8月、西武園競輪場で行われた『オールスター競輪(GI)』のアルテミス賞レースで優勝した石井寛子選手(東京104期)にレースの振り返りと、今後の目標、そして連続でのオッズパーク杯ガールズグランプリへ出場に向けた今後の意気込みをお伺いしました。
山口みのり:アルテミス賞レースの優勝おめでとうございます。
石井寛子選手:ありがとうございます。
山口:レースへ臨む気持ちはいかがでしたか?
石井:西武園競輪場は高校生から使わせてもらっているバンクなので、ひときわ思い入れのあるバンクでした。アルテミス賞レースはファンの方から投票してもらって出られるので、今年も走れるということをとても感謝しながら走りたいレースですし、勝って恩返しがしたいと思っていました。
山口:レースを振り返っていただきます。道中は奥井迪選手(東京106期)の後ろからでしたね。
石井:その位置になるのは想像できていなかったです。スタートでけん制が入り、奥井さんが上がってきて「まさかの奥井さんがS?」とびっくりしました。どうしようか迷っていたんですが、動きのない中で奥井さんがグイグイ踏みあがっていったので、もう私はついていくだけでした。その後は後ろを見ながら、仕掛けどころを迷っていたんです。
山口:そうだったんですね。確かにレースを見るとかなり後ろを見ていますね。
石井:はい。今年、私が負けたレースというのはいずれも「後ろを見るのを忘れた」というのが敗因でした。だから何度か見て、様子を確認していたんです。そうしたら黄色の車番の石井貴子さん(千葉106期)が見えました。そこで被ったりしたくないな、と思いバックストレッチから踏みました。
山口:石井貴子選手の上を梅川風子選手(東京112期)が捲ってきていましたね。
石井:梅川さんには気づいていませんでした。3コーナーで、奥井さん、私、もう一人外にいるなと思ったんですが誰かはわからなかったんです。でもそこからは自分を信じて怯まないように、懸命に踏みました。
山口:追走から捲りにいくのは大変だとお聞きします。後ろからのスピードに負けず踏み勝ったのは強いと思いました。
石井:普段の練習でしてきたことを出したら勝てるから、と言い聞かせながら必死で走っていました。
山口:見事優勝で、ファンの皆様に恩返しができたんですね。
石井:はい、嬉しいです。
山口:次のGIは松戸『オールガールズクラシック(GI)』です。7月には松戸を走って優勝をしていますが、良いイメージで臨めそうですか?
石井:GIの前に走れたのはとても大きいなと思っていました。また練習もたまに松戸でさせてもらっています。松戸は苦手だったんですが、それがちょっとだけなくなったかなと思います。でも前回7月の松戸も初日は2着だったりと勝ち切れていないので、苦手意識はあります。
山口:連続優勝という結果を出しても、苦手意識はあるんですね。
石井:前橋もそうなんですが、なかなかすっきり勝てないので33バンクは苦手意識があるかなと思います。7月の時も、人をあてにせずに自分でやらないとだめだなと思った記憶があります。
山口:今年はGIが新設され6月には『パールカップ(GI)』がありました。(7・6・1)という3日間は振り返っていかがでした?
石井:初めてのGIだしコンディションも整えて、前検日はかなり気合を入れて行ったんですが、体調が悪くなってしまいました。「なんで今日?」とショックで、様子を見ていたんですが、初日の朝には治っていたので走ったら7着、6着と大きい着を取ってしまいました。最終日は何とかしないとと色んなことをして、何とか1着でしたが、正直どうやって1着が取れたかはわからないです。
山口:大変な開催だったんですね。
石井:はい。GIで少しでも体調を崩したら全く戦えないというのがわかりました。
山口:でもその後は完全優勝もあり、7月函館の『ガールズケイリンフェスティバル』では連勝で決勝でしたね。
石井:はい。それくらい自分の中では仕上げて『パールカップ(GI)』にも参加したんですけどね。フェスティバルで仕上がっているのは証明できたのかなと思います。
山口:では『パールカップ(GI)』の大きい着も、次へ向けて頑張ろうと気持ちの切り替えはできましたか?
