今回は去る8月17日、平塚競輪場で行われました<第67回オールスター競輪(GI)>にて通算500勝を達成された山崎芳仁選手(福島88期)にお話をうかがいました。大舞台で果たした大きな節目の他に、大ギア志向へのきっかけなどもお聞きしました。
大村篤史:通算500勝の達成おめでとうございます!
山崎:ありがとうございます!500勝というのは大きな節目でなかなか出来ることではないと思うと、大きな怪我もなくやってこれたこと。何よりずっと支えてくれた家族への感謝、そして競走で一緒に走ったラインのおかげです。
大村:去年22勝を上げ、年初から今年中に大きな節目が期待されました。
山崎:自分自身はまったく意識していなかったですね。いつも目の前の一戦に向き合ってきましたし、一勝々々の積み重ねですね。
大村:当日に連携した佐々木悠葵選手(群馬115期)はどうでしたか。
山崎:佐々木君の走りは以前は外だけでなくて内へ行ったりもしてましたが、ここ最近は縦に踏んだ脚が目立っていた印象でした。自分の500勝については・・・どうかな?レース前に話してなかったんで彼も意識はしてなかったんじゃないかな。
大村:当日のレースはまず後方から阿部将大選手(大分117期)がレースを動かしました。
山崎:佐々木君の作戦は初手は前か中団からレースを始めて、(別線が)斬ったところを叩いて早めの捲りかカマシで仕掛ける。そんな話でした。
阿部君が斬った後に岩本君(岩本俊介選手・千葉94期)が来て小川君(小川真太郎選手・徳島107期)が追い上げて中団がもつれてましたね。佐々木君はバックを踏んですぐ仕掛けてくれたんですが踏み出しが強烈で自分はクチが空きました。
(最終)1コーナーで追い付いたときに伊藤君(伊藤旭選手・熊本117期)がインコースにいて車輪が掛かってました。軽く締めこんだんですがバックでもう一度見ると内をさらに上がってきました。その時に自分の前輪が佐々木君の後輪に差しこんだのでこのままだと外へ持っていかれちゃうので一度引っこ抜いて立て直して外を追込みました。
大村:見事500勝!そしてワンツーフィニッシュでした。
山崎:勝てたのはたまたまです。番手を守って二人で決められたことがなによりだし、最高です。
大村:ゴール後に右手でアピールしていましたね。
山崎:スタンドのファンから「山崎おめでとう!500勝おめでとう!」と声をかけてもらいました。これは大きな舞台で競輪場に来てくれて自分から買ってくれたお客様への礼儀といいますか、声援へのアクションとして応えました。
大村:今回の節目はGIでの達成ですが、これまでの節目の1着を振り返っても好メンバーでの対戦でした。
山崎:そうですね。節目の一戦で強い人たちと当たって勝てたのは思い返せばデカいのかなと思います。
大村:話は変わるのですが、山崎選手といえば大ギア(4倍超ギア)時代の先駆者です。ここからは当時のエピソードをうかがいます。まずは実戦に投入したきっかけは?
山崎:練習で重いギアを使うのはいろんな人がしていたと思うんですが、自分の場合は(きっかけは)単純に練習でギアを掛けてたときに後半のスピードが落ちなかったんです。このスピードを維持できるなら本番でもギアを掛けたまま逃げてもいいんじゃないか?使いこなせるならばやらない手はないんじゃないか?練習で使っているうちにそう考えるようになりました。
大村:ペダリングの違いや工夫されたことはなんですか?
山崎:3.54/57といった軽いギアは脚だけで回せるんですが、重いギアだと体重移動が必要になるのでそれを支えるしっかりした体幹が必要になりますね。
大村:踏みこなすための体づくりは?
山崎:あの時は新たに体を大きくしようとは思わなかったですね。軽いギアの回転数を維持して重いギアを回すイメージを作る。重心移動に意識を向けてペダルを踏み込めるように、脚力だけでなく体重でギアを回すようにしていきました。
大村:ヤンググランプリを当時の大ギア3.71で制した若手選手がさらに4倍の壁を超えてきた、超大ギアで押切るのはセンセーショナルだったと想像します。
山崎:函館のふるさとダービー、熊本の全日本選抜(GI)、ビッグレースで勝てましたからインパクトはあったでしょうね。
大村:そこから競輪界が大ギア志向に舵を切りました。それをどんな風に見ていましたか?
山崎:使えるんだったらみんな使いこなそうと考えるだろうし・・・。けど思ったよりも(4倍ギアを)使う人が増えたな、当たり前になっていったなと感じていました。
大村:2015年からギア倍数の上限規制がかかりました。事前に規制への流れといいますか予兆というのはありましたか?また規制はどのように受け止めましたか?
山崎:当時は指定されたギアの範囲でこれからもやっていくんだとだけしか思ってませんでしたね。自分たちは常に決められたルールの中で走っていくだけなので、規制というかルール変更には試行錯誤して、新たな挑戦へのきっかけにしましたね。
大村:規制直後は選手の皆さんは色々な取り組みをなさっていました。特にセッティングの面で変更があったと記憶しています。
山崎:自分の場合、4倍超のギアのときはシートの角度を5°半から6°で乗っていたんですけどそれだとスカスカしてしまうのでシート角を4°半から5°に寝かせてギアに対する当たりを出す。体重をかけるために前乗りにしていたものをギアを軽くさせた分だけ調整しました。
大村:ギア規制後では最初の特別競輪(静岡競輪場・全日本選抜(GI))を制して時代の変化に対応された後は戦法も自力から自在寄りへそして番手戦へと変化していますね。
山崎:88期の同期の仲間たちと当初から切磋琢磨しGIでも戦って、それから時間が経って後輩たちが出てきて番手で走るのも徐々になれてきました。
大村:番手戦が増えるにあたって気を払ったことは?
