今シーズンばんえいリーディング4位(12月21日現在)、大躍進の阿部武臣(あべ たけとみ)騎手です。
今シーズン、上位で健闘されています。
夏頃、乗り替わりや癖のある馬で結果を出したのがあるかな。最近、ひと通り厩舎(義父の坂本東一調教師)の馬を調教するのに、春頃おおざっぱに1年間の計画を考えている。2歳の痩せている馬は秋になって体ができてからにするとか、体ができていない馬の調整とか。一緒に走る馬の能力を見極めなくてはいけないから、相手関係も全て確認する。今までもやってきたけれど、騎乗にばかり集中していたころよりは、違う目線で見られるようになった。そうやって馬を作っていかないと、自分の乗り馬が増えていかないし。自分がいい結果を出さないと、厩舎がだめだと言われてしまう。最初はプレッシャーもあったけど、馬にとっていいレースをするように考え、その中で結果を残す。ゆとりを持って乗らないと。
他の厩舎でも、ミスをおかさずにいかに1着を獲るか。そのためには普段から調教をつけるようにして、一番いい能力を発揮できるようにする。本番と練習の癖が全く違う馬もいるから、そのような癖も見極めて。
レースではどのようなことに気をつけていますか。
負けてもきれいなレースになるようにしたい。きれいな、というのは、膝を折ったり、障害で寝かせたり、大きく離されて負けないように。その馬のベストを尽くす。それがいい結果につながったのかもしれない。
あとは、自分が乗っていないのも含めて、レースを見ることだね。この騎手は、この馬に乗ったらこのようなレース運びをするんだ、この馬はこのような馬場の時はこういうレースをしているとか。自分が乗りそうな馬はもちろん、そうではない馬も頭に入れておく。
騎手は勝ってナンボの世界。1着を獲っていい成績を出さないと、騎乗依頼は来ない。最初からいい馬なんて回ってこないので、それをいかに結果を出していくか。勝てない馬でも数乗っていれば、馬主さんに、強い馬を乗せてやるか、と言われることもある。
馬に対してはいかがですか。
一番は健康管理かな。馬房からつなぎ場まで歩く音一つにしても、気を遣う。きつい調教をした後は、飼い葉の食べ方を見る。残していたらやり過ぎていたかな、とか。一番の調教を見極める。耐えられればえさも食べるけど、やり過ぎも良くないけど、レースでいい能力を出せるようにしたい。
阿部騎手といえば、個性的な馬に乗ることが多いように思います。
ホッカイヒカルとかね。どちらかというと、ハナ(スタート)遅い馬が多かったよね。だからそういう馬の騎乗依頼は来る。道中の行き方を考えて、スタートでは焦らなくなった。
思い出の馬を教えて下さい。
初めて重賞を勝ったキタノコクホー(2002年銀河賞)。強い馬たちがたくさんいた世代の中、小さな牝馬で頑張った。
そして、乗り馬が少ない時に活躍してくれたホッカイヒカル(2013年チャンピオンCなど重賞3勝、2015年3月に引退)。夏が弱いので、手間がかかった。餌を食べなくなる。でもオープンだから、重い荷物を引いて調教しなければならない。それでも怪我なく頑張ったよね。来年初仔が生まれるよ。
ホッカイヒカルの引退式。右が坂本東一調教師
レースで大事にしていることはありますか。
まっすぐ走らすこと。半歩でもいいからゲートを早く出ること。いかに、2障害まで負担かけないように行かせるか。そこで無理すると体に負担がかかって、障害で止まったり膝を折ったりする。
ゲートについては、ばん馬は立ち上がったりするのはそんなにはないけど、暴れていたらスタートは切られない。ばん馬には、脱糞(馬がゲート内で糞をするときは、騎手が手を上げてスタートを待たせる)で待つことがあるからね。
先日は、ゆるキャラのレースに出走しましたね。乗りにくくないですか?
