デビュー29年目を迎え、7月28日現在、通算2935勝のばんえいトップジョッキー、大河原和雄騎手。関係者やファンから高い評価を受けており、今年はキタノタイショウとのコンビで注目が集まります。
斎藤:出身は道東の別海町ですね。
大河原:実家は牧場で、中学生のころから家の馬でばん馬大会に出ていた。サラブレッドの騎手になりたかったけれど、体が大きくなったからばん馬にしました。今は、双子の兄が牧場を継いでいます。21歳で競馬場に入って、騎手になったのは25歳。当時でも遅めだったね。最初は晴披(はれまき)孝治厩舎に入って、久田(守、現調教師)がその時の先輩になる。
斎藤:キタノタイショウで今シーズン重賞2勝。どのような馬ですか。
大河原:臆病。何にでも驚くよ、水たまり、物音、カメラのフラッシュ。馬には、見て驚くのと音に驚くのと2種類いる。カネサブラックは物音に驚くタイプだったけど、タイショウは見て驚く方だな。臆病な馬の方が最終的に強くなる。サラブレッドでもそうだけど、逃げたがる性格を使ってレースをする。このくらいなら大丈夫だ、と。
タイショウは1歳の時から見ていたけれど、「違うな」というオーラがその時からあったよ。競馬場に入ってからは、俺が調教をつけていた。体壊したりしてテスト(能力検査)は良くなかった。それから体調を整えたからデビューは7月だったんだ。
北斗賞(7月14日、5着)は夏バテ気味だったのもあるかな、20キロ(差)は問題ない。今後はグランプリだね。
キタノタイショウ(2011年1月3日、天馬賞優勝時)
斎藤:騎乗停止中の1回を除いて、全て大河原さんが騎乗していますね。
大河原:ずっと乗せてもらえるのってばんえいでは珍しいから。(服部義幸)先生のおかげだ。服部さんは、気持ちを伸ばしてくれる先生だね。騎手でも、馬でも。我慢強いんだ。
斎藤:来年3月のばんえい記念については。
大河原:今年3着だから、それ以上は獲らないと。今年はばんえい記念の調教に時間がちょっと足りなかった。強い調教をしては休ませて、を繰り返すから。1カ月くらいはかかるんだ。時間があれば、もっと行けたと自分では思っている。
斎藤:数々の名馬に乗られていますが、一番思い出に残る馬は。
大河原:一番強いのはリキミドリだ。タイショウやカネサブラックにも乗ったけど、感度が違う。いい筋肉をしているし、センスの塊だった。イレネー記念を勝った時は、ゴール前手綱を持ったままだったんだよ。朝から「寿司取っとけ」って言ってたくらいだもの(笑)。残念ながら疝痛で、7歳の時に死んじゃったけどな。服部厩舎に入ったときに、ちょうどリキミドリが2歳だったんだ。リキミドリのオーナーは、タイショウと同じ木下英三さんなんだよ。
斎藤:明け3歳のイレネー記念を6勝し、能力検査でもほぼ毎年全てのレースに騎乗するなど、若馬での活躍も目立ちます。気をつけていることはありますか。
大河原:リラックスさせることかな。体を固くしては、能力が出せないからね。
斎藤:若い騎手に言いたいことはありますか。
大河原:あるとしたら、もう少し体をケアしろ、ってことだな。騎手として動きやすい体にしておけって。俺は年だから、トレーニングというよりは体をほぐしているよ。
斎藤:大河原騎手は、ゴール前ムチを入れずに馬を進ませている印象があります。
大河原:声をかけたほうがムチより効くんだ。叩くより、ハミをあてて「おら!」っていった方が行く。逆に、燃料なくなってアクセル踏んだって動かないでしょう。それと同じこともある。レースで大事にしているのは、馬が嫌がることはしない、ということ。
斎藤:ばんえいの魅力は。
大河原:子どもの目線でレースを観戦できるってことだね。子どもの足でもついていける。
斎藤:今後の目標を教えてください。
大河原:まずは目の前の3000勝です。