石井:はい、もちろんです。そこが悪かったので、自分で「次取らないとだめだ」と課して追い込みまくりました。もちろんガールズケイリンフェスティバルも優勝したかったんですが、決勝は体が動かなかったです。
山口:皆さんが最終ホームストレッチで仕掛け合いになりましたね。
石井:そうですね、その仕掛け合いの時に全く動けなかったです。前に吉川美穂さん(和歌山120期)がいて、抜きたかったんですがだめでしたね。脚にきていました。
山口:今年GIが新設されたことで、1年間の流れも変わったのかなと思いますが、石井選手はどう感じますか?
石井:私個人の意見としては、GIは必要がなかったです。今までの形で連続してガールズグランプリに出場できていたので、1年の流れが変わる方が嫌だなと思っています。 ただ、【ガールズケイリン】という大きいくくりで見た場合は、GIの新設は良かったと思います。「今まで見たことがなかったけど、GIだから見てみようかな」というお客さんもいるかもしれないし、今後の発展には繋がる。そして賞金が上がるのも、プロスポーツとしてとても良いですよね。ただ、私は変わって欲しくなかったな(笑)難しいですね。
山口:今年のGIはあと2つです。意気込みはいかがですか?
石井:体調も万全ではない開催もあるかもしれないし、GIはみんなが優勝を目指す大会になります。今の私はGIよりも普段のレースを大切にしたいと思っていて、日々の積み重ねが重要と考えます。そこも今、勝ち切れていない時もあるんですけどね。気を引き締めて臨みたいです。実は・・・。
山口:はい。
石井:今、腰を痛めているんです。9月の頭くらいからなんですが、そういう不安もあって自分で「何やってるんだ私」という気持ちですね。
山口:そうでしたか。松戸まではまだ一走、斡旋が入っていますね。
石井:はい。正規斡旋だし走りたい気持ちがあります。いろんな方に「欠場してGIに備えたら?」と言われます。でもさっきも言いましたが、私は普段の開催が大切だと思っているので、欠場は考えていないです。
山口:石井選手らしいです。
石井:それは良かったです。
山口:でもその普段の開催の積み重ねもあり、賞金ランキングは3位(9月17日現在)です。この位置はどう見ていますか?
石井:本数にもよると思うので、また抜かれたりすると思います。でも一つも欠場ができない状況ですね。最後のGI、11月の『競輪祭女子王座戦(GI)』の前にこの位置にはいたいです。なので松戸もすごく大切になってきます。
山口:『オールガールズクラシック(GI)』は予選→準決勝へは2着までと3着は4人という厳しい勝ち上がりですが、それについてはいかがですか?
石井:そうですね。松戸を苦手と思わずに頑張るしかないです。あとは腰がどうなっているかですね。ガールズケイリンフェスティバルくらい動けると良いですけどね。今年は厄年の最後の年だから、いろんな不安があるんですよね(笑)
山口:ああ!(笑)でも30代の女性はほとんど厄年ですもんね。
石井:そうなんですよ。ずっとだから、何とか耐え抜いていきます。
山口:頑張ってください!先ほど少し話には出ましたが、連続してのガールズグランプリ出場というのは、もう意識はしていますか?
石井:確実に出たいです!今年は立川競輪場で行われるので、地元ですしお客さんにたくさん来てもらって応援をいただきたいです。またきっとテレビ中継もすると思うので、それをモチベーションにして頑張ります。
山口:どのようにして松戸までは過ごしますか?
石井:1日も休まず練習はしっかりしています。松戸もなんですが、その後には鹿児島国体にも出るんです。プロのガールズ選手が出られる大会が今年で最後なんです。鹿児島は行ったことがないので絶対出たいと思っていて、その練習もしています。 腰の不安もあるんですが、自転車に乗っている時は痛くないので練習はできるんですよね。
山口:そうなんですね。
石井:はい。なので練習はハードですね。ケアも、しっかりします。
山口:ありがとうございます。それでは最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
石井:長年やっていると体調を崩したり、怪我をしたりと、今年は厳しい戦いです。調子の波もあるので、皆さんにはとても迷惑をかけていると思うのですが、何としても立川のグランプリには出たいと思っています。今後も気を抜かずに頑張るので、熱い応援をどうぞよろしくお願いします!
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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2年連続でオッズパーク杯ガールズグランプリに出場し、先日で200勝を達成した尾方真生選手(福岡118期)。近況の振り返りや、ビッグレースに対する気持ちを伺いました。
山口みのり:まずは高知での200勝達成おめでとうございました。
尾方真生選手:ありがとうございました。
山口:意識はしていましたか?