ふなっしーね。ブシャブシャ言ってたよ(笑)。邪魔ではないよ。普段の調教は荷物の後ろに乗っているから同じ感覚。面白いよ。お客さんを見たり、楽しみながら乗れる。荷物も軽いから馬に負担はないし。ふなっしーパワーで、あんなに人来るんだね。
今後の期待馬について教えてください。
ホクショウマサルはダービー(2014年)を勝って、ハンデがきつい状態だからこれからだね。
2014年度最多勝(15勝)のカンシャノココロは、2歳のころから活躍はしていたけれど、若馬のレースだしスピードが足りなかった。4歳になってペースが落ち着くレースが増えてから良くなった。今シーズンは古馬と走りながら4勝しているからね。障害降りてから歩ける馬。シンザンボーイも同じく自在性に優れている。最近タナボタチャン(芦毛っぽい栗毛の牝馬)が人気だよね。
ファンに、ばんえいの見どころを教えて下さい。
障害かな......。馬場が重い時期なら、1障害と2障害の間の駆け引きやゴール前の接戦が面白いけれど、12月はまだペースが速いかもしれない。3月になればだいぶ重くなっている。白熱したレースを見られると思うよ。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
9月12日第11レースをコサカコブラ(牡8)で制し、通算2000勝を達成した尾ヶ瀬馨騎手(50)です。
通算2000勝おめでとうございます。表彰式のインタビューでは、「区切り」とおっしゃられていましたね。
2000という数字は競馬では一区切りになる。これを目標にしていた。
思い出に残る馬は。
やっぱりフクイズミ(2009、2010帯広記念など重賞12勝)だな。障害が難しかったから苦労した。ちょっと気を損なうと、障害を登らなくなるからものすごく気を遣った。ファンも多いしな。その分、勝つと嬉しかったんだ。レースだと2連覇した帯広記念。3連覇はできなかったけれど......。牝馬でBG1を勝つ馬っていうのはなかなかいないぞ。
フクイズミのパドック
ばんえい記念にも何度か騎乗されました。
2着、3着はあるがなかなか勝てなくてな。ダイニハクリュウ(2008年、タイムオーバーで失格)は、よく完走してくれた、たいした馬だ。どんなに強い馬でも、ばんえい記念では第2障害を越えられなくてソリを外すことがある。よく山を越えたよ。ゴールは難しいかな、と思ったけれど、最後までファンが応援してくれたから、頑張らなきゃ、って思ったよ。ばんえい記念は特別なレースだ。
今年はインフィニティー(牡9)で挑戦でしょうか。
そうだね。2000勝の次の目標はこの馬でばんえい記念だな。登坂力は競馬場の中で1番だと思う。障害を降りてからは、ほかの馬に切れ味で負けることはあるけれど、障害はうまいよ。弟のトレジャーハンター(牡8)にも乗ることがあるけれど、性格いいところが似ている。素直で反応がいい。2頭とも障害がうまいしな。
インフィニティーで2015年の北斗賞3着
2000勝の表彰式でも言われていましたが、怪我が少ないですね。
「生き物だから、何があるかわからない」って、調教師(父の尾ケ瀬富雄調教師)によく言われていたんだ。気を抜かないようにはしているね。
20歳で競馬場入り、27歳で騎手デビュー。初年度(1992年)は日本プロスポーツ大賞新人賞を受賞していますが、意外と遅いスタートです。
札幌の自宅には厩舎があって、開催がない冬には馬がやってきた。だから子どもの時から馬好きだった。親父はそりに乗ってセブンイレブン行ったりしていたんだぞ(笑)。父は跡を継いでほしかったみたいだけど、単身赴任が多いからってまわりに反対されていたんだ。高校卒業後社会人になったけど、やっぱり騎手になりたくて、20歳過ぎて競馬場に来た。最初のころは、もっと早くやっておけばよかった、って思ったよ。でも追い上げたいと自分なりに努力した。負けたらどこが悪いかビデオを見るなど研究した。ほかの厩舎をまわっていたら、たまにチャンスは来るんだ。それを絶対外さないようにする。そうすれば、この馬とはお前が合う、と乗せてくれることがあるから。それと、昔は中継がなかったから、馬主はみんな競馬場に来たんだ。その時挨拶してな。年間100勝を目標にやってきたよ。
その積み重ねなんですね。ではファンに一言。帯広の楽しみ方は何かありますか。