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インタビュー・写真 / 斎藤友香
ばんえい競馬は平地競馬に比べて騎手の技量が結果につながる割合が高いという面がある。となると、頼りになるのは経験豊かなベテランジョッキー。そのひとりである安部憲二騎手は、騎手会副会長としてばんえい競馬を盛り上げる役割も担っている。
安部騎手は2012 年12 月2日にフジテレビ/関西テレビ系列で放映された『ほこ×たて』で、ばんえい競馬の威信をかけて「絶対に滑らない最強のゴムシート」と戦った。
対戦の話があって、出す馬はテンマデトドケ(服部義幸厩舎)に決まったんですが、その主戦騎手の長澤(幸太)くんが「テレビだと緊張してしまう」と言い出して、それで関係者全体で話し合った結果、僕が手綱を取ることになったんです。全国放送ですから、なんとしてもアピールしなきゃと思ったので、どんなパフォーマンスができるかという問い合わせには、いろいろ提案しましたよ。そのひとつが綱引き。相撲部やら柔道部やらアメフト部の人が来て対戦しました。放送上ではテンマデトドケが圧勝していますが、じつは1回負けているんです。馬って、体が前に進むようにできているから、ふっと力を抜いたときに後ろに引っ張られると対応できないんです。
そういった経緯がありつつも収録は進み、本番の勝負では快勝となった。
ソリが軽すぎるとゴムシートに乗せたその前部が浮き上がってしまうので、荷物と合わせた総重量は800kgに設定しました。それでもまあ勝てるかな、とは思っていましたけどね(笑)。ばん馬のすごさを宣伝することができてよかったです。
テレビ収録が初のコンビながら好結果。ばんえい競馬では平地以上に人と馬とが呼吸を合わせることが重要だ。
いちばんの基本はまっすぐ進ませること。次の基本は負荷をかけるメリハリですね。叩く、すかす、しゃくる。第2障害を降りてからの5m、10 mの間に、その3つのうち、その日のその馬はどれがいちばん反応がいいのか判断するんです。「すかす」は手綱をゆるめる動作。「しゃくる」は、荷物を曳いているとだんだん頭が下がってきますから、その頭を起こす動作ですね。馬は気持ちで頑張りますから、それを感じてやらないと。あとはハミ。ハンドルにもアクセルにもブレーキにもなりますから、正しいハミ遣いができるかどうかで、100の能力が20にも120にもなるんです。
北見記念ではギンガリュウセイを連覇に導いた
写真●ばんえい十勝
ばんえい競馬において、そういった技術を習得するには、たくさんの経験が必要だ。
ばんえい競馬は親類関係などの絆がとても深いんですが、僕はそれを持っていませんでした。それもあって、減量がなくなってから2年くらいは、厩務員として担当している馬でレースに出るのが大半。だから何かきっかけを作ろうと考えましたよ。それで行き着いたのが、人前に多く出るということ。用もないのに調教コースに行って、いろいろな人と話しました。そういったなかで、だんだん結果が出てきたように思います。あと、ばんえい競馬はその馬のことを知っていないと、というところがあります。だから絶えずレースVTRを見て、現役馬を全て覚えました。今でも調教中に見える馬とか、その名前などがわかりますよ。
手綱を取る役目がいつ来てもいいように準備する。それが「テン乗りの安部」という異名につながっているのかもしれない。
勘はよく当たるほうかな、とは思っていますけれどね。でもそれも必要なことで、第2障害を越えさせるための技術は、瞬間芸のようなものだと思っているんです。能力的に抜けているわけではない馬を、ロスなく上げさせるためにはどうすればいいのか。第2障害に挑むとき、馬は前傾姿勢になりますから、ヒザをつく可能性が高くなるんですよね。そうなる手前のギリギリのところで手綱を一気に引っ張って体を起こすんです。そのタイミングの見極めが、瞬間芸という意味ですね。自分としては、第2障害に自信を持っているんですよ。