尾方:今年の目標の一つでしたが、走っている時は意識していなくて、お客さんに言われて気づきました。
山口:そうだったんですね。200勝達成を振り返っていかがですか?
尾方:先輩たちには「もう200勝なんだ、早いね!」と言われるのですが、自分では自力を出せたレースもあるんですが、大きいレースではなかなか勝てないのでしっかり練習をしないといけないなと感じます。
山口:ではビッグレースの話もお伺いします。苦戦している、という具体的な部分はどんなところだと感じますか?
尾方:デビューしたばかりの時はすんなり逃げさせてもらえていたので結果も出ていたんですが、最近は逃げようと思ってもなかなか逃げさせてもらえません。仕掛けても「前まで出られないかもしれない」と怖くなってしまい、出しきれないレースが、特にビッグレースで多いです。
山口:ガールズケイリンフェスティバル(函館)ではそんなレースも多かったですね。戦法を変えていくというのは意識しますか?
尾方:私は逃げた方が勝てることが多いとわかっているんですが、そうじゃない時にも勝てるようにしていきたいです。普段のレースから捲りをしていこうと今年は意識しています。
山口:決まり手が、捲りや差しも増えてきてますね。意識しているんですね。
尾方:そうですね。
山口:練習方法も変わってきていますか?
尾方:今年の4月からウェイトトレーニングを始めました。それまでは全くやっていなかったんですが、まだ実感はありませんが徐々にあらわれてくるのかなと思います。
山口:どなたかのすすめだったんですか?
尾方:師匠(藤田剣次選手・福岡85期)のお姉さんにマッサージをしていただいているんですが、その方に「ウェイトをしてみたら?」とすすめてもらいました。師匠も、今はされていないんですが、一時期ウェイトをしていて、「力が入りやすいから良いよ」と聞いていたんです。それでやってみようかなと4月から始めました。
山口:新しい練習メニューを取り入れようと思ったのも、きっかけがあったんですか?
尾方:予選は勝てて決勝まですすめても、決勝で勝てない時期が多かったからです。先輩たちの上りタイムもすごいので、そんな皆さんに勝つためには違うことをやった方が良いのかなと思いました。
山口:近くに強い選手もいらっしゃいますもんね。
尾方:久留米はトップ選手が多いですし、今は人数もかなり増えています。一緒に練習してすごいタイムもみんなが出しているので、もっと頑張らないといけないなと思います。
山口:久留米へ出稽古に行く選手も多いと伺います。
尾方:そうですね。最近は本当にたくさんの方が来られています。藤田さんの指導を求めて来られる方も多いと聞きます。
山口:出稽古に来る選手もいることで、練習のモチベーションも変わりますか?
尾方:はい。いつものメンバーではなく県外から来た選手たちと一緒だと、更に頑張ろうという気になりますね。
山口:ここまで賞金ランキングは4位(2023年9月中旬)ですが、この位置はどう見てますか?
尾方:毎年ギリギリでグランプリに出場できているんですが、今年は余裕を持って決めたいと思っていました。でも現状だとまだギリギリなので、まず松戸の『オールガールズクラシック(GI)』をしっかり頑張れるようにしたいです。
山口:今年の賞金ランキングは接戦ですね。
尾方:そうですね。一走一走が勝負ですし、GIは勝負だと思います。まだ私自身、優勝ができるかの自信はないですが、まずは決勝に乗れるようにしたいです。
山口:オールガールズクラシック(GI)はティアラカップ(特選)からのスタートですから有利ですね。
尾方:そうですね。ギリギリ7番手でティアラカップから走れることになりました。
山口:ティアラカップの選考は、期間内の賞金上位者です。狙っていましたか?
尾方:いえ、全然気にしていませんでした。記者さんに「松戸はティアラカップからですね」と言われて、「ティアラカップって何ですか?」と答えてしまいました(笑)
山口:そうですか(笑)
尾方:それで「特選からスタートですよ」と言われて初めて有利なんだと思いました。ラッキーです。
山口:準決勝へいけるのは有利ですもんね。
尾方:はい。勝ち上がりを見たら、「予選からは1、2着と3着は4名が準決勝へ」とあったので、良かったなと思います。
山口:半年間の頑張りの成果ですもんね。
尾方:はい!良かったです。
山口:尾方選手、松戸は1回しか走ってないですけど覚えていますか?