山崎:もともと自力一本でやっていたころから前と車間を切って走るのが得意だったんですが、番手戦となるとしっかり付いて位置を守ることが大事なので前との距離を詰めて走るのが当初は難しかったですね。普段の街道練習では前と半車輪ほど離して走るんですけど、それを前の後輪ギリギリまでタイヤを近づけて走る練習をしました。車間を空けないように空かないように走る練習に時間を割きました。
大村:大ギア時代にも作戦上の番手回り、北日本地区同士での連携はありましたが本格的な番手戦はいつごろからですか?
山崎:始めて他地区の選手に付いたのが41才でした。同期の小埜正義(小埜正義選手・千葉88期)の後ろを回りました。たまたま二人が決勝に乗って(注:2021年1月4日久留米FI決勝)、単騎同士の番組になりました。お互いに「(地区が)近いけどどうしますか?」って話になり、小埜は自分でやりたいと。その時の自分は他地区に付いたことはなかったんですが小埜は同期でなんだか他地区の選手と思えないというか・・・。
大村:同期のよしみ、絆ですね!
山崎:そうですね。なので同期になら付けてみようというのが最初でした。
但、一度でも他地区の後ろを回ったからには自分自身の中で『完全な自力とは言えなくなったな』という自覚が生まれました。同時にこれからは自力自在に走る、正攻法だけでない戦い方をやってみようと思いました。
大村:さきほど街道練習の話が出ましたが、山崎選手の練習スタイルは二勤一休。二日間を追い込んで一日休息のサイクルと記事で読みました。今でも同様でしょうか。
山崎:今はまばらになってしまいましたね。年齢とともに若いころのようにとことん追い込めなくなりました。そのまま2日練習して1日休むサイクルだとただの練習不足になってしまうから、今は4日続けたり一週間続けて練習してます。自分の体調に合わせて練習日程を考えています。
大村:現在、トレーニングで取り組んでいることは?
山崎:心拍を上げていく練習に重点を置いてるかな、高回転で下りをモガいたり軽いギアで登ったり。
大村:ウエイトトレーニングよりも実際に自転車に乗って行うのですか?
山崎:自分も過去にウエイトトレーニングはやったんですけど、どうにも体がロックしてしまうんですね。踏み方と合っていないようで効果がでなかったです。自分の身体、体調を見ながら取り組んでいます。
大村:練習と競走の合間のお休みの日や山崎選手のプライベートの時間の過ごし方はいかがですか?
山崎:趣味は昔からゴルフですね。家族や兄弟とごくごく親しい者で回ります。完全にリフレッシュの時間なので選手同士でってのはないなぁ。
大村:昨今のスピードレース化が著しい中、レースで気を付けていることは?
山崎:今は若手選手みんなスピードがあるし、競走の変化として自分たちのデビューしたころに比べてモガく距離が長くなりました。それでも番手戦であっても自分でやるときでも兎に角離れないことですね。
大村:今年はご子息(山崎歩夢選手・福島125期)がデビューされました。ご子息だけでなく若手選手の多くが山崎選手へ憧れを抱いているかと思います。ルーキーへ向けたメッセージはありますか?
山崎:そうですね。これから辛い時期があるかもしれませんが常に上を目指してトレーニングとケアを忘れずにGIの頂点を目指して頑張ってほしいです。
大村:今回500勝を達成されて9月は立川FIにて501勝目を上げました。次なる節目へ踏み出しました。そしてファンの関心はやっぱりグランドスラム!今後の目標は・・・?
山崎:自分では意識していないんですが、ダービー(GI)を走ると周りからちらほら話が出ます。そうなると意識せざるをえないですね。とはいえ常にGIをめざして練習をしています。なので目標も長くGI戦線にいる体づくりをしていくことです。
さっきの新人へのメッセージと重なりますが、競走がつづく中で不安に駆られることがあっても自分を奮い立たせ挑みたいです。若手は当然ですが強いので彼らのスピードに追いていかれないように、フィジカルとメンタル合わせて『まだやれるぞ!』ってところを見せたいですね。
大村:最後にオッズパーク会員の皆様と全国の山崎芳仁ファンへ向けたメッセージをお願いします。
山崎:いつも応援ありがとうございます。ファンの皆さまのおかげもあって大きな節目500勝が達成できたんだと思います。これからも上位をめざして、GI優勝をめざして日々の努力につとめますのでこれからも応援をよろしくお願いします!
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※インタビュー / 大村篤史(おおむらあつし)
2012年4月から小倉競輪場を中心にレース実況を担当。
名前と同様の"熱い"実況スタイルでレースのダイナミズムを伝えることが信条。
2022年7月からは小倉ミッドナイト競輪CS中継の二代目メインMCとしても出演中。
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今年の卒業記念チャンプとなった森田一郎選手(埼玉125期)。
本デビューの地元戦では準優勝だったものの、その後の3場所で9連勝を達成し早々とチャレンジを卒業。今後はS級での戦いも見据える23歳の新星に様々なお話を伺いました。
ナッツ:まずは特別昇班おめでとうございます。
森田:ありがとうございます。
ナッツ:本デビューして4場所目での特別昇班はどう捉えてますか。
森田:ちょっと1場所目で躓いてしまったんで、そのあたりは反省したいなと思っています。
ナッツ:ただ、その1場所目での反省をしっかりと活かすことができたんですね。
森田:そうですね。徐々に成長していって、成長の実感を掴めたので修正はできたと思います。
ナッツ:その成長というのはどういった部分ですか。
森田:本デビューの大宮ではレース全体が見れてなかったですし、心と身体が別々なことをしてしまってるなと感じました。そこから師匠にも色々とアドバイスをいただいたので、そういうところをしっかり詰めていくうちに向日町くらいで形になり始めて、レースの組み立てもすごく考えながらレースを走れるようになってきましたね。
ナッツ:その成長が特別昇班に繋がったのですね。ちなみに森田選手は養成所時代は2位という順位でしたが、ご自身の中でデビューしてからもやれる手応えはありましたか。
森田:そうですね。ちょっと不安はあったんですけど戦えるだろうとは思ってましたね。
ナッツ:そして実際にデビューをして、最初の段階として自分の思い描いたように走れていますか。
森田:やっぱりチャレンジとA級やS級でレースの流れが違うと思いますし、これからそういうところを走ってからにはなりますが、まずは大体は予想通りに走れていますね。
ナッツ:森田選手の場合、ルーキーシリーズでデビューして初めて車券の対象になったという部分で緊張感はありましたか。
森田:高校と大学でやってきた競技とは全く別物というのは感じていました。
ただ、今までも全てを出し切るという感じで走ってたので、それは本当に車券の対象になっても変わらないことで、あまり変な気負いはなかったですね。
ナッツ:意外にその辺りは落ち着いていたというか、その経験が活きている部分があったということですね。
森田:そうですね。一走一走大切にやってきたっていうのが、そういうところで活きたのだと思います。
ナッツ:ルーキーシリーズが終わって、地元の大宮競輪場で本デビューを迎えましたが何か違いは感じましたか。
森田:地元って言っても正直「うわ、緊張するな」って感じはなかったですね。
どっちかというとルーキーシリーズの方が同期に負けたくないって感じが強くて、緊張しましたね。
ナッツ:地元を走ってのファンの声援はいかがでしたか。
森田:決勝は2着という形に終わって、僕が人気をしていた分皆さんの期待を裏切ってしまったんですが、終わった後も「ここからだぞ!」と温かい声援をいただいて、もう1回気を引き締めて頑張んないとな、と思いました。
ナッツ:そこからは連勝街道となったわけですが、9連勝目がかかる最後の立川の決勝の時は特別昇班に対する意識はいかがでしたか。
森田:同じナショナルBチームである中石君(中石湊選手・北海道125期)も先に特別昇班していたので、ここは絶対に取りこぼせないっていう気持ちでしたね。ただ通過点っていうのも感じていましたし気負いはなかったです。
ナッツ:やはりそれは森田選手自身が見据える位置はまだここじゃなく、更に上の位置だからこそってことですよね。
森田:そうですね。S級に上がって通用する練習をしてると思うので、しっかりと早くそこで力が発揮できるようにしたいですね。
ナッツ:実際にその立川の決勝のレースで125期が4人いる中で捲って9連勝を決めました。特別昇班を決めた気持ちはいかがでしたか。
森田:本当に安心というか、ひとまずは短期目標をクリアできてよかったなっていう気持ちでしたね。ただ終わって、これで一喜一憂はしていられないなと思っていました。
ナッツ:話を聞いていると、森田選手は結構しっかりと自分のメンタルもコントロールしながら取り組んでいるように感じますね。
森田:いや~僕は優先順位や今何をやるべきか、どういう目標を立てばいいのかみたいなものをちょっと見失ってしまうふしがあるんですよね。だからこそしっかりとそうやって自分に言い聞かせないと、と思ってやっていますね。
ナッツ:逆にそういう部分があるからこそ自分をしっかりと律することができているのですね。
森田:そうですね。そのあたりは意識をしています。
ナッツ:レースを見ていると、先行も捲りも出ているイメージですが、ご自身の中での脚質はダッシュ、地脚だとどちらになるんでしょうか。
森田:それが本当に僕もまだわからなくて。まだまだ発達段階っていうかこれからだと思うので、自分でどういう風な競争がスタイルに合ってるのかっていうのを探していきたいですね。今は大学時代からやっていることがメインになってしまっているんですけど、先行もそうですし、ゆくゆくはしっかりとレースの戦術の幅を広げていきたいなと思っていますね。
ナッツ:今、練習環境としてはナショナルの練習がメインなのでしょうか。
森田:そうですねナショナルで練習させていただいてます。
ナッツ:競輪もありつつ、ナショナルも、ということでいわゆる二刀流のような感じだと思うのですが森田選手自身はどう捉えていますか。
森田:僕はあんまり器用じゃないんで、どこかで悩む時期があると思うんですけど、そういう壁に当たるまではしっかりと両方を全力でやっていきたいですね。
ナッツ:ということはナショナルでは、今後のオリンピックに対する意識もあるのですね。
森田:はい。こないだのパリオリンピックも見ていて本当に刺激をもらえましたね。すごくかっこいいなと思いましたし、自分が出たい、何年後かに出たいっていう気持ちも本当に強くありました。本当に大きな目標はやっぱりロサンゼルスオリンピックっていうことになりますね。今のこの身体やパフォーマンスではロスに出れるか出れないかって言われたら絶対に出れないと思うので、今はただただ強くなることしか考えてないですね。
ナッツ:先輩にあたる太田海也選手(岡山121期)だったり中野慎詞選手(岩手121期)の走りを間近で見る機会もあると思うのですがいかがですか。
森田:脚力があるとかそういう面では本当に一目瞭然なんですけど、その他にも選手として、あとは自転車に対する考え方も本当に違います。そういった面でも早く追いつきたい、追い越したいという気持ちはあります。
ナッツ:やっぱり近くで見ていて学ぶことが多いんですね。
森田:本当に多いですね。自分がまだ考えもつかない意識などを実際に聞いて学べる場所にいるというのは本当にありがたいです。
ナッツ:その時点でやっぱり他の同期が聞けないようなことも聞いているわけですもんね。
今はナショナルでの練習とのことですが、競輪の方では師匠の山信田学選手(埼玉83期)からはどんなことを言われていますか。
森田:特にレースの内容に関してはどういう風に走れとは言われていないんですけど、一走毎に電話でアドバイスをいただいていますね。
あとは「隙の多いレースだった」っていうアドバイスをいただいた時には、師匠も全ての答えを言わずに自分で考える力をつけさせてくださいます。
少しアドバイスをいただいて、あとは自分でどう隙があったのかを考えていたり、本当に自分のことを思って成長させてくれる師匠です。
ナッツ:それは本当にすごく自分の成長に繋がりますよね。森田選手自身は元々考えること自体は高校や大学の時からも結構してきたタイプなのでしょうか。
森田:正直言うと、僕は大学時代あんまり考えて走るタイプではなかったんです。
もちろんちょっとは考えましたけど、今考えると本当に考えてるか考えてないか微妙なレベルだったと思います。
ナッツ:今になって振り返るとそう思うのですね。
森田:そうですね。当時はどうすれば速くなるかっていうのを考えてはいたんですけど、具体的な方法とかそういうのはなく、漠然とただただ練習をすればいいと思っていたので。今は本当に練習以外のものが出るのが競輪だと思ってるので、そういうのをしっかり考えるという力はついたと思います。
ナッツ:インタビューや考え方も含めすごく落ち着いてらっしゃいますよね。良い意味で若さが無いというか。笑
森田:そうですね。たぶん変なことを深く考えすぎる性格なんで、考えてることが変にまとまっちゃうんですよね。
ナッツ:森田選手は色々なことを器用に出来るタイプなのかなって思っていました。結構考え込むんですね。
森田:そうなんですよね。例えばアドバイスいただいたら、そんなに考えなくてもいいことをすごく深く考えすぎちゃったりして、本当に器用ではないですね。
ナッツ:でもその考えるということは競輪選手にとって絶対大事ですもんね。
森田:でもやっぱり限度があると思うので、それを長所に出来るようにしていきたいですね。
ナッツ:今後、森田選手の目標はどこに置いていますか。
森田:やっぱり大きな目標はグランプリなんですけど、今は叶わないと思うので、しっかりと力をつけていきたいです。今の短期の目標としてはやっぱりS級に上がってGIなどのレースで埼玉の偉大な先輩方の前で戦いたいですね。
ナッツ:やっぱり埼玉というと本当にたくさん強い選手がいますもんね。
森田:本当に埼玉は選手層が厚いのでそういう人の前でしっかり走りたいです。
ナッツ:ちなみに同期の中で意識する選手はどなたかいらっしゃいますか。
森田:やっぱり中石湊ですね。
ナッツ:そこはナショナルで戦ってるからというところでしょうか。
森田:そうですね。本当に競技じゃ負けてばっかりなんで競輪では負けたくないです。
ナッツ:そして今後はまずはA級1-2班の舞台が待っています。ここも特別昇班に対する意識はご自身の中ではどうですか。
森田:もちろんここで止まりたくないっていう思いが強いです。その為に1-2班のレースもしっかりと予習してます。同期の栗山さん(栗山和樹選手・岐阜125期)や南部君(南部翔大選手・大阪125期)のレースも見て、どういう勝ちパターンなのか、どういったレースが負けちゃうのかっていうのを見て勉強していますし、しっかりと事前準備をしてから入りたいです。
ナッツ:すごいですね。そういった他の選手の1、2班の戦いとかもチェックされてるんですね。
森田:そうですね。先輩方からも1、2班はちょっとレース形態や流れが違うって言われたんで、そこらへんはしっかり勉強しておかないと、脚があっても競輪なら負けちゃうと思うので、しっかりとできる準備はしておきたいですね。
ナッツ:その中で森田選手のファンに対する走りのアピールポイントを教えてください。
森田:一走一走、全力で諦めないレースを意識していつも走っています。もちろんそれは当たり前のことではあるのですが、気合は誰よりもあります。そういうところを見ていただければと思います。
ナッツ:では最後にオッズパークの会員の皆様へメッセージをお願いします。
森田:A級1-2班戦も全力で、そしてS級にも上がれるように本当に一走一走全力で頑張るので引き続き応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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今年のオールスター(GI)では初めてのファン投票1位に輝いた古性優作選手(大阪100期)。
優勝という最高の結果でその期待に応えました。
大歓声の中で走った気持ち、そしてファンに対する想いなど様々なお話を伺いました。
ナッツ:オールスター(GI)の優勝おめでとうございます。ファン投票1位に応えての優勝でしたね。
古性:本当に嬉しいですね。
ナッツ:2021年に出場した時は16位でしたが、今年は1位でした。
ファン投票の順位がどんどんと上がっていったことはどう感じますか。
古性:やっぱり日々のレースを評価していただいたということですごく嬉しいなと思います。
ナッツ:このオールスター(GI)は他のGIとはやっぱり少し違う感覚なのでしょうか。
古性:そうですね。やっぱりファンの皆さんの投票がなければドリームレースにも出場できないですし、そこはすごく特別な思いはあります。
ナッツ:実際に1位に選ばれた時の気持ちはいかがでしたか。
古性:まさかでしたね。笑
ナッツ:まさか、ですか。それはどういった部分で感じたのでしょうか。
古性:なんですかね...特にインパクトのあるレースもすることができてないですし、それでも僕なんやなと思いました。自分の中では物足りなさを感じていた中だったのでびっくりしました。