宮城県北部出身の安部騎手が北海道に来てから30 年が経った。そのなかで、調教方法も少しずつ変わってきているらしい。
馬の背中に乗って運動させることが減りましたね。以前は朝にソリを曳いて、夕方は乗り運動でした。競馬場の平地コースで競走したこともありますよ。でも乗り運動は、馬を御す上で重要なことだと思うんですよ。要は人間も馬も慣れなんですが、人が乗らない、だから馬も慣れないという流れになってしまっている気がしますね。
何しろ相手は強大なパワーの持ち主。信頼関係を築かないと人間が危ない。
去年(2012年)の夏、馬に蹴られてしまいました。そのときは馬場入場時にトラブルがあって、それでもスタート地点に着けたことで気が緩んだんでしょうね。いつも通り、ソリの横でレース前の準備をしていたその場所が、普段よりすごく前。そうしたらいきなり後ろ脚が飛んできたんです。瞬間的に防御の構えをとりましたが、左手の指が裂傷、右手の甲の軟骨が変形してしまいました。
人と馬が寝食をともにしてきたばんえい競馬。そこで安部騎手が重ねてきた勝利は1100を超えた。2012 年はギンガリュウセイとのコンビで重賞を2つ勝利している。
帯広記念(2013 年1月2日)は2着でしたが(優勝馬カネサブラック)、あれは悔いが残りました。直前に出走を回避するかもという話を聞いていたので、第2障害で馬に無理をさせていいのか葛藤があったんです。でも馬の様子を確認すると大丈夫そう。それで仕掛けたら、ふた腰で越えてくれました。でも、僕のその気持ちのロスがなかったら、勝てたかもしれないんですよね。だからこんどは大きいレースで、強い馬を負かしたいと思っているんです。
「考える時間は長いけれど、判断は一瞬。そして少しのロスの積み重ねが大きな差になってしまう」という難しさがばんえい競馬にはある。馬は大柄でダイナミックだが、サラブレッドと同様に繊細で敏感なのも特徴だそうだ。だから騎手にもそういった感性が求められるとのこと。力任せに進めばいい、というわけではないのは平地競馬と同じ。スタートからゴールまでの間に機微が詰まっている、世界で唯一の奥深い競馬である。
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取材・文●浅野靖典
安部憲二 (ばんえい)
あべ けんじ
1967年5月3日生まれ おうし座 B型
宮城県出身 岩本利春厩舎
初騎乗/1993年4月17日
通算成績/11,791戦1,125勝
重賞勝ち鞍/北見記念(2回)、旭王冠賞、ばん
えいグランプリ、ばんえいダービー、ばんえい
オークス、ばんえい菊花賞、ばんえい大賞典、
イレネー記念、チャンピオンカップなど22勝
服色/胴白・緑一本輪、そで白緑縦じま
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※2013年2月28日現在
(オッズパーククラブ Vol.29 (2013年4月~6月)より転載)
真面目で、馬を大切にすると関係者からも信頼が厚い船山蔵人(くらんど)騎手。デビュー7年目を迎えました。
船山:出身は道東の浜中町です。幸太(長澤騎手)も近くに住んでいて、昔から知っていました。
父が馬を飼っていたことや、周りに馬や牛が多かったので、動物、特に大動物の仕事をしたいと思っていました。獣医になりたかったんです。父も馬が好きで、2人で道東の馬を見て歩いていた時に知り合った人に、ばんえいで働いてみないかと誘われました。父は自分が騎手になってから馬主になったんです。
斎藤:初勝利もお父様の馬、コトノカツマでしたね。