尾方:うーん、追加で1回走って、(児玉)碧衣さんが優勝したのは覚えているんですが、あんまり感覚は覚えていないです。
山口:33バンクもあんまり走っていないですよね?直近だと2月の前橋(完全優勝)くらい。
尾方:そうですね。もがき出す距離がいつもの400バンクよりは早いと思うので、それは意識したいです。
山口:ティアラカップのメンバーは既に出ていますが、印象はいかがですか?
尾方:すごい強い先輩ばかりなので、しっかり自力を出していきたいと思います。
山口:ティアラカップのメンバーでは今年は児玉碧衣選手(福岡108期)と久米詩選手(静岡116期)がビッグレースを優勝しています。久米選手は今年一気にランキング上位にきましたが、意識はされますか?
尾方:函館のガールズケイリンフェスティバルの時に、自分は全くダメでしたが、詩ちゃんは優勝しました。その後、詩ちゃんに「自信持って走ったら大丈夫だよ」と励ましてもらえました。実は、前からお互いに励まし合っている仲なんです。 今年は詩ちゃんの調子が良く大きいレースも優勝しています。自分もビッグレースを勝てる選手になりたいので、詩ちゃんだけ特別に意識はしないですが、他の先輩たちと同じように、誰にも負けたくない気持ちはあります。
山口:児玉選手については、身近な存在だと思いますが、いかがですか?
尾方:碧衣さんは、今はまだ手が届かないところにいます。それはパールカップ(GI)を優勝した時にも思いました。最近は碧衣さんに「私のこのレースどうでしたか?」と質問して、自分に取り入れられる事は少しでも取り入れようと教えてもらっています。すごく良い姉弟子だし、いつかは追いつきたいと思う選手です。
山口:ではこの後GIが2つありますが、そこへ向けてはいかがでしょう?
尾方:そんなに意識はせずに、自分のレースをやっていきたいです。
山口:ガールズグランプリに向けてはいかがですか?
尾方:自分のレースをしていって、グランプリが決まったら良いですね。3年連続、グランプリを走りたい気持ちはあります。
山口:デビュー翌年からガールズグランプリを走っていますが、今年はGIも新設され一気に様相が変わったと思います。1年の流れも変化したと思いますが、いかがですか?
尾方:GIが3つできて、そこを優勝できたらグランプリ出場です。いつも私は11月の競輪祭トライアルレースの賞金で決めていたんですが、毎年ハラハラして走っていました。それは嫌なので、『競輪祭女子王座決定戦(GI)』に入るまでには、グランプリ出場を決めていたいですね。
山口:そうなると、GI優勝、もしくは賞金ランキング5位以内くらいになるんでしょうか。賞金争いも変わってくるんですね。
尾方:そう思います。
山口:より、オールガールズクラシック(GI)のティアラカップから、というのは有利ですね。
尾方:大きいですね!
山口:では今年のパールカップ(GI)の感想を伺いたいです。
尾方:普段のビッグレースと、私はそこまで雰囲気の違いは感じなかったです。
山口:そうですか。松戸はオールガールズですから、雰囲気は違うかもしれませんね。
尾方:そうですね。去年の平塚での10周年アニバーサリーレースにも走らせてもらったんですが、そっちの方が雰囲気は普段とは全然違いました。
山口:男子がいない開催というのはいかがでしたか?
尾方:宿舎や控室も同期と一緒でした。普段の開催よりも先輩たちともたくさん話せて、私はすごく楽しかったです。
山口:それは良かったです。松戸はGIですからまた違うと思いますが、できるだけレース以外はリラックスできたらいいですね。
尾方:そうですね。
山口:では後半に向けて、どんなことを意識して走りたいですか?
