2016年にデビューした静岡の鈴木奈央(すずきなお)選手(110期)。競輪学校を主席で卒業し、デビュー開催で初勝利、さらに次の月には初優勝を果たすなど、大注目の新人選手です。現在の調子、そして今後の目標について語っていただきました。
赤見:鈴木選手は子供の頃から自転車競技をして来たそうですね。
鈴木:そうなんです。自転車に乗り始めたのは、小学校3年生の時ですね。親戚のおじさんが、ロードのプロの選手だったんですけど、わたしと兄にロードの小さい自転車を組んでくれて、それで兄と一緒に始めました。最初の頃のことはあんまり覚えていないんですけど、ずっと楽しかったことは覚えてます。大会とかも楽しかったですけど、一番は兄と競い合ってやるのがすごく楽しかったですね。兄は2個上なんですけど、勝てた時は本当に嬉しかったです。その後兄が高校に入学して自転車部に入って、それを追いかける形で自分も入りました。
赤見:そこからガールズケイリンへと進んだ経緯というのは?
鈴木:高校生の時にガールズケイリンが復活したんですけど、最初はあんまり意識していなかったんです。でも、競技で海外の大会に出場するようになって、その時に加瀬加奈子選手とお会いする機会があって、ガールズという道もあるんだなって思いました。加瀬さんはガールズと競技を両立していて、すごいなって思って憧れました。わたしも加瀬さんみたいになりたいなって、ガールズを意識し始めたんです。
赤見:高校卒業後に、競輪学校に入学したわけですね。
鈴木:そうなんですけど、進路はかなり悩みました。高校3年生の時、大学に行って競技を続けるか、ガールズケイリンに行くかずっと迷ってて、家族は最初は競輪選手になることは反対だったんですよ。やっぱり厳しい世界ですし。ただ、最終的には自分の好きな道に進んでって言ってくれたので、悩んだ末にガールズに進みました。
赤見:決断の決め手は何だったんですか?
鈴木:一番は、自分で稼いだお金で自転車を買えたり、そういう方が自立できるのかなと思って。自転車競技ってけっこうお金が掛かる部活だったので、両親にはとても迷惑をかけたわけですから。自分で稼いだお金で好きな自転車を買いたいな、という気持ちが大きかったです。
赤見:競輪学校は見事1発合格、さらに在校1位という成績で卒業しました。
鈴木:部活の頃は女子1人の時期もあったので、女子が20人とか集まって練習するのは楽しかったです。でも、時間に追われたり、決められたことを決められた時間にこなしていくというのは精神的にキツかったです。わたし実家が静岡なので、(競輪学校は修善寺のため)親が会いに来てくれたこともありましたし、辞めたいとは思わなかったですけど、もう行きたくはないです(笑)。
赤見:在校1位というのはプレッシャーですか?
鈴木:そう言われるんですけど、自分ではそんなに気にしていないです。在校1位ということもあんまり意識していないですね。
赤見:デビューしてその開催で初勝利、そして次の月には初優勝、順調な滑り出しでした。
鈴木:地元の静岡でデビューして、すぐ初勝利ができて嬉しかったです。最初は開催の流れとかも全然わからなくて、戸惑うことが多かったんですけど、今は慣れて来て、走りたいように走れるレースも増えて来たので、デビューしたての頃よりは今の方が楽しいですね。初優勝も早かったですけど、あれからずっと優勝していないんですよ。やっぱり、優勝した時はすごく嬉しかったんですけど、何回も優勝できる選手になりたいです。
赤見:デビューして、先輩たちと戦ってみていかがですか?
鈴木:経験値が先輩方の方が高いので、考えが甘かったりすると上手く走れないですね。でもなるべく自分から動いてレースを作れるように意識はしているんですけど、簡単ではないです。デビューしてすぐに優勝しちゃったので、壁にぶつかった感はなかったんですけど、それから全然優勝できてなくて、もうすぐ1年経ってしまうので、今が壁かなって思います。
赤見:技術的にはどんなことを課題にしていますか?