船山:今は種馬になりました。初年度が1歳ですが、いい馬が出ているみたいで、種馬としても活躍していますよ。
斎藤:昨年、ヒロインズカップで初重賞制覇したエンジュオウカン(牝12)について教えてください。
船山:自分が競馬場に来た年に、エンジュオウカンもデビューしました。1歳の時から草ばん馬で活躍していたので、名前は知っていたんです。ヒロインズカップは馬が自分でレースをしたので自分は乗っているだけ。騎乗前には、(以前乗っていた、同厩舎で元騎手の鈴木)勝堤さんに話を聞きました。ヒロインズカップ後、久田調教師に「ばんえい記念も乗れ」と言われ、その時は「無事ゴールできるかな......」と。ただ、コロナウイルスにかかって、取り消すことになってしまいました。ばんえい記念は一番上のレースですから、憧れです。うちの鈴木邦哉厩舎は、先生もだし、その兄の勝堤さんも2着までしか取れなくて。
斎藤:背が高くて、手足も長いですよね。2年目の舘澤騎手が、似た体形の船山さんにアドバイスを伺っていると聞きました。
船山:183センチです。有利なように思われますが、足場が狭くて乗りにくく、不利なところもある。
舘澤とは普段仲もいいんです。経験ないところ、センスないところが僕とそっくりじゃないですか(笑)。あいつはビュッフェとかおしゃれなところが好きなので、ランチに連れていかれます(笑)。
同期のケン(西謙一騎手)も仲がいいです。センスもいいし、今は若手のリーダー的存在になっています。上位騎手ともつきあいながら、自分の持ち馬を若手に乗せたりしています。
目標はやはり、鈴木恵介騎手です。兄弟子の村上章騎手は、みんながいやがる2歳馬の馴致や厩務作業も張り切っていて、1人でもやっています。そのようなところが目標ですね。
斎藤:ばんえいでは、左利きが有利と言う人もいます。今は、大口騎手と2人ですね。
船山:馬が進むのは叩くだけではなく、レース展開も重要だから、左というのがすごく有利かというと......ただ、ソリの立ち位置やハミの当て方も右と左では違うので、その点も違ってきます。
調教では、あまり叩くと馬の寿命が縮むという勝堤さんの教えがあるので、あまり叩かずにトレーニングをしています。ここぞ、というときだけ。
斎藤:レースで大事にしていることはなんでしょうか。
船山:馬との関係です。初騎乗の馬は運動を良く見るようにして、引っ張る格好やウイークポイントをチェックします。
斎藤:普段の生活を教えてください。
船山:調教は4時半頃から午前中いっぱいまで。今はデビュー前の馴致もあり、先日は旭川まで行って来ました。レースがない時は、午後も厩務員作業があります。今は、オイドン(牡5、ばんえいダービー、天馬賞など重賞5勝)と妹のハイカラサン、父が持つキタノリョウマとアキシノブを担当しています。
馬は驚くと普通は横や後ろを向くけど、オイドンは、前に飛ぶ(走る)んです。それでも大人になりました。年齢もありますし、荷物張るようになったので......。若い時は、体ができていないので無理させず、成長させるために調教の荷物も小さくします。今は体ができたので、レースもですが、運動も荷物を重くするんです。
ハイカラサンは気性が似ています。いつでも走ってるし、性格はキツい。ちゃかちゃかしてるから、危ないです(笑)。
馬との関係は、友達や兄弟のような感覚ですね。めんこがり、怒るときは怒る。オイドンは、タイプでいうと兄かな......意外と、構ってくれないんですよ。ハイカラサンは妹ですね。手を焼きます......。
斎藤:オイドンに乗りたいんじゃないですか。
船山:オイドンはトップホースすぎて、今の僕ではまだ無理です。
斎藤:そういえば、安藤勝己さんが騎手を引退しましたが、JRAジョッキーデーで話はしましたか?