尾方:最近は着を狙う小さいレースになってきているので、もう一回、先行を含めて思い切ったレースをできたら良いなと思います。
山口:ありがとうございます。それでは最後にオッズパーク会員の皆様へ、『オールガールズクラシック(GI)』への意気込みをお願いします。
尾方:特選のティアラカップスタートなので、普段より思い切ったレースができるようにしたいです。これからも自力を出したレースをできるように頑張っていくので応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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現役史上最多900勝という偉業を達成した神山雄一郎選手(栃木61期)。達成の瞬間の意外な気持ち、そして今の自分との向き合い方などお話を伺いました。
大津:900勝おめでとうございます。
神山:ありがとうございます。
大津:少し日が経ちましたが達成されたときのお気持ちをお伺いできますでしょうか。
神山:基本的にはホッとしました。
大津:喜びよりもですか。
神山:そうですね、良かったっていうかやっと出来たかなっていう感じです。
大津:重圧もあったのでしょうか。
神山:自分としてはあまり意識していなかったのですが、周りの人たちがかなり意識をしていたので、それに応えなきゃいけないっていう責任感が出てきて、その中でもなかなか勝てなかったので段々気にするようになってきました。
大津:神山さんとしては「900」という数字にはあまりこだわってはいなかったのですか。
神山:そうです、はい。ただ、やはりファンの方や関係者の方々は強く意識されてましたので競輪場に入った時とかそういう空気は常に感じていました。
大津:リーチをかけてから、なかなか勝てない時の心境というのはどうだったんですか。
神山:勝つのって難しいじゃないですか、9人もしくは7人全員が1着を狙いにいくので。
自分では普段と変わらない感じだとは思ってはいたんですけどね。でも、周りの期待感をとても感じていたので「なんとしても1着を取らなくちゃ。」という気持ちから練習に力が入りすぎてオーバーワークになっていたような気がします。
大津:確かにどこの競輪場でも神山さんの900勝というのは話題になってましたもんね。
神山:その重圧が積み重なってしまって、つい練習をし過ぎちゃいました。
大津:同じラインを組む選手からの神山さんへの思いも凄かったんじゃないですか。
神山:ありがたいことに、かなり気合が入っている選手もいたのですが、僕としては普段通りやってくれたら良いからっていう思いでした。
大津:とはいえ前を走る選手へのお客さんの声援もいつもとは違ったように感じました。
神山:そうですね、そういうのもあったので僕ではない選手もプレッシャーを感じて上手く走れなかったりとかあったと思います。
大津:ここまでお話を伺うと、冒頭のホッとしたってお気持ちに繋がってまいりました。
神山:達成するまでの何か月間は本当にキツかったですね。
大津:900勝を決めた時の周りからの反響は凄かったんじゃないですか。
神山:899勝からの次の1勝が長くて数か月も引っ張っちゃったので、どんどん周りや選手のボルテージも上がってきちゃってそれが良かったのか悪かったのか分かりませんが決めた後の反響はものすごかったですね。
大津:かなり連絡がありましたか。
神山:携帯電話に思い出せないくらい連絡が来てて、それに返信するのが大変でした。
大津:祝勝会とかはあったのですか。
神山:優勝したわけじゃないんで大々的にってのはなかったですけど、4人くらいで集まって一回飲みには行きましたね。
大津:記念品を作る予定はありますか。
神山:いずれ作ろうかなとは思うけど、作るのもタダじゃないから考えるよね(笑)
大津:地元のメディアでも取り上げられていましたね。
神山:宇都宮でのテレビや、宇都宮競輪場での報告会、宇都宮市長からも表彰していただきました。自分ではそこまで凄いことだってのは思ってなかったんですが嬉しかったです。
大津:報告会ではファンからどのような言葉をかけてもらったんですか。
神山:昔は叱咤激励が多かったんですけど、最近では褒められることのほうが多くなってきたんで複雑ですね。僕のことをずっと見てきてくれたファンの方々は僕と同じように年齢を重ねてきてるわけで、みんな歳と共に優しくなっちゃってるんですかね。
大津:勝ったレースと負けたレースでは、どちらが記憶に残ってますか。
神山:名のあるレースで勝てば思い出として残っているし、逆に負ければ悔しくて残っているし、どちらがっていうのはなくて両方覚えてます。
大津:700勝から800勝を達成するまでと、800勝から900勝への道のりは違いましたか。
神山:一番違うのは時間がかかったってことですよね。歳と共に1着を取る回数ってのは少なくなってしまうわけですから。でも、積み重ねてきた数ってのは一緒なので、時間はかかりましたが僕としてはすべて同じように頑張ってきたとは思います。