鈴木:ダッシュ力がまだまだ足りないので、ダッシュ力の強化です。持久力にはちょっと自信があるので、さらにダッシュ力が欲しいですね。
赤見:憧れの加瀬選手とレースで戦った時はどんな気持ちでしたか?
鈴木:そんなに意識はしていないんですけど、レースが終わった後にも話しかけてくれて、いろいろ教えてくれるので、いつか追いついて追い越せるようにがんばります。
赤見:現在の調子はいかがですか?
鈴木:脚力はデビューした時よりはついてきていると思います。最近は成績が上がってきているし、調子もいいですね。最終的な目標は、ガールズグランプリに出場してしっかり戦える選手になることです。なので、これからも努力していきます。
赤見:小さいころからずっと自転車を続けて来て、嫌になったことはないですか?
鈴木:それ、よく聞かれるんですけど、一度もないんですよね。すごく楽しいです。自転車の魅力って言われると一言では言えないですけど、やっぱり勝った時はすごく嬉しいですね。
赤見:では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
鈴木:いつも応援していただき、ありがとうございます。皆さんの車券に貢献できるようがんばりますので、今後も応援よろしくお願い致します。
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 赤見千尋
※写真提供:公益財団法人 JKA
2015年にデビューした108期の高橋朋恵(たかはしともえ)選手(長崎)。選手を目指したきっかけから、現在までの心境を語っていただきました。
赤見:競輪選手になろうと思ったきっかけは、どんなことだったんですか?
高橋:きっかけは高校2年生の時に、ガールズの1期生が競輪学校で訓練を受けているというテレビを見たことです。自分も中高と陸上をやっていて体を動かすことが好きですし、そういう体を使った仕事がしたいなと思っていたので。陸上でも実業団とかありますけど、ほんの一握りの人しか進めないし、そこまで強い選手じゃないので無理かなと考えていた時で、ガールズはさまざまな業種から転向している方がいて、わたしも挑戦したいと思いました。
赤見:そこからどう動いたんですか?
両親に話したら、母はずっと反対してました。危ないんじゃないかって。父はしたいことしたらいいんじゃないかっていうスタンスで、佐世保競輪場で記念レースをやっている時に、父と一緒に見に行ったんです。その時にファンサービスで選手がファンへユニフォームを投げるというパフォーマンスがあって、たまたまなんですけど支部長さんのユニフォームをゲットすることができたんです。その時は、「これはもう行かなくちゃ!」と思って、その日のうちに事務所に押しかけました。ユニフォームにサインを書いてもらうという口実で(笑)、事務所に行って、「選手になりたいです、何もしたことないんですけど」って言いました。
赤見:みんなびっくりしてたんじゃないですか?
高橋:びっくりしてました。佐世保はまだ女子選手がいなかったですし、アマチュアでもそんな風に入って来る子がいなかったみたいで(笑)。とりあえず、「まぁいいけど」みたいな感じで愛好会に入れていただきました。本当に選手になるとは誰も思ってなかったと思います(笑)
赤見:ずいぶん積極的に動きましたね。
高橋:そうですね。高校が進学校だったのでほとんどの人が進路や目標が決まっていたんですよ。自分だけ何も目標がなくて、毎日を過ごしていた時だったので、ガールズのドキュメンタリーを見て、「これだ!これしかない」って思ったんです。
赤見:競輪学校を受けるまでの過程というのは?
高橋:愛好会に入って、師匠もつかない状態で練習してました。自分で選手の方にお願いして練習したり。夏に競輪学校でサマーキャンプに参加したんですけど、そこで佐々木昭彦さんがコーチをされていたんです。実はわたし競輪をよく知らなくて、優しいそうなおじさんだなって思ってて、よくしてもらったんですけど、まさか佐々木昭彦さんだとは(笑)。佐々木さんが実家が近くということで可愛がってもらったんですけど、自転車とかも実はお借りして乗ってたみたいで、師匠経由でいただいていたことも判明して。いろいろびっくりでした。ただ、高校生のうちは授業が終わって競輪場へ行って練習するっていうのを3か月くらいやったんですけど、競輪学校の試験に落ちちゃって、卒業して浪人して、1年しっかり練習して合格することができました。
赤見:その一年は長かったですか?