船山:あまり話はしなかったのですが、安藤さんならばんえいの騎手になってもかなり乗れるんじゃないですか。地方から中央に行ったくらいだし、感覚がよさそうです。来られたら乗り馬が減るから困ります(笑)
斎藤:最後に目標を教えてください。
船山:今の目標は、自分というよりは、オイドンを一番の馬にすることです。これからもっと活躍しますよ。自厩舎の成績がいいことで、自分も含めて厩舎全体が盛り上がっていくような流れを作りたいです。
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インタビュー・写真 / 斎藤友香
最近若手騎手の活躍がみられるばんえい競馬の中でも、今年度重賞初制覇と通算100勝を達成。その先陣を切るのが2009年デビューの菊池一樹騎手です。今シーズン39勝を挙げてリーディング15位(1月6日現在)。デビュー5年目の心境をお聞きしました。
斎藤:乗り方で変化したと思うところはありますか。
菊池:差し馬でも、落ち着いた騎乗ができるようになりました。今は、逃げ馬と差し馬では、差す方が好きです。逃げ馬は、逃げる競馬をしなければならないぶん、2着や3着になりやすいですが、差す馬だと勝つか負けるかだから、その分勝ちやすい。
2年目に転厩した田上厩舎の馬も、動かせるようになったと感じるのは今年の春くらいからです。イーグルという馬は、障害で息を入れるタイミングが少しでもずれると上がらないんです。そのような性格だから今年13歳でも元気なんでしょう(笑)。息が入るペースがわかってきたので、後ろからでも行ける自信はつきましたね。
斎藤:昨年4月、サカノテツワンで100勝を達成しました。それから年度内10勝して減量がなくなりましたが、その後苦労した感じは受けませんでした。
菊池:減量なくなったから(騎乗が減って)乗れないべな、と思っていたけれど、乗せてもらえたからです。それから成績が上がりました。
斎藤:同期には日本プロスポーツ大賞新人賞を受賞した長澤幸太騎手がいますが、意識はしていますか。
菊池:1年目からあきらめました(笑)。同期だからと気にはしていないです。
斎藤:初重賞制覇は、10月ナナカマド賞(2歳)のショウチシマシタで、1位入線馬の降着による制覇でした。
菊池:ショウチシマシタは真面目な馬です。ゴール後は、先輩方も集まって話をしているし、これで(重賞を)獲っちゃうのか、インタビューでどのような質問をされるのかな、という気持ちはありました。でも、獲ったら獲ったでいいかなと。
斎藤:笑顔のインタビューだったので、ファンも見ていて気持ちよかったですよ。また、12月30日の2歳重賞、ヤングチャンピオンシップは2着(アグリナデシコ、7番人気)で惜しかったですね。
菊池:勝った馬が強かったです。アグリナデシコと姉のアグリローズは似ていて、2頭ともものすごく真面目。ハミをぐっと、持っていってくれるんです。牝馬は真面目な馬が多いですね。ただ、ナデシコは変なクセがあって。障害を降りたらおしっこをするんです。牝馬では、気合いを入れるとびっくりして、おしっこをする馬がたまにいるんですが、ヤングチャンピオンシップの時もびしゃびしゃでした。
斎藤:ばんえいの騎手は、ほぼ真下にいるようなものですから大変ですね。この時もですが、穴をあける騎手という印象があります。
菊池:人気がないのは乗りやすいです。印がついていたら、ある程度前に行って競馬をしなくてはいけないですが、じっくり構えられる。ばんえいは5重勝や、最近7重勝もスタート(オッズパークLOTO)しましたから、人気薄で勝てるといいですね。
斎藤:もともと、平地競馬のファンだったんですよね。
菊池:はい、テイエムオペラオーが勝った有馬記念(2000年)を見た中学生の時にのめり込みました。出身は岩手ですが、馬の仕事をしたいと高校時代、求人で見つけてばんえいの世界に入ったんです。騎手という点では、平地では難しいのでばんえいでよかったと思いますね。いろいろと経験させてもらっています。
今でもJRAは見ますよ。オルフェーヴルのダービーや阪神大賞典はおもしろかったですね。ゴールドシップは強いです。JRAジョッキーデーで、JRAの騎手に会うこともありますが、藤田(伸二)さんは男らしくてかっこいいですね。いろいろとお世話になっています。
斎藤:今後の目標を聞かせてください。
菊池:(繰り上がりでなく)1位入線で重賞を獲りたいです。
斎藤:そうですよね。期待している馬はいますか。明け3歳馬はいろいろな馬に騎乗していますね。
