッチの目の前の馬房にいるプレジデント。
ハッチが何回も馬房の前を通る時に喰いつく素振りをしていて、でもプレジデントもけっこう気持ちの強い馬で、最後にキレてハッチのお尻に喰いついたんです。それでハッチもしょげて、「すみません」みたいな(笑)。プレジデントも自分の居場所を確保できた感じですね。
赤見:馬に対しては強いんですね。
土谷:基本、俺様です。うちでは「俺様ハッチ」と呼ばれてます(笑)。
でも人間には懐こいですよ。すっごい懐っこい。馬房からクビを伸ばして自分の可愛らしさをアピールするやり方を知ってるんですよ。だから、「俺、こんなことやると好かれるかなー?」みたいな感じで顔を横にしてニッとしたりね。
赤見:さっきやってました!
土谷:もうね、カメラ向けると必ずやるから。最近お決まりのポーズなんですよ(笑)。
赤見:本当に可愛いですね♪ 今は乗馬として乗ったりしているんですか?
土谷:今、乗馬に少しずつやっていこうとしているところです。「エスケープハッチの会」代表の方ともお話して、このまま養老にしてしまうより、乗せられるんだったらそういう仕事を与えてあげてもいいんじゃないかっていう意向で。
まだお客さんは全然乗せてないですけど、わたしが乗って調整している段階です。でもね、本当にキレイですよ。乗馬になったら競技会に行けるかなっていうくらい、前脚も伸びるし、外国産の中間種に乗っているような乗り心地なんです。すごく歩幅が広いし、伸びもいいし。まだハミに対しては乗りが悪いんですけど、口に対して逃げちゃったりとか。だけどキレイに屈頭をしてハミに乗ろうとする、いわゆる乗馬で言う丸いクビがキレイにできるんです。
赤見:クビが弓なりになるんですか?
土谷:そうです、そうです。見てた人が、「この子、乗馬の調教やってたの?」って言うくらいキレイです。見せてあげたいくらい。
今後は一応、乗馬の方で仕上げていきたいと思ってて、来年くらいに簡単な競技会に出していきたいなという気持ちはあります。頭がいいので、人間が何をして欲しいかということを理解してくれるし、パニックにならないんですよ。淡々と聞いてくれる感じで。彼なりの自己主張はあるんですけど、乗っちゃうと人に対しては無抵抗ですね。
赤見:競走馬から乗馬への移行はなかなか難しいと聞きます。
土谷:そうですね。でもハッチは競馬の大きなトラックで全力疾走というのが本業ですけど、乗馬の細かい動きにも上手に対応しようとしてくれてます。小さな円運動なんてやったことないはずなんですけど、必死に理解してやろうとしてくれますね。だから乗馬の素質はものすごくあります。
赤見:競走馬としての仕事を終え、少し旅をしてから、いい形でここにたどり着いたんですね。
土谷:と思いますね。今のところずっと遊んでいるし(笑)。仲間もいっぱい出来たし。ここの馬房も、来る人来る人おやつをあげられる場所なんで、いっぱい愛想を振りまいてくれて(笑)、看板ホースになってますね。撫でても全然怒らないし、他の馬を見てると「俺も見て」ってちょっかい出してきますよ。
赤見:体つきを見ても、元気そうで嬉しいです。
土谷:今は健康そのものですね。何の問題もないです。乗馬の調教を本格的にやって行くと、また少し体型も変わって来ると思います。
ここに来て約1年、やっと乗馬の調教を始めるようになりました。すごく頑張って来た馬だし、ずっと自分はこのまま養老で何もしなくていいんだって思って過ごしていたところに、急に鞍を付けてまた乗るっていうのも可愛そうだなって思うので、「この場所はこういうところで、みんなこんな感じで仕事しているんだよ」っていうのを理解するまで待ちたかったんです。鞍を付けても焦らないでねって、そういう空気を感じて欲しかった。だんだん馬が雰囲気を理解して、溶け込んできたなというところで鞍を付け出したらもう全然大人しかったですね。
赤見:待てるかどうかって大きいですよね。
土谷:そうそうそう。ホントに馬との会話、コミュニケーション、距離感を縮めて行くために待ってあげることは必要ですよね。でもどうしても経済面でじっくり待ってあげることが難しいですけど、そこは大事にしていきたいと思ってます。馬の方から、「これやってもいいよ」っていう感じになればスンナリ入れますからね。
みなさん、ハッチに会いに来た人たちが「ハッチに乗ってみたいんです」って言ったら、初心者でも引き馬で乗れるように、それくらいの信頼関係を作っていきたいと思っています。
※エスケープハッチは見学可です。なるべく事前連絡をしてご訪問ください。
つばさ乗馬苑
埼玉県日高市大谷沢681-1
電話 042-984-3410
つばさ乗馬苑HP
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