まずは温泉、やっぱり十勝川(温泉)だな。俺は温泉とゴルフが趣味なんだ。芽登温泉(足寄)やかんの温泉(鹿追)など、十勝管内は遠くの温泉も全て行った。 十勝は平均して食べ物おいしいよな。北の屋台には俺のファンが多いんだ。十勝産のものを多く出しているから、北の屋台や十勝乃長屋はお薦めだよ。これから冬にかけて大きなレースも増えてくる。レースはもちろんだけど、観光も楽しんでいってほしいな。
2011年ヒロインズカップを制したフクイズミ
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
今シーズンのばんえいリーディングは藤野俊一騎手(54)。2位の藤本匠騎手に10勝以上の差をつけ、59勝を挙げています(7月27日現在)。ばんえい記念は現役最多の5勝というベテランに話を伺いました。
ぶっちぎりのリーディングですね。
馬との巡り合わせだね。新馬にもいい馬が多い。2歳賞金1位のキタノリュウキをはじめ、ジェイナイト、リュウセイイチバンも強いな。馬に感謝だね。ただ、癖のある馬にも乗れるよう、努力はしてきたよ。途中で変な癖がついてしまっただけで、能力のある馬が多いんだ。調教でもレースでも、いじめないで、おだてて荷物を引っ張らせる。
3歳1冠目のばんえい大賞典を勝ったシリウスは、障害を降りてからの脚がいい。ニュータカラコマ(2011年イレネー記念、2013年岩見沢記念など重賞5勝)も、いろいろとハミを変えたりして大変だったんだよ。2歳の時も、一度障害であがらなくなった時があったんだ。復調してきたところでイレネー記念を勝った。力がついてきたね。行く気になった時の力の出し方がすごい。夏はバテやすいので今は馬主さんの牧場で休養している。BG1のばんえいグランプリも休ませるつもり。競馬場に来てから初めて外に出たから、なかなか馬運車乗らなかったな。
ばんえい大賞典(7月26日)を制したシリウス
ニュータカラコマは、北斗賞(4着)のパドックではちょっと小さく見えました。
そうか? 調子いい馬は大きく見える。自分乗らなくても、馬の大きさで調子の善し悪しはわかるよ。
あと、楽しみなのははニシキエーカン(2012年イレネー記念)ね。2歳から能力が高かった。一時期体調を崩したけれど、最近また良くなってきた。(ハンディを背負って)荷物にも耐えてきたからね。
キタノリュウキはいかがですか。
母親のヨシノサクラにも乗っていたんだ。なかなか1着獲れなくて、2着が多くてね。初仔がここまで活躍するとはびっくり。キタノリュウキはでかいし、力がある。若いから、そんなに期待をかけすぎないようにしていくよ。
能力検査でのキタノリュウキ
父のカネサテンリュウにも乗っていましたね。今年の2歳が初年度ですが、子どもが活躍していますね。
真面目な馬だったね。開腹手術をしたけどその後も走り続けた体の強さや、その分レースを使っていないということから人気がある。弟のカネサブラック(2011、2013年ばんえい記念など重賞21勝)の仔も楽しみになるよね。全体的に、若い時から活躍した馬の子は、活躍するように思う。
ニシキダイジン(2010、2012年ばんえい記念など重賞8勝)の仔は、まだ思ったより走っていないなぁ。牝馬の方が活躍しているよね。3世代しか遺せなかったのは寂しいよね。
最近、帯広競馬場に人が増えていますね。
見ている人は多いよね! でも、働いている人は若者が少ない。共進会に行っても、牛は若い人ばっかりなのに、馬は年寄りばかり。昔は騎手試験も30~40人近くが受けていたんだ。俺も厩務員生活長かったけど、自分の馬が勝ったらうれしいよ。厩務員生活7年、騎手として乗れるまで10年かかった。若い人が入って、活性化してほしいね。
競馬場のお薦めかい? そりゃ、入り口のジンギスカンコーナーでしょう。風向きによって、焼いているにおいがコースに流れてくるんだ(笑)。暑いから美味しいもの食べてほしい。帯広の夏は北海道の中でも暑いよね。湿度も高い。装鞍所は、岩見沢から持ってきた扇風機があるけれど、湿度が高いと汗をかいて馬も弱る。からっとしていればいいんだけど。俺の犬も動かないよ。
犬を飼っているんですか。
ポメラニアンのメスで、ライっていうんだ。めんこくてな、衝動買いよ。なのに、俺の所帰って来ないで、(同じ建物に住む)松本(秀克)騎手のところばっかり行くんだ(笑)。松本さん散歩連れてってやってるしな。
今後の目標を教えてください。
ばんえい記念、ニュータカラコマで......、勝ったら騎手やめる(笑)。
えーーっ!だめです!!