菊池:自厩舎のマツリダワッショイで大きいレースに出られればいいなと思います。多分、今3歳で一番大きい(1月4日現在1065キロ)んですよ。力はあるから、重いレースで有利だと思います。古馬では、メンコイワタシの調子がいいですね。重賞は、ゴールドシップの小林オーナーが寄付していただいた、特別報奨金の出るレースを獲りたいです。(報奨金は)ものすごく励みになっています。
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香
今年1月、ばんえい競馬でデビューした舘澤直央(たてさわなおひさ)騎手。9月24日現在9勝だが、一つ一つの乗り鞍を大事にし、連対率は2割3分で人気よりも高い着順に持ってくることも多い。好青年ぶりが関係者からの信頼を集めている。
斎藤:盛岡市出身で、子どもの頃から馬とふれあっていたそうですね。
舘澤:近くにポニーやアラブがいて、小学校低学年の頃からよく遊びに行ってました。馬の世話をしていたおじいちゃんやおばあちゃんが、世話を手伝うと馬に乗せてくれるんです。地元の資料館は曲がり家だし、周りにも馬つながりの人が多く、馬力大会につれていってくれた人が金田調教師の親戚だったことから、ばんえい競馬のことを知りました。
中学卒業後はすぐに競馬場に行きたかったのですが、親に高校は出ろと言われたので水沢農業高校に行って乗馬部に入りました。
大井の千田洋騎手は同級生です。千田はうまかったですが、自分はたいしたことなくて。馬場も部室も、水沢競馬場にあるんです。
斎藤:サラブレッドの騎手になることは考えなかったのですか。背は高いですが。
舘澤:大きな馬やポニーの方が身近なので。身長は今183センチあります。高校2年の時に、ばんえいの存廃の話が出ました。金田調教師から資格を取っておいたほうがいいと言われたことと、農業や畜産に興味もあったので、卒業後は農業大学校に行って、人工授精の資格を取りました。
それから金田厩舎に入りました。騎手になりたいという気持ちもありましたが、それよりまず厩務員としての仕事を覚えたかった。先生が受けさせてくれたので次の年に受験したら、1回目で通って。自分でいいのかな、と思いましたが、やりながら覚えていこうと。先生は、他の厩舎のレースも見ていてくれるんです。
斎藤:研究熱心だそうで、ある騎手のところに1人でお酒を持って訪れ、サシで飲んだと聞きました。
舘澤:はい、先輩たちは優しく教えてくれるので、感謝しています。騎手全員が憧れです。ハミの当て方、体の使い方、すごいです。はじめはレースのたびに毎回緊張していました。以前より緊張はしなくなりましたが、まだまだです。
斎藤:勝負服の由来を教えてください。
舘澤:地元にいた時に、いつも世話をしていたトモエリージェント(1991年根岸Sなど)の、現役時代の勝負服を参考にしました。オーナーには今でもお世話になっていて、厩舎にはワンダーボーイを入れてくれているんです。
斎藤:ワンダーボーイでは最近上位入着と、結果を出していますね。
舘澤:調教師や周りの人たちのお陰です。僕は乗せてもらっているだけ。荷物に慣れてきたし、最近、担当馬になりました。それから折り合いがつくようになった気がします。今はワンターボーイを含めて担当馬は5頭。馬の世話をする時間が多いですね。
斎藤:初勝利は2月13日1Rのマサムネワールドでした。
舘澤:勝てる馬に乗せてもらったからです。中島調教師は、新人の自分に声をかけてくれたんです。ありがたいです。それと前日、それまで騎乗していた蔵人さん(船山騎手)がビデオを見ながらいろいろと教えてくれました。蔵人さんは、同じく背が高いので普段から声をかけてくれるんです。よく双子とか兄弟って言われます。背が高いと、バランスを取りづらいんです。松田さんや浅田さんも背が高いので、重心を低くできるよう参考にしています。浅田さんは厩舎の先輩なので、いろいろと教えてもらっています。
斎藤:最後に一言、お願いします。
舘澤:騎手になれたのも、調教師や周りの人たちに協力してもらったから。自分1人では受からなかった。応援してくれた人に、感謝の気持ちです。まずは最低限の基本をしっかり固めたいです。ばんえい競馬は人馬一体になって坂を登る迫力がすごいですよね。多くの人にこの競馬を見てほしいです。
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※インタビュー / 斎藤友香