高橋:長かったというか、とにかく練習練習で早く受かりたかったです。周りは進学とか就職してて、春休みとか夏休みとかあって、帰省で帰って来た時とかに大学生特有の楽しい感じが羨ましい時もありましたけど。両親からは、「3回目はないよ。最後のチャンスだからね」って言われてたので夢中でした。あと「携帯代を自分で払いなさい」って言われていたので、コンビニで週2日ですけど早朝から昼までバイトしてました。そういう生活を1年続けていて、合格した時はホッとしましたね。
赤見:佐世保では初の女性選手ということで、馴染むまでは大変なこともあったんじゃあいですか?
高橋:周りの選手は、師匠に限らずみなさん気にかけてくれて、「練習するぞ」とか声かけてくれて、本当に有り難かったです。ただ最初の頃は、控室とかも女性用はなかったので、自転車の倉庫の一角みたいなところに場所を用意してもらったり、師匠が決まってなかった頃は、控室の扉に張り付いて、選手の足音が聞こえたら出て行って、「後ろつかせてもらってもいいですか?」って声掛けさせてもらいました。わたしもどうしたらいいかわからなかったですけど、相手の方々も、自分の娘と同じ年くらいだったりする人もいるし、自転車を続けられるかどうかわからない小娘ですから、よく相手にしてくれたなと思います(笑)。
赤見:競輪学校の1年はいかがでしたか?
高橋:そこは長かったですね。最近も同期とそういう話をしてて、「あの時こうだったね~もうできないね」って(笑)。自転車のことしか考えない生活で、ご飯も作ってもらって、贅沢と言えば贅沢ですよね。本当に自転車のことだけに集中してましたし、すごく勉強になりました。
赤見:2015年、松戸のデビュー戦は2着でした。
高橋:学校時代、下から4番目くらいの成績だったので、まさか初日から連に絡めるなんて...と思いましたけど、ちょっとはやっていけるかなと思って嬉しかったです。松戸のナイターだったんですけど、照明とかがすごく綺麗で、お客さんもいっぱい入ってて、選手になったんだなって感動しました。
赤見:今年は3年目のシーズンになりますね。
高橋:自分では調子いいって思ってても、展開次第で結果が出せなかったり、安定して結果が出せないんですよ...。一時期ちょっと上がったときもあったんですけど、去年11月に落車してしまって、そこからちょっと不安定なのが続いているんです。体は大丈夫なのに、周りのちょっとした動きが気になったり、過敏になり過ぎているんですよね。レースなのでそんなこと言ってる場合じゃないし、よくないのはわかっているんですけど。
赤見:現在は試行錯誤中ということですかね。
高橋:そうですね。地元での練習はもちろんですけど、小林莉子選手によくしていただいて、立川や西武園に行って、小林さんと一緒に練習してもらうことも多いんです。成績が良くなった時に通い始めたジムが東京にあるので、そこに行って、東京で練習して、というサイクルで。小林選手の他にも、奥井迪選手や、増茂るるこ選手、同期の細田愛未ともよく練習してもらってて。そこでいい刺激を受けています。
赤見:では、今後の目標を教えて下さい。
高橋:予選で1着をしたことがないので、まずはそこでしっかり結果を出したいです。そして、ゆくゆくは優勝を目指します!
赤見:オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
高橋:なかなか安定した成績が出せず心苦しい時もあるんですけど、ネットで応援してるよとか叱咤激励していただき、力をもらっています。一生懸命走るので、これからも応援よろしくお願いします。
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 赤見千尋
※写真提供:公益財団法人 JKA