そのくらいの気持ちで乗るってことだよ。努力して、あそこまで育てた馬。ばんえい記念を勝つ能力もあるよ。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
昨年通算3000勝を達成し、NARグランプリ2014の特別賞を受賞。3月には、ばんえい競馬の大一番・ばんえい記念をキタノタイショウで制した大河原和雄騎手(55)です。
あらためて、ばんえい記念優勝おめでとうございます。1トンを曳きましたが、その後のタイショウの様子はいかがですか。
元気だよ。疲れもない。その後は荷物を積まずに、リフレッシュできるような調教をしています。
ばんえい記念を勝った時の気持ちをお聞かせください。
ほっとした。昨年は、アキレス腱を切ってレースに出られず服部先生をはじめとするスタッフの方々に迷惑をかけてしまった。ちょっとは借りを返せたのかな、という思いです。昨年はベッドの上で、すごい悔しかった。(弟弟子の)恵介(鈴木騎手)がゴールした後「兄貴、おめでとう。良かった」と言ってくれたことが、一番ほっとした。2月のNARグランプリ2014の表彰式でも、先生にばんえい記念獲らせるんだって宣言しちゃったからな(笑)。
(ばんえい記念は)朝の雪の影響で、水分含んでいるから昨年よりはちょっと速く、レースは3分半くらいだな、と思って進めた。自分のレースをするだけで、周りの動きは気にしませんでした。2障害はわりかし安心していたよ。馬と会話しながらね。レースについては、楽しかった、という気持ちだね。ゴール前は、(先行する)フジダイビクトリーより、ニュータカラコマの方が手応えがあった(から注意していた)。
ばんえい記念を制したキタノタイショウ
ばんえい記念はサカノタイソン(2001年)以来2回目ですね。
あの時は代打だったけど、この子(キタノタイショウ)は先生が見つけて、自分が若いうちから育ててきた馬だから、子どもの成長をみながらレースに向かっていくようでした。
キタノタイショウはどのような馬ですか。
ものすごく臆病。水たまりをよけたり、カメラのフラッシュに驚いたり。それだから、切れ味のあるレースができる。サラブレッドと同じで、逃げたがる性格を使ってレースをする。
それだけに、ばんえい記念だからといって、変わったことはしなかった。普段通りにやることに気をつけていた。人の緊張もビシビシと伝わる馬だから、人も平常心でいられるようにしなければいけない。スタッフがいつも馬に声をかけていました。ばんえい記念に向けた調教も、荷物は1000キロ以上は積んだけれどそれ以外は普段通り。ご飯食べているか、いい汗かいているか、体調面に気をつけました。
ばんえい記念後の記者会見。服部義幸調教師と
4月11日にはデビュー前の2歳馬を中心とする能力検査が行われました。大河原騎手は若馬が得意な印象があり、馬主からの信頼も厚いと思いますが、今年も21レース中、19レースに乗っていましたね。
雨が降って馬場が軽かったから、合格率が高く(95%)、厩舎サイドも生産者も、馬主にとってもよかったと思う。これからが大変かもしれないが、まずはレースに出る権利がなくちゃいけないから。今年産駒デビューの種牡馬には、自厩舎にいたハマナカキングがいる。切れ味があるね。カネサテンリュウの子どもも優秀かな。早熟タイプだと思うし、馬体が大きな馬が多い。
2歳馬の馴致で気をつけていることは。
気持ちを邪魔しないこと。相手の信号を把握する。会話できれば苦労しないけどね、触って、声がけして、コンタクトを取るようにしている。
2歳馬の能力検査
4月18日にリニューアルしたふれあい動物園には、騎乗していた服部厩舎のカツラアスリートが、新しく帯広市特別嘱託職員に任命され入厩しました。3連勝していたのでちょっともったいない気もします。
まだまだ上に行けたかな。でも、これからずっと大事にしてくれるのなら、と馬主さんも了承してくれた。あの子はリッキー以上に親しみやすいよ! 昔から人好きで、どこに行っても懐っこい。
動物園、きれいになったよね。一番良かったのは、子どもに触ってもらえるように馬房を作ったこと、服部調教師が、親しみやすい厩舎になるよう浦河などに行って調べてきた。馬は見て終わり、のところが多いけれど、馬に触らないことには意味がないから。たくさんの馬に触れていってほしい。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
3月22日に行われるばんえいの大一番、ばんえい記念。その次に負担重量が重く、重要なステップレースとして位置づけられている1月の帯広記念を制したのは、安部憲二騎手(47)騎乗のフクドリでした。
帯広記念は6番人気での勝利でした。
自分のレースができた。フクドリは、平ら(1障害と2障害の間)が強い馬。障害の悪さを克服できたのが大きい。すごく強いわけでも、真面目というわけでもない。ただ、うまくはまると爆発的な力を出す。天板に脚かかるくらいまで一気に上がれると能力を発揮できる。だから、そこまで上げるのが俺の仕事。手前で息入れられると、辛抱できて必勝パターンなんだ。レースの主導権を取れるかどうかだな。
障害で大事なのは「遊び腰」を使わないようにすること。馬は動いているけど、そりが動かないことがあるでしょう、それが遊び腰。あと、考える隙を与えるとサボることがある。大事なのは自分のペースで走れるかどうかだね。
3月1日のチャンピオンカップ(9着)は、あんな速い馬場ではなぁ。一番大事なのは、レースに対して前向きになるよう、気分よく走らせることだから。ばんえい記念に向けて後遺症残さないようにしなくてはいけない。
帯広記念を制したフクドリ
ばんえい記念は、昨年2着(西謙一騎手)でした。
以前は12月や2月に行われていたけど、最近は3月。もう季節が春だから、そんなに馬場は軽くならない。去年のことを考えると、2着とはいえゴール前止まったし、楽なレースではないな。とはいえ、ニシキダイジンが勝った2分半のレース(2012年)みたいに、軽すぎてもだめなんだ。
『この勢いなら行ける』と皆川先生は言うけど(笑)、そんなもんじゃない。されど100キロ。どんな展開になるかにもよるけど、障害まで、いい位置に(つけられるよう)持って行くことに徹底する。やっぱりあの馬のレースをすること! だいたい2週間前から準備を始めるよ。
乗り替わりの安部、という印象があります。
いつ俺にまわってきてもいいように準備はしている。この馬はこうなんだな、とわかるよう、若い時から心がけてた。競馬場で育ったわけではなく、田舎(宮城県栗原市)から出てきたしね。
誰か怪我して突然乗り換わったとき「どう乗ればいいんですか」なんて聞くのはだめ。いつ何があっても、それに対応できるようにしてきた。「馬を知る」ということだね。レースしながら、またはレースビデオを見たりの積み重ね。だいたい今走っている馬は分かっているかな。若馬だとわからないのもいるけどね。日々勉強している。この馬はどう乗ったらいいのか考えているよ。自分が乗らなくても、敵になるわけだから。展開を知るというのは、相手を知ること。絶えず見ることから始まって、今も続いている。
癖のある馬でも、俺に求められているのなら乗るし。そういうの嫌いじゃないんだよね。たとえば、真っすぐ走らなかったりぐるぐる回ったりする馬。シンエイキンカイ(2004年旭王冠賞など重賞3勝)がそうだった。逃げる力がすごいんだ。まっすぐになったら強い、というのは分かっていたから。「おまえやってみるか」って言われて調教からやって、5連勝した。そういう馬で、結果出すと自分の馬になるから、面白い。
フクドリは、見てはいたけどレースで乗るのは岩見沢記念(2014年9月)が初めてだった。乗り替わったら、一発なんとかしてやろうと思うじゃないですか。5着だったけどね。時計が落ち着くと、結果の出せる馬だな、と思っていた。この馬はこうかな?と思って乗ったら、ぴったり合うことがあるんだ。(その後の調子の良さは)相性が合った、というのもある。
若い馬よりは、古馬に強いように思います。
年いくと、若馬のレースは忙しい(時計が速い)から疲れる(笑)。それと、帯広は、いちかばちかが決まることがほかの3場(2006年度まで開催していた岩見沢、北見、旭川)より多いのよ。駆け引きをする、時計のかかる古馬の方が得意かな。
15歳馬コトブキライアン(1月3日・2着)
レース中の作戦は、途中で変えたりするものですか?
馬の反応が良かったら行って、悪ければ止める。若い騎手に『何回止めますか』なんてくだらない質問を受けるけどそうじゃない。俺らの仕事は瞬間芸。200メートルで、誰にも聞くことなくやること。経験がモノを言うんだ。
今年の目標を教えてください。
昨年は、若い騎手が台頭してきたけど、自分では、要のレースを納得できたからいい方かな。もう足の怪我は大丈夫。
今年は年男。ジンギスカン(羊)年。特別力入るわけじゃないけどね。特に変わったことはない。1日1日乗せられた馬を一生懸命やる。今日より明日、明日よりあさって。年明けからいいこと(帯広記念制覇)があったので、これからもいいことあるように。
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香