平成10年10月高崎競馬場にて騎手デビュー。以来、高崎競馬が廃止される平成17年1月まで騎乗を続け2033戦91勝。元騎手の目線からレースを分析から、現役時代の思い出など、様々な話題を楽しく書き綴ってまいります!
今年のさくらも、キレイでしたね。儚く散ってしまったけれど、やっぱりさくらは大好き☆
特に私は、夜桜が好き。
さくらの季節になると、いつも思い出す。境トレセンの、向正面に咲くさくらたち。
初めてそのさくらを見たのは、デビュー1年目。あの頃の私は、ただ、馬に乗る事に無中だった。
午前2時、暗闇にライトが灯る。ひと気の少ない馬場に、愛馬とともに入って行く。まだ脚跡のついていない馬場を走るのは、とても気持ちがいい。
馬場にいるのは、2〜3人。ほとんどの人たちがまだ眠っている時間。
1頭目の調教を終えて、帰ろうとする私に、水野騎手が言った。
「さくらを見てごらん。」
人馬が少ないこの時間だけは、向正面で馬を歩かせる事が出来る。
真っ暗な闇の中に、ライトアップされたさくら。ひらひらと花びらが落ちて来て、それはもう、幻想的な世界。水野さんに言われるまで、その美しさに気付かなかった私。
「キレイだね。」と愛馬に話かけながら、ゆっくり歩いて帰る。心にゆとりが出来た気がした。
この時期だけは、早起きも全く苦にならない。早く起きた人にしか見られない、年に1度のプレゼント。あのさくらより美しいさくらを私は知らない。