かつてはアジア選手権などの大きな大会で金メダルを獲得するなど、持ち前のスピードでファンを魅了してきた河端朋之選手(岡山95期)。しかし近況はヘルニアとの戦いもあり、思うような成績を残すことができなかった。
そんな中で、先日の青森記念は優勝。自身初のGIIIのVをどのように受け止め、そして今後河端選手はどこへ向かっていくのか。話を伺いました。
橋本:あらためて青森記念おめでとうございます。日が経ちましたが、今はどんな思いでしょうか?
河端:今回の優勝は実力というより展開と運に助けられたな、という部分が大きくて、結果としては嬉しいのですが、正直、まだまだ上で戦うには力が足りないな、と感じています。
橋本:開催前の段階でご自身の手応えとしてはどうだったんですか?
河端:正直、優勝どころか、決勝戦に乗ることすら厳しいだろうなと思いながら青森入りはしていました。
橋本:具体的にどういうところが、しっくりこないな、という感じだったのですか?
河端:去年の冬から4ヶ月くらいヘルニアでずっと休んでいて、2月の高知で復帰したんですけど、7着7着6着で。誰一人抜けずに終わった開催からスタートだったので(苦笑)その時よりは少し前でゴールできるようになってはきたのですが...とはいえ、以前であれば一周くらいだったらラインで出切って決められたのですが、今はカマシにいっても叩けなかったり、ペースで駆けても粘れず、最後失速したり、これまでの自分の組み立てで勝負してもうまくいかない、という部分は感じていました。
橋本:なかなか厳しい状況ですね。
河端:そうですね。ただ、短い距離だったり、人の力を使っての展開ならある程度自分のスピードは生かせたので、今回の青森記念はたまたま、それがいい形でハマってくれましたね。
橋本:腰の痛みなどは今はどうなんでしょう?
河端:今、腰が痛いか?と言われると、そんなにめちゃくちゃ痛い訳ではないのですが、左脚に坐骨神経痛があったりして、ただ、それもかなり改善はされてきています。が、やはり、痛かった時期にしっかりトレーニングが出来ていなかったので、長い距離を踏めば踏むほど体のバランスが崩れていってしまうというか、そんな感覚ですね。
橋本:なるほど、確かに今回の青森記念は誰かと並走しているというシーンが多くて、落ち着いているな、よく河端選手は耐えているな、と思いながら見ていました。
河端:本調子だったら、並ばれて一旦後ろまで引いても巻き返せるな、というのはあるんですが、今は自分に出来ることが少な過ぎて、そこにいるしかできない。いなきゃ仕方ない。という感じでしたね。
橋本:内で被った状態というのは、コースがなくなるリスクがあるのですが、つまりはある種の開き直りというか、そんな感じなんでしょうか?
河端:そうですね。今回4日間は確かに開き直って走っていましたね。あと、ヨコの出来る人なら僕の外なんて簡単にキメにいけると思うのですが、並んできた選手も自力だったので、そこはやっぱり僕も引けないなと。
橋本:それが好結果に繋がりましたね。
河端:そうですね。初日なんかでも前がやり合ってくれる展開でしたし、決勝戦も同じような感じでしたし...無欲って訳ではないんですけど、とにかく今、自分に出来ることが少ないので、それだけをしっかり出来るようにしていこう!というのが、うまく噛み合ってくれたって感じですね。
橋本:今後の戦法について何か青写真のようなものはありますか?
河端:同地区の後輩がいる時などは任せると思うんですが、やはりいけるところまでは自力でいきたいな、という思いです
橋本:若いイキのいい選手が中国地区、多いですからね。
河端:そうですね。自力で頑張っている選手だったら付かないといけないな、という思いはありますね。ただ、例えば僕が前で、後輩が後ろに付けるほうが、ライン全体の総合力が上がるのなら、それも選択肢に入れて考えたいですね。
橋本:ヨコの対応というのはいかがですか?
河端:僕は、同地区でも小倉さん(小倉竜二選手・徳島77期)に強烈にブロックされて止められたこともあって、あんなに簡単に勢いって止まるんだ!と思ったこともあるんですが...(笑)ああいった援護というよりは車間を斬って残していく、というようなサポートが後ろの時にはできればいいなと思っています。
橋本:ただ、やはり基本は自力だと。
河端:はい、そう思っています。
橋本:青森の優勝で気持ち的にはノッていけそうですか?
河端:まあ、万全ではないのですが、初の記念制覇だったので、そこは弾みにしたいですね。
橋本:でも、不思議なものですね。過去、河端選手の中で万全に仕上がったっていう開催は何度もあったはずなのに、こういった時に優勝してしまうという...(笑)
河端:自信満々でいけるぞ!って思った時は全然ダメだったりしたこともあるし...何なんでしょうね?? 自分でもわかりません...(笑)
橋本:そんなもんなんですね〜
河端:ほんとに何なんでしょうか?(笑)
橋本:しかし、中四国地区は若手選手もどんどん出てきて、王国みたいな雰囲気ですね。
河端:若い選手が強すぎて、もう河端には付かないって言われることもありそうですが...(笑)それでもしっかり頑張っていきたいです!