大津:900勝を達成した直後のインタビューで「練習は噓をつかない。」とお話されていたのが印象的でした。
神山:そうですね、練習の成果がいつ出るか分からないのでそれが一番辛いんですが、でもやっていないと絶対に無理なので、練習を続けるっていうのは自分の中で間違ってないことだと信じています。
答えがないんですよ、練習って。いまやってる練習の成果が明日出るかもしれないし、一年後に出るかもしれない。一年後に出る練習をやったとしても半年でやめちゃったら、その練習が実を結ばない内に引退するようになるんで、だから本当に難しいんです、練習を考えるっていうのは。歳を取ればとるほど、その難しさを実感します。
大津:今、ご自身の身体とどのように向き合ってらっしゃるのですか。
神山:向き合うってほどじゃないですけど、日々を一生懸命に生きてるって感じですかね。
正直言って一生懸命やっても結果が出なかったりするわけじゃないですか。今となってはその状態が何か月も続くわけです。だから、正直やけくそです。やけくそでやってる感じです。
大津:今までだってずっと一生懸命だったわけですもんね。
神山:みんな一生懸命だと思うし、諦めたら終わりなんで。その中で答えを探しながら、自分を痛めつけながらやって、その練習の成果がいつ出るか分からないのに、やり続けないといけないんです。
レース行って「今回も全然成果出ねぇじゃねぇか」って打ちのめされて帰ってきて、また考えて「今度はこういうことやってみよう」って、次の開催に行って、またダメで。良い時なんてホントないです。それの繰り返しで、もう5年も6年も経ってます。
大津:結果が出ないとモチベーションを保つのも難しいように思うのですが、それでも続けられるのは何故ですか。
神山:心のどこかで「オレはまだ出来るはずだ。」って自信があるんです。
出来るって言っても特別競輪で優勝できるとかそういうのではなくて、自分の納得する着を取る走りが出来るはずだって思えるんです。その気持ちが僕の中で消えてないのでやれているんです。
神山雄一郎という競輪選手に僕自身が期待してるんです。もちろんその期待の度合いは昔とは違いますけど、自分が納得する走りや着。まだやれるはずだって思うからやめられないんです。
大津:我々からするとGIでの活躍など、そういう所にフォーカスをあててしまうのですがそういうことではないってことですよね。
神山:そうなんです、たとえ特別競輪の舞台以外だとしても自分自身を納得させられる競技なんです、競輪ってのは。向き合えるんです、自分と。ファンの方は特別競輪での1着も、S級やA級戦での1着も価値は一緒だと思うんです。賭けの対象としてみれば。
だとしたらファンの方が、どんな位置にいようと僕らの1着を求めてくれるんだから「オレも頑張らなきゃいけないよな。」って気持ちになれるんです。極端な話、1着じゃなくても、車券で考えると3着でもお客さんの役には立ちますよね。「神山ってけっこう頑張ってんだから3着には来るんじゃねぇか。」なんていうお客さんがいて、頑張って僕が3着に入ったら喜んでくれる人もいるわけじゃないですか。それを味わいたいっていうのかな。
お客さんの役に立てなくなったなら仕方ないけど、まだやれるはずだって僕は思ってるんです。
大津:失礼な話をして恐縮なのですが、以前までとは神山さんに対するオッズも変わってきていますもんね。
神山:お客さんも大切なお金を賭けてくれるわけですから。その中で、もし僕が1着に来た時にオレを信じて買ってくれた方に大きい配当がいくってのも、僕は魅力として捉えられるんですよ。「オレを信じて買ってくれた人に、オレは万車券を出したぞ!」って。それも大きなモチベーションに繋がるんですよね。
大津:1倍台のオッズもあったと思うのですが、それとはまた違うヤル気に繋がるってことなんですね。
神山:そうですね、正直そこまでの責任感ってのは以前ほどはないけど、でも発送機に着くと変わらず同じ緊張感はあるんですよね。あの緊張感があるので、やっぱりオレはまだやれるんだろうなって思えるのかな。
大津:今の「神山雄一郎選手」のどんな走りをファンに見てもらいたいですか。
神山:どうですかね、ファンの方と僕ら選手では目線が違うと思うので難しいですけど、僕としてはなんとしても3着までに入りたいと思ってるんですよ。1着とは言えないんですが、3着までに入りさえすればオレを買ってくれたファンの人の為に頑張れるんです。今となっては、それも難しいことなんですが。だけど、それでも姿勢を崩さずに見せていきたいなとは思っています。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願い致します。
神山:またS級で優勝したいです。あとはファンの為に車券に絡めるように日々練習を怠らずやっていきたいと思います。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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