飯塚所属の33期。2017年にデビューした当初から注目され、翌年の2018年には2級車でGII若獅子杯争奪戦(2018年10月24日)を制覇。これが、デビュー初優勝。さらに、師匠である久門徹選手(飯塚26期)が持つデビュー最短グレードレース優勝記録を更新。そして、1級車に乗り替わった翌年の2019年には一般開催で2度目の優勝を果たした。2017年度に最優秀新人賞、2018年度は優秀新人賞獲得するなど順風満帆な選手生活と思われたが、そこから苦悩の時期が始まった。初優勝からここまでの選手生活を振り返って頂きました。(インタビューは5月29日の飯塚ミッドナイト優勝戦の前に行いました。)
インタビュー / AKI
AKI:2017年のデビュー当時を振り返るとどんな感じでしたか?
中村:デビューしてすぐは勝てなかったけど、初勝利してからはテンポ良く勝利数を上げていけました。こういう感じなんだ1着は。逃げるってこんな感じなんだ!と分かるようになった。その感じはすごく覚えています。最初は、こんなにハンデがあるのになんで2、3周目で抜かれるんだろうと思っていたけど、逃げて連勝してすぐ優勝戦に乗ったりできて。逃げ方を掴めた感じでした。
AKI:ただ、優勝はすぐではなかったですよね?
中村:そうですね。デビューして1年ちょっと。2級車も終わりかけの頃でした。
AKI:そのデビュー初勝利がGII若獅子杯争奪戦、グレードレースでしたね!
中村:そうなんです!
AKI:一節間を振り返るとどんな感じだったんですか?
中村:その節は前検の練習の感じからいつもと違って。凄く良い感じというか。そしたら、初日、2日目と1着で。3日目は最終レースの選抜戦で、その時は試してみたい整備があったので扱って行ったら8着。周りの先輩から「元に戻せ!!」とアドバイスを頂いてすぐ戻しました。準決の日は雨だったんですが、自分のロッカーの近くに吉田恵輔さん(伊勢崎29期:吉田恵輔選手)がいて、雨で使えるタイヤを教えてもらいました。若獅子の時は周りの先輩が凄く良くしてくれました。いつもは師匠をはじめ、上の先輩がメインで面倒を見てくれるんですが、若獅子は近い期の先輩ばかりでお兄ちゃんみたいな感じ。その時から、1期、2期上の先輩と距離が縮まりましたね。今ではプライベートでも遊んでもらうことが増えました。
AKI:色んな意味で大切な開催になったんですね。
中村:そうですね。とても大切な開催になりました。
AKI:優勝戦を振り返って、まずスタートは同期と並んでいましたがどんな感じだったんですか?
中村:1枠が自分で、2枠にはくろ(川口33期:黒川京介選手)。とりあえず先に行こう!と思っていました。先に行けば抜かれることはないはずと思っていたので。
AKI:抜かれないだろうという感覚はあったんですね。
中村:はい。その時はくろがスタート速い方ではなかったし、自分も今よりはスタートが切れていたので(笑)不思議ですけど2級車の方がスタートが切れていました。
AKI:若獅子の優勝は色んなことがプラスαでありましたよね!?
中村:そうなんです。デビュー初優勝、師匠が持つデビュー最短グレードレース優勝記録更新、自分の誕生日(笑)なんか他にも記録があったみたいです。
AKI:印象深い初優勝になりましたね!
中村:そうですね。この頃、自分が初優勝できない中で同期がどんどん優勝していて。優輝(飯塚33期:木山優輝選手)も先に優勝していました。とりあえず自分も優勝したいという感じ。なので、いろんな記録のことは全く知らなくて。逆に知らなくて良かったです。優勝できたら師匠の記録を抜ける!なんて考えると気合が入りすぎてスタート遅れてたかもしれません(笑)
AKI:プレッシャーがですね(笑)けど、同期の優勝は刺激になってたんじゃないですか?
中村:そうですね、デカかったです。
AKI:焦りはありましたか?
中村:ありましたね。若獅子の前に飯塚と山陽で優勝戦に乗って2回とも準優勝。ハンデもどんどん下がっていくしもう取らなきゃヤバイなと思っていた。師匠にも「取れるときに取れ。2着とかいらん」と言われていました。
AKI:けど、結果として大きい舞台で初優勝を決めましたね!
中村:そうですね。若獅子の優勝戦が初めての8周回だったんですが、全然普通というか長くは感じませんでした。ただ、中尾さん(飯塚31期:中尾貴志選手)に「絶対周回盤見んなよ!」って言われていたんですが、1回だけ周回盤見てしまい、見たら残り『5』って書いてあって。全然減ってないし!!!これはヤバイ!!と思って周回盤見るの辞めました(笑)
AKI:もう無我夢中という感じだったんですね(笑)
中村:そうですね。後ろの音が聞こえたり聞こえなかったりで。ただ、エンジンは中尾さんが2級車の時に乗っていたもので、それに乗り出してから成績も上がってました。なので、あの優勝は中尾様様です(笑)
AKI:やはり良いエンジンに乗らないと分からないこともありますよね。
中村:そうなんですよ。2級車はグリップを開けて開けて走らないといけなくて、悪いエンジンは開けても進まない。良いエンジンに乗らせてもらって良い経験をさせてもらいました。この事は本当に今のグループに入れて良かったなという感じです。
AKI:師匠の久門選手はいつも手を動かして整備をされていますね。
中村:そうですね。師匠は本当に凄いです。自分は凄い整備グループにいると思っています。この前、5月24日からの飯塚開催の前検日に落車をしてしまったんですが、周りに整備力が高い選手ばかりで立て直してもらいました。先輩達がいなかったらその節はズタボロだったと思います。むしろ、落車後にフレーム交換をしてから落車前より乗りやすくなって。フレームを交換してここまで乗りやすくなったの初めてでした。前回のフレームも乗りやすい感じはあったんですが、今回のは絶対良い!というような手応えがありました。前回よりも良いフレームがあるんだ!と発見。フレームの良し悪しだけではなく組み方とかもあるんだろうなと勉強になりましたね。
AKI:日々勉強という感じですね。若獅子で劇的な初優勝を飾って1級車でも優勝!充実した選手生活を送っていましたが、その後は少し苦戦されていませんでしたか?
中村:1級に乗り替わってからはズタボロではなかったんですが、なんかパッとしないというか。人を捌けなくて。2級と1級はグリップワーク全然違って、ただ開けるだけではダメ。忙しいですね。1級車は深い。することも多いです。
AKI:それは整備もですか?
中村:そうですね。2級車はそこまで整備をしていなかったんですが、1級車は色んなところを扱わないといけないですね。
AKI:ご自身の中でも2級車から1級車に乗り替わってから「あれ?上手くいかないなぁ」という感覚はあったんですか?
中村:ありましたね。1級車に乗り替わって2回目の優勝をするまでは優出すらできませんでしたし。
AKI:そうなんですね。2級から1級に乗り替わってからはそこまで順風満帆という感じではなかったんですね。
中村:はい。なんか、優勝した後って良いことがないというか(苦笑)若獅子を獲った後の新人王では落車したし、2度目の優勝の後は飯塚ミッドで周回誤認をしてしまって...。
AKI:あー!ありました。覚えてます。優勝後に何か起こりますね...。
中村:そういう人生なんですかね(笑)上がったらその後はどん底まで落ちちゃいます。けど、まぁまだ2回目なんで気のせいだと思います!(笑)
AKI:なかなかうまくいかない時期は長く感じましたか?
中村:長かったですね。完全にスランプでした。周回誤認をしてからは本当にやばかったです。気持ち的にも車的にも参っていました。その頃はドドドが酷くて。なにしてもダメ。フレームを交換するももっと酷くなって...。辛かったですね。結局はクランクケースを交換したらハネはおさまりました。この時も師匠や周りの先輩たちのアドバイスがあって。勉強になったのはフレーム自体には全く問題がなかったこと。その時のケースは若獅子優勝した時のものだったんですが2、3回落車をしていて。形が変わって寿命だったんでしょうね。苦しかったけど、そういうことでハネがくるということに気づけたので勉強になりました。車が悪い原因を早く見つける事ができる人、整備力がある人は本当に凄いです。
AKI:ひとつひとつ学んで、少しずつパワーアップですね。
中村:はい。師匠には「自分に合ったスタイルを見つけていけ」と言われています。「俺が絶対正解という訳ではないから。今は色々やってみて、10年くらい経ったら自分に合った勝ちパターンができるから。それを早く見つけろ」と。
AKI:久門選手はこれしろ、あれしろ、というタイプではないんですね!
中村:言わないですね。周りには久門さんは厳しいそうと言われるんですが全然そんなことなくて、ガミガミ言うタイプではありません。ポイントが来たときに言ってくれます。言ってきても「この話はもう終わり!」とすぐに切り替えます。練習の時は練習して、休む時はしっかり休む、というような感じ。オンとオフをしっかりするタイプです。師匠の考えは凄く大事だと思いますし、このスタイルはいいなぁと感じています。
AKI:レース場以外でも師匠とは会うんですか?
中村:会いますね。食事に行ったり。厳しいところもありますが基本的には優しいですよ。そして、なぜか久門さんの下の子に顔を笑われます(笑)
AKI:(笑)けど、凄く充実した師弟関係なんですね。近況は少しずつ車の状態など良くなってきているということですよね?
中村:はい。車の状態もなんですが、最近はレースで内のコースも外のコースも使えるようになってきて少しずつ自信になってきています。今は、レースがごちゃごちゃとしたら外、一対一なら内にする様に心がけて。けど、最初から決め打ちはせずに、内でも外でも行けるような付け位置を取るように教えてもらいました。「内にこだわったら内が難しく感じる。逆に外なら外が難しく感じる。だから、どっちも行けるような付け位置で走れ」と。
AKI:現在の1番の課題はなんですか?
中村:1番の課題はスタートですね、最近スタートがおかしいです。ムラがあります。切れたと思っても次の日には切れなくなっていたり。
AKI:それは、切り方ですか?それともクラッチのセッティングですか?
中村:たぶんセッティングだと思うんですよね。なので、自分に合ったクラッチのセッティングを見つけたいですね。特に夏場はスタートで少しでも前に行かないと展開が厳しくなるのでモノにしたいです。
AKI:整備に関してはどうですか?
中村:最近は、こういう時はこれをやってみようというのもあるんですが、なかなか当てはまらないですね。特にぬくとなると難しいです。タイヤが滑りやすくなるのでエンジンの良し悪しが分かりにくくなる。冬やミットはタイヤが食い付くので、エンジンが良いか悪いかがすぐ分かって整備の方向性も見えてくるんですが。3年間走ってきて夏場は成績が良くないので、夏場の調子をあげる事も課題ですね。今年の夏場は今まで以上に大きく整備をしてみたいと思っています。どん底は味わったので、今年はどんどん手を動かしていきたいです。
AKI:どんなにダメな時でも走らないといけませんもんね。
中村:そうなんです。けど、どん底の時に有吉さん(飯塚25期:有吉辰也選手)に言われた言葉があって。「俺もどん底を見てきたけど、とりあえずレースに出続ければいつか良くなってくる。ずっと悪い人なんてこの業界おらんし、悪い人はクビになるような世界。杏亮はまだクビとかでのレベルではないから大丈夫。とりあえずレース頑張れ」と言ってもらったんです。
AKI:有吉選手に言われると凄く響く言葉ですね。
中村:そうなんです。有吉さん自身も大怪我を負って苦しい時期を乗り越えた人なので。今じゃあんなに成績を残して半端ないです。自分も頑張ります。
AKI:目の前の目標はなんですか?
中村:まずは最重ハンになることです。最重ハンになって着が取れてくれば自然とランクも上がってくると思います。後は、地元で優勝したいです。選手になる前は飯塚オートにお客さんとしてきていたので、地元優勝はやっぱりしたいですね。
AKI:後輩ができたことに関してはいかがですか?
中村:最近の調子には後輩ができた事も大きいかもしれません。「ちゃんとしないと!」と思うようになりました。できない事をバレたらいけない。やったことない事も「やっちゃろ!」という感じになって。そしたら、意外とできる事もあったりして。後輩に見られていると思うとピシッとなります。
AKI:近くには勢いがある新人 川口裕司選手(飯塚34期:川口裕司選手)がいますがどのように感じていますか?
中村:優勝回数並ばれてるんですよ!ヤバイです!早く3回目の優勝を決めたいです!「俺が一歩リードだ!」と言いたいです!(笑)
AKI:先輩の意地を見せたいところですね!
中村:そうですね!今、流れは悪くないので頑張りたいです!
AKI:それでは最後に、オッズパーク会員の皆様にメッセージをお願いします。
中村:どんなレースでも一生懸命走りますが、木山優輝と同じレースの時は僕から買って下さい!あと、自分のレースよりも先に木山優輝が走って木山が1着の場合は僕も1着で買って下さい!!
AKI:すごいライバル心!!(笑)
中村:例えば、優輝が1着で僕が4着とかだと「俺1着!」とわざわざ言ってくるんです!(笑)ムカつくんですよ!!(笑)
AKI:生意気な年下同期って感じですね(笑)
中村:はい(笑)可愛いんですけどね(笑)なので、優輝と同じレースの時と優輝が1着を取った後のレースは特にメラメラしてます!優輝とは優勝回数も2回で同じ。先に3度目を取りたいです!今後も応援をよろしくお願いします!!!!
AKI:最後は同期へのライバル心が見れました(笑)そして、このインタビューの後のミッドナイト優勝戦で見事に優勝!地元初優勝を完全Vで決めました。3度目の優勝を飾って一歩リード!今後も中村杏亮選手の活躍に期待です!
福岡県宗像市出身のタレント。福岡でテレビ番組やイベントMCなどで活躍中。飯塚オート3代目「勝利の女神」。飯塚オートでは、AKIのAKIらめない予想やバスツアーなどを開催。川口オート、伊勢崎オート、浜松オート、山陽オートでもイベント出演中。