橋本:これから気温が上がることによって、いい方に向かっていくといいですね。
河端:今回、冬に発症して、まだ夏を経験していないので分からないのですが、これから気温が上がることによって良くなってきてくれたらいいな、とは思っています。でも、動かし過ぎて再び痛めないようにしないといけないですね。
橋本:体のケアもしつつ、開催もあって、そして勿論トレーニングと大変だと思いますが、是非!また、あの国内トップレベルのスピードを見せてください。
河端:まだまだ長い距離というわけにはいきませんが、できるだけまた、元のようになれるように頑張っていきたいと思います。
橋本:では最後に、オッズパーク会員様に向けてメッセージをお願いいたします。
河端:まだまだ本調子ではないのですが、これから上のレベルでもっともっと戦えるようにしていきたいと思っていますので応援よろしくお願いいたします!
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※インタビュー / 橋本悠督(はしもとゆうすけ)
1972年5月17日生。関西・名古屋などでFMのDJを経て、競輪の実況アナウンサーへ。
実況歴は18年。最近はミッドナイト競輪in小倉を中心に活動中。
番組内では「芸術的なデス目予想」といういいのか悪いのかよく分からない評価を視聴者の方から頂いている。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
大きな怪我を乗り越え、GI戦に復帰した福井の脇本雄太選手(福井94期)。自身にとって今年初出場となった第76回日本選手権競輪(GI)。喜びの声を伺いました。
大津:日本選手権競輪優勝おめでとうございます。
脇本:ありがとうございます。
大津:お気持ちはいかがですか。
脇本:今年は特に出場出来るGIは少ないというのもあって、より優勝したいという一心で練習をしてきたので、そこで結果を出せたのでホッとしているというか純粋に嬉しいです。
大津:今回のダービーにはどのようなテーマで挑まれたのでしょうか。
脇本:ラインでしっかり決めて決勝に乗ろうと思ってました。
決勝に関しては最後ラインで決めることは出来なかったのですが、勝ち上がりの段階ではしっかりとラインで決めることが出来たので自分の中では目標として一つ達成出来たのかなと感じています。
大津:GIの勝ち上がりで全てライン決着というのは並大抵なことではないと思います。
脇本:そうですね、特にいわき平競輪場というのも先行で決まりにくいバンクですので厳しい戦いにはなるなとは思っていたのですが、それも自分の中で跳ね除けた上でレースをするっていうのが出来て本当に嬉しく思います。
大津:4月はFIを2本走りました。ダービーを迎える状態面はどうだったんですか。
脇本:4月は6走中5走が番手戦だったので、調子も含めてレースに対する意気込み自体がちょっとずつ変化してるのかなと感じていたので、正直不安はありましたね。
大津:本音としては全6走自力で走りたいという気持ちでしたか。
脇本:それはありましたが、でもそれを言ってしまうのと僕のワガママになってしまうので「任せてください。」って言った意気込みには応えていこうと。
大津:前検日に競輪場に入った時には、どんな感情が湧き上がってきましたか。
脇本:ダービーに関しては参加人数の多さも普通の開催とは違いますし、トップ選手が沢山いる中で僕がそこに入れたってことに対して、ようやくこの舞台に帰ってきたんだなという思いはありました。
大津:今回の舞台はいわき平競輪場でした。脇本選手はバンクの相性は気にするタイプですか。
脇本:バンクの相性はそこまで気にしないのですが、大会の相性というのは凄く気にするタイプです。ダービーは2019年には松戸で完全優勝もしたこともあって相性は凄く良いと感じていました。
大津:初戦ですが、これぞ脇本選手という競走を見せました。
脇本:僕が走るまでのレースで先行逃げ切りを含め、先行選手が苦戦していたので「うわっ、大丈夫かな。」という心配はありました。レースは後ろ攻めになった時点で先行しようと決めました。
ただ、前受けになって引くタイミングが遅れたりしたら捲りに構えていたかもしれないです。
大津:脇本選手から三谷選手(三谷竜生選手・奈良101期)への2車単が1.5倍と圧倒的に支持を集めていました。
脇本:GIだとしても僕に対するオッズって関係ないんだなって思いました。
僕が今年復帰した奈良記念でもそうでしたが、オッズが極端になりがちなのでそれに応えなきゃいけないんだというプレッシャーはあります。
大津:選手によってはオッズは見ないという方もいますが、脇本さんは確認するほうなのですか。
脇本:見ようとはしてないんですが勝手に目に入っちゃうんですよね。でも、だからこそ目を背けることはしないです。自分を支持してくれるオッズときちんと向き合うようにしています。
大津:初日走り終えて感触はいかがでしたか。
脇本:状態は良くなかったです。レースが終わった後にブレスコントロールの時間が10分間あるんですが、10分では息を整えるのが足りなくて起き上がれずに倒れこんでしまってました。おかげで勝利者インタビューでは迷惑をかけてしまいました。
大津:2走目は4日目の5月6日でした(1走目は3日)2日間走らないというのは影響はありましたか。
