9月名古屋で行われた新設のガールズケイリンレース『ティアラカップ』。歴代のガールズグランプリ優勝者と2着選手が選出されて行われました。台風が迫る強風の中、正攻法からのレースでそのまま逃げ切ったのは奥井迪選手(東京106期)でした。レースの振り返りとこの後の目標、意気込みなども伺いました。
山口:ティアラカップ、優勝おめでとうございます。
奥井:ありがとうございます。
山口:初タイトルでしたが、率直なお気持ちはいかがですか?
奥井:今まで何百勝もしてきましたが、「タイトルを取ったことがない」というのが自分の中でどこか引っかかる部分でした。「このまま無冠で競輪人生が終わるのかもしれないな」と思ったこともありました。でも40歳になってタイトルを初めて取れたのは本当に嬉しいです。
山口:新設のレースでしたが、選ばれた時はいかがでしたか?
奥井:今までのガールズグランプリの優勝者がちょうど7人で、引退や辞退などで2人が出られなかったので私が繰り上がった形でした。その時は「ラッキーだな」と思いました。
山口:当日は台風も迫っていて強風だったようですが、実際はいかがでしたか?
奥井:選手紹介の時は雨も降っていて嵐のような天候だったんですが、レースの瞬間は雨も止んでいました。強風は私には向いていると思っていたので、前向きに考えられました。
山口:「風だからどうしよう」ではなく「強風は私に向いてる」と思えたんですね。
奥井:はい。そうやって前向きにとらえられたのが、振り返ると良かったのかなと思います。
山口:レースを振り返りますと、奥井選手が誘導員のすぐ後ろについて、レースがなかなか動きませんでした。どう考えていましたか?
奥井:決勝や大きいレースで「先行で勝ちたい」と思った時に、前からレースを組み立てるのは難しいと今まで考えていました。でも最近、山原さくら選手(高知104期)が強いメンバーも揃う中、決勝で前受けからレースをして勝っているのを見て「前からのレースは意外に勝てるのかな」と思いました。
ビッグレースはみんな前を取りたがらないことが多いので「うまく自分のペースで走れたら武器になるな」と思い、名古屋の直前、京王閣の2日目に試しにやってみたんです。そうしたら自分が苦手とする久米詩選手(静岡116期)を相手に、良い感じに踏みあげられ1着が取れたので手ごたえを感じたし自信になりました。終わってからも、前を取ってレースを組み立てる練習をしました。
山口:そうでしたか。では誰もスタートを取らなければ、前からいこうと思っていたんですね。
奥井:はい。考えていました。
山口:最終バックからは梶田舞選手(埼玉104期)や児玉碧衣選手(福岡108期)も後ろから仕掛けていましたが、どうでしたか?
奥井:レースの直前に、前を取ってペースで踏んでいく練習というのをしていたんです。「ここで碧衣ちゃんが来るから踏みあげる」など相手をイメージしながらしていたんですが、まさにその練習の通りになりました。本当にびっくりなんですが「あんなに練習の通りになるんだな」と思いました。
山口:インタビューでも「練習グループの皆さんにも助けていただいた」と仰っていましたが、まさに練習の通りだったんですね。
奥井:そうなんですよ。
山口:初タイトルということで、ファンの皆さん、選手の仲間など反応はいかがでしたか?
奥井:たくさんのファンの皆さん、選手の方、関係者の皆さん、お祝いの言葉を掛けてくれました。デビューして最初は勝ち続けられた時もありましたが、ここ数年は落ちてしまっていました。
でもそんな時もずっと応援してくれているファンの方がたくさんいて、名古屋に応援に来て優勝インタビューを目の前で見てくれていた方もいました。目を真っ赤にしてるファンの人を見た時に「私はこれをしたかったんだ。ファンの皆さんにタイトルを取って、目の前で感謝の気持ちを伝えたかったんだ」と思ったんです。だからこそ、それができて何より嬉しいです。
山口:苦しんだ時期、戦法が捲りが多くなるなど変化を感じたんですが、どのような心境でしたか?
奥井:捲りが増えたのも前向きな理由ではなく「先行で通用しなくなったから」という理由でした。でもそういう気持ちだとうまくいかず、浮上するきっかけも掴めずにいる時期が続きました。
山口:現状は優勝も続き好調のように思えますが、そうなったのは何かきっかけはありますか?
奥井:去年あたりから色んなことがうまく回り始めたかなと思います。今までは上半身や体幹が弱かったので強化していたら、ちょうどそのタイミングで、今使っている新しいフレームが発売されました。
前の体のままだったらきっと乗りこなせていないと思うんですが、ちょうど鍛えている時だったのでタイミングが良く乗ることができました。更にセッティングも児玉選手の師匠の藤田剣次選手に見てもらい、とても感じが良かったんです。それで「これならまた上の舞台で戦える、戦いたい」という気持ちが出てきました。
山口:具体的にはいつ頃か覚えていますか?
奥井:新しいフレームをレースで乗り出したのは去年の10月頃だったと思います。そうやってフレーム、セッティング、練習環境など、色んなことが去年からうまく回りだしたのが自分の中で大きかったですね。
山口:今は捲りで勝つレースも増えていますが、感触の違いなどはありますか?
奥井:踏み出しが良くなったと思います。以前は踏み出した時にスピードに乗らずにすぐに合わされてしまっていたんですが、今は踏み出しが良くなった分、捲りの出足も前に比べると良くなってきたと思います。でもトップの選手に比べるとまだまだトップスピードは足りないなと正直に思います。
山口:名古屋の後の西武園決勝は、捲りを合わされるような形でしたね。
奥井:西武園は気持ちが弱かったです。「先行しなきゃ」とは思っていたんですが、全然出ていけなくて・・・。だから気持ちって本当に大事なんだなと感じます。
名古屋のティアラカップでは「先行しても大丈夫」と思えたのであのレースができたけど、少しでも疲れだったり不安要素があると「先行しても差されちゃうかな。じゃあ少しでもダッシュする距離を短く」と弱気な部分が出て消極的なレースになってしまうので、改めて強い気持ちでレースをしないといけないなと感じました。
山口:もう一つ伺いたいレースがあります。アルテミス賞レースは尾方真生選手(福岡118期)、山原さくら選手など同タイプの選手が多くいましたが、振り返っていかがでしょう?
奥井:やっぱり戦いにくいです。ティアラカップは自力タイプは私か児玉選手だったので想定はしやすかったですが、アルテミス賞のように同じ仕掛けていくタイプの選手が多いと組み立ても難しいですね。
あの時は前を取って、後ろからの仕掛けに合わせて踏んでいこうと思っていたんですが、自分が思ったよりも早いタイミングで来たので出られてしまいました。更に仕掛けてきた選手にうまく反応もできなかったし、難しくてなかなかうまく走れないです。アルテミス賞のようなレースにどう走っていくかが今の課題ですね。
山口:何が必要だと考えますか?
奥井:スピードを今までより長い距離で維持できるようにと、相手に合わせて動くために瞬間的にスピードを上げる、トップスピードは必要だと思います。
山口:取材時は賞金ランキング1位ですが、それはいかがですか?
奥井:1位ですが僅差での1位なので、まだまだ目の前のレースを一戦一戦集中したいです。前回の反省などもありますし、気持ちも入れて走りたいですね。 でもその先にはオッズパーク杯ガールズグランプリに出られたら良いなと思います。
山口:今年はタイトルをいろんな選手が取っています。ガールズケイリンの変化はどう感じていますか?
奥井:レベルが上がってきましたね。ここ数年は児玉碧衣選手が突出していましたが、今はナショナルチームの選手、それ以外の選手もとても強いです。力が拮抗してきていると思います。
山口:強い選手がたくさんいる中、賞金ランキング1位というのは素晴らしいと思います。
奥井:私の場合は少し違って、純粋な強さというよりは出走本数も多いからだと思います。実力というより元気なだけです(笑)丈夫な体に生んでくれた両親に感謝ですね(笑)
でも1年間、怪我も病気もなく走るのがグランプリ出場には大切になってくるので、今の位置は実力というよりは体の強さですね。
山口:でも病気にもならないというのは、気を付けて過ごされていたのでは?
奥井:体調管理は、気を付けてますし、心掛けて日々過ごしていますね。
山口:10月からはガールズケイリンが一気に変わります。黒のレーサーパンツはティアラカップで先駆けて着用されましたがいかがでした?
奥井:私はピンクより黒の方が格好良くて好きですね。引き締まって見える気がします。後、私は汗をたくさんかくので、それがピンクより黒の方が目立たなくて良いです(笑)雨の時は汚れも目立ちますしね。
山口:変なストレスは少しでもない方が良いですよね(笑)ティアラカップで見ていても、黒いパンツ格好良かったです。
奥井:そうですよね!そしてピンクから黒に変わってもガールズケイリンの華やかさは残っていると思います。
山口:車輪に関しては、両輪スポーク車輪に統一されましたが、それはいかがでしょう?
奥井:今まで、ディスク車輪で天候面などいろんな問題がありました。スポークだとみんな自分の車輪で、条件は同じなので一番いい形になったのかなと思います。
山口:来年は高松宮記念杯ではガールズケイリンのトーナメントが行われるとも発表されていましたね。
奥井:そうみたいですね。優勝するとグランプリ確定らしいので、ガールズケイリンもいろんなレースができてきて、よりファンの方も楽しんでもらえるのかなと思います。
山口:10周年を迎えて、更に変わっていきそうですね。
奥井:平塚の10周年記念レースでも、目標よりも多く売り上げがあったようですし、ガールズだけでも売れるというのは一つ実績になりましたよね。ガールズだけの開催も増えてくるとより面白いのかなと思います。
山口:平塚のレースは奥井選手も参加されましたが、過ごしやすかったですか?
奥井:はい、お風呂にいつでも入れるのは「こんな良いものなんだ」と思いました。普段は1時間など決まった時間しか入れないので、好きな時に入れるのはとても快適でした。
山口:開催が増えていくと良いですね。
奥井:ファンの方からも「ずっと女子のレースを見られるのは楽しかった」と聞いたので、またオールガールズのレースができたらいいですね。
山口:ありがとうございます。次は戦法、先行についても聞かせてください。先ほどの話で、前を取ってレースをする機会を増やしたとありましたが、初手の位置はこだわっていますか?
奥井:そこまでは決めていないです。試してみようという感じです。誰も行かなければ前からですし、後ろからの攻めでも一気にカマシや抑えて先行など、「先行」の中でパターンをいろいろできるように試しています。レースでできないとビッグレースでも難しいと思うので、パターンを試したりはしています。
山口:突っ張ろうなどは特に意識はしていないんですね。
奥井:相手によって戦法を変えたりはしますけど、位置などはこだわっていません。
山口:ありがとうございます。11月の斡旋がでましたが、競輪祭のガールズグランプリトライアルレースはBになりましたね。メンバーを見ていかがですか?
奥井:どちらに入ってもすごいメンバーですが、私としたら同型の先行意欲の高い選手はやりにくいですし、トップスピードも皆さん高いので、今の自分の先行レベルだと簡単に捲られちゃうと思います。あと1か月で、捲りにも合わせて踏みあげられるように、もう少し強化できないと戦えないかなと思いました。
山口:特に小倉はドームだから風もないですもんね。
奥井:そうなんですよね(笑)名古屋は風がある程度私に味方をしてくれましたが、ドームはトップスピードのある選手はものすごいタイムが出ます。でも条件は同じなので、難しいけどもっとスピード上げるしかないですね。
山口:今後も多く走られますが、先ほど仰っていたように一戦一戦という気持ちですか?
奥井:そうですね。「グランプリへ!」「賞金が!」と考えないように、自分のレースをしたいです。前回の西武園が自分の中で「何がしたいんだろう」という不甲斐ないレースをしてしまったので、内容を重視してやっていきたいです。
山口:では最後にオッズパーク会員のファンの皆さんへメッセージをお願いします。
奥井:皆さんの応援のおかげでタイトルを取ることができ、皆さんに感謝の気持ちを走りで伝えられてとても嬉しく思っています。これからも奥井迪を応援してくれたら嬉しいです。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
先日久留米競輪で行われたルーキーシリーズ2022プラスを見事制した室井蓮太朗選手(徳島121期)。父は、室井健一選手(徳島69期)そして叔父が室井竜二選手(徳島65期)という徳島競輪界のサラブレッドが、デビュー前からどんなことを感じ、そして今後どこを目指して突き進んでいくのか。21歳の本音に迫りました。
橋本:まずは、ルーキーシリーズ1着を取っての感想から教えてください。
室井:あのメンバーで勝てたのは嬉しいです!
橋本:みんながびっくりしたのは並びだったのですが、どういう経緯で決まったのでしょうか。
室井:元々誰かには付こうと決めていて、最初は東矢選手(東矢圭吾選手・熊本121期)に付こうと思っていたのですが、熊本勢が並ぶことになり、埼玉勢が別線でやると聞いたので、多聞(山口多聞選手・埼玉121期)に付こうと思い「後ろについていいか」と確認したら「付いてくれた方が良いです」と言ってくれたので付きました。
橋本:養成所時代から、山口選手と親交が深かったんですか?
室井:別に浅くもなく深くもなく、普通くらいですね(笑)
橋本:それでも2人は親友じゃないのかなというくらい、山口選手は思いきって行ってくれました。
室井:そうですね。作戦では「(山口選手が)僕もジャンのところから勝負したいです。」と言っていたので、あとは僕ができることがあればする、というそんな感じですね。
橋本:ゴール線では後ろを突き離しての1着でしたが、道中で勝利の確信はありましたか。
室井:今だからこそ言えるのですが、ジャン(打鐘)では優勝はできるなと思いました。山口選手に付いていくだけいけば、後ろもいっぱいだろうなと。
橋本:山口選手の強さであれば、捲ってくる選手もいないだろうなという感じだったのですね。
室井:そうですね。山口選手のスピードであれば、誰かが捲ってきたとしても、合わせられると思いました。なので今終わってみれば、ジャンで出切った時には勝負があったのかなと思いますね。
橋本:少し話が戻りますが、メンバーが出た時に誰かに付けようと思ったのは、 今後、室井選手自身がマークで勝負しよう、という思いが強いということですか。
室井:そうですね。選手として高い位置で長く生き残っていくことを考えた時に、自分は先行力があったり、すごい捲りが出るような選手ではないので、やっぱり人に付いていくスタイルで勝負したいと思っています。
橋本:その辺りはお父さんの影響もありますか。
室井:そうですね。小さい時から見ていたものが父のレースだったので、やっぱり追い込み選手のレースのシステムがわかりやすかったですね。
橋本:そういう意味ではお父さんもそうなのですが、徳島には小倉さん(小倉竜二選手・徳島77期)という偉大な男がいるじゃないですか。そのスタイルでのかっこよさを追求しようと思った時に,小倉選手のことはどういう風に見ていますか。
室井:小倉さんはあまりにも偉大過ぎますね(笑)でも、父とか小倉さんのようになりたいとは思うので、いいところを盗んでいきたいですね。練習中に後ろに続いて、乗り方を見ると、やっぱり追い込み選手と自力選手ではセッティングも含めて差があるので、まだまだ遠いですけど、少しずつ近づいていきたいと思いますね。
橋本:今、自分に足りないもの、ここをさらに強化したいなと思う部分を1つあげるとしたらどこですか。
室井:もう、それは1つしかないですね。圧倒的にダッシュ力が必要ですね。
橋本:仕事をしようと思っても、ある程度の脚力、ダッシュ力がないと難しいというのもありますもんね。
室井:そうですね。やっぱり前の選手のタイミングで行くので、それに付いていかないといけないですし、今の競輪はスピード競輪なので、持久力も必要なのですが、カマしてきた時に飛びつくダッシュ力も必要だなと感じています。
橋本:確かに、相手の動きに反応した上で、仕事はその次の話ですもんね。その為に具体的に、ダッシュ力をつけていく為のトレーニングには取り組んでいるのですか。
室井:そうですね。自転車での瞬発力もそうですし、筋トレでも、筋肉の伸び縮みを意識しながらやってます。
橋本:追い込みのスタイルでやっていくとなると、やはり自力と違って怪我のリスクも高いとは思いますが、その辺りについてはどういうふうに考えていますか。
室井:怪我はもうこの世界に入る時には覚悟していて、こういうスポーツなんだなと。
橋本:追い込みのスタイルでいくには、そのぐらいの覚悟がないとということですね。
室井:はい、スポーツに怪我はつきものなので。
橋本:ちなみにお父さんは何と言っていますか。
室井:お父さんは多分、反対だと思います。ハッキリ言われたわけではないんですが、そんな感じがします。
橋本:まだそれについては、具体的に会話をしてるというわけではないんですね。
室井:そうですね、1~2回くらいですね。
橋本:その時に反対というようなニュアンスを感じたということですか。
室井:そうですね(笑)
橋本:正面切って、それは反対だ、と言われたらどうしますか。
室井:それを言われたら逆に反発しますね。それならとことん逆にやってやろう、と。
橋本:そのくらいの負けん気がないとやはり勝負できないですもんね。
室井:そうですね、一番大事なところかなと。
橋本:「アスリート+勝負師」のような感じですね。今の時代にはすごく貴重な、ハートのある選手だと感じます。
室井:そうですね。ハートがなかったら何に対しても負けるので。
橋本:その点に関しては、養成所時代から、同期の中でも「負けないぞ」と思っていたのですか。
室井:そうですね、ハートは高校生ぐらいの時にもう鍛えられていましたね(笑)
橋本:高校時代に何があったんですか(笑)
室井:地元の高校野球に所属していて、練習が厳しかったんですよ。あと、先輩から理不尽なことをやらされたり言われたり、なかなかひどい目に遭いました(笑)
橋本:結構昔に、もうそういうものは終わったものだと思っていましたが今の時代もあるのですね
室井:ありましたね。なかなかエグかったっす(笑)
橋本:それに耐えてきたというのが、今の精神的な柱になっているということですね。
室井:アマチュアの時の練習や養成所は、高校3年間とは比べものにならないと思っていましたね(笑)
橋本:今、競輪界全体の流行りが、スピード、アスリートのような方向に行っている中で、流行りに乗っかるのではなくて、持ち味はこれだ、という風にデビューの段階から決めて、それを貫いていくところを楽しみにしています。
室井:ありがとうございます。
橋本:お父さん、小倉さんという名前は先ほどありましたが、将来具体的にこんな選手になりたい、というものはありますか。
室井:お父さんはタイトルとれてないので(笑)やはり小倉さんが徳島で唯一タイトルをとっているので、小倉さんのようになれるよう頑張りたいですね。
橋本:やはり目指すはGIのタイトルですね。
室井:そうですね。やっぱりかっこいいですからね。
橋本:周りの見る目も変わってくるでしょうね。ここまではイメージ通りにデビューから戦えてる感じはありますか。
室井:落車もあったのでイメージ通りではないですね。 やっぱりもっともっと自分が思うようなレースをできるように努力していきたいと思っていますね。
橋本:私生活の面でも色々と自由に使えるようなお金も増えてきたと思いますが、うまく息抜きもできてますか。
室井:そうですね、うまく息抜きもできているとは思います。
橋本:練習の合間に行う1番のストレス解消法があれば教えてください。
室井:最近は同期の徳島の中野光太郎君(徳島・121期)と117期の久田君(久田裕也選手・徳島117期)と3人でご飯やお風呂に行ったり、久田君の家でゲームしたりすることが多いですね。
橋本:少しヤンチャ坊主の3人というイメージはありますね。
室井:一番真面目ではないのは久田君ですね(笑)僕が一番真面目です(笑)
橋本:年齢的にはどうなんですか。
室井:自分は21歳で、2人が1歳上の22歳ですね。
橋本:20代前半の1個上っていうのは結構大きいですか。
室井:徳島支部も結構緩い感じですし、あまり変わらないですね。
橋本:小倉さんもそうだと思いますが、徳島の選手は、厳しく言うような選手がいなくて環境は良さそうですね。
室井:はい、良いと思います。
橋本:今後、まずは怪我にも気を付けて、あとは反対のニュアンスを醸し出しているお父さんを納得させないといけないですね。
室井:そうですね。 やはり結果を出さないと納得してくれないと思うので。
橋本:今回、室井選手には芯が強そうな印象を受けたので、今後のレースが楽しみです、
室井:本当ですか。ありがとうございます。
橋本:これは1ファンとしてなんですけども、ハートの強さを持っている選手は、車券買いたくなりますね。良い意味で、諦めが悪い感じがするので、これからも車券を買いたくなるような選手になってください。
室井:頑張ってなります!
橋本:では、最後になりましたが、これからの目標も含めて、オッズパークコラムを読んでいる皆さんにメッセージをお願いします。
室井:1日も早く上の舞台で戦っていける選手になれるように頑張るので、これからも応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 橋本悠督(はしもとゆうすけ)
1972年5月17日生。関西・名古屋などでFMのDJを経て、競輪の実況アナウンサーへ。
実況歴は18年。最近はミッドナイト競輪in小倉を中心に活動中。
番組内では「芸術的なデス目予想」といういいのか悪いのかよく分からない評価を視聴者の方から頂いている。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
今年、デビューから23年目にして初の競輪グランプリが視野に入っている荒井崇博選手(佐賀82期)。デビュー2年目にヤンググランプリを獲得してから、全くタイトルに縁のなかった男が現在どんな心境でいるのか?そして、44歳にして何故とてつもない覚醒が起こったのか?その理由についてたっぷりと伺った。
橋本:いやぁ、今年は凄いですね
荒井:凄いっすね
橋本:何故、こんなことになったんですか
荒井:何だろう、完全に狂い咲きか風前の灯ですね(笑)
橋本:この年になってタイトルやグランプリに手が届くかも(10月10日時点で賞金ランキング12位)という今の状況を荒井さん自身はどう感じてます?
荒井:もう獲りそびれた感しかなくて、どっちかって言うと雰囲気的にそろそろ引退なのかなっていうぐらいまで成績落ちてたんで、もう2班にも落ちそうやし、点数も足りてない状況が一年だか、それぐらい続いて、でもギリギリ取れてて、なんか嫌な感じがずっと続いてたから、とりあえずなんかやろうかと思ったのはありますけど
橋本:そこで新しいことに取り組んだんですか?
荒井:いや、新しい事っていうよりも、ここまでずっと前の感じを追い求めて、前はこうだった、昔はこうだったよなって思いながらずっとやってて、まぁ、過去の栄光ですよ。それに囚われてて、今ある現状をどうしたらいいのかっていう考えに至るまでが長かったですね。もううまくいかんから、辞めだ!って
橋本:荒井さん前にもう走るの飽きた!って言ってましたもんね(笑)
荒井:あれは負け惜しみやね(笑)練習も昔ならこれがやれとったのに。もう今はやれんくなったから駄目なのかっていう感じになるんですよね。それが面白くなくて。でも今、ココとココだったらもしかして勝負できるかもっていう頭に変換できたっていうのがでかいね今
橋本:ある部分においては潔く負けを認めたと
荒井:若い子と走ってまっすぐセパレートで走れば負けるっていうのは当然っていう考えに...いや、それは漠然とはわかってたんですよ。何ちゅうか、それを第三者的に見れるようになったっていうか
橋本:早いストレートでグイグイ押すピッチングからの脱却みたいな話ですね
荒井:今のレベルは何球も何球もストレートは投げられないけど、要所では投げられるんすよ。航続距離は短くなってるかも知れんけど、レースの中でココ!というポイントでストレートを出すみたいな感じで。何か、スプリントとかやっててそれっぽい兆しみたいなのがあって、ちょっと前からかな
橋本:必殺技を出すタイミングですね
荒井:こう、なんて言えばいいんだろう。2、3人なら自分の瞬発力で抜けるみたいな感覚っすね。三番手ぐらいからだったら前まで全部出れる。結果後は分かんないけど、で、出れるスピードは前よりもあるかなっていう感じかな。以前に比べるとチャンスは少ないけど、前を3人は抜けるんで、早い段階で抜いてしまって後は惰性でいくのか、最後のところでしっかり前を抜いて3着までを取りにいくのか、その辺ですね。
橋本:そして、若い人たちも最近はよく頑張ってくれてるじゃないですか
荒井:多分、最近一番デカかったと思うのは、誠一郎(中川誠一郎選手・熊本85期)が熊本のバンク使えずに俺のとこにちょくちょく来て一緒に練習したりして。で、誠一郎って熊本では無敵やったらしいんですよ。なのに、そんな誠一郎が俺に軽く負けてるっていう噂がたったらしくて。で、そんな噂を聞きつけて嘉永(嘉永泰斗選手・熊本113期)とかが来るようになったんですよ
橋本:おおっ!勇気をもって飛び込んできた訳ですね
荒井:今年の初めかなぁ、和歌山記念の時に、もう嘉永がボロボロで、ウェイトとか色々相談に乗って、知り合いのトレーニングのところも紹介してやったりとかして、色々やったらあいつが良くなったけぇ、そしたら、ほかの人間も来だして。特に嘉永とかは、ダメな所からもう一回這い上がってきた感じで、荒井さんにはお世話になったんで、連携したらもう僕がいきますよ!!みたいな、そんな流れですかね
橋本:荒井さんっていうと一見怖そうで近寄り難い雰囲気があるじゃないですか。そこが僕は好きなんですが(笑)
荒井:全員が全員にいい顔するわけじゃないですし、好き嫌いははっきりしてますからね(笑)慣れるまでが大変らしいっすね
橋本:嘉永選手とは結構性格的には合う感じなんですか?
荒井:いやぁ、性格的に合う合わないじゃなく、俺のところに来るっていうのは、よっぽど切羽詰まってるんだろうなと思って。だって利用価値が無かったら、俺みたいなタイプの人間のとこにわざわざ近づかなくていいじゃないですか(笑)他にいい先輩いっぱいいるのに。俺のとこに来るぐらいだから、よっぽど強くなりたいんだろうなと思って
橋本:何とも肯定しにくいですが、そうは正直思います(笑)で、それをきっかけに他の選手も来るようになったんですか
荒井:そうですね。松岡辰(松岡辰泰選手・熊本117期)とかその辺も来たりしますね
橋本:若い子に怒ったりはないんですか?
荒井:怒るのが俺の主軸でしょ。俺はまずこの人が怖いっていうところから入るから。だから逆に言えば俺から褒められたら正解なんだ感みたいな(笑)そこはあるんじゃないですか(笑)
橋本:あまり褒めないからこそ、褒めると効果的ですね(笑)
荒井:これまでは褒めたりはあんまりなくて、さっきの話じゃないけど、今まで通り昔の栄光を追い求めていってたら、どうにもならなかっただろうけど、何かそういう関係も今の俺自体にはプラスになってますよね
橋本:荒井さんの中にやっぱりこれまでプライドという壁があったのかもしれないですね。お前らなんてみたいなところが
荒井:うん。まあ良くも悪くもですね
橋本:要は丸くなったってことじゃないですか(笑)インタビューの最近の受け答えを見てても思いますよ。丸くなったなぁ。残念だなぁって(笑)
荒井:それは逆ですね。新聞記者とかインタビューする人が、俺から言われそうなことを先に排除し出したっていうか、点数が上がるごとに気を使い出したっていう。そんな感じが面白いっす
橋本:500勝の時はどうでした?若い選手もかなり意識していたように感じましたが
荒井:多分それだけだよね(笑)
橋本:で、長崎に移籍という流れになりますが
荒井:漠然とデビューした頃から、いつかは長崎に移ろうとは思ってたんだけど、意外とこの移籍って何かタイミングがないんですよ。成績も悪くなかったけ、で、30代になって時間が流れて...意外とチャンスって少ないですよね
橋本:確かに。荒井さんの場合、別に環境変わる訳じゃないですもんね
荒井:嫌な感じの時期に引退も考えてて、その時期に何とか踏みとどまったのが500勝まではとりあえず、とりあえずやろうか。500勝したら引退しよう!みたいな風に思ってたけど、そしたらこんな感じになってしまったけ(笑)じゃあ、引退しない代わりに、この状況で長崎に行くのが一番いいのかなと思って
橋本:いやいや(笑)これで目標設定が引退どころじゃなく、どうしましょう?
荒井:いや、どうしよっかなぁと思って(笑)
橋本:グランプリも見えている状況じゃないですか!!
荒井:いやぁ、全然もう意識しないってのは嘘になるけど、諦めじゃないですけど、いけないのが普通だからね。もうだって、今年この状況まできただけで、本当は「デカシなんですよ。一度は引退しよう思うとった人間ですからね。もうそれだけで十分で、そこにオマケがついてきたんですよ。だから、そこまで多分周りが思ってるほど執着がないっていうか、周りが騒いでるから本当そうなの(笑)っていう感じで
橋本:本人の前で言うのも失礼ですが、過去めちゃめちゃ強かったけど、タイトルに手が届くとこまで荒井崇博っていう男は行ったけど、惜しいところまでいった選手やったよね。っていう話で終わるストーリーですもんね。ぶっちゃけ(笑)
荒井:うんうん
橋本:別にダメならダメで、それでも今年一年これでもう万々歳やし、グランプリに行けたら行けたでラッキーやし位の感じなんですか
荒井:そのぐらいの感覚の方がうまいこといきそうな気もしますしね。なるようにしかならんけん(笑)
橋本:生活は変わってないんですか?飲みに行ったりとかはどうなんですか
荒井:いや、普通に行ってますよ(笑)1週間空いてたら3日ぐらいかな
橋本:マジっすか(笑)選手とかといくんですか
荒井:地元の方じゃ選手よりも普通の人の方が多いかな。みんな集まる行きつけの店みたいなところがあって、約束するとかじゃなくてフラフラっと一人で行ったら誰かいるみたいな。
橋本:長崎のほうで飲んでるんですか
荒井:そう。長崎、諫早が一番メインかな
橋本:生活が変わってないのに強くなるもんなんですね
荒井:でも、練習するリズムは変えてないけど、残りはなんか全部一新したかも。練習内容にしろ自転車にしろ。えーっと、どれぐらいだろう?二年ぐらい前から自転車のメーカーも寸法も
橋本:そういうのはやっぱりあるんですね。気持ちの面だけじゃなくって
荒井:自転車変えて強くなるんだったら、っていうのもあるんですけど、ずっと付き合いのあるビルダーさんだったら、昔はこれだったからこっちの方に戻した方がいいんじゃないかとか、新しい人に頼んで、前はどうだったのとか言われても、いやもう前は関係ないんで。今走る自転車を作りたいって言って
橋本:なるほど、もう完全に過去の強かった自分と決別するっていうのはそういうことですね
荒井:そう。それをするのが一番ほんと大変だったんですよ
橋本:積み上げてきたモノを一回全部更地にする感じですよね
荒井:そう。更地にするけど、その時に下地がちゃんと残ってくれとけっていう感じですよね。建物が無くなった状態でも下地が昔よりあって、それがどんどん上がっとってくれたら、そのうち兆しがあるかも的な感じでやってたんですね
橋本:今のアスリート的な競輪場の空気はどうですか
荒井:なんか異様だもん。だって昔と全然違うでしょ。八割九割の選手がレース終わったらプロテインのシェーカーを振りながら飲んでとか、いやいやいやいや、レース終わったらその辺でのたうち回ろうよって
橋本:荒井さんらしい(笑)そんな荒井さんはどうなんですか?
荒井:やっぱり昔と違って、腹減ったから腹いっぱい飯を食うってやってると成人病になる。だから、ちょっとこれぐらいで止めて、サプリでも飲んで栄養とっとかないといかん。太り過ぎての成人病には気をつけないと
橋本:単なるオッサンじゃないですか(笑)
荒井:一日三食食べたら成人病になるよって言われて、朝飯だけは抜くようにしました。それで、ここ2年痛風も出なくなりましたし、こないだやった身体検査も選手になって初めて何も引っかからないという
橋本:えぇぇぇぇっ!食事だけではそこまでいかないでしょ!飲みにも行ってるのに(笑)なんか他に荒井さんこそっとやってるでしょ(笑)めちゃめちゃ健康的なこと絶対にやってる
荒井:まぁ、変わったって言ったらパーソナルトレーナーを付けてやってウエートをやってますね
橋本:ほらやっぱり、あるじゃないですか(笑)いつからなんですか?
荒井:ちょうど二年前くらいからですね
橋本:ようやく完全に繋がりましたよ。それだ!全部更地にして一からってのはそれじゃないですか
荒井:簡単に言えば若い頃は、午前も午後も自転車に乗ってみたいな。もうとにかく自転車に乗りっぱなしみたいな感じで、それが年を取るとできなくなってくる訳じゃないですか。で、それを続ければ故障も出るし。だからもう午前中だけ目いっぱい自転車に乗って、午後はそれに代わるものがないかなと思って、一人でやってたウエートを人から見てもらおうと。とにかくプレートすら自分でつけたくない。だから、パーソナルトレーナーを付けたら、金はかかるけど片付けも全部やってくれるし、メニューも全部、お前らに任せるから考えろって言って、とにかく俺はジムに行って言われた通りに揚げるだけ。それ以外は何もしない。強度だなんだって色々あるみたいなんですけど、時代に合わせたトレーニングはお前らが勉強してやれと
橋本:荒井崇博、狂い咲きの秘密はそれじゃないですか。ようやく出てきた(笑)
荒井:いや、全部任せてるんで。どう変わったかって言われても説明できないんですよ。言われた通りにしかやってないから
橋本:それだ!!そのトレーナーさんの努力もデカいじゃないですか
荒井:そうそう(笑)年はまだ27とか6とか、それぐらいの子が2人、俺についてくれてて。で、今、そのジムが俺のスポンサーになってくれてるんですよ。で、スポンサーになったら大体、ジムの料金はタダになるじゃないですか。機械の使用料とかパーソナル代とか、でも、それだと横暴が言えんけぇ、俺はジム代は払う。スポンサーは入ってもらってて全然大丈夫だから、金は払うと、その代わり腹いっぱい俺のワガママを聞けと(笑)
橋本:横暴って(笑)でも、そのトレーナーさんも喜んでるでしょ。荒井さんにこれだけ結果が出ると
荒井:いや、競輪分かってないんですよ。それよりも、荒井さんの口コミみたいなのでやたら競輪選手のお客さんが増えたのをビビってんじゃないですか(笑)
橋本:レースも見てないんですか
荒井:レースの日程だけは伝えるくらいで。もう、それに合わせていつ、どんなトレーニングをやるのか。予約も全部そいつらに入れさせるから
橋本:そりゃ、どうして強くなったかと聞かれても、荒井さんは分からんわ(笑)でも、欲張りでしょうけど、2年前に気付いてやり始めたことを10年前とか5年前とか、そのくらい前から始めていたら、もっと早い段階で凄いことになってたかもですね
荒井:う~ん。でも、その年では気付ききらんようなことやしね。弱くなってるって言うのはまだ気付いてなかったから無理ですね
橋本:確かに
荒井:あと、40代から強くなることに挑戦したやつっていう前例がないじゃないですか。もしかしたら前例がないからワンチャンあるかもしれないってのはありましたね
橋本:今後はどこに向かっていくんでしょう
荒井:どうだろう。まぁ、とりあえず落ちてくるにしても高いところから落ちる方が長く持つから。鳥人間コンテストでもなんでも、どうせいつかは落ちてくるんだから、とりあえず高いところから落ちた方がいいかなと。高さがあればもしかすると琵琶湖を横断できるかもしんないで(笑)
橋本:体調面、特に古傷の膝はどうなんですか
荒井:膝は、もう治らないから気にしない。もう賞味期限切れに近いから(笑)
橋本:賞味期限切れって(笑)円熟期に入ったということにしておきましょうよ。まぁ、そういう意味で言うと、例えば同世代の佐藤慎太郎選手(福島78期・45歳)とは常に同じステージで戦い続けて、今なお進化を続けているという意味では共通すると思うんですが、荒井さんから見て佐藤選手ってのはどんな存在ですか
荒井:慎太郎さんには申し訳ないんですけど、僕は正直、小倉さん(小倉竜二選手・福島77期・46歳)の方が気になりますね。慎太郎さんは、言い方悪いですけど周りが強いもん。昔でも結構勝ててたのは、北に強い自力型がいっぱいいたしってのもあるし、北がいなかったら南関でも番組で引っ張ってこれたし。でも小倉さんは地区的に厳しい中であのレベルでずっとやってきて、やっと今ですよ。中四国にいいのが出てきたから。それまでずーっと、足場がないところであの成績ですよ。だから、ちょっと意識するって言うか、小倉さんはどうしてるんだろう?っていうのはありますね。慎太郎さんには聞きにいかないけど、小倉さんには聞きたいっていうのはありますね
橋本:今、中部の追い込み陣にとっては冬の時代なんて言われてますけど、確かに北日本はそんな時代はなかったと言えばなかったですもんね
荒井:そう、小倉さんはずっとこれまで南極に住んでたから(笑)
橋本:確かに(笑)そのくらい厳しい時代でしたね。そういう意味では九州も厳しい時代。今もかもしれませんが、なかなか大砲という存在が少ないですね
荒井:少ないし、もう若いのが中途半端なことを言いよったら俺が前回るもん。今年の静岡記念の時もそうだったもん。あぁ、名前なんだっけなぁ、あの~名前ド忘れしたなぁ。熊本の、なんとかあさひ
橋本:あ!伊藤旭(熊本117期)選手ね
荒井:そうそう、それ。何か、お願いしま~す!ってきて。はぁ????って。お前、俺が付くと思ってんのか馬鹿かお前はって(笑)
橋本:まぁ、伊藤選手は自在のスタイルですもんね(笑)
荒井:で、結局そのレースは俺が深谷(深谷知広選手・静岡96期)を捲って1着だったもんね。まぁ、要は俺からついてもらえないっていうのを恥ずかしく思えよ。馬鹿かって。でも、わかってないでしょうね。それを周りが見てくれないから
橋本:荒井さんの場合はそういうところで誤解が生まれるみたいなところはありますよね(笑)まぁ、でも今、表面的にはいい事しか言わなくて、裏で何言ってるか分からないみたいな人も多い中で、実に貴重な存在だと思います。何よりお世辞がないのがいいと思います。そんな荒井さんが認める若手ってなると誰になりますか
荒井:まぁ、発展途上にはなるけど嘉永とかは心中してもいいって思えるかな。他誰だろう。庸平(山田庸平選手・佐賀94期)はちょっと違って、山田英(山田英明選手・佐賀89期)かな。悪かったら悪いなりに気持ちで走るタイプで、どうにかしてっていうレースをするけど、庸平は悪かったらもう全然自分の着を取りにいったりするから
橋本:高松宮記念杯の決勝はいくのかな、というのはありましたが・・・
荒井:いや、もう切り替えりゃよかったかなって(笑)いやいや、他誰かなぁ、信用してつけるっていうのとはちょっと違うけど、上で戦うなら翼(北津留翼選手・福岡90期)につきたいかなってのはあるよね。黒か白かはっきりしてるってのは裏を返せば50%はチャンスがあるってことやけん
橋本:荒井さんの場合は積み上げてきたものを見てるって感じですよね。今の勢いだけとかそういうものではないところで判断しているような
荒井:というより、勝つための武器を持ってるやつ。もしくは勝つ位置を絶対取れるやつ。今、一番多いのは勝つレースをしたいけど、しんどい組み立てはしたくないっていう。勝つレースがしたいなら後ろから抑えればいいのに、それは嫌で、結局、前で受けて捲れずに中途半端みたいな。そういうやつが一番ムカつくよね(笑)
橋本:お客さんもそう思ってたりします(笑)ところで、何か荒井さんの中で明確な目標ってあるんですか
荒井:いやぁ、何と言うか色んな事がホワっとしてるんですよ。例えばタイトル獲ってグランプリへ行くっていう目標があったとして、その目標ってホワっとしてるじゃないですか。そういうのではなく、ホワっとしたものをなくしていこうというのは思ってますね。年を取ってくると、午前中最低ノルマ10本って決めてても、ちょっと感じよかったからもう3本で今日は終わりにしよう、という考えになってくるんだけど、そうじゃなくて、10本って決めたら必ず10本やる!みたいな、とにかくホワっとしたものが多い中で、これと決めたらきちんとやろう、というのは思ってますね
橋本:甘え、妥協はしないと、そういうことですね。そんな、この年で決めたことを貫く荒井さんのモチベーションっていうのは何になるんですか
荒井:う~ん、何だろうね。俺の周りの同い年ぐらいのやつって、これからなんですよ。若い時にやりたいことができなかったけど、会社に勤めてるやつとかでも権限が出てきてやりたいことが徐々に出来るようになってきて。だけど、競輪選手って、もう俺らの年になってくると終わりじゃないですか、普通は。だけどそういうやつらと接してると、俺も負けられんないという気になりますよね
橋本:ちょっと使える金も増えてきて楽しくなってくる頃で、本当の意味で人生楽しめるってのはあるかもしれないですね
荒井:そうそう。そういうやつらと話してると、そんな気持ちになりますね
橋本:そういう意味でいくと、週に3回の飲み会も刺激になっている訳ですね(笑)本当に長い時間になりましたが、これからも荒井さんのその考えを貫いて、戦う姿を見せてください
荒井:いつまで続くか分かりませんけど、まぁやれるだけ。なるようにしかならんけど戦っていきたいと思います
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※インタビュー / 橋本悠督(はしもとゆうすけ)
1972年5月17日生。関西・名古屋などでFMのDJを経て、競輪の実況アナウンサーへ。
実況歴は18年。最近はミッドナイト競輪in小倉を中心に活動中。
番組内では「芸術的なデス目予想といういいのか悪いのかよく分からない評価を視聴者の方から頂いている。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
名古屋競輪場で行われた共同通信社杯を優勝し、年末のグランプリ出場に向け弾みをつけた郡司浩平選手(神奈川99期)にお話を伺いました。
大津:共同通信社杯優勝おめでとうございます。
郡司:ありがとうございます。
大津:完全優勝を達成しました。お気持ちはいかがですか。
郡司:優勝できたことはうれしいですし、やっぱりかなりグランプリにも近づいたということで、本当にここがかなり大きな分かれ道になるんだろうなって思ってます。
大津:賞金ランキングの意識というのは、郡司さんの中では結構ありましたでしょうか。
郡司:自分自身ではまだGIも2つ残されてましたし、そこまで気にはしなかったんですけど、やっぱり周りの方からも言われることも多くて、共同通信社杯はGIIですけど、獲ればかなり賞金的には変わってくると思ってたので、優勝したことでかなり大きく前進できた気がします。
大津:青森記念から中3日での参戦でした。
郡司:ちょっと調整部分は疲れだったり難しいところがあったんですけど、その前の段階から共同に目標を置いてやっていたところもあったので、そこら辺の不安というのはなかったです。
大津:共同通信社杯は、郡司さんは相性がいいように思うのですがいかがですか。
郡司:そこまでは気にはしないんですけど、やっぱり自分の中でも何となくちょっとそういう相性いいなっていうのは競輪場とかによってもそうですけど、多少はなんかやっぱり頭のどこかにそういう意識はあるので、そういう面でいえば相性がいいという大会だなと思います。
大津:初日は自動番組の中で眞杉選手(眞杉匠選手・栃木113期)の後ろを選択されましたが、どのような経緯があったのでしょうか。
郡司:後ろに付いてくれる鈴木裕さん(鈴木裕選手・千葉92期)と話をして、空いてるなら全然付いてもいいんじゃないっていう風にも言ってくださいましたし、自分自身もちょっと行きたいなっていう気持ちもあったので、そういう話し合いの中で眞杉とも話をして、空いているようであれば付かせてもらっていいかなって眞杉に頼んで付くことになりました。
大津:眞杉さんからではなく、郡司さんからアプローチをされたのですね。
郡司:そうですね。周りの選手のコメントとかも、ちょっと気になってたところだったんですけど、そんな中で眞杉の後ろも空いてましたし、ちょっと自分自身も多少は悩んだ部分もあったんですけど、メンバーをパッとみた中で、自分自身が付いてみたいなって思ったので、そういう中での判断でした。
大津:この時の眞杉選手のリアクションとかっていうのは何かありましたか。
郡司:「ホントっすか」みたいな感じで「付いてもらえるなら嬉しいです。頑張ります。」っていう風な感じで対応してくれたので、僕もその中で何かスイッチが入ったっていうか、ラインとして決めたいなっていう気持ちが強くなりました。
大津:普段は敵として戦う眞杉選手ですが、どのような所に魅力を感じていたのでしょうか。
郡司:対戦は割と少ない方だったんですけど、先行選手としては本当にもうトップの魅力的な選手で、最後まで垂れないとかスピードが落ちないので、どういうペースで行けばああいうスピードが維持できるのかとか、先行の考え方だったりとか、そういうところは気になっていたので、聞いてみたかったり感じてみたかった選手だったので付いてみてプラスでしかなかったです。
大津:こういう連携の時はどちらが作戦を決めるんでしょうか。
郡司:基本的には前の選手の意見を聞いて尊重したい部分もありますし、自分が言えることっていうかアドバイスできることがあれば、こういう展開だったらこうしたほうが良いよとか、こうしたほうが多分もっとやりやすいんじゃないっていうような意見っていうのは伝えてはいます。
大津:レースは眞杉選手がしっかりと主導権を握っていきましたね。
郡司:もう本当に強いの一言でした。やっぱりかなりいい先行するなっていうか、自分じゃ真似できないような先行力でしたし最後のゴール前でもスピードが落ちないし、バックでかなりスピードも踏み上がっていく感覚があったんで、後ろに付いている選手からすると安心して付いていけました。
それにプラスして、後ろの選手も仕事をしやすいような先行だったんで、本当に何か残しやすいとか、ラインで決めやすいような先行力だなって感じでしたね。
大津:二次予選では脇本選手(脇本雄太選手・福井94期)を始め、かなり強力なメンバーとの対戦になりました。
郡司:やっぱり今は脇本さんがレースにいると、脇本さんを中心としたレースの組み立てになってますからね。二次予選であたるのは「早えなぁ」って思いましたけど(笑)
でもいつかは倒さないと勝たないと優勝とか上のレースに行けないですし、遅かれ早かれ戦って勝たなければいけない相手ですから。その前のオールスターでも対戦があったんですけど、あの時は完敗してしまったので、いかに対抗出来るかっていうところのメンバーでした。
大津:レースを振り返ってはいかがですか。
郡司:太田(太田竜馬選手・徳島109期)がかなり気っ風良くというか、もう腹をくくって、あの脇本さんが来る前に掛けてくれたっていうのもそうですし、ちょうど僕が行きたいタイミングで宿口さん(宿口陽一選手・埼玉91期)も仕掛けたので、そこで僕が無理やり、その外へ行ってもちょっと脇本さんの展開になってしまうなって思ったので、ちょっと我慢して、最後ゴール前勝負ってなってしまったんですけど、それが結果としてはうまく脇本さんを引きつけられて1着になれた勝因だったのかなって感じています。
大津:太田選手の掛かりも見極めないといけないですし、後ろの脇本選手の動向も警戒しなければいけない中で、かなりタフなレースにも思えるんですが。
郡司:勝つためには自分のことを考えて、なるべく脚力だったり、脚を削らないようにとかっていう部分で正直他の人のことを考えてる余裕はないんですけど、でもその中で脇本さんだったり、相手を倒すためにはどうしたらいいかっていうところで少し足を削られながらも、後ろを気にしたり、前の掛かり具合を気にしながらレース運びをしなきゃいけないレースでしたね。
大津:準決勝も快勝で無傷での決勝進出となりました。脚の感触としてはいかがだったんでしょうか。
郡司:状態としては、8月に落車があって不安を抱えながらの小田原記念だったんですけど、そこからちょっとフレームとかを変えてみて、今回3場所目だったんですけど、ちょっとずつ良くなっている所もありながら、もうちょっとだなっていう部分もありながら、ずっと迷いながらレースをしてたんですけど、今回の2日目にやっとなんか身体と自転車がしっくりきて、ちょっと踏む距離は短かったんですけど、これだったら3日目、4日目と長い距離も行けそうだなっていう手応えをかなり掴めたので、その中で準決勝を捲りで勝てたっていうのは大きかったです。
大津:心と体もマッチしてというような感覚ですか。
郡司:そうですね、自転車の面も不安なく、体もずっといい状態は続いてたので、かなり自信を持って決勝戦には臨めました。
大津:その決勝戦ですが、郡司選手、平原選手(平原康多選手・埼玉87期)、松浦選手(松浦悠士選手・広島98期)とレースの中で何でも出来る選手が揃いました。
郡司:いや、本当にみんな多分考えるようなことは同じだったと思うんです。
あとは僕が外枠っていうところもあったので、内枠の二人がかなり攻めやすいような組み立てになってしまうのかなっていうところで決勝戦は考えたレース運びをしました。
大津:最終日は台風の影響もありまして、かなりコンディションも良くはない中だったんですけれども、決勝戦を迎えるまでにレースを見ながら郡司さんの中でプランの変更などはあったんですか。
郡司:多少はありました。でも選手紹介でバンクを走った時に、先行して全然無理だっていう感じのバンクコンディションとは思わなかったので、これだったら先行してもいいところまで行けるなって感じました。台風云々というよりは、ああいう作戦っていうのは走る前からある程度自分の中では固まっていましたね。
大津:初手は後ろ攻めになって郡司さんからレースを動かしていったんですが、いつもより仕掛けが遅かったように見えたのですが振り返っていただけますか。
郡司:自分の中ではそこの切るタイミングだったり、切るスピードが一番の肝になってくるなと思ったので、ゆっくり切ってを出させてその上をもしかしたらカマされちゃうかもしれないとかって考えた時に、やっぱりああいう仕掛けの方が自分にチャンスあるんじゃないかなと思ってました。前へ出てからは、その時の自分の判断に任せたいなっていうところもあったので、前を切るタイミングやスピードだけを意識していました。
大津:先頭に立ってからは何度も後ろを振り返っていましたが何を確認されていたのですか。
郡司:前に出てからは自分のスピードや相手の動きを見て、ここからだったらゴール前まで勝負できるっていうようなところで掛けたかったので、踏み切れる位置からってのを確認する意味で後ろを見ていました。それでも行かれてしまうようであれば、前々に踏んでしっかり勝負圏のある位置にいたいと思っていたのでホームでは松浦も来ていましたけど自分の中では腹をくくって併せて先行するつもりではいました。
大津:掛かり具合としては、しっかり併せ切れるぞっていう感触はありましたか。
郡司:ある程度自分の中では余裕を持って走れましたし、バックに掛けてかなりスピードのノリも自分の中で踏み上がっていった感じもあったので、バックぐらいではもう少し我慢できるなというところの感覚はありましたね。
大津:最後はアクシデントもありましたが、決勝戦振り返ってはいかがですか。
郡司:アクシデントがあったので残念な面も大きいですけど決勝で南関でとか同県で3人並ぶっていうのはかなり心強くて、だからこそああいう思い切ったレースができたのかなって、本当にラインというものを大切にしていきたいなって思いました。
大津:こういう舞台で郡司さんは先行もあるぞ、と思わせるのは戦う相手にとって与える印象も変わってくるような気がいたします。
郡司:決勝戦もそうですけど、大きい舞台で先行するとなかなか優勝できなかったり、着が取れないっていうようなスピードレースになってきてるんですが、その中で気持ちを出したレースができたっていうのは今後に繋がってくるんじゃないかと思います。
大津:今年はグランプリの舞台が平塚というのも気合いが入るところじゃないですか。
郡司:やっぱりどこかでは、そういうところも意識してますし、現状少し苦しかったんですがその中で優勝できてかなりグランプリ近づけたっていうことは後半戦のレースを気持ち的には余裕を持って自信を持って臨めるかなと思います。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願いいたします。
郡司:おかげさまで優勝することができました。まだ残りGIも2つあるので、そこを優勝出来るようしっかり精進していきたいと思いますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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