ナッツ:そのファン投票1位で迎えたオールスター(GI)でしたが、状態はいかがでしたか。
古性:状態面もあんまり上がりきらずに、今年のGIの中では1番不安を抱えたまま入った開催にはなりましたね。
ナッツ:そうだったんですね。自分の中では全然満足いく状態ではなかったと。
古性:はい。岸和田のGIの状態が良かったんで、それに比べるとかなり物足りないなって感じでした。
ナッツ:平塚競輪場自体は去年のダービー(GI)以来だったのですが、イメージとしてはいかがでしたか。
古性:すごく華やかですし、相性っていうよりかは走って楽しいバンクだなと思いましたね。
ナッツ:その中で初日はドリームレースを走りました。ファンの期待が集まってのレースでしたが、声援はいかがでしたか。
古性:本当に素晴らしい舞台で走らせてもらって、もう僕は脇本さん(脇本雄太選手・福井94期)と深谷さん(深谷知広選手・静岡96期)がすごくもがき合ってたんで、なんかこう観客目線じゃないですけど、ちょっとそんな感じで見てましたね。余裕はない中ですけど、迫力があってすごい光景でしたね。
ナッツ;それほど沢山のファンが声援を送っていたのですね。以前、記事で脇本選手との連係時は作戦は立てないと見たことがあったのですが、実際はどうなんでしょうか。
古性:最近までは立ててなかったんですけど、今年のサマーナイト(GII)ぐらいからちょろちょろっと作戦は組み立てるようにはなりました。
ナッツ:その辺りの変化はどういった理由でしょうか。
古性:やっぱり脇本さんもやりたいことがあると思いますし、その中で自分が脇本さんが走りやすいように援護できたらいいなっていう感じで立てるようになりましたね。
ナッツ:その作戦を立てることで、連係も少しずつ変わってきた実感っていうのはありますか。
古性:そうですね。やっぱり作戦ないよりかはある方が、どうしたらいいかっていうのがわかるので、自分は動きやすくなったかなと思います。
ナッツ:ドリームレースでは3着でしたが、一走しての感覚はいかがでしたか。
古性:本当にもう脇本さんがすごく強くて、僕はもうただただきつくて力不足を実感したなって感じですね。
ナッツ:ただ、そこから2走目に関しては自力でのレースでした。2コーナーから捲って後続を離すようなスピードでしたが、自力で動いての感触はいかがでしたか。
古性:状態を上げる意味でも色々な試行錯誤をして、少しずつ良くなってきたかなっていう感じですかね。
ナッツ:その後、シャイニングスター賞では再び脇本選手の連携でしたが勝負所は前と大きく車間が空いていたのはわかりましたか。
古性:いや~もう風が強すぎて、僕は状況があんまりわかってなかったですね。
ナッツ:最後はその中で進路を内にとって4着まで伸びてきましたが、ご自身の中での手応えは。
古性:もう苦しかったですね。いっぱいいっぱいで。
ナッツ:準決勝では窓場千加頼選手(京都100期)との連係になりました。
窓場選手は近況非常に力をつけてきた印象があるのですが、古性選手から見て窓場選手はいかがですか。
古性:そうですね、年頭はちょっと頼りなかったんですけど、本当にウィナーズカップ(GII)ぐらいから覚醒した感じで、すごく頼もしかったですね。
ナッツ:その辺りは古性選手から見て、思い当たる理由はあるんでしょうか。
古性:競輪学校時代からすごくポテンシャルを持ってたんですけど、まあ自分を高めることを怠ってたのだけだなと思うんですけどね。笑
千加頼は練習したらあれぐらいのポテンシャルある選手ってもう知ってたんで。
ナッツ:自分のポテンシャルを引き出せるような練習や考え方とかが出来るようになったわけですね。その窓場選手との連係では、ジャン過ぎに3番手に松浦選手(松浦悠士選手・広島98期)が捌いて入っていました。あの辺りはいかがでしたか。
古性:もうすぐに後ろに入ったのがわかったので、動きに気を付けていましたね。
ナッツ:その後北井佑季選手(神奈川119期)が捲ってきましたがあの時の動きですよね。
軽く北井選手を振りつつ、インの松浦選手にはしっかりと当たった部分。結構SNS上でも話題になっていました。あの辺りは古性選手の中では考えての動きだったのでしょうか。
古性:そうですね。北井さんはまだ伸びてくる可能性もありましたし、そこをちょっと振ったら郡司くん(郡司浩平選手・神奈川99期)が中に来てくれるんで、そうなると北井さんは苦しくなると思いました。あとは内外線間を空けると、やっぱり松浦くんが来てくれるので、そこをしっかり潰したらワンツーは決めれるなっていう感覚はありました。
ナッツ:その辺りの判断がさすが古性選手、と感じたのですが、ああいった動きは走りながらの瞬時の判断なんでしょうか。
古性:ですね。もう走りながらです。
ナッツ:先ほど脇本選手との作戦の話もありましたが、この窓場選手とのレースの場合もあらゆるケースを想定して作戦を立てたのでしょうか。
古性:いや、千加頼の場合は作戦はなかったですね。そのあたりは全部任せて、という感じでした。
ナッツ:ということは、決勝戦も窓場選手との連係でしたが、ここも作戦は立てなかったということでしょうか。
古性:はい、初手の部分を確認しただけですね。
ナッツ:それだけだったのですね。結果的に前を取りましたが、そこから北日本の番手に粘るっていうところもプランとしては。
古性:いや、もうそのあたりもなんもわかんないです。笑 全部千加頼に任せてたので。
ナッツ:結果的には下げて5番手を確保して窓場選手が捲り上げていきました。前は新山響平選手(青森107期)が先行して、佐藤慎太郎選手(福島78期)のブロックもありました。
振り返っていかがですか。
古性:2コーナーで千加頼が踏んでいった時に、これはワンツー狙いに行ってるなって思う仕掛けでしたし、千加頼は伸びてもいったので、これは捲れるかなって感じはあったんです。ただ慎太郎さんがすごく上手やったなという感じでしたね。
ナッツ:そのブロックで窓場選手も少し勢いが止まったところ、古性選手は外に持ち出して踏み込みました。その時の感覚はいかがでしたか。
古性:千加頼がブロックもらった時に一緒に僕も煽りもありましたし、ちょっと苦しくなったなって感じだったんですけど、決勝戦が1番状態が良かったんで勝てたなという感じです。あれが準決勝ぐらいの状態だったら、多分4着ぐらいになってる感じはします。
ナッツ:そんなに準決勝と決勝で状態が違っていたのですね。古性選手の仰る修正っていうのは、どういったことを指すんですか。
古性:身体のインナーの使い方ですね。
ナッツ:それをローラーとかに乗りながら修正していくような感じなんですか。
古性:そうですね。決勝の前にローラー乗ったんですけど、最後の5分ぐらいで閃いたことがあって、それを決勝でやった感じですね。
ナッツ:その閃きがあっての勝利だったとは。そして、ゴール後すぐに右手でガッツポーズしました。感情が高ぶってたような印象ありましたがお気持ちとしてはいかがでしたか。
古性:そうですね。今年GIで情けないレースが多かったんで、やっとこう結果を残せたなって感じでしたね。
ナッツ:前半のGIで苦しい結果が続いていたことに対しての悔しさがあったと。
古性:ナショナルチームと練習させてもらって、色々感じる部分もありました。でもしっかり自分の思ってるトレーニングができれば結果は出るとは思ってたんで出せてよかったですね。でも今回に関しては本当に千加頼のおかげなんですけどね。
ナッツ:最近は窓場選手など、近畿の若手選手がたくさん出てきたことはどう捉えてますか。
古性:本当にそういう選手と走る機会も増えてきましたし。僕はすごく嬉しく思ってますね。
ナッツ:その中でもちろん自力も人の後ろも、というケースもありますが戦い方に関してはどう考えていますか。
古性:もちろん、自力と追い込みじゃ全然違うんですけど、やっぱり自力をやってないとGIは取れないですし、追い込みになっても自力持ってないと多分優勝できないんで。
そこは落とさずですね。むしろもっと上げていくイメージですね。
ナッツ:あとは今回のファン投票1位というところもそうなのですが、決して派手なパフォーマンスをしない中でもファンに支持され、古性選手自身もファンのことを考えている印象があります。改めてファンの存在はいかがですか。
古性:そうですね。僕はリップサービスもしないですし、それこそ純粋に自分のレースを見ただけで評価してもらったっていう嬉しさはあります。
むしろインタビューだけ出ていたらファン投票の順位は下がると思うので。笑
シンプルに競輪で評価してもらったのがすごく嬉しいなと思います。
ナッツ:だからこそ感謝の気持ちが自然と口に出てきたりっていうのもあるわけですよね。
古性:そうですね。自分はそれこそイベントに頻繁に出たりもしないですし、自分はやっぱり走って良い走りをしてファンの皆さんの期待に応えたいっていうのがあるんで。
やっぱりどうしてもイベントよりも練習の方がメインになってしまいますし、ファンの皆さん的には物足りない部分もあると思うんですけど、僕の中ではそこしかないと思ってるので、練習を突き詰めてやらしてほしいなって感じています。
ナッツ:それがファンに伝わってるからこその今回のファン投票1位っていうところだと思いますよ。
古性:そうだとしたら嬉しいですね。
ナッツ:その中で、古性選手は今後どこに目標を置いていきますか。
古性:ずっと言っているんですけど、ダブルグランドスラムをやってみたい、目指したいなっていう気持ちはあります。
ナッツ:そこに対してご自身の中で足りない部分だったり、強化していきたい部分はありますか。
古性:脚力的にももちろんですし、人間的にももっと成長しないと絶対取れないなと思います。もっとこうなんですかね...誰もやったことのないことを目標にしてるわけなんで、全ての項目でトップになっとかないとという気持ちですね。
トップスピードもそうですし、横の技術もそうですし、メンタル的にもそうですし。だからこそ難しい部分ではあるんかなと思いますけど。
ナッツ:心技体含めて全部がトップにならないと辿り着けない目標だと。
古性:そうですね。そうしないと誰も行けなかったところになかなか行けないなと思っています。
ナッツ:沢山のお話をありがとうございました。では最後にオッズパークの会員の皆様へ一言お願いします。
古性:いつも応援していただいてありがとうございます。これからも応援してもらえるよう頑張ります。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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今年は5月に小倉、7月に地元の弥彦で優勝を飾るなど活躍を続けている加瀬加奈子選手(新潟102期)。ガールズケイリンを長年けん引してきたトップ選手が、今はどういう気持ちでレースを走っているのかお話を伺いました。
山口みのり:まずは今年の成績を振り返っていきます。5月には加瀬選手の誕生日に優勝を決めましたね。
加瀬加奈子選手:はい、小倉ですね。
山口:決勝戦は優勝は意識されていましたか?
加瀬:いえ。出産をしてからは無事にゴールすることを一番に考えて走っています。復帰をする時に家族と話し合って「無事ゴールをすること=優勝」という共通認識でいます。だから基本の戦法は先行、その結果で着が良かったらラッキーという気持ちで走っています。
こう言うとお客さんに怒られるかもしれませんが、勝つためにも先行が有利だと思ってやっています。最近は私が先行体制に入ると、上を仕掛けてくる子もいるのでその時は2番手から組み立てます。
小倉のときは太田美穂ちゃん(太田美穂選手・三重112期)が仕掛けてきたので「よし!」と思って飛びついて差せました。
弥彦では吉村早耶香ちゃん(吉村早耶香選手・静岡112期)が仕掛けてきたので、それを追いかける形の優勝でした。だから「自分で先行してはもう勝てなくなったのかな」という悲しみはありますね。
山口:そんなことはないのでは?弥彦は予選2では逃げ切りでした。
加瀬:予選ではまだいけるのかなと思っているんですけど、決勝は脚が違うと感じることもあります。55点くらいの選手が2~3人いて、私が前で先行体制に入っていても更に仕掛けられてしまうと厳しくなりますね。
山口:そこから追って、追い込んでというレースもありますね。
加瀬:そうですね。最近はそういうレースもありますね。私は基本的に自力の練習しかしていないんです。自分で600mを駆けるとかそういう練習がメインなので、前に人がいたら追いかける気持ちがあるから良い目標になって前の選手を結果として追い込めるんでしょうね。
山口:前に人がいて嫌だなという気持ちよりも、よし抜いてやろうという感じなんですね。
加瀬:はい。「待ってくれー!」から「追いついた、よし!」って感じです。
山口:そうなんですね(笑)
小倉では高橋梨香選手(埼玉106期)が持つガールズケイリンの最年長優勝記録を更新しました。2024年8月には高橋選手が大垣で優勝して更新と、お二人で更新を続けています。高橋選手についてはどう感じていますか?
加瀬:高橋梨香さんはトライアスロンでは超一流の方です。私もトライアスロンをしていましたが、同じ舞台には立てないくらい上で、世界とも戦っていた方だったので面識はありませんでした。だから「そりゃ強いよな」と思います(笑)
トライアスロンは競技タイムが2時間半くらいの世界です。そこから3分半でレースが終わるガールズケイリンに転向しました。しかもトライアスロンは自分でお金を払ってレースに参加していたのに、ガールズケイリンは7着でも賞金がもらえます。本当に良い職業です。
山口:ここまでお話を伺って、以前にインタビューをさせていただいた時(2020年6月)は産休から復帰されてまもない時でしたが、そこから4年経っても同じ思いでレースを走っているんだなと思いました。
加瀬:そうですね。基本は無事に、という感じです。
山口:でもこの4年で結果も出していますよね。優勝もですがGIの出場、更には1着もありました。
加瀬:はい。でもそれが良いことでは必ずしもないんです。ガールズケイリンは男子のように級班が分かれていないから若い子たちがどんどん出てくるけど、40歳を超えて出産をした私も同じようにあっせんされ一緒にレースを走ります。
人間なので体力的なことを比べると、絶対若い子の方が強いし元気です。大袈裟ですが20歳と80歳が一緒によーいドンと走ったら、20歳が勝つに決まってます。だからガールズケリインでも「44歳の私が先行して逃げ切るのはおかしいよ」と思っちゃうんですよ。若い子に「あんたたちもっと頑張んなさい」と言いたいです。
山口:後輩の選手達との付き合い方はいかがですか?
加瀬:打鐘から全力で仕掛けて、例え7着だったとしても私は「それでいい」と言っています。「力はいずれ付いてくるから」と。
山口:先行で挑んでくる選手ということですね。
加瀬:はい。今年の新人で言うと山口の磯村光舞(いそむら・ひらり)ちゃん(磯村光舞選手・山口126期)に言いました。弥彦で私が前にいて残り1周では思い切り仕掛けてきていました。「それで良い、いずれ着はついてくるから。後ろでゴチャゴチャして7番手になっているよりは仕掛ける方が力がつく」とアドバイスしました。
山口:以前、刈込奈那選手(千葉120期)にインタビューしたときに「加瀬選手を目標にしていたので、アドバイスをもらえるのがありがたい。レース以外の生活面でも一緒に過ごしていた」と伺いました。
加瀬:そうですね。刈込は風呂でもすごい見てくるんです(笑)そこは見ないでくれよ、と思うんですけどね。
山口:加瀬選手の動向ということですか?(笑)
加瀬:そうです。増田せっちゃん(増田夕華選手・岐阜118期)もよく私のこと見てるんです。あ、そうだ。冬にハプニングがあったんですよ。追加で荷物が宅配では届かないと言われ輪行バッグで参加しました。荷物を極力少なくするために、下着は洗って乾燥させて履いていたら、同期の増茂(増茂るるこ選手・東京102期)は「加瀬さん同じ下着で汚くない!?」とハッキリ言ってきたのに、増田せっちゃんは尊敬のまなざしで見てくれてたので、そこは見ないでくれよと思いました(笑)
「1枚を綺麗に洗って履いてるわ!」と増茂には言いましたけど、ちゃんとわかってくれていたかな......と心配になりました(笑)
山口:いろんな視線を感じるんですね(笑)
加瀬:彼女たちの師匠が「尊敬する選手の生活面もしっかり見て来いよ」って言ってるのかなと思っているんです。
山口:なるほど、自分とは生活面からどう違うのか、ですか。
加瀬:そうですね。例えば食堂のおばちゃんに挨拶しているかどうか、とかも見ているのかなと。私は挨拶は基本だと思うので誰でもするようにしています。
山口:加瀬選手は変わっていないかもしれませんが、視線を感じることで意識しますよね。そうやって慕ってくれている選手がいるというのはいかがですか?
加瀬:私を慕ってくれているかはわかりませんが、でも若い子が活躍してくれないとガールズケイリンが長く続かないです。以前の女子競輪は選手が少なくなって終わってしまいました。一人一人が大切だと思います。
山口:加瀬選手はお弟子さんもいます。男子の選手を弟子にとるというのはどういう経緯があったんでしょうか?
加瀬:本人たちが希望した選手に弟子入りに行くという仕組みなんです。121期の3人は私が産休中にずっと一緒に練習していた子たちなんですよ。「諸橋さん(諸橋愛選手・新潟79期)とか鈴木庸之さん(鈴木庸之選手・新潟92期)とか男子の選手に弟子入りにいきなよ」って言ったら「あんまり話したことがないから」って言われました。彼らはアマチュアで毎日練習してる。私は産休だからずっと練習している(笑)だからだと思います。
今は彼らには全くアドバイスはできません。私も私のレースがあるし、そもそも男子のレースはガールズとは全く違うのでわからないから、今は野放しです。
山口:でもそれぞれ「加瀬選手の弟子」ということでいろんな方から戦法の面では期待されている部分も大きい気がします。加瀬選手は戦法についても全く言わないんですね。
加瀬:はい。記者さんから「お弟子さんS級上がりましたね」とかそういうことくらいですね。滝本幸正(滝本幸正選手・新潟121期)は今期からS級で、苦戦してますが頑張っていますね。治田知也(治田知也選手・新潟121期)と小榑佑弥(小榑佑弥選手・新潟121期)もその背中を追って強くなって欲しいけど、でも上に行くことだけが重要ではないです。仕事として競輪を頑張れば良いと思っています。
山口:今の目標は、先ほど仰っていたように無事に走り切ることですか?
加瀬:そうですね。まずは娘が優先です。もし娘に何かなったらレースを欠場しないといけません。娘のために無事に走って早く帰る。「家に帰るまでが遠足」ではないけど「家に帰るまでが仕事」と思っています。
山口:以前伺った時は、その日に帰れないミッドナイトや遠征のレースは欠場していたと仰っていましたが、今は娘さんも大きくなって、参加はできていますか?
加瀬:はい。ミッドナイトも参加していますが、毎月のように入っているのでそれはちょっと負担です。ガールズ選手でも全くミッドナイトのあっせんがない選手もいるみたいなんですよ。
山口:そうなんですね。
加瀬:ある選手はここ数年で3回くらいしかミッドナイトを走ってないと聞いたんです。私は毎月あるから、その辺りはちょっと考慮してくれると助かります。要望はあげているんですけどね。
山口:お母さん選手もたくさんいますもんね。先日、同期の大和久保美選手(青森102期)も復帰されていましたね。
加瀬:8月の青森で一緒なので大和と話せるのが楽しみです。2人目の子を出産して復帰するのは本当にすごいと思います。
山口:昨年からGIが新設されました。1期生としてデビューした加瀬選手は近年の流れはどう感じますか?
加瀬:素晴らしいとは思います。ただオールガールズクラシック(GI)とかはGI以外のトーナメントがA~Cに分かれますよね。それをするなら級班を分けた方が良いのではと思っています。男子みたいにA級3班からスタートして「A級2班で戦ってみたい」というところから、「次はS級へ」とどんどん上を目指せる貪欲さが出てくると思うんです。
女子にはそれがないので、デビューしていきなり男子でいうS級S班の選手と戦わないといけません。下位の選手たちからしたら、それは厳しいよと私は思います。同期で400勝している選手もいれば、10勝もできずに引退する選手もいる。勝ち星をあげるというのはプロ選手のやりがいを感じる大切なことだと思うし、勝てたらどんどん次へと自信とやる気にも繋がります。勝てないで終わる選手を見るとモヤモヤしますね。
山口:級班を分けることで、それが緩和される可能性は大きいんでしょうか。
加瀬:実際に男子は、50代の選手で、ずっとA級3班で走っていても何百勝と上げている選手がいます。その舞台では勝利ができるというのは大切だと思います。
山口:今の話を伺っていると、これまでも定期的に要望を言っているんですね。
加瀬:そうですね。言うようにはしています。
山口:1期からずっと見てきて、良くなった部分はどういうところですか?
加瀬:施設が綺麗になってきているのは嬉しいです。後はガールズの集合時間が遅くなったのは本当にありがたいです。今までは「この時間までに競輪場へ入る」という時間がガールズが早くて、男子は遅かったんです。それがこの夏から逆になりガールズの方が遅くなりました。齊藤由紀ちゃん(齊藤由紀選手・愛知110期)も「ありがたい」と言っていたのを記事で見ました。
山口:今までは集合時間が早いと、遠征なら前の日に移動しないと間に合わない、子供を身内や保育園に預けられないからレースにいけないという時もあったように聞きます。その変更はお母さん選手には良い変化ですね。
加瀬:はい。すごくありがたいです。
山口:ありがとうございます。では少しレースのお話も伺います。先ほどは基本戦法は先行と仰っていましたが、Sからの先行が多いですか?
加瀬:そうですね。大師匠に「基本は前を取ってからの先行」と言われていました。「前を取って自分のタイミングで仕掛けるのが加瀬にとって良い戦法なんじゃないか」と言われてから意識して走っています。そこで私よりも先に仕掛けてくる選手がいたら、それはうまく流れを見ていきたいです。
山口:挑んでくる選手がいる方が燃えますか?
加瀬:そうですね。もし私がもっと若い選手だとして、加瀬加奈子と戦うとしたら「あんなおばさんに勝たせたくないな」と思う気がします。「あのおばさんが逃げ切って1着とるのは嫌だな」と。もし若い子の立場なら私はそう思っちゃうから、「思い切っていけば自分は7着になるかもしれないけど、そのかわりに加瀬さんも潰してやる」くらいの考えで打鐘でおさえにいくのが、私は当たり前と思っちゃいます。
山口:全員が加瀬選手に挑んできて欲しいくらい?
加瀬:そうです。そうじゃないとだめじゃない?と思っちゃいます。例えば私の後ろをマークして、私を利用して差してやろうと思っている19歳の子だとしたら、私は疑問に思う。
でもその子にもファンがいるし、お金もかかっている。それはそれで良いのかもしれませんけどね。私自身がそういう走りが嫌なだけです。
可愛くて人気の選手だけが良い訳ではないと思うんです。じゃあ整形して可愛くなったら弱くても良いのか?そうじゃないよねってなっちゃいます。
山口:プロとして走りで魅せて欲しいというのも一ファンとしての思いです。
加瀬:可愛い子が打鐘から先行して逃げ切ったら「マジですごいね」となると思うんです。そんなレースも見てみたいけど、そうじゃないことが多い。逆に先行してる子が批判を受けたりしているのを見るのは悲しいです。
山口:では加瀬選手が注目している選手はどなたですか?
加瀬:まず刈込は真っ先に思い浮かびます。後は東京の石井貴子(石井貴子選手・東京104期)。太田美穂ちゃんも良い走りですよね。人をあてにしないで自力で勝つ選手が私は好きです。女子オールスター競輪の佐藤水菜(佐藤水菜選手・神奈川114期)も、あの大舞台で先行して他をねじ伏せるのは良いなと思いました。そういう走りを貫く選手は好きですね。
山口:ありがとうございます。それでは最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
加瀬:私は基本は先行で戦っています。8月の富山では宇野どん(宇野紅音選手・岐阜124期「いつも宇野どんと呼んでいる」そうです)にたたかれて引いちゃいました。ファンの方には「並ばれて引くのかよ」と思われるかもしれないけど、危険な走りをするよりは無事にゴールをすることが優勝だと思っています。基本は自力で戦うけど、なによりも無事にゴールを目指して走っています。ファンの皆さんもそれをふまえて車券を買っていただけると助かります。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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