脇本:予選スタートだったので、2次予選は3日目か4日目というのは分かっていたのですが、それでも3日目の2次予選の番組に自分の名前がなかったので緊張はしましたね。あっ、自分が最後なんだって。
大津:レースを走らない間はどのようにして過ごしているのですか。
脇本:その日は走らないからといって身体をケアしたり休ませたりしようとはせずに、もし仮に今日僕が走るとしたら、というのを想定して一日を過ごしています。睡眠のサイクルなどが崩れるのが一番まずいと考えているので、そこだけは絶対に崩さないようにしていますね。
大津:決勝戦を迎えるにあたり、節間の中でポイントになったレースはありますか。
脇本:初戦のレースですね。初戦を先行でクリア出来たことで2次予選、準決勝を先行で頑張ろうという心意気になりましたし、先行出来たことで他のラインに与えるプレッシャーも大きくなっていったんじゃないかというのはあります。
大津:決勝戦を走るにあたって、それまでのレースと心や身体の違いはありましたか。
脇本:心の違いがありました。先行に対する恐怖心がなくなったので、そこが大きかったですね。
大津:決勝はどこがレースのポイントになっていくと読んでましたか。
脇本:やっぱり眞杉君(眞杉匠選手・栃木113期)の動きですよね。レースの展開上、間違いなく僕が後方の7番手になりますから、そのタイミングで眞杉君がどういう走りをするのかって考えてました。
大津:その眞杉選手ですが早めに仕掛けていきましたね。
脇本:赤板の2コーナーくらいからフルスロットルでしたね。あれだけ踏まれるとジャンのタイミングでは僕の中では行けるところがなかったです。
大津:そこからはどのように考えていたんですか。
脇本:自分が行けるってタイミングがジャンの4コーナー過ぎであったんです。ここで仕掛けないと後悔するぞってところが。でも行く場所としては最悪でした。
だけど実際に直線で全て乗り切らないといけないってありましたから、横に強い選手があれだけいる中でコーナーで自分が外にいるのは不利になりますからね。
不利な状況を作らないように走るっていうのは僕の中でもポイントだったので、あそこで仕掛けていきました。
大津:そこからは壮絶な踏み合いになりました。
脇本:平原さん(平原康多選手・埼玉87期)を通過しないと優勝は絶対にないって思っていたので、平原さんから肩が一個出た瞬間くらいから全く余裕がありませんでした。それだけお互いが力を出し切った証拠だと思いますし、良い勝負が出来たと感じています。
大津:ゴールした後というのはいかがだったのでしょうか。
脇本:正直目を開けていられませんでした。余裕がなかったので自分がゴールを通過して2コーナーくらいでようやく優勝に気づいたって感じです。
大津:レースが終わった後に佐藤選手(佐藤慎太郎選手・福島78期)や荒井選手(荒井崇博選手・佐賀82期)から声をかけられていたようにも思うのですが。
脇本:おめでとうって言ってもらいました。同じ地区や同じラインの人なら祝福してくれるのも分かるのですが、他地区で敵として戦ったラインの選手から祝福をもらうというのは本当に嬉しかったです。お互いが良いレースをして全力を尽くしたら、敵だとしても相手を称えたいっていうのは僕の中でもあるので他の方からもそのような祝福をもらえて良かったです。
大津:少し話が逸れるのですが春日賞では宿口選手(宿口陽一選手・埼玉91期)にアドバイスを送られたそうですね。
脇本:他地区だから強くなる方法を教えないってのは僕の中にはないんです。お互いが強くなるために情報交換をしあって競輪界が盛り上がっていけば良いなと。
自分だけが強くなれば良いじゃないと思うんですよね。皆で強くなったほうが、観てるお客さんも楽しいじゃないですか。僕はそういうのも目指してやりたいなって思ってます。
大津:シリーズ通してファンの声援はいかがでしたか。
脇本:徐々に僕に対する声援が大きくなったイメージはありました。
初めてタイトルをとったいわき平競輪場だから所縁もありますし、去年古性君(古性優作選手・大阪100期)と決めたオールスターもここでしたから、自分にとって何かしら縁のある競輪場だなと思ってました。その中でお客さんが盛り上げてくれて嬉しかったです。
大津:大きな怪我を乗り越えてのタイトル獲得となりました。
脇本:怪我から復帰しての優勝、と特にドラマチックには捉えてないです。常に怪我する前と同じ感覚でレースを走っているという気持ちがありますので。
ただ、その中で目に見える形として結果を残せたのは良かったです。
大津:これでGP出場も決まりました。
脇本:ダービーを獲ったからといって自分自身満足することもないですし、まだ前半戦も終わってませんから。
今年は出れるGIも少ないので自分の出来ることをやった上でGPに向けて、身体をしっかりと作っていこうと思っています。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願いします。
脇本:僕にとって今年最初のGIで優勝することが出来て嬉しいんですけど、この結果に満足するのではなく、今年S級1班で特別競輪や記念競輪だけではなくFI戦も走る中でしっかり自分の走りをアピールし、年末のGPで勝てるように調整していきたいと